<きちたび>東京銭湯&グルメ♨️ 下高井戸の「月見湯温泉」と世田谷線松陰神社前の「Pizzeria NeNe」 @銭湯

2月とは思えぬほど暖かな三連休。

兄弟間の意見が合わずストレスが溜まっている妻を誘って、馴染みのない街への散歩に出かける。

吉祥寺から井の頭線に乗って明大前駅へ。

京王線の各駅停車に乗り換えてお隣の下高井戸駅で降りる。

お目当ては、私も妻も乗ったことのない東急世田谷線に乗ること。

京王線はエスカレーターの設置が少なくて、膝の悪い妻は手すりにつかまりながら恐る恐る階段を降りると、そこには可愛らしい招き猫の電車が止まっていた。

2両編成の路面電車風の車内は予想以上に混んでいた。

周辺住民の利用が多いようだが、私たちのように三連休を利用して遊びにきた客もいるのだろう。

猫の吊革につかまり、揺れる電車の車窓から住宅街の景色を眺めた。

対向車とすれ違う。

こちらの車両は猫ではなかった。

世田谷線の車両は全部色やデザインが異なっているらしく、それはそれで愛らしい。

特別、目的地があるわけではないので、世田谷区役所にも近い世田谷駅で降りることにした。

私たちが乗ってきた猫の電車と緑の車両がホームに並んだ。

時刻は午後1時。

とりあえずどこかランチを食べる店を探そう。

世田谷駅を出ると、街灯には「世田谷代官お膝元」と書かれている。

このあたりにかつて彦根藩世田谷領の代官を世襲した大場家の屋敷があったことに由来するらしい。

そもそも世田谷という名前は武蔵野台地に刻まれた谷地だった「勢田」や「瀬田」に由来するというが、大正時代までは東京市にも含まれぬ田舎で、1907年に玉川電気鉄道が開通して以降ようやく開発が進み始めたという昭和の賜物なのである。

私も若い頃、世田谷区の端っこに小さなマンションを買った。

しかし新築マンションの1階は陽もなかなか差し込まず、乾ききらぬコンクリートの壁にはカビが生えて、幼子2人を抱えた妻は引っ越したばかりのマンションを出たいと言い出し、やむなくわずか3ヶ月で転出することとなった。

どうも我が家は世田谷と縁が薄いようだ。

世田谷駅の近くには妻の気に入るお店が見つからず、ぶらぶら歩きながら探すことに。

吉祥寺界隈と比べると、世田谷線周辺は飲食店が集中しておらず、通り沿いにぽつりぽつりとあるようだ。

暖かいのでお散歩は苦にならないけれど、なかなか妻が納得する飲食店は見つからない。

すると、行列ができた路地に出くわした。

地図で確認すると、世田谷線の松陰神社前駅に繋がる路地らしい。

安政の大獄で命を落とした吉田松陰を祀るために、その門人らが幕末にこの地に神社を建立したのだとか。

駅の周辺を行ったり来たりして店を探すが、妻はどうも納得いかない様子。

しかし歩き疲れたのか、私が気になったピザ店で妥協すると言った。

「Pizzeria NeNe」

三連休ということもあって、店内は満席で、電話番号を伝えて席が空いたら連絡してもらうスタイルだった。

だから行列ができていないのかなどと考えながら、15分ほど店の前で待ってようやく席に案内された。

お店の中はカジュアルで世田谷らしいオシャレな雰囲気だ。

吉祥寺に比べてお店が多くないことも手伝って、席が空けばすぐに次の客が入ってくる。

この界隈ではかなりの人気店のようである。

本格釜焼きピザが売りというこのお店。

2022年オープンというからそれほど歴史があるわけではないらしいが、店員さんの対応など洗練されていて待つのもさほど苦にならなかった。

妻が近頃ピザを好まないため、ピザ屋に来るのも久しぶりである。

ワインのセレクションの多い店だが、私はビールが飲みたくなり、ナポリ産だというクラフトビール「PULLICENHELL PALE ALE」(950円)を注文した。

妻はピザは少しでいいと言って「キャロットラペ」(500円)とコーヒーを頼んでいた。

そうこうしているうちに、ピザが運ばれてきた。

サラミやソーセージが入っていないのがいいという妻のリクエストで、選んだのがこちら。

「チポッラ」という名のトマトソースを使わぬピザで、モッツァレラ、赤玉ねぎ、アンチョビが入ったシンプルなチーズのピザである。

本格的なピザ窯で焼いたというその生地は塩味がしっかりしていて、焦げ目も美味そうである。

ピザの一片を皿に取ろうとすると、溶けたチーズが長い糸を引いた。

期待したほどアンチョビの味がしないのは物足りなかったものの、久しぶりのピザはやはり美味い。

せっかくなので松陰神社にお参りしてから帰ろうかとも思ったが、時刻もすでに2時半を回っていたので、妻は送って下高井戸の駅まで戻る。

初めて乗る世田谷線の小旅行。

それはそれで新鮮ではあった。

京王線下高井戸駅で妻を見送り、私ひとり銭湯が開くまでの時間、駅の周辺を散策することに。

下高井戸といえば、次男が大学時代、一人暮らしをした街である。

高校を卒業するタイミングで息子たちを家から出し、一人暮らしをさせるのはほとんど育児に関わらなかった私の唯一のこだわりだった。

18歳になったばかりの次男は、ひとりで不動産屋を回り、この街で古いアパートを見つけてきた。

私が息子たちに出した条件は、風呂無しのアパートであること。

月10万円の仕送りをするので、その中で家賃を賄い、残りのお金で生活することである。

今時の親は、子供を手放したがらない。

いつまでも家に置いて面倒を見ていると、独り立ちが遅れて自ずと結婚の遅くなる。

特に男の子の場合、母親から離れて不便な生活を経験することで家族のありがたみを知り、パートナーが欲しくなったりするものだというのが私の考えだった。

そのせいかどうか、3人の息子たちは20代半ばでそれぞれの伴侶を見つけ、完全に自立していった。

もちろん子供たちがいなくなるのを寂しく感じることはあるが、それも親の大切な責任だと私は今も信じている。

駅前の小さな商店街を通り抜けると、そこまもう世田谷の住宅街である。

次男が暮らしたボロアパートはもう取り壊されたのだろう、見つけることはできなかった。

テレビ局時代、一緒に働いたスタッフの多くもこの界隈に暮らしていた。

そんな閑静な住宅街の路地裏に、その銭湯は突然出現した。

その銭湯の名は「月見湯温泉」という。

正面はタイル張りの壁になっているが、少し下がって見上げると、銭湯らしい瓦屋根は今も健在だ。

午後3時半の開店時間を少し過ぎた頃うかがったのだが、すでに銭湯の前には自転車が並び、近所の人たちが集まっているのがわかる。

この銭湯、その名前の通り世田谷の地下から掘り出した天然温泉が特徴だ。

『温泉の成分は、メタケイ酸・フェロ・フェリイオン、「鉄分」を含み入浴すると肌触りがよく、身体が温まる温泉です。ストレス解消にも効果的で、リラックスできます。』

銭湯の入り口にはそんな説明書きが貼られていた。

入浴料550円を番台で支払い、男湯に入る。

ここからは月見湯温泉のホームページに掲載されている写真を拝借しながら。

脱衣所に入ると、すでに多くの先客があり大賑わいである。

三連休ということもあるのだろうが、私の予想を遥かに上回る繁盛ぶりである。

浴場には、富士山のタイル画が待っていた。

銭湯らしく天井が高く、まだこの時刻には窓から外の明かりも入ってくる。

男湯の中央には大きな湯船が設けられていて、すでに20人ほどの男たちで賑わっていた。

たまたま空いていたジェットバスに横たわって湯を楽しむ。

熱くもなくぬるくもなく、ちょうどいい湯加減である。

ちょうど首筋に当たる位置に金属製の枕があるのだが、どうやら中に冷水が入っているらしく冷たい。

首を冷やせということなのだろうが、私にはちょっと冷た過ぎて、その場を他の人に譲り、45度の熱湯風呂へ入る。

熱湯には長い時間は入っていられない。

熱った身体を冷ますために、今度は水風呂に入ってみる。

こちらは25度あるのだが、まるで氷水のように足を刺す。

でもよく見るとこの水風呂、ただの水道水ではなく、かけ流しの天然冷温泉だと書いてある。

これは、ありがたく浸からせていただろう。

そう思ってゆっくりと肩まで沈めていくと、熱くなった身体は適度に冷めて、じっと入っていても心地よく感じるようになった。

そうして適度に整った身体を今度は沸かした天然温泉の浴槽に浸ける。

浴場の一番奥、富士山のタイル画に面した角にその浴槽はあるのだが、人気が高くなかなか空かない。

一度に4人がちょうどいいくらいの広さで、そこにさらに人が入ってくると肩が触れ合うほどにぎゅうぎゅうとなる。

私は様子を伺い、手前の隅が空いたタイミングでそこに滑り込んだ。

湯の温度はちょうどよく、これなら長く入っていてものぼせることはないだろう。

だから回転率が悪いのかと妙に合点した。

浴場の隅にはサウナ室もあるのだが、そこを利用したければ入り口で500円追加で支払い、タオルや専用鍵をもらわなければならないルールのようだ。

しかし観察していると、人が出た隙にするりと中に入る不届者も目につく。

誰かが監視しているわけではないので、そこは一人一人の心がけ。

私は特別サウナが好きな人間でもないので、サウナ室には入らず、そのまま身体を拭いて浴場を後にした。

脱衣所は相変わらず混雑していた。

私のように風呂から上がった者もいれば、これから風呂に入ろうとする者もある。

脱衣所の脇には坪庭に面して椅子が置かれたスペースがあり、湯上がりにここで身体を冷ますのも気持ち良さそうに感じたものの、すでに裸の男たちがたくさん陣取っておりとても割り込む余裕はない。

諦めてそのまま服を着て、銭湯を出た。

時刻は午後4時20分を回っていた。

なんだかんだで銭湯で50分ほど過ごしたことになる。

駅に向かって商店街をぶらぶらしながら、一杯飲む店を探す。

地元に古くからあるたこ焼き屋や蕎麦屋にも惹かれたけれど、「これだ!」と心に響くほどの店はなく、結局適当なつまみがありそうな中華料理店に入った。

「中華料理 家宴」

調べると上野など都内にいくつか同じ名前の店があるようだが、チェーン店なのかどうかはわからない。

店内に入ると、いかにも街中華といった佇まい。

厨房からは中国語が聞こえる。

居酒屋の多くは午後5時以降に開店する店が多いので、私のように銭湯の開店に合わせて店を探す人間にとって昼間に営業している街中華はありがたい存在だ。

注文したのは、「揚げ鶏皮」(480円)と「極純マッコリ」(450円)。

中華なので紹興酒の方がいいかとも思ったが、マッコリにはずいぶんご無沙汰なので、反射的にそれを選んでしまった。

いずれにせよ手頃な価格で、風呂上がりに軽くやるにはちょうどいい。

塩とスパイスが効いた鶏皮は、期待通りの味。

さほど腹にもたまらず、マッコリとの相性も悪くない。

シニアになると妻と顔を突き合わせる時間も長くなるので、時々こうして別々の時間を作るのは夫婦関係を維持するためには重要だと感じる。

人の多い三連休は、吉祥寺から離れて買い物客が少ないこうした場所でわざわざ過ごすのも悪くないと感じた一日であった。

下高井戸「月見湯温泉」
住所:世田谷区赤堤5丁目36−16
営業時間:15:30~23:00
定休日:月曜・火曜
https://tsukimiyu.com/

「中華料理 家宴」
電話:03-6875-8322
営業時間:11:00 - 23:00
定休日:無休

「Pizzeria NeNe」
電話:03-6805-5219
営業時間:平日 11:30 - 14:30/18:00 - 22:00
     土日祝 11:30 - 15:00/17:30 - 22:00
定休日:木曜
https://www.instagram.com/nene_shoinjinjya/

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