2026年のお正月に当たり、次の言葉をブログに記しておきたい。
「平和に、自由に、のんびりと」
民主主義と国際協調の流れが大きく変化し、独裁者たちが力を誇示して我が物顔で振る舞う帝国主義的な風潮が強まる中で、子孫たちに語り伝えたい私の信条をこの言葉に託す。
2026年の元旦。
ここ数年、快晴で東京都心から昇る初日の出が拝めたのだが、今年は東の空に雲がかかり、日の出時刻に太陽を見ることはできなかった。
不吉な一年の始まりなのか?
そんな不安が心をよぎる。
例年通り、井の頭池にかかる七井橋の上には初日の出目当ての人々が集まっていたが、午前7時になっても太陽が顔を出すことはなく、冷え冷えとした空気の中で東の空を見つめる辛抱の時間が続く。
それでも、待てば海路の日和あり。
7時を回った頃から雲の切れ目に光が届き始め・・・
井の頭池がオレンジ色に染まってきた。
これはこれで、美しい夜明けである。
ようやく2026年最初の太陽が雲の切れ間から顔を出したのは、日の出時刻から30分以上経過した午前7時25分。
吉祥寺に引っ越してから10回目となる初日の出である。
そして、これがこのマンションから拝む最後の初日の出となるだろう。
昨年の暮れ、10年間暮らしたこのマンションを売却して、築浅のマンションに引っ越すことをバタバタと決断した。
引っ越しは春の予定。
東京とは思えないこの絶景とも、あと少しでお別れである。
その後、天気は急速に回復し、妻と連れ立って、いつものように井の頭公園内にある弁財天に初詣に出かける。
予想したよりも長い列ができていたので、今年は参拝を見送り、本堂の裏にまわる。
吉祥寺に引っ越してから毎年続けてきたお正月の恒例行事。
弁財天の裏側にある「銭洗い弁財天」でお札を水で洗うのである。
毎年こうしてお札を洗っているおかげもあって、年金暮らしになった我が家の家計は今のところ問題なく回っている。
お札を洗い終わると、本堂の正面に戻っておみくじを引く。
ちゃんと参拝もせず、銭洗いとおみくじだけというのはいかにも不信心ということなのか、今年の私の運勢は過去10年で最低のようである。
「凶」ではなかったものの、結果は「半吉」。
『このみくじにあたる人は、よろづつつしみふかくすべし』とある。
『よろこびことすくなし』
さらに・・・
『たび立、十分考えて後せねばわるし』
この10年、私の生活の中心であった旅も、今年は縁起が悪そうである。
この御宣託、私の心の中に共鳴するものがあった。
去年、マレーシア、シンガポール、フィリピン、中国、オーストラリアと戦後80年に合わせて日本軍が蹂躙した戦跡を旅したのだけれど、最後に訪れたソロモン諸島のガダルカナル島から帰国した後、不思議なことに海外旅行熱が冷めていくのを感じていた。
南太平洋に浮かぶソロモン諸島で、私が訪れた外国の数がちょうど108カ国となったのだが、「108」という数字が象徴するように除夜の鐘と共に私の中にあった煩悩が消えたのだった。
「108」という数字は、単純に除夜の鐘のイメージがあるが、調べてみるととても不思議な数字であることがわかる。
数珠の玉の数、正五角形の内角、ヨガのマントラ数、サンスクリット語のアルファベット数、そして煩悩の数・・・。
私の海外旅行熱が突然冷めたのも、「108」の持つ不思議なパワーによるものかもしれない。
ということで、2026年は少しおとなしく過ごし、引っ越しが最大のイベントとなりそうである。
昨年から始めた1日5キロ歩き5キロ自転車に乗るルーティーンは今年も継続するつもりだ。
初詣の後、元日から井の頭公園や玉川上水を歩いた。
歳をとると、年齢に相応しい生活に徐々に移行する必要があるのだろう。
2日には、例年通り今年も息子たち家族が全員吉祥寺に集まって、総勢14人で焼肉を食べ、食後はマンションのゲストルームを借りて孫たちとゲームに興じた。
来年には、一番上の孫は大学受験ということで、孫たちの成長の早さには驚くばかりだ。
その日の夜、三男一家が我が家に宿泊。
三男も今年の春には三鷹に引っ越してくる予定で、一家が我が家に泊まるのもおそらく今年が最後になるだろう。
一夜明けて3日、リフォーム中の三男のマンションを訪れ、妻がプレゼントしたチューリップの球根を専用庭の隅に植えた。
小さなスコップしか道具がなくて、土づくりもしていないのでチューリップが咲くかどうかわからないけれど、3歳になった孫が土いじりを楽しむ姿を眺めながら、この子たちの未来が平和であればと願ったお正月三が日であった。
そんな平穏なお正月も私の願いも、3日の夜、あっけなく吹き飛んだ。
南米ベネズエラで複数の爆発が起きたというのだ。
仕掛けたのはまたあの男、アメリカのトランプ大統領である。
しばらくすると、ベネズエラの独裁者マドゥーロ大統領が米軍によって拘束されて国外に移送されたというニュースが流れた。
莫大な石油資源を有しながら、長年国民に貧困を強いてきた強権的な大統領には全く同情の気持ちは起きないけれど、曲がりなりにも国連に加盟する独立国家の元首を深夜に軍事力を使って拉致するというのはさすがにいただけない。
ベネズエラ政府は直ちにアメリカの軍事侵攻を非難して、マドゥーロ大統領の釈放を要求したし、多くの中南米諸国のほか、中国やロシア、イランなどがアメリカの行動を批判、国連も国際法に違反する疑いがあるとして懸念を示した。
その後の報道によれば、首都カラカスで就寝中に拘束されたマドゥーロ大統領夫妻は、米軍ヘリに乗せられカリブ海上で待機していたアメリカの軍艦イオージマに移され、キューバにあるグアンタナモ米軍基地に移送、そこから旅客機に乗せられてニューヨークに連行されて拘置所に収監されたという。
作戦にはアメリカ陸軍の特殊部隊デルタフォースが関与し、ヘリコプターを護衛するためにF-35ステルス戦闘機など150機が投入され、複数のベネズエラ軍の基地などが攻撃され一瞬で無力化されたらしい。
すさまじいばかりの米軍の破壊力。
私が現役時代に起きた1989年のパナマ侵攻作戦を彷彿とさせる。
反米軍事政権を率いる独裁者ノリエガ将軍を拘束したこの作戦は、私がディレクターを務めていた夜のニュース番組の放送直前に一報が飛び込んできたため、当日の編集長が大慌てして報道局が大混乱になった光景が今でもはっきりと思い出される。
作戦終了後記者会見を行ったトランプ大統領は、「安全で適切、賢明な政権移行が実現するまでその国を運営していく」と述べ、当面はアメリカがベネズエラの国家運営を担う考えを示した。
今回の電撃的な軍事作戦の表向きの目的は、アメリカへの麻薬流入を阻止するためとされてきたが、会見でトランプさんは「我々は世界最大級の米国石油企業を投入し、数十億ドルを投じて壊れた石油インフラを修復させ、その国に収益をもたらすようにする」と述べ、世界一の埋蔵量を誇るとされるベネズエラの石油資源をアメリカのものにする狙いを隠さなかった。
それはブッシュ親子が手がけたイラクに対する戦争と似た構図であり、過去の共和党政権が行なってきた「石油のための戦争」という一面もありそうだ。
トランプ政権は昨年12月に発表した安全保障政策の指針「国家安全保障戦略(NSS)」で、南北アメリカを縄張りとする19世紀の孤立政策「モンロー主義」への回帰を打ち出し、西半球への関与を強める戦略に転換したという。
すなわちバイデン政権時代とは異なり、ヨーロッパやアジアへの関与は必然的に弱まるということである。
民主主義陣営の盟主だったアメリカが率先して「力による現状変更」を行おうとした今回の軍事作戦は、ロシアや中国に軍事力行使の大義名分を与えるものであり、国際協調がまた一歩後退して剥き出しの軍事力が世界を支配する新たな帝国主義の時代を招く危険性を孕む。
トランプ大統領は以前から、ガザやグリーンランドをアメリカに支配下に置くなどと発言し、他国の領土を領土として認めない傾向が強かった。
パレスチナやデンマーク、さらには「アメリカの51番目の州に」と名指しされたカナダなどでは、ますますトランプ政権への警戒が高まるだろう。
トランプさんとの蜜月をアピールしてきた高市総理は、この件でまだコメントをしていない。
自国の利益のためには他国への軍事介入を厭わないトランプ政権の行動を容認すれば、日本が最も警戒する中国による台湾侵攻に対してもノーとは言えなくなってしまう。
モンロー主義に回帰しようとするアメリカをどこまで信用できるのか?
高市政権は年明け早々、難しい決断を迫られることになる。
『平和に、自由に、のんびりと』
こんな2026年の年始だからこそ、私はこの信条をこれまで以上に繰り返し発信していきたいと思うのである。
