<吉祥寺残日録>トイレの歳時記🌾七十二候「菊花開(きくのはなひらく)」にセイタカアワダチソウの黄色い花が満開だ #211013

10月に入って異常に暑い日が続いていたが、昨日あたりから少し秋らしくなってきた。

今日から暦の上では寒露の次侯「菊花開(きくのはなひらく)」という季節に入る。

その名の通り「キクの花が咲き始める頃」ということらしく、母の付き添いにスーパーマーケットに行った時にはお花のコーナーでは菊の花が存在感を発揮していた。

菊はもともと中国原産で日本でも大変愛好家の多い人気の花だったが、どうも葬式やお墓のイメージがあるせいか近頃では以前ほど見かけなくなった。

近頃では、こんな丸い花をつける菊もあることを初めて知った。

「ピンポンマム」という品種で、オランダで品種改良されたらしい。

確かに従来の菊に従来の菊に比べてポップな印象だが、個人的には好みではない。

江戸時代の園芸ブームのせいか、菊の種類は実にたくさんあるが、代表的な菊の色といえばやはり黄色だろう。

しかし、岡山で畑仕事などしていると、この季節黄色い花といえば「セイタカアワダチソウ」が真っ先に浮かんでくるようになった。

見渡す限り続く黄色い花の絨毯。

これが菜の花ならばみんな記念撮影をしたりするのだろうが、農地を埋め尽くしているのは要注意外来生物の「セイタカアワダチソウ」である。

農地だけでなく、河川敷や道路端でも黄色い花が今まさに満開だ。

この「セイタカアワダチソウ」、北アメリカ原産で日本に最初にやってきたのは観賞用だったというから驚きだ。

そして戦後米軍が運び込んだ物資によって一気に拡散し、今では菊を上回る「秋の花」になってしまった。

厄介な雑草だと思うと鬱陶しくなるが、菜の花やひまわりと同じ気持ちで鑑賞すると違った風に見えてもくる。

カナダではこの「セイタカアワダチソウ」から「ゴールデンロッドハニー」と呼ばれる蜂蜜を取るのだそうだ。

妻との間では、耕作放棄地となっている我が家の畑に2人が好きな「ミモザ」の木を植えようという話も浮上したが、こうして「セイタカアワダチソウ」の黄色い花を見ていると、どこか「ミモザ」に似ているように思えてきた。

わざわざミモザを植える気がすっかり萎えてしまった。

「セイタカアワダチソウ」は、去年初めて自分で草刈りを始めて以来、私にとって最大の敵である。

今日も朝からこの天敵との戦いがあった。

こちらが我が家の畑。

今朝も6時に起き出して黙々と草刈りに励んだ。

中でも私の身長を遥かに超える高さ3メートル超の「セイタカアワダチソウ」を駆除することは絶対的な使命だった。

「セイタカアワダチソウ」は、根から周囲の植物の成長を抑制する化学物質を出す。

今日では「アレロパシー」と呼ばれる植物の排他的な生態だが、これによって「セイタカアワダチソウ」は他の植物を排除して自らのコロニーを広げていく。

しかし草刈機で雑草を刈る時、「セイタカアワダチソウ」は比較的切りやすい。

むしろ厄介なのは、草刈機に絡みつくイネ科やマメ科の植物である。

「セイタカアワダチソウ」の茎は太くて硬いが、草刈機で刈り倒す作業は以外に面白く、ある種のエンターテインメント性を感じる。

そうして「セイタカアワダチソウ」が切り倒された畑では、荒れた印象がかなり薄らいだ。

とはいえ、1つの畑の半分ほどを刈っただけ。

まだまだ雑草との戦いは続く。

朝食を取るために一旦家に戻り、休憩後に向かったのはやはり耕作放棄地となっているブドウ畑。

こちらにも「セイタカアワダチソウ」もたくさん生えているが、この畑で優勢なのは「ヒメムカシヨモギ」だった。

この外来植物は通常高さ1〜2メートルと書いてあるが、我が家の畑では2メートルよりずっと高く成長している。

「セイタカアワダチソウ」よりも早く花が咲き、今は綿毛を持つ種子を撒き散らす時期だから余計にたちが悪い。

「木製トンボ」という昔の農具を使って、この「ヒメムカシヨモギ」や「セイタカアワダチソウ」を押し倒しながらブドウ畑の中に分け入っていく。

「ヒメムカシヨモギ」は図体はでかいのだがその多くはすでに茎が枯れ始めていて、農具で押すだけで比較的簡単に倒れる。

その代わりに、草の天辺に大量に付いている細かい種子が頭上から降ってくるのには閉口した。

よほどこの畑の栄養状態がいいためか、大量の綿毛が団子のように固まった「ヒメムカシヨモギ」も結構あって、草を押し倒すごとに息をするのも躊躇うほどの種子が周囲に拡散する。

幸い私は数日前にホームセンターで見つけた蚊除けネットがついた帽子をかぶっていたので、そのネットが綿毛をブロックしてくれて辛うじて呼吸することができたがやはり自然の生存本能というものは凄まじいばかりだ。

こうして汗だくになりながら雑草と格闘した結果、お昼までにはこのブドウ畑の半分を制圧することができた。

雑草が押し倒された畑では、無残に腐ったままぶら下がるたくさんのブドウたちが姿を現したのである。

「セイタカアワダチソウ」と「ヒメムカシヨモギ」。

私を苦しめる巨大雑草たちについて調べていると、どちらもキク科の植物であることに気づいた。

「菊花開(きくのはなひらく)」。

なるほど、この季節には普通イメージする菊以外にも、キク科の植物たちが存在感を発揮する時期なのだ。

雑草との戦いはまだまだ終わりそうにない。

<吉祥寺残日録>月一農業2020年5月/マイ草刈機を買う #200521

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