<吉祥寺残日録>トイレの歳時記🌾七十二候「霜始降(しもはじめてふる)」に清々しい秋の公園を歩く #211023

朝目覚めると、ちょうど妻がカーテンを開けるところだった。

夜明けの気配を感じ、買ったばかりのコンパクトカメラを持って窓辺に急いだ。

井の頭池に朝霧がかかり、そこへ朝陽が斜めから差し込んでいた。

昨日の雨が上がり、幻想的な朝である。

今日から暦は二十四節気の「霜降」。

「朝霜を見始める。秋気が去って冬の兆しあり」と我が家の歳時記カレンダーにはその意味が説かれている。

そして「霜降」の初候は「霜始降(しもはじめてふる)」という。

同じような意味で、「初霜が降る頃」ということだが、さすがに東京ではまだ霜は見られない。

しかし昨日は各地で季節外れの寒さを観測したようで、岩手では初霜が観測されたというニュースも流れていた。

いつものように、スマホとコンパクトカメラを片手に井の頭公園の探索に出かけた。

初霜のかわりに朝露がまだ葉の上に残っている。

半月ほど留守にしている間に、井の頭公園の緑が元気を取り戻しているように感じた。

御殿山の山野草エリアでは夏草が刈られ、新たに瑞々しい緑の絨毯が復活していた。

まるで春を思わせる清々しい光景。

夏の疲れが癒えて、再び命の季節を迎えたようだ。

人間の背丈を超える高さにまで育っていた「オオアレチノギク」などの夏草はすっかり刈り払われていた。

都会のオアシスである井の頭公園は、徹底的に管理された「自然」なのだ。

枯れ葉の中から吹き出したシダ類の緑は、命の復活を象徴するようなコントラストを見せつける。

古きものは死に、新たなものが蘇る。

人間の手によって管理されているとはいえ、そこで展開されるのは、まさに「輪廻」そのものである。

「お茶の水橋」付近で発生していたアオコもいつの間にかすっかり消えて、カルガモたちが水面まで伸びた水草の中にくちばしを入れ黙々と食事をしていた。

そろそろ冬鳥たちが渡ってきているかなと思って眺めていたが、どうやらここにいるのは全員カルガモのようだ。

「冬鳥たちはまだ来ないのか」と思いながら、「七井橋」まで来ると・・・

こちらに・・・いた。

様々な冬鳥たちが池の中ほどに集団で固まっていたのである。

グレーの胴体に茶色の頭は「ホシハジロ」のオス。

目が赤い。

ヨーロッパからシベリアで繁殖し、冬になると南に下ってくる。

黒い羽毛に覆われたこちらの鳥は「オオバン」。

くちばしから額にかけて白いのが特徴で、近頃日本各地で急増している鳥だ。

そしてこちらは「ヒドリガモ」だろうか。

ユーラシア大陸北部やアイスランドで繁殖し、冬になると渡ってくる冬鳥だ。

しかし、種類の違う冬鳥がなぜかグループを形成して留鳥たちとは一定の距離を保っているのはなぜだろう?

まだ数は多くないので井の頭池が混み合うことはないが、冬鳥と留鳥の関係が少し気になった。

本格的な紅葉シーズンはまだ先だが、一足早く「アキニレ」の葉っぱが色づいていた。

抜けるような快晴。

日差しが届くところは暖かいが、木陰では途端に肌寒さを感じる。

桜や梅はすでに葉を落としている。

樹木によって季節の進み方はずいぶん違う。

そして、様々な樹木がどんぐりの季節を迎えている。

これは「カシ」の木だろうか?

どんぐりの形を見て、樹木の名前がわかるようになりたい。

「コナラ」の木の下には、もうたくさんのどんぐりが落下していた。

井の頭公園の植物観察を始めて早いもので10ヶ月が経った。

澄み渡った青空の下、すっかり白くなった富士山がマンションからくっきりと見えるようになった。

秋、清々しい季節。

コロナに翻弄され日常が奪われた2021年も残り2ヶ月余りとなった。

そろそろ冬支度をしながら、来年の計画でも立ててみようかと思っている。

<吉祥寺残日録>トイレの歳時記❄️七十二候「款冬華(ふきのはなさく)」に「大寒」の井の頭公園を歩く #210120

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