<吉祥寺残日録>トイレの歳時記🌻七十二候「半夏生(はんげしょうず)」、妻のワクチン予約をする #210702

東京は今日も朝から大雨である。

雨の日には、バロック音楽などを流し静かに過ごすのが心地よいが、今日も雨の中出かけることとなった。

ワクチン接種を躊躇っていた妻が急にワクチン の予約をすると言い出したからだ。

武蔵野市では、今日7月2日から64歳以下の特に持病を持たない人を対象としたワクチン予約が始まり、市が行う集団接種会場ならネットから予約ができるようだが、家から少し離れているので、妻は私がかかりつけにしているクリニックでワクチンを受けたいと言う。

予約開始時間は9時半からと聞いていたので、その時間に電話をすればいいのだが混み合って電話が通じないかもしれないと心配し、直接クリニックに出向いて予約しようということになった。

私のかかりつけ医なので、私が同行した方がいいだろうと思い、大雨が降る中、レインコートと長靴姿で街に出た。

雨樋から水が溢れるほどの雨が降り続いているが、さすがレインコートと長靴の威力はすごく、水たまりを気にせずビシャビシャ歩くのはちょっと楽しい。

小さな子どもがわざと水たまりに入りたがるように、いい歳をした私も今日は水たまりを好んで歩いた。

クリニックに着いたのは9時前だった。

ひょっとしたら行列ができているかもという妻の予想は完全に外れ、大雨のためかクリニックはいつも以上に空いていた。

「ワクチンの予約に来たのですが、ちょっと待たせてもらっていいですか?」と窓口の看護師さんに声をかけ、ガラガラの待合室で30分以上時間を潰した。

9時半になって名前を呼ばれスムーズに予約はできたが、これならば時間通りに来ても同じであった。

そんな梅雨の一日、今日は七十二候の「半夏生(はんげしょうず)」である。

その意味は、「サトイモ科のカラスビシャク(漢名を半夏)が生え始める頃」とカレンダーには解説している。

しかし、別の由来もあるようで・・・

半夏生(はんげしょう)は雑節の1つで、半夏(烏柄杓)という薬草が生える頃。一説に、ハンゲショウ(カタシログサ)という草の葉が名前の通り半分白くなって化粧しているようになる頃とも。

出典:ウィキペディア

「カラスビシャク(烏柄杓)」または「半夏」と呼ばれる植物は、上の写真のような特徴的な花を咲かせる。

古来中国から帰化した雑草で日本列島にも広く分布しているという。

その根茎は除去するのが難しく鹿児島では「ヒャクショウナカセ」とも呼ばれるが、一方で乾燥させた根茎は「半夏」という生薬ともなる。

根茎の皮のコルク層を除いて乾燥させたものは、半夏(はんげ)という生薬であり、日本薬局方に収録されている。半夏は、なるべく大きいのがよく、桶に砂と一緒に根茎を入れて水を加え、板で攪拌して外皮を完全に取り除き、水洗いを重ねて砂、皮を取り除いて、生石灰粉をまぶして、筵に広げて天日干しして作られる。

鎮吐作用のあるアラバンを主体とする多糖体を多く含んでおり、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などの漢方方剤に配合される。他にホモゲンチジン酸を含む。またサポニンを多量に含んでいるため、痰きりやコレステロールの吸収抑制効果がある。またかつては、つわりの生薬としても用られていた。

出典:ウィキペディア

この「カラスビシャク」は井の頭公園で見かけたことはないが、一方の「ハンゲショウ」という植物は井の頭池のほとりに群生していた。

上の写真は藤棚があるベンチの目の前で撮影したものだが、植物識別アプリ「Picture This」で何気なく調べると「ハンゲショウ」の名が表示された。

『ハンゲショウ(カタシログサ)という草の葉が名前の通り半分白くなって化粧しているようになる頃』という説の通り、井の頭公園で見つけた「ハンゲショウ」の葉も半分白かった。

こちらはドクダミ科の植物で、やはり地下に張り巡らした地下茎で仲間を増やす。

夏至を過ぎた頃に長さ10~15cmほどの穂状花序を葉の付けねにつける。また、花のすぐ下に位置する葉の表面が白く変化し花弁の役目を果たすのが本種の特徴である。

出典:ウィキペディア

「ハンゲショウ」も乾燥させて生薬「三白草」として使われ、清熱、消炎、解毒などの作用があるという。

「カラスビシャク」と「ハンゲショウ」、どちらが半夏生の名前の由来になっているにせよ、夏至を過ぎたこの時期は農家にとって重要な節目になっていたという。

この日までに「畑仕事を終える」「水稲の田植えを終える」目安で、この日から5日間は休みとする地方もある。この日は天から毒気が降ると言われ、井戸に蓋をして毒気を防いだり、この日に採った野菜は食べてはいけないとされたりした。

出典:ウィキペディア

半夏生には「天から毒気が降る」というのは何を意味しているのかは不明だが、半夏生までに田植えを終え、農民たちに休みを取らせるために作られた話かもしれない。

各地には半夏生の風習が風習がいろいろ残っているそうで、三重県の熊野地方や志摩地方の沿岸部などでは、ハンゲという妖怪が徘徊するとされ、この時期に農作業を行うことに対する戒めとしたそうだ。

また讃岐の農村ではうどんを食べる習慣があり、1980年に香川県製麺事業協同組合が7月2日を「うどんの日」に制定しているという。

いずれにせよ、「半夏生」の今日は、コメとともに生きてきた日本人にとっては大切な日。

だから今日は私も何もせず、ただゴロゴロしながら雨の日を過ごそうと思う。

そして日曜日から再び岡山に帰省し、伯母の介護を本格化させる予定である。

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