<吉祥寺残日録>新社長に東山紀之氏!性加害にゆれるジャニーズ事務所の記者会見を聞いて思ったこと #230907

ジャニー喜多川氏による性加害問題が大きな社会問題になる中、ジャニーズ事務所が初めての記者会見を開いた。

NHKを含むテレビ東京以外の地上波5局が揃ってこの会見を生中継で伝えた。

出席したのは、ジャニー氏の姪にあたる藤島ジュリー社長と少年隊の東山紀之さん、V6の井ノ原快彦さん、そして顧問弁護士の4人だった。

冒頭、藤島社長と東山さんが立ち上がり、ジャニー氏による性加害について初めて認め、何度も謝罪の言葉を繰り返した。

そのうえで事務所として以下の対応策を発表した。

  • 藤島ジュリー氏は5日付で社長を退任した
  • 新社長には東山さんが就任する
  • 藤島ジュリー氏は当面代表取締役に留まり被害者の救済にあたる

つまり、この3人は新体制を支えるメンバーということらしい。

東山さんが新社長、井ノ原さんはジャニーズJr.を育成する「ジャニーズアイランド」の社長、そして藤島ジュリー氏は社長を辞任した後も代表取締役として残るということである。

ジャニーズの闇を全て知る男とされる白波瀬傑副社長は、藤島ジュリー社長と共に辞任したとして会見には姿を見せなかった。

冒頭の挨拶の中で、東山新社長は次のように発言した。

『恥ずかしながらみずから行動することはできませんでした。うわさとしては聞いていましたが、現場に立ち会ったこともなく、相談もなかったので、みずから行動できなかったことを反省して今後は対応していきたい。喜多川氏は絶対的な存在で僕らは正しいと信じていた。今となっては恥じている。さまざまな暴露本が出ていて、そういううわさがあるのを知っていたが、あくまでもうわさだと喜多川氏を信じていた』

そのうえで、今年末をもって自身は芸能活動を引退し社長業に専念する覚悟を語った。

東山さんはジャニーズ氏の行為を厳しく断罪した。

『大変な事件、人類史上最も愚かな事件だと思います。』

しかし一方で、「ジャニーズ事務所」という社名は残したいとの考えを示した。

『名称に関して大変議論した。どうするべきか、これだけの犯罪なので、これを引き続き守るべきか。ただ僕が思ったのはジャニーズというのは創業者の名前であり初代でもあり、大事なのはこれまでタレントが培ってきたプライドなど、その表現の1つと思っている。解体的見直しが必要との意見を踏まえたうえで理解している。沢山の人が被害に遭ったこともわかっています。僕自身も名前を変え再出発した方がもしかしたら正しいのかもしれません。ただ僕らはファンの方に支えられているのでそれをどこまで変更するのがいいのかと考えてきました。今後はそういうイメージを払拭できるほど、みんなが一丸となって頑張るべきかだと今は判断しています。』

正直、難しい問題である。

「ジャニーズ」の名称は芸能界でも突出したブランドだ。

もしも別の名前に変えた場合、同じような知名度を得ることができるかどうか、それほど強力なブランドを作ることは難しい。

しかし「ジャニーズ」という名前がジャニー喜多川氏そのものから発していて、強烈な負のイメージがついてしまった今、このブランド名を残すことは常識的には苦しいだろう。

後は、これまで同様、熱烈なファンの人たちがどのように判断するか、それは私には予想もつかない。

藤島ジュリー氏に対しては持ち株の扱いについての質問が飛んだが、明確な回答は避けた。

同族会社であるジャニーズ事務所の株式は非公開で、藤島ジュリー氏が100%相続しているのだそうだ。

『同族経営が弊害であることは変えていかなければならないと 認識していますが、今すぐ株をどうにかできるかは簡単な問題ではありません。今ここで、いつ、どういう風に変えるかは大変難しいことなので、具体的に申し上げられない。』

実は私は藤島ジュリー氏と何度か話をしたことがある。

テレビ局時代の話で、もちろん仕事に関する打ち合わせだ。

正直な印象は、母親である藤島メリー氏に比べそれほどのオーラやカリスマ性は感じなかった。

当時はまだジャニー氏もメリー氏も健在で、事務所の運営はメリー氏が絶対君主として取り仕切っていた時代だ。

SMAPを担当する飯島さんというやり手マネージャーと嵐などを担当するジュリー氏が二代派閥として競っていて、テレビマンたちはいつもキャスティングに神経を使っていた。

私がいたテレビ局では、2つの部局でジュリー派と飯島派を分けて事務所との付き合いをしていた。

ジュリー氏は嵐やV6といった人気タレントが出演する番組にはほとんど全て顔を出していて、決して創業者一族だから事務所でふんぞりかえっているという風ではなかった。

芸能界は人気商売である。

誰かに目をかけられたからと言って売れるわけではない。

テレビ局からしてもジャニーズの人気タレントを起用したから視聴率が取れるわけではなく、ドラマなども含めて全社的なキャスティング交渉となる。

巷で言われているような単純な構図ではないと私は思っている。

テレビ番組の司会でも定評がある井ノ原さんは、2人に比べてわかりやすい言葉でこんなことを語った。

『僕は小学6年生でジャニーズ事務所に入り、そういった本が出ていたので、まわりもみんなそうなのかなとうわさはしていた。そうなったらどうしようという話もしていた。小学生とか中学生の自分たちがおかしいんじゃないかとか、うわさを聞いたぞと言えなかったのは今となっては後悔しています。 言い訳になりますが、えたいの知れない、触れてはいけない空気みたいなものがありました』

そして今も所属しているジャニーズJr.の子たちには、あくまでファンを大切にするよう話していると明かした。

『何日も前からチケットを取って、高いお金払って飛行機を取って、髪をセットしておしゃれして来てくださるファンのために、一からちゃんと考え直してステージに立ちましょう』

ジャニーズの所属タレントと会って感じるのは、不自然なほどの礼儀正しさ、そしてファンサービスである。

それはジャニー氏が作り上げた文化なのだろうが、同時に現場スタッフたちからは時に威圧的な雰囲気と裁量権のなさを感じていた。

質疑応答では、東山新社長自身のパワハラ、セクハラ疑惑も追及された。

元ジャニーズメンバーによる暴露本がネタ元だが、東山さんは落ち着いてその疑惑を全否定していた。

しかし、体育系で知られるジャニーズ事務所で最年長タレントとして君臨してきた東山さんだけに、過去をほじくり返せばいろんなスキャンダルは出てくる可能性がある。

テレビを中心にメディアが長年問題を取り上げてこなかったことも批判の対象になっているが、私もその一端を担っているのだろう。

文春がジャニーズの問題でシリーズを組んでいた1990年代後半、私は夕方ニュースの編集長を務めていたからだ。

しかし少し言い訳すれば、当時、ワイドショーはいざ知らずテレビニュースのネタ決めに当たっては週刊誌だけが報道するネタは扱わないという不文律があった。

これは新聞の慣習を踏襲したものだと思う。

もちろんワイドショーは週刊誌ネタを扱っていたので、ジャニーズへの配慮が働いた可能性が高いだろう。

でも、少なくとも当時の私にはジャニーズへの忖度などという感情はなかったことは事実である。

2000年以降、テレビニュースのワイド化が進み、ニュースとワイドショーの垣根がなくなってしまった。

私もその流れを推進した一人だ。

だからいろいろなところで、この問題と薄く関係して来た私も多少の心の痛みを感じるところではあるが、当事者であるジャニー氏が亡くなり、事務所の実質的支配者であったメリー氏も亡くなった後となっては、いささか手遅れの印象も受けてしまう。

ここに来てジャニーズ問題が一気に噴出したのは、英BBCの報道がきっかけだった。

ジェンダー平等の流れが遅ればせに日本にも広がってきて、男性の性被害に対しても20年前とは違った角度でスポットライトが当てられるようになったわけだ。

その意味では、社会が一歩成熟したと言えるのかもしれない。

今日の記者会見でも記者から厳しい質問が飛んでいたが、今回の事件が、芸能界に残る時代遅れの慣習を吹っ飛ばしてくれればテレビ局にとってもタレントさんにとっても望ましいと思っている。

ジャニーズの問題に留まらず、芸能界のドンたちにはそろそろ引退勧告してもいい時期に来ていると私は思う。

<吉祥寺残日録>理解不能な事件が続いた5月!孫の子守りをしながら思う日本社会の「生きづらさ」#230531

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