<吉祥寺残日録>トイレの歳時記❄️七十二候「乃東生(なつかれくさしょうず)」、冬至に畑の「寒起こし」に挑戦する #211222

今日は二十四節気の「冬至」、日の出から日の入りまでの時間が一年で一番短い日である。

昨日ほどではないが、先週末の寒さと比較すると暖かな冬至となった。

朝のうちは快晴で、電柱のてっぺんに巣を作っているらしいスズメが鳴いていた。

日差しが暖かく感じられて、なんとものんびりとした気分。

やはり都会とは何かが違う。

冬至の初候は「乃東生(なつかれくさしょうず)」という。

「カコソウ(夏枯草)が芽を出し始める頃」という意味だそうだ。

「夏至」の初候が「乃東枯(なつかれくさかるる)」であるのと対をなしているのだが、この「なつかれくさ」は「ウツボグサ」と呼ばれ、こんな小さな野草である。

この写真を見ながら、お墓の近くに咲いていたような気がして確かめるためにもう一度お墓に行ってきた。

しかし、違った。

咲いていたのは、こちら。

墓の周りに咲いていたのは「ホトケノザ」だった。

「ウツボグサ」と似ているが、やはり違う。

6月のブログを見返すと、畑に「ウツボグサ」が咲いていたという記述とともに私自身が撮影した写真が記録されていた。

「ウツボグサ」はこの季節に発芽し、4月ごろに茎を伸ばし、そして6月から8月にかけて花を咲かせる。

そして枯れかかった頃に天日干ししたものは「夏枯草」と呼ばれ漢方薬として利用されてきたらしい。

そんな冬至の一日、私は桃の木が植えられた畑にミニ耕耘機を持ち込み、「寒起こし」に挑戦した。

寒起こしとは、一月中旬のもっとも寒いころに、地表から30㎝くらいの土を粗く掘り起こして寒い空気にさらす事で土の中の病原菌や害虫を死滅させること。

今日は暖かかったが、週末にはまた氷点下の寒さがやってくるというので、とりあえずやってみることにした。

10月に購入したガスボンベで動くミニ耕耘機。

軽量で持ち上げて運ぶことも可能なので、アクセス道路がないこの畑を耕すにはうってつけの一台だ。

以前、この畑をクワを使って耕したことがあるが、それはそれは大変で、体力づくりにはいいかも知れないが、とても広い面積を耕すのは無理だと感じ、妻の反対を押し切ってこのミニ耕耘機を購入した。

この畑はつい先月までは耕作放棄地となって、一面に雑草が生い茂っていたので、草刈りを終えた今も雑草の根っこが縦横無尽に地中を這い回り、耕耘機の作業を妨害する。

特にイネ科の雑草の根は強力で、耕耘機がその根にぶつかると弾き飛ばされるように飛び跳ねる。

それでも1時間半ほど作業をして、桃の木が植っていない部分およそ100平米を耕した。

本来の「寒起こし」は、スコップなどで土を大まかにひっくり返し地下の土を寒気にさらすもののようだが、あれだけ雑草が繁茂していた畑なので、スコップなどでは歯が立たないと判断したのだ。

地下茎に翻弄され、耕耘機のローターにはすぐに強力な雑草の根が絡みつく。

その都度耕耘機を止めて、ローターに絡まった根を取り除かなければならない。

草の根というものは想像以上にしぶといもので、手では容易に除去できない。

ハサミを使って根を少しずつ切りながら取り除く作業も結構大変で、時間がかかる。

そうして耕し終えた畑には、掘り起こされたり切り刻まれた雑草の根が散乱しているが、中には耕耘機の襲撃を凌いでしぶとく地中に根を張り続けている猛者もいる。

今年は文字通り雑草との戦いだったが、最後の最後まで雑草は私を苦しめた。

来年はこまめに雑草を退治して、作物に集中できるようになりたいものだ。

ついでながら、家の前にある富有柿にまだ結構な数の実が残っていたので、手が届かない上の方の実を取るため、枝ごと切ることにした。

これは実をとることを目的にしたというよりも、柿の木が高くなりすぎて実を取るのが大変なため、一番高い枝を4本ノコギリで切ることにしたのである。

木のてっぺんあたりには多くの柿の実が残っていたため、たくさん収穫できた。

半分ほどは熟しすぎていたり、鳥がつついて割れていたりしたが、残りの半分はまだ実がしっかりしていた。

夕食の時、妻が何個か皮を剥いてくれたが、甘くて先月よりも美味しくなっている。

柿というと秋のイメージだが、12月の柿も捨てたものではない。

夜、昨日摘んできた柚子を風呂に浮かべてゆず湯を楽しんだ。

それにしてもなぜ、冬至にゆず湯なんだろう?

調べてみると、日本には古来より「季節湯」という風習があったという。

「季節湯」とは・・・

四季折々の旬のものを取り入れたお風呂のこと。 旬の植物を湯船に浮かべることで、そのパワーを全身で享受しながら季節の変化を楽しむ、日本に古くから伝わる入浴文化。平安時代に弘法大師・空海が医療用の薬湯として「薬草風呂」を広めたのがルーツとされています。

引用:暦生活

そしてゆず湯については、こんな由来があるそうだ。

昔から「冬至にゆず湯に入ると風邪をひかない」とされてきましたが、その始まりは江戸時代だと言われています。当時の銭湯が、お客さんを呼び込むイベントとしてゆず湯を始めたのがきっかけとなり、冬のお風呂の定番となりました。

引用:暦生活

要するに、江戸時代の知恵者が編み出した、バレンタインのチョコに似た風習ということのようである。

そんな風に考えると風情もなくなるが、それでも風呂に入りながら柚子の香りを嗅ぐと、やはり悪い気はしない。

季節に敏感な日本人の知恵。

先人たちが残してくれた素敵な風習を楽しまないのは日本人としてもったいない。

いろいろ学ぶところの多い、今年の冬至だった。

<吉祥寺残日録>月一農業2021年6月/4月の草刈りを無意味にする雑草の成長力 #210625

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