今日で猛暑の7月も終わる。
連日の熱戦に釘付けとなったサッカーW杯が終わった途端、サッカー界では、前代未聞の騒動が巻き起こっている。

騒動の発端となったのは、ワールドカップでも露骨な政治介入で物議を醸したこの2人。
アメリカのトランプ大統領とFIFAのインファンティノ会長である。
サッカーが世界中を巻き込んだ巨大ビジネスであることに目をつけ、もっと儲ける方法を考え出した。
FIFAが子会社、FIFAフォワード・エンタープライズ(FFE)を設立し、商業活動やワールドカップを含む大会運営を委譲、新会社の評価額を200億ドルと見積もり、その20%を外部投資家に売却するという案を発表したのだ。
この計画が実現すると、最大42億ドル(約6900億円)の外部資金を調達することができるというのだが、子会社設立にあたり米金融大手JPモルガン・チェースと提携、米投資会社スライブ・エターナルが投資家集団を主導するという。
そしてこの投資会社スライブの経営者は、トランプ米大統領の娘婿の弟、ジョシュア・クシュナー氏ということで、トランプ氏が背後で関わっていることは間違いなさそうである。
もともとFIFAは非営利組織であり、これまでサッカー界を牽引してきたヨーロッパ諸国は強く反発、次回W杯のボイコットも辞さない姿勢だ。
ただトランプさんならば、アジアやアフリカの国々を脅したりすかしたりして過半数の賛成を取り付ける可能性もある。
ルールが支配する国際スポーツの世界に、アメリカ的な商業主義を露骨に持ち込む動きはこれまでになかったことで、急速に進む世界の劣化に暗澹たる気持ちになるニュースであった。

一方、ワールドカップ後の私の楽しみとなったのが、大相撲名古屋場所だった。
先場所を休場した両横綱も顔を揃え、大関霧島の横綱挑戦、ケガで関脇に陥落した安青錦が10勝して大関復帰なるかなど、最近ではないほど注目度の高い場所である。
しかし、序盤から両横綱が不甲斐ない。
特に2場所連続で休場した大の里は、横綱らしからぬオドオドした土俵が続き、早々に優勝戦線から脱落してしまう。
それに対して、足首のケガがまだ完治していない安青錦は連日の必死の相撲でしぶとく勝ち星を積み上げていく。

千秋楽、2敗で単独トップに立っていた安青錦が3敗で追う関脇熱海富士に敗れる。
その結果、安青錦と熱海富士に加えて3敗で並んだ大関霧島も加わって、3人による優勝決定巴戦となった。
これだけの実力者が揃った巴戦は実に久しぶりのこと。
大相撲ファンとしては、最後まで予想がつかない千秋楽となった。

注目の巴戦は、まず熱海富士が霧島を圧倒し初優勝に王手をかけるが、巨体で突進してくる熱海富士を今度は安青錦が持ち前の低い姿勢でしぶとくかわし勝利をおさめる。
満身創痍の安青錦は続いて大関霧島も破って3度目の優勝を決め、合わせて来場所からの大関復帰も勝ち取った。
何という精神力だろう。
戦争が続く母国を離れ単身日本で相撲に打ち込む安青錦には、平時に生きる日本人にはないハングリー精神があるように感じる。

そういえば、4年目に入っているウクライナでの戦争は、ここに来てウクライナによるロシア国内へのドローン攻撃が効果を発揮し始めており、戦局に変化が生じているらしい。
ロシア軍による侵攻が始まった当初、世界中がウクライナの敗戦を予想した。
世界戦争に発展することを恐れたアメリカは、ウクライナが求める長距離兵器の供与を拒み、戦争地域をウクライナ国内に限定しようとしたが、ウクライナ国民は不屈の精神でこの苦境を乗り切り、自前のドローンを開発してロシア国内への攻撃が可能となったのだ。
今やウクライナ製の軍事ドローンは世界の軍事関係者の注目の的であり、活況を呈する軍事ビジネスの世界ではウクライナの存在感が増しているという。

イランの最高指導者ハメネイ師殺害から始まったアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃もこう着状態が続いている。
ネタニヤフ首相の口車に乗せられて電撃勝利の夢を抱いたトランプ大統領は、イランの切り札であるホルムズ海峡封鎖に有効な打開策を見出せず、戦争をやめたいのにやめられないジレンマに陥った。
「アメとムチ」を使い分け、なんとか出口を見出そうとするが、筋金入りで強かなイランを前にお得意のディールがなかなかうまくいかない。
トランプさんのやり口は所詮不動産屋のハッタリばかりで、マーケットが揺らぐと振り上げた拳をすぐに下ろしてしまう場当たり的なものでしかない。
こんな男に、世界が振り回されているのかと思うとなんとも情けなく、教養が軽視され拝金主義が横行するネット社会の行く末が案じられてならないのだ。

そんなモヤモヤした世界情勢の中で、国内に目を転じると、圧倒的な数の力を背景に高市政権による「国論を二分する」政策が着々と進められている。
先日閉幕した特別国会では、旧宮家の男系男子を養子に迎えることを認める皇室典範の改正案や国旗損壊罪法が成立、総理大臣のもとでインテリジェンス機能を強化する国家情報局の設置も決まり、31日早速発足したという。
これらは高市自民党の政権公約であり、それを国民が支持したのだから、民主主義国家である以上ある意味やむを得ないことではある。
しかし、自民党を含め戦争を知る世代の政治家たちがあえてこうした問題に手をつけようとしなかったのは、愛国心を鼓舞して国家統制を強めた結果、悲惨な敗戦に繋がったという戦前の深い反省があったからだ。
その世代はすでに国会から消え去り、日本も「普通の国」を目指すようになった。

これらの右派的なというか、どこか復古的な法律が成立したからといって、直ちに日本社会が大きく変容するとは思わない。
ここに来て、高市政権の支持率が下降していることは、国民の中に違和感を覚える人がかなりの数存在するという証なのだろう。
ただ、この手の法律は将来悪用される危険性がある。
アメリカにトランプ氏のような大統領が誕生したように、日本にもあらゆる法律を悪用して己の野心を実現しようという暴君が誕生する危険性は常にある。
戦前に、共産主義運動を取り締まるために制定された治安維持法が拡大解釈されて言論弾圧に利用され、もの言えぬ社会へと転落したようなことが再び起きる危険性があるのだ。
私は、昭和、平成、令和の歴代天皇が、平和憲法に記された「象徴天皇」の具現化のために弛まぬ努力をされたことを大いに評価し尊敬する者である。
しかし、今回の皇室典範改正を推し進めた人たちは、そんな国民に受け入れられた「象徴天皇」を捨て、神話の世界に彩られた明治の天皇制に戻そうと考えているように見える。

歴史を振り返れば、天皇は常に時の権力者の都合で利用されてきた。
江戸幕府を倒すために薩長の下級武士たちが、一部の公家と組んで若き明治天皇を利用した明治維新もその典型である。
高市さんたち保守派と呼ばれる議員たちが唱える「万世一系」の神話とて、所詮は江戸時代に作られた概念なのだ。
そもそも、男系男子にこだわるのは彼らが嫌う中国由来の儒教の考え方であって、日本の古代社会においては卑弥呼をはじめ女性が呪術的な力を持って指導者となっている。
男系男子の論拠となっている「日本書紀」とて、儒教の影響が日本に浸透した8世紀に書かれたものであり、神武天皇をはじめとする初期の天皇は、その時代の創造された神話にすぎない。
私は、現在の天皇家のルーツである継体天皇も、朝鮮半島から日本海沿岸に渡ってきた渡来人の子孫だったのではないかと考えており、よくわからない神話を信じるよりも、今の国民に広く受け入れられて愛されている皇室を大切にする方が、長い目で見ると保守派が目指す天皇制維持に資するのではないかと考えるのだが・・・。
いずれにせよ、そんな日本の国柄にも影響を及ぼすであろう法案は、女性天皇や女系天皇の議論もなく、国民に広く意見を聞く公聴会もないままに可決されたのである。

そうしてモヤモヤとした国会が閉幕するのを待っていたかのように、再び熊本で大きな地震が発生した。
活断層が引き起こした最大震度7の地震は、10年前の熊本地震よりも少し南のエリアを襲った。
製紙工場の煙突が倒れ、高速道路にも亀裂が走る。
被災して避難を余儀なくされた住民たちを、容赦なく連日の猛暑が襲っている。
寒い時期の災害も辛いが、暑い時期の地震も命に直結する危険が高い。

中でも衝撃的だったのは、地域の防災拠点ともなっていた「イオンモール熊本」で起きた爆発事故だった。
多くの人で賑わっていた巨大ショッピングモールが、地震発生から80分後に突然大爆発を起こしたのだ。
LPガスの配管が地震によって損傷したことによるガス爆発と見られているが、その破壊力は凄まじく、上空からのライブ映像を見た瞬間、とんでもない数の犠牲者が出ているのではないかと心配した。
しかし、地震大国日本の実力というべきか、地震直後に全ての買い物客は施設の外に誘導されていて大惨事は免れた。
とはいえ、被害の確認のためか逃げ遅れを探していたのか、建物内部に残っていたテナント従業員の人たちが犠牲となった。

その後公表された内部の映像は、目を疑うほどの凄惨さだ。
煌びやかなショッピングモールが、まるで福島原発のような惨状である。
数人の怪我人が救助されたけれど、爆発で即死した人たちがどこに埋まっているのか、それを見つけ出すのは容易ではなさそうだ。
巨大地震は、毎回毎回私たちに新しい被害の形を見せつけてくる。
まさか、地震発生から時間が経ってからこれほど大規模なガス爆発が起きるとは、専門家でもほとんど想像していなかったという。
人間の経験や知識など、自然災害の前では限界があり、100%安全を確保することなど不可能だと今回も思い知らされた。
この春、思い切って築50年超のマンションから築浅のマンションに引っ越したことで、やはり安心感が違うと熊本から届く映像を見ながら思っている。

とはいえ、津波や大規模な火災が起きなかった今回の地震では、その破壊力を考慮すれば被害は少なかったとも言える。
古い古民家は各地で倒壊しているものの、新しい住宅の被害は多くない。
道路や鉄道、ライフラインなどにも被害は出ているが、壊滅的というほどではなさそうだ。
地震が起きるたびに絶え間なく続けてきた国土強靭化の試みは、決して無駄ではなかったということだろう。
閉幕した特別国会では、石破内閣が提唱した防災省の設置法案も無事に可決成立した。
高市内閣がどこまで防災省を役立つ組織に作り上げてくれるかも、個人的には関心があるところだ。

そういう意味で言えば、今回も被災者の扱いについて、私は強い違和感を感じている。
首都直下や南海トラフ地震に比べれば被災者の数は限定的な今回の規模の地震でも、被災者たちは電気もない水道もない過酷な状況の中で避難生活を送っている。
でも冷静に考えてみれば、被災地域の一歩外に出た地域では電気も水道も普通に通っていてクーラーも使えるのだ。
能登半島地震の時に遅ればせながら行われた「広域避難」をなぜ実施しない?
残念ながら今回の地震ではまだ、政府からも自治体からも、なぜかメディアからも「広域避難」という言葉は聞こえてこないのだ。
仕事などで地元を離れられない人たちは仕方がないとしても、高齢者や子供たちなどは政府自治体が音頭をとって熊本県内や近隣の県に避難させてあげるべきだと私は歯痒い思いを抱きながらテレビの報道を見つめている。
ちょうどお盆シーズンで宿泊施設の確保が難しいかもしれないけれど、クーラーや水道が使える避難場所を確保することは決して難しいことではないだろう。
避難所の体育館に簡易クーラーを運ぶのも結構だが、被災者にはよく多くの選択肢を用意することが望ましく、大きな災害が起きるたびに「広域避難」が一つの常識になればいいと思う。

いろいろあった7月が終わる。
この1−2ヶ月、我が家でもいろいろあった。
息子家族のサポートをするため、岡山にもなかなか行くことができなかった。
その間に、収穫されないままのキュウリは巨大化し、黄色く変色し、とても食べられる状態ではなくなってしまった。

それでも自然の力というのは凄まじいもので、猛暑の中、水やりも一切せず、雑草が生い茂った畑の中で、トマトやナス、パプリカやスイカが逞しく実をつけていた。
もちろん、実の重さに耐えかねて支柱をはずれ地面に茎を横たえながらも、何本かの枝を上に伸ばして子孫を残そうと頑張っていたのだ。
腐った実は見捨てて、食べられそうな実だけを選んで東京に持ち帰った。
トマトもスイカも、スーパーで売ってるやつよりずっと美味しいと妻は喜んでくれた。
自然の生命力には、本当に驚かされるばかりである。

東京では、毎日自転車に乗って新居の周辺を走り回っている。
私のお気に入りは、石神井公園。
これまで我が庭のようにしてきた井の頭公園に比べて自然がより残っていて、池の周りに整備された木道は、周囲の木々が強い陽射しを遮ってくれるため猛暑の中でも多少涼しく散歩が楽しめる。
長く東京に暮らしていても、まだまだ知らない場所だらけだということを再確認する毎日である。

そしてこの夏私の新たな習慣となったのが、武蔵野市営プールである。
スマホは持ち込み禁止なので、ネットから写真を拝借したが、ここには屋内プールだけではなく夏限定オープンの屋外プールもあり、これが最高なのである。
私は引越ししたためもはや武蔵野市民ではなくなったけれど、市外の人でも利用することができる。
通常市外の住民は入場料400円でシニア割引もないのだが、屋外プールが営業している夏の時期には2時間200円で屋内も屋外のプールも利用可能なのだという。
自転車を漕いで汗だくで家に戻ると、そのまま水着に着替えて、歩いて5分の市営プールに向かう。
引越し前、武蔵野市民だった頃よりも練馬区民となった今の方が武蔵野市営プールがずっと近くなったというのは不思議なものだ。

しかし、この素晴らしい市営プールが来年度には建て替えのため一時閉鎖になると張り紙があった。
「市営プールが新しくなります」
そんな張り紙を見て一時的に喜んだものの、よく見ると建て替えに伴って私の好きな屋外プールは廃止されるらしい。
確かに夏季だけしか営業しない屋外プールを維持管理するのは、行政としては効率が悪いのだろう。
それは理解できるが、やはり夏には屋内よりも屋外の太陽の下で泳ぎたいものである。
しかしすでに計画は決定済みで、しかも私は今や武蔵野市民ですらない。
文句を言う資格すらないよそ物である。
それならそれで割り切って、屋外プールが使える今年はせいぜい利用しまくって、思い残すことがないように嫌というほど名残を惜しみたいと思う。
明日から8月。
まだまだ暑い夏は続く。