🇯🇵秋田県/仙北市 2025年1月7日〜8日
期待しすぎると現地に着いてガッカリしてしまうことが少なくない。
しかし今回は期待通り、いや期待以上の素晴らしい秘湯体験だった。

旅に出る朝、すごい朝焼けを見た。
朝起きて窓から外を眺めると小雨が降っていたのだけれど、都心上空だけ雲の切れ間があって、ちょうどそこから太陽が昇ってきたのだ。
もうこのマンションに引っ越して9年になるが、これほど見事な朝焼けは滅多に拝めるものではない。
きっといいことが待っている。
そう思って吉祥寺を出発した。
目指すは、一度は行ってみたいと以前から願っていた秋田にある超人気の秘湯「乳頭温泉 鶴の湯」である。

秋田までは羽田から飛行機。
秋田新幹線を利用するのが一般的らしいが、今回は「ANAトラベラーズ」のサイトで偶然「鶴の湯」の空きを見つけ衝動的に予約したため飛行機で行くこととなった。
雪の季節の「鶴の湯」はなかなか予約が取れない。
公式サイトとなっている「日本秘湯を守る会」のホームページをチェックしても、冬の期間はたいていすでに満室で予約することができないのである。
ただし、ツアー会社が事前に押さえている部屋があるようで、今回は往復の航空券とセットで念願の宿に宿泊することができたのだ。

およそ1時間のフライトの末、秋田空港に到着したのは午前11時半。
秋田空港に降り立ったのは1983年の日本海中部地震の取材以来、実に42年ぶりである。
空港前のバス停に停車していたリムジンバスに乗り込んでJR秋田駅に向かう。
運賃は950円だった。

秋田駅周辺でランチを済ませ、13時6分発の秋田新幹線「こまち28号」に乗り込む。
「こまち」に乗るのは初めてだが、赤いボディーと黄土色の椅子が格好いい。
しかし、発車するとなぜか座席の反対方向に進んでいる。
次の大曲駅で進行方向が逆になるため、秋田〜大曲間は背中の方向に車両は進むということらしい。

新幹線の車窓には広々とした雪景色が広がる。
この日の秋田は天気が良くて、平地部分は田んぼが多いせいか、白い平地がずっと続く様は実に美しい。
途中、花火大会で有名な大曲と桜で有名な角館に停車して、3番目の停車駅「田沢湖」駅で新幹線を降りる。
料金は2820円。

田沢湖駅からは乳頭温泉行きの路線バス。
1時間に1本程度運行されていて、田沢湖駅を出発する時間を宿に伝えると最寄りの停留所まで迎えに来てくれる仕組みだという。

田沢湖駅前にはほとんど通行人もいないような田舎の駅なのに、乳頭温泉行きのバスは満員。
タイ人のグループなど外国人も目立つ。
だから出発するとすぐに、人熱でバスの窓ガラスはたちまち曇ってしまう。
日本一深い湖として知られる田沢湖のほとりを経由して、路線バスは山道に入っていった。

田沢湖駅を出発して40分ほど、「アルパこまくさ」という停留所でバスを降りる。
あらかじめ宿に電話しておいたので、停留所の前には「鶴の湯」の送迎車が待っていた。
私のほかに数名がこのバス停で降りたが、みんな「鶴の湯」に宿泊する客らしい。
乳頭温泉は7つの温泉宿の総称で、路線バスは他の客を乗せてさらに先の温泉宿へと進んでいく。

私たちが乗り換えると、「鶴の湯」の送迎車は路線バスの跡をついていくようにしばらく幹線道路を走る。
九十九折の上り坂を進むにつれて、雪が深くなっていく。
同じ秋田とはいえ、積雪のなかった秋田市とは全くの別世界だ。

眼下に一瞬、田沢湖が見えた。
水深423.4メートル。
日本一深い湖には、ちょうど雲の切れ間から光が差し込んでいて、とても神秘的な光景だ。

5分ほどバスの後ろを追走した後、送迎車は幹線道路を外れ、脇道へと入っていった。
ここから先には集落はなく、「鶴の湯」ともう一軒の温泉宿しかない。
そのため対向車はほとんど来ないが、路面には雪が積もっているため、運転手さんの運転が一段と慎重になった。

雪はますます深くなり、真っ白な壁が車窓を覆う。
レンタカーだと慣れない雪道に戸惑うところだろうが、送迎車の車内はポカポカ、やっぱり冬の温泉には慣れた人の助けを借りた方がいい。

10分足らず走ったところで、一軒の宿が見えてきた。
ここは「鶴の湯」の別館「山の宿」。
1組の中年カップルがここで降りた。
2つの内湯と1つの露天風呂があって、どれも貸切で利用できるためカップルに人気のお忍び宿らしい。

そして「山の宿」からさらに雪道を走ること7分ほどで、ようやく目的地である「鶴の湯 本陣」に到着した。
秋田空港到着からはすでに4時間近くが経過しており、やはり遠いみちのくの秘湯である。
宿の入り口には立派な雪のかまくら。
本物のかまくらを見たのはひょっとすると生まれて初めてかもしれないと思った。

宿の入り口に立つ2本の古びた柱には「田沢湖 乳頭温泉郷 秘湯鶴の湯温泉」の文字が刻まれていた。
その背後には建物の1階を覆い隠すほどの雪が積もる。

秋田の駅前には全く積雪がなかったのに、ここでは人の背丈を超えるほどの雪。
しかし、それはまさに夢見た通りの景色であり、はるばるここまでやってきた甲斐があったと、小躍りするほどに感動的だった。

まずは本陣の奥にある事務所に入り、チェックインの手続きをする。
入り口では、湧水を使って地ビールを冷やしていた。
受付を照らすのは、今では珍しくなった電球だ。

チェックインを済ませると、男性スタッフが部屋まで案内してくれた。
私が泊まるのは、本陣の向かいに建つ「三号館」。
一人客が宿泊できるのは、ここ「三号館」と棟続きの「二号館」だけだそうだ。
入り口の屋根には分厚く雪が積もっていて、宿泊客が通れる程度に雪かきがしてあった。

案内された部屋は、三号館の2階。
畳敷のシンプルな6畳間だった。
家具は最低限、天井からぶら下がった電灯がこれまたいい感じだ。

押入れを開けると、布団とシーツが用意されていて、自分で好きな時間に敷けばいいらしい。
窓の外は、雪景色。
主に従業員が使う建物のようだ。

いかにも鄙びた温泉宿という部屋ではある。
が、狭い部屋を暖めるには十分すぎるヒーターのおかげで寒さは全く感じない。
おまけに最近、部屋に金庫も設置されたそうで、お風呂に行く際に貴重品の心配することもなくなった。

三号館と二号館は廊下が繋がっていて、どちらも部屋にはトイレはない。
夜間多少不便を感じることもあるが、値段が一番安い部屋なので共同トイレでも致し方ないだろう。

洗面所は1階にある。
ここは暖房が十分ではなく、少し寒い上に水道から出る水が身を切るほどに冷たい。
なんだか、昭和に戻った気分が味わえる場所だ。

玄関には長靴が用意されている。
自分の靴は下駄箱に置いておいて、お風呂や食事に行く際には長靴を履いて出かける。

玄関を入ったところには「日本秘湯を守る宿」の提灯が。
鶴の湯は、「日本秘湯を守る会」に加盟する宿で、そのサイトから予約するのが基本なのだが、冬の期間はほぼ空室はなく、常連客はこまめに宿に電話をしてキャンセルが出るのを待つのだとか。
特に一番古い「本陣」の部屋が予約できることは奇跡に近いという。

二号館の1階には、日帰り客も利用できるスペースがある。
窓際にはストーブが置かれ、なんだか高倉健が出てくる雪国の映画のセットのようだ。
こうして館内を見て回るだけで、鶴の湯の魅力がひしひしと伝わってくる。

長靴を履いて外に出ると、ちょうど本陣の屋根で雪下ろしをしていた。
藁葺きの屋根にはあらかじめビニールが張られ、雪が落ちやすいように工夫されている。
それでもこまめに除雪しなければ、古い建物が押しつぶされてしまう。

まだ午後3時半を回った頃だというのに、山間の温泉宿はもう少し薄暗くなってきた。
本陣と三号館の建物の間を進んだ先には川が流れていた。
その川を渡った先に、鶴の湯の名を全国に知らしめている混浴の露天風呂がある。

ただし、有名な露天風呂のほかにも、鶴の湯にはいくつものお風呂があることをここにきて初めて知った。
メインの混浴露天とは別に、女性専用の露天風呂が2つ。
そのうち「中の湯」の露天は混浴露天に繋がっていて、お湯に浸かったまま男性客がいる大きな露天に移動することができるらしい。
そして「白湯」「黒湯」と呼ばれる源泉の異なる2種類の内湯も。

さらに事務所棟の奥、川沿いにも別の建物が立っている。
川を横切るように渡り廊下も設えてあり、どこを切り取っても絵になる宿である。
せっかくなので、こちらの建物も探検することにする。

こちらは、「一号館」「新本陣」「東本陣」と呼ばれる建物。
私が宿泊する三号館に比べるといささか新しくて立派な感じがする。

こちらの建物にある部屋は、少し広くて室内に洗面台や電話があり、2人以上でないと予約ができない。
中にはトイレや囲炉裏がついた部屋もあるそうだ。
つまり値段は少し高くても快適性を求めるという人には、こちらの方が良さそうである。

廊下からは下を流れる小川が見える。
長期の湯治客を対象にした三号館とは違い、こちらの建物は温泉リゾートの風情も併せ持つ。
もしも妻を連れてくるなら、こちらの部屋を選んだ方がいいだろうと思う。

川を渡る廊下の先には宿泊客専用の内風呂が設けられていた。
鶴の湯は昼間、日帰り客の受け入れもしているのだが、この内湯だけは対象外となっているらしい。

誰も入浴していなかったので中を覗くと、こんな感じ。
古びた木製の湯船でそれなりに趣もありが、窓は塞がれて景色を楽しむことはできない。
ただ、露天風呂にはシャワーはないので、最後に体を洗おうと思うとこの内湯も利用価値はある。

さらに階段を登って2階の廊下を奥に進むと、2つの貸切風呂がある。
予約制ではなく、行って空いていれば入浴中の札を出して中から鍵をかけるスタイルだ。

貸切風呂といえばカップル用で、一人で訪れている私には用はないと考えたが、2日目のチェックアウト前に覗いてみると、これが案外いい感じで、窓の外の雪景色も楽しめる素敵な内風呂だった。
お湯はぬるめで長時間浸かっていても大丈夫。
これはカップルにはたまらない素敵な空間だと感じた。

再び外に出て、川沿いを歩いてみる。
川の対岸に見えるのは「中の湯」。
名物の露天風呂に入る際、この「中の湯」の脱衣所を利用することになる。

三号館の裏手も見て歩く。
こちらは従業員用の建物が並び、いささか殺風景ではあるが、この先に「離れ」がいくつかあってそちらに宿泊しているお客さんもいるようだ。

こうして鶴の湯をほぼひと回りして、入口のかまくらに戻ってきた。
かまくらの中に入ってみると、正面には「水神様」と書かれたお札が納められた氷の祠が設えてあった。
スウェーデンで訪れた「アイスホテル」を思い出す。
さあ、かなり体も冷えてきた。
そろそろお風呂に入ろう。

露天風呂は撮影禁止なので、借り物の写真を使う。
こちらが鶴の湯名物「混浴露天」。
雪見温泉という特集記事などで頻繁に使われる日本有数の露天風呂である。
白濁していて、肌を刺すような刺激が全くなく、非常に柔らかいお湯だ。
温度は全体にぬるめで、長時間入っていてものぼせることはない。
むしろ手前の方がぬるすぎるぐらいで、熱湯が流れ込む奥に行くとちょうど良い温度になる。

日が暮れてくると、周囲の建物に明かりが灯り、ますます幻想的な雰囲気になってくる。
夕暮れ時は、至福の時間。
入る場所を時々変えながら、さまざまな角度から鶴の湯を満喫する。
露天風呂の底は砂利になっていて、ところどころから熱い湯が湧き上がってくる。
ちょうど背中の収まりがいい岩を見つけて、それにもたれてのんびりと体を癒す。
もうこの時間になると日帰り客はいなくなり、宿泊客だけが最高の時間を静かに味わうことができるのだ。

1時間ほど露天で過ごして、一旦上がることにした。
時刻はちょうど午後5時。
空が青から黒に変わる黄昏時の鶴の湯を写真に収めたいと思ったからだ。

雪に埋もれた山間の宿に明かりが灯る。
いつの間にか山影から月が顔を出し、雪景色に一段と趣を添える。
いやはやこれは美しい。

古い渡り廊下も、明かりが灯ると昼間の数倍も幻想的に映る。
本当にいい宿、そして最高の時間だ。
ANAのツアーでたまたま空室を見つけた幸運に感謝しなければならないだろう。

この時間、宿泊客は思い思いに食事前の時を過ごす。
露天風呂に隣接する内湯を覗いてみると誰も入浴していなかったので、写真を撮らせてもらうことにした。

こちらは「白湯」。
「美人の湯」「冷えの湯」とも呼ばれるこの湯は、文字通りに白く濁った含硫黄ナトリウム・カルシウム塩化物・炭酸水素泉だ。
ちなみに、名物の混浴露天にも同じ「白湯」が使われている。

一方こちらは「黒湯」。
見た目「白湯」と同じように見えるが、別の源泉から引き込まれていて、湯の成分も違うらしい。
季節や天候によって色が変わるというので、この日はかなり白い方だったのかもしれない。
いずれにしても、鄙びた風情のある内湯である。

そうこうしている間にあたりはすっかり暗くなってしまった。
でも、わずかな明かりが雪に反射して、それなりに明るい。
逆に余計なものが見えなくなって、雪国というイメージが強調されたようにも見える。

部屋に戻り布団を敷いて、冷えた体を温める。
ヒーターをかけっぱなしにしていたおかげで、部屋の中はぽっかぽか。
風呂に入ってはゴロゴロ、まさに温泉宿の醍醐味である。

午後6時、夕食の時間。
二号館、三号館の宿泊客は全員、本陣の一角にある2つの部屋に集められる。
本陣や新本陣などの客は部屋まで食事を運んでくれるらしいが、我々は用意された部屋に集まってお膳を囲むというスタイルだ。

部屋に入ると、囲炉裏があって、鍋と川魚が火にかけられていた。
その部屋を仕切るおじさんの指示で座る席が決められるのだが、この人、秋田訛りの強いこの宿の名物おじさんらしい。

一人客は同じ部屋に集められ、お互い向き合うように御膳が並べられていた。
見ず知らずの人ばかりだけれど、すぐに話が弾み、常連客がさまざまなプチ情報を教えてくれる。
サイトでは空室がなくてもこまめに電話していると案外予約が取れるといった話から、連泊すると食事が変わる話、乳頭温泉の別の宿の話まで、それぞれが持っている知識をお互いに交換するのだ。
私はもっぱら聞き役で、皆さんが話しやすいように具体的な質問をどんどん投げかけてみた。

おじさんが「飲み物は何にする?」と聞くので、受付で冷やしていた「秘湯ビール」を注文してみた。
これは「日本秘湯を守る会」限定のビールだそうで、1本660円だった。

食事はまさに山の幸。
食べたことのない山菜がいろいろ並ぶ。

中でも珍しいのがこちら、「みずの実」である。
「みず」は山奥深い清廉な沢に自生する植物で、秋になると葉の根元に赤く膨らんだ「実」ができるのだそうだ。
「みずこぶ」「みずの子」とも呼ばれ、独特のトロッとした瑞々しい食感は貴重な山の幸なのである。

囲炉裏で焼かれていたイワナの塩焼きが登場する。
生臭い川魚は苦手だが、このイワナは全く臭みがなく、実に美味い。

ビールに代わり、今度は地酒。
300年以上の歴史を持つ秋田の銘酒「秀よし」を熱燗でいただく。

囲炉裏にかけられていた鍋も振る舞われる。
ちゃんと確認はしなかったけれど、これが鶴の湯名物「山の芋鍋」なのだろう。
鍋は多めに用意されているので、足りない人は囲炉裏まで行って好きなだけ追加が可能だ。

豪華な食事ではないが、いかにも山里のおもてなし。
気さくなおじさんの話も織り交ぜて、見知らぬ旅人同士の楽しい時間を過ごすことができた。

食事の席で知り合った人たちに誘われて、食後は再び露天風呂へ。
すっかり夜も更けて、お互いの顔もぼんやりするほどに薄暗い。
常連客の女性も合流して、露天に浸かりながら静かな会話が続いた。
やっぱり、こうした秘湯は日帰りではダメだ。
夜、ぼんやりとした明かりの中で静かに湯に浸かり、非日常的な時間を過ごすことにこそ価値がある。
そんなことを感じさせてくれる素敵な時間だった。

翌朝、まだ真っ暗なうちに起き出して再び露天に浸かる。
同じように考える人も多いようで、夜中よりも入浴客が多い。
この時間、明るくなる前にカップルで入浴する人たちも目立つ。
次第に空が白んできて、今度は風呂の中で朝を迎えた。

朝食は午前7時から。
前夜と同じ食事部屋に行ってみると、壁沿いにテーブルのようなものが設えてあり、すでに朝ごはんの用意がされていた。
なんだか禅道場のようだ。

こちらが鶴の湯の朝ごはん。
豪華ではないが、健康に良さそうなメニューである。
部屋の真ん中におひつが置かれていて、ごはんはおかわり自由。
私も風呂に入ってエネルギーを消費したせいか、珍しくおかわりしてしまった。

食後は再びお風呂へ。
明け方から降り始めた雪はこの時間、少し降り方が強くなってきたようだ。
通常チェックアウトは午前10時だそうだが、私のようにANAのツアーで申し込んだ客は午前11時まで部屋を使えるというように、予約のルートによって待遇が異なるようだった。
嬉しいことに、宿泊客はチェックアウト後も荷物をフロントに預けて入浴は可能で、そのためのコインロッカーも用意されている。
ただ、午前10時を過ぎると日帰り入浴の客がどっと押し寄せるため、露天風呂は混雑してしまう。

部屋に戻り荷物をまとめていると、ゴーという音がして外を見ると大型の除雪車が本陣と三号館の間の通路で除雪作業をしていた。
いやはや、秘湯を維持するのも容易ではないのだと実感する。

チェックアウトの際、ANAのツアー客には鶴の湯オリジナルの絵葉書を1枚プレゼントすると言われた。
今回のツアー代は1泊2食付きの宿泊料金に往復の航空代金が込みで6万円あまり。
鶴の湯を直接予約すると1泊1万円あまりなので、かなり割高な料金に設定されているので、こうしたサービスが付随するのではあるが、なかなか予約が取れない念願の宿に泊まれたのだから文句はない。
十分払ったお金に見合う価値のある旅だったと思う。

鶴の湯から秋田空港までは、前日に予約した「エアポートライナー」を利用する。
「エアポートライナー」というのは、地元のタクシー会社が運営する乗り合いタクシーのことだ。
運賃は1人片道6700円と決して安くはないが、路線バスと新幹線、リムジンを乗り継いで空港に向かうことを考えれば無駄がなく、料金もそうたいして変わらない。

私が予約した飛行機は午後4時ごろの出発だったが、それに間に合うエアポートライナーを依頼すると、なんと午前11時50分に鶴の湯に迎えに行くという。
さすがに早過ぎるだろうと思ったので、運転手さんに空港に行く途中、田沢湖や角館の武家屋敷に寄り道することは可能かと尋ねてみたら、快く応じてくれた。

桜の季節ならさぞ美しいだろうと思いながらも、初めて訪れる角館はなかなか印象的だった。
運転手さんはなかなか気さくな人で、これまでに乗せたことのある芸能人の話などをいろいろ聞かせてくれた。
ツアーで地方を回っているミュージシャンなどは秋田から盛岡までこうしたワゴンタクシーを利用することが結構あるらしい。

こうして寄り道をしても、秋田空港に到着したのは出発にはまだ早過ぎる、午後2時前だった。
幸い、秋田空港には立派なラウンジがあり、そこで時間を潰すことにした。
昨今のインバウンドブームもあり、地方の観光施設もかなり整備が進んだことに感謝しなければならない。
1泊2日の秋田の旅。
日本の良さを再認識する素晴らしい秘湯の旅であった。
「乳頭温泉郷 秘湯 鶴の湯温泉」
住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林50
TEL:0187-46-2139
http://www.tsurunoyu.com/