コロナによる日本の死者数がついに1万人を超えた。
一年のうちでも最も快適な季節なのに、3度目の緊急事態宣言のためにどこにも行くことができない。
そんな4月の最終週。

我が家のトイレにかかっている歳時記カレンダーを見ると、昨日25日が七十二候の「霜止出苗」と記されていた。
読みは「しもやんでなえいづる」、「温暖になって霜はなく、苗が青葉を出す頃」という意味だという。
ちょうど今、テレビで気象予報士の森田さんが「明日は遅霜の恐れがある」と話しているが、気候が温暖になっているのは間違いない。
日本文化の中心に位置してきたともいえる稲作、歳時記は農業をする人に役立つ情報が反映されている。

井の頭公園にはさすがに水田はないが、昔は井の頭線の近く神田川沿いに田んぼが存在したという記述を見た記憶がある。
武蔵野の大地は、もともとは水が得にくく稲作には向かなかったが、江戸の街が拡大する過程で神田川や玉川上水が整備され、その水は庶民の飲料水と同時に農家の貴重な水源となった。
太古の昔から泉が沸いていたここ井の頭池周辺では、稲ではないがガマやヨシといった水草は繁殖していた。

夕暮れの狛江橋に立って、弁財天の方向を眺めるとビルなどは何も目に入らず、昔の人々が眺めた景色そのままにタイムスリップしてしまいそうだ。
暑くもなく寒くもなく、本当に一年で一番いい季節だとつくづく感じる。

今日の午前中、緊急事態宣言発令後はじめて井の頭公園を歩いてみたが、予想していたよりもずっと人が少なかった。
宣言初日の昨日は、吉祥寺の街もすごい人出だったが、平日になると流れが変わるのか・・・?
多くの人は「ステイホーム」を守っていると見える。

朝から快晴だったにもかかわらず、10時半ごろボート乗り場の前を通りかかると、すでに営業が始まっているのにボートに乗る人は一人もいなかった。
ちょっと1年前を思い出す静かな光景だ。
この調子で、みんなで行動を自粛してくれれば、それだけ早く行動制限が解除される。
だらだらと宣言が延長される事態は誰も望んでいないだろう。

そんな人の気配の少ない公園をひと回りすると、今日もいろんな発見があった。
たとえば、19種類の桜が植えられた西園の文化交流広場。
ここでは、こんなものを見つけた。

赤く色づいた桜の実だ。
サクランボが木になっているところを私は見たことがないが、きっとこんな感じなのだろう。
この木は、ソメイヨシノと同じ頃に花を咲かせる「オオカンザクラ」。
ソメイヨシノではあまり実を見たことがないが、こちらの桜はたくさんの実をつけるようだ。

一方、こちらは早咲きの「カワズザクラ」。
この公園で一番最初に花をつけ、最初に散ってしまう桜だ。
光の当たり具合なのか、赤い実もあれば、まだ黄色い実もある。
見ているだけで、ちょっと楽しくなる「発見」だった。

桜の実を見たら、梅の実のことも気になってきた。
梅は桜より早く花が咲かせるので、実はもうすっかり赤くなっているだろうか?

と思ったが、まだまだ梅の実は緑色。
中にはほんのり赤くなっているものもあったが、まだまだ熟してはいないようだ。
なんと暇なオヤジだろうと思われるかもしれないが、人のあまりいない井の頭公園で、こうして一人、新たな「発見」を求めて歩き回るのは意外と面白い。
緊急事態宣言下の過ごし方としては、悪くないと思うのだが・・・果たしてどうだろう?

さて七十二候の「霜止出苗」に当たり、今日は岡山で農業をしている伯母の話を書いておきたい。
2回目の緊急事態宣言が解除された4月はじめに岡山に帰省した際、バタバタと立ち回り、伯母の介護申請をしてきたのだが、その結果が先週末、我が家に郵送されてきた。

『要介護認定の結果をお知らせします。あなたは「要支援1」と認定されました』
と印刷された紙と一緒に、伯母の新しい介護保険証が入っていた。
「要支援1」は、『悪化防止の支援を要する』という要介護度の最も低いレベルだが、恐れていた「非該当」ではなく最低限の支援を受ける権利を認められたことになる。
コンピューターによる「一次判定」を原案として、医師の意見書や調査員の書面による情報をもとに審査判定が行われたと説明されていた。
『認定結果により、あなたが介護保険によって利用できるサービスの支給限度額のめやすは50320円です。利用できるサービスについては、地域包括支援センターへご相談ください。』と書き添えられている。

この5万円の限度額は、月単位なのか年単位なのかも分からないので調べてみた。
「サービスの支給限度額」というのは要介護度によって決められていて、「要支援1」の場合は1ヶ月に5万円ほどのサービスが受けられるようだ。
伯母の場合は現在の収入は国民年金だけなので、本人負担はおそらく1割だと思う。
ただ、ちょっと気になった点がある。
自己負担額はわずかだとしても伯母は本当に無駄遣いをしない人なので、口座から引き落とされるとそのわずかな出費も気にして「受けない」と言い出す可能性がある。
そこで妻と相談して、介護サービスを利用した際の費用はとりあえず私が負担することにした。
できれば週1回程度ヘルパーさんに訪問してもらい、掃除でもお願いしながら定期的に伯母の様子を見てもらえればと思っている。

伯母のような「要支援」の対象者には、「介護予防・生活支援サービス」というのが受けられるようで、まずはこのサービスから始めてみようと妻と相談した。
しかし、人に世話をされるのが大嫌いな伯母なので、果たしてヘルパーさんが家に入ることをすんなり受け入れるかどうか、まずはそこからスタートだ。
近所の人たちでさえ家に上げることはないのに、見ず知らずのヘルパーさんに対してどんな態度を取るのだろう?
「自分でできるから要りません」と言って門前で追い返すのだろうか?
まったく予想がつかない。
まずは5月1日にかかりつけ医が往診してくれるというので、顔見知りのお医者さんから説得してもらおう。

岡山に住む妻の両親もすでに「要支援」を受けていて、これで3人目の介護生活が始まる。
コロナの状況を見ながらなるべく月一ペースで岡山に通い、無理のない程度に見守りを続けたいと思っているのだが・・・。
【トイレの歳時記2021】
- 七十二候の「芹乃栄(せりすなわちさかう)」に中国と香港について考える #210106
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- 七十二候の「雉始雊(きじはじめてなく)」にキジを見に井の頭自然文化園に行ってみた #210115
- 七十二候「款冬華(ふきのはなさく)」に「大寒」の井の頭公園を歩く #210120
- 七十二候「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」と初場所・初縁日 #210125
- 七十二候「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」に紀ノ国屋で二番目に高い卵を買う #210130
- 七十二候「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」に立春をさがす #210203
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