<吉祥寺残日録>いろいろあった9月が終わった #210930

今日で9月も終わる。

この夏の日本列島を憂鬱にしたコロナの第5波もようやく収まり、明日からは全国的に緊急事態宣言が全面解除される。

辛抱を続けてきたお酒関係の皆さんもひとまずホッと一息というところだろう。

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海の向こうアメリカでは、大谷翔平が今季ピッチャーとして登板することがないとエンゼルスが発表した。

これによって、ベーブ・ルース以来103年ぶりとなる「10勝・10本塁打」の達成は来年以降に持ち越されることになった。

それでもこの日の大谷は今シーズン25個目の盗塁を決め、「45本塁打25盗塁」というメジャー6人目の記録を達成した。

投げて、打って、走って。

とにかく、投打に渡る大谷の超人的な活躍は、野球の歴史に次々と新たな記録を生み出していくことは間違い無いだろう。

TBSの朝番組「朝チャン!」が最終回だというので、そのエンディングを観ようとチャンネルを合わせた。

司会の夏目三久さんも7年半の間に堂々としたメインMCとなり、順調に番組は進んでいった。

ところが最後、夏目さんの挨拶というところで「我武者羅應援團」という3人組が登場し、夏目さんのこれまでの努力をこれでもかと讃え始めたのだ。

これはスタッフが用意したサプライズ演出だったのだが、これがテレビ史上に残る大失敗となってしまった。

本来なら、夏目さんが感動して涙を流すようなシーンなのだが、どうも応援の内容が今ひとつで感動できない。

おまけに、ダラダラと時間を使い、挙げ句の果てに夏目さんが挨拶する時間がほとんどなくなってしまったのだ。

こんなひどい最終回のエンディングは見たことがない。

おそらく放送終了後、この演出をめぐってTBSでは大騒ぎになっていることだろう。

元テレビマンとしては、どうしてこんなことが起きるのか信じられないほどのひどい演出で、見終わって朝からちょっと暗い気持ちになった。

そんな9月最後の日に、井の頭公園をひと回り歩いてきた。

弁天池の水面にはたくさんの葉っぱが浮いていて、どことなく物悲しさが感じられる。

総裁選も終わり、大谷の大記録の希望もなくなって、ちょっと寂しい秋である。

お茶の水橋あたりに発生していた「アオコ」もいつも間にか落ち着いてきて、抹茶色をしていた水が徐々に通常に戻りつつあるようだ。

夏が終わり、そこかしこに盛りを過ぎた生き物たちが溢れている。

羽がボロボロになった黒いアゲハ蝶が必死で花にぶら下がっていた。

すぐ近くにスマホを寄せて撮影しても逃げる元気もないようだ。

残る命は長くはないだろう。

木の枝には、セミの抜け殻が残っていた。

この殻を脱いで成虫としての短い夏を謳歌したセミたちも、ほとんどはすでに死に、公園を覆っていた蝉時雨はわずかに残るだけとなった。

御殿山の梅林ではほとんどの梅の木が落葉の季節を迎えている。

桜も桃も、他の樹木より一足早く冬支度をするようだ。

葉を落としたソメイヨシノの幹には、びっしりとサルノコシカケの仲間と見られる菌類が生えていた。

老いて勢いを失えば、様々な病気がやってくる。

それは樹木も人間も同じなのだろう。

今年の9月は私にとって老後を意識する出来事がいろいろあった。

岡山でずっと農地を管理してくれていた伯母が認知症で入院し、代わりに家と農地を管理する役目が本格的にのしかかってきた。

先日、伯母の畑と隣り合わせだという方から突然電話がかかってきた。

境界線の草が自分の畑に倒れかかってきているうえ、ブドウ畑のビニールカバーが破れて風で飛びそうになっていると言うのである。

「すぐに何とかできないか」と言われても私は東京にいる。

とにかくひたすら電話でお詫びして、「来月長めに帰省してちゃんとします」と伝えると、その方は自分の方でやってもいいかと言うので、「もちろん、お願いします」と答えるしかなかった。

農地の管理は待ったなしだ。

本腰を入れて、対策を考えなければならない。

一人であの農地を耕し続ける気はないので、誰か若い就農希望者でも探して未来の農業のために活用してもらおう。

そう決意したのは、私にとって大きな変化であった。

もう一人の大切な親族だった「片上のおばちゃん」が亡くなったのも、私にとって大きな出来事だった。

しかし、私以上に母にとっては切実だったはずである。

自分と同じ世代の親しい人が一人、また一人と減っていく。

老いるということは、電話で話をする相手が少しずつ少なくなっていくことなのだ。

この季節、公園を歩いていて目につくのはクモたちである。

見た目の気持ち悪さから嫌われるクモだが、かつてはハエやゴキブリなどの害虫を食べる「益虫」と見なされてきた。

日本で一般的に見かける「ジョロウグモ」は9月ごろに成熟期を迎えるそうだ。

体の大きいのがメスで、小さなオスはメスの巣に居座って交尾のタイミングを探る。

そして10〜11月に産卵し、卵嚢の形で冬をこし、次の年の春に孵化するというライフサイクルらしい。

徐々に寂しくなっていく井の頭公園では、冬に備えてそれぞれの生き物が子孫を残す営みを続ける。

人間の場合、命のサイクルは比較的長いが、行っていることはさして変わらない。

ただ、自分の意思によって本能を越えた行動を行うことができるのが、人間の人間たる所以である。

限界のある命を意識しながら、悔いのない人生を常に心がけていきたい。

明日は、関東の沖を大型の台風が通過する予報である。

秋バテと自己責任

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