🇱🇺ルクセンブルク 2019年8月8日~12日 4泊5日
イギリス・フランス・イタリア・ドイツ・スイス・スペイン・・・。
日本人憧れの国々が集まるヨーロッパですが、意外な穴場がルクセンブルクです。
フランスとドイツとベルギーに囲まれ、神奈川県ほどの国土に60万人が暮らす小さな国ですが、一人当たりのGDP(国民総生産)が世界一というとても豊かな国です。
その旧市街は世界遺産に登録されている美しい首都、ちょっと足を伸ばせば隣国のフランスやドイツ、ベルギーの美しい村へも日帰り可能です。
知られざるルクセンブルクの魅力をご紹介します。
ルクセンブルク大公家
ルクセンブルクの正式名称は、ルクセンブルク大公国。
世界で唯一、「大公」をトップとする立憲君主国です。
現在のルクセンブルク大公は、アンリ殿下。
正式な称号は、「ルクセンブルク大公兼ナッサウ公兼ブルボン=パルマ公子アンリ殿下」と言うのだそうです。
アンリ殿下は、2000年に大公に即位されました。
奥様のマリアさんは、ジュネーブ大学で共に学んだパートナーで、アメリカ出身の亡命キューバ人だそうです。そのため結婚には反対の声も多かったようです。
それでも二人は4男1女の賑やかな家庭を設け、市内を歩くと大公夫妻の肖像を目にする機会もかなりありました。
旧市街の中心部に大公が執務する大公宮殿があります。
迎賓館としても使われ、毎日5回近衛兵の交代式が行われる観光客にも人気のスポットです。
理由① 世界遺産の「崖の街」
ルクセンブルクの旅を勧める理由の第一は、その美しい景観です。
首都ルクセンブルク市の旧市街地区は、1994年に世界遺産に登録されました。
「ルクセンブルク市 その古い街並みと要塞群」
この街の最大の特徴は、崖が作り出す高低差のある地形です。
崖の上は「サントル」と呼ばれます。
大公宮殿やノートルダム大聖堂、銀行やブランドショップなどが集まった旧市街。中世の趣を味わいながらそぞろ歩きが楽しめます。
一方、崖の下は「グルント」と呼ばれます。
川沿いの遊歩道に可愛らしい家々が並び、その中にひっそりと隠れ家レストランが潜んでいます。
グルントから見上げると、家の裏に崖がそそり立つ不思議な景観が楽しめます。
この崖は、アルゼット川とペトリュス川という2本の河川によって自然に作られました。
街の北、東、南が崖で囲まれたルクセンブルクは、「北のジブラルタル」と呼ばれる天然の要害であり、歴代支配者たちによって要塞都市として整備されてきました。
旧市街サントルを歩く
ルクセンブルク旧市街を歩いてみましょう。
私の泊まった宿から少し歩くと「憲法広場」。
旧市街の南端にあるこの広場に立つと、緑に覆われた深い谷を言葉を失うでしょう。
旧市街から中央駅へとつながるアドルフ橋は、1903年に完成した歴史的な橋です。
谷の向こう側、正面に立つ尖塔は、国立貯蓄銀行本館です。
かつては、EUの前身でありヨーロッパ統合の足がかりとなった欧州石炭鉄鋼共同体の本部が置かれていたそうです。
憲法広場から南北に伸びる通りが「フィリップⅡ通り」。
ルクセンブルクを代表するショッピングストリートです。
世界的なブランドショップが軒を連ねる中、ルクセンブルクとゆかりの深い陶磁器メーカー「ビレロイ&ボッホ」のお店もこの旧市街にあります。
旧市街の中心といえば「ダルム広場」。
広場を囲むように飲食店が立ち並び、昼も夜も多くの人々で賑わいます。
ルクセンブルクは日帰りの観光客が多いのですが、ダルム広場は断然夜の方が素敵です。
観光客があふれるダルム広場に対して、大公ギョーム2世の像が立つギョーム広場は、ルクセンブルク市民の憩いの場です。
私たちが訪れた時には、広場に市場がたっていました。
工事中の建物が市役所、その後ろにそびえるのが「ノートルダム大聖堂」です。
ルクセンブルクは美食の街。
不定期の市場とは言っても、本格的です。
ルクセンブルクの良さは、人が少ないこと。
一部を除いて、旧市街のどこを歩いても、清潔でのんびりできます。
全体としては整然とした旧市街ですが、東に行くほど、路地が入り組み迷路のようになります。
そこを抜けると・・・
かつての要塞跡「ボックの砲台」に出ます。
この城こそ、ルクセンブルク大公国の始まりの地です。
ここからのグルントの眺めはまさに絶景。
隣国フランスやドイツの有名観光地に負けない素敵な場所です。
しかし、ここを訪れる日本人はまだ少ない。
すなわち、欧州の穴場なのです。
理由② 美食の街
オススメする理由の2つ目は美食、ルクセンブルクは知る人ぞ知る美食の街です。
ルクセンブルクにはミシュランの星付きレストランが数多くあり、国民一人当たりの星の数は、なんと世界一だというから驚きです。
でも私たち夫婦はグルメではないので、気楽に食べられるお店を選びます。
たとえば、大公家御用達のショコラティエ「オーバーヴァイス」で食べるおしゃれなランチ。
「手長海老とマンゴのサラダ Scampi & mango salad」(14.50ユーロ)。
見た目も華やかで、エビもプリッぷり。マンゴの甘酸っぱさが最高でした。
ルクセンブルクの郷土料理も積極的に食べてみました。
こちらは「ルクセンブルク風ホワイトワインソーセージ」(18.50ユーロ)。
あまり洗練されておらず、味は濃いめです。
でも、素朴な料理を華やかに彩ってくれるのがルクセンブルク産のワインです。
流通量が少ないため、ほとんど国外には輸出されない稀少性の高いルクセンブルクワイン。
最大の生産地はドイツの高級白ワイン「モーゼルワイン」と同じモーゼル川の川沿いで、その品質の高さは折り紙付きです。
私はもっぱらルクセンブルク産の「リースリングワイン」を愛飲しました。
面白いのは、大公宮殿の前にある人気チョコレート屋さん「チョコレートハウス 」の「ホット・チョコスプーン」。
数多くのチョコスプーンから好みのものを選んで、温かいミルクに溶かしながら飲むのです。
濃厚なホットチョコレート自体も美味しいのですが、好みのスプーンを選ぶのが楽しく、お土産にも最高です。
私たちはキッチン付きの宿に泊まって、自炊中心の旅をしていました。
ルクセンブルクの旧市街には、スーパーもありますし、老舗の総菜屋さんもあって食材の買い物も楽しい街です。
オススメの食材は、こちらの「パテ・オ・リースリング」。
豚肉のパテをパイ生地で包んで焼き、できた隙間にリースリングワインのジュレを流し込んだルクセンブルクの代表料理です。
理由③ 公共交通機関
ルクセンブルクの旅をオススメする理由の3つ目は、公共交通機関です。
現在も、ルクセンブルク国内の公共交通機関は1日4ユーロで乗り放題。
ルクセンブルクに着いたら、迷わず一日乗車券を買いましょう。
これさえ持っていれば、バスも列車も路面電車も乗り降り自由です。改札もなく、目的地に向かう交通機関を見つけ乗り込むだけです。
車両はどれもピカピカで、車内のモニターで次の停留所を知ることができます。
これだけでも観光客にはとてもありがたく、わかりやすいシステムなのですが、来年2020年からはこの公共交通機関をすべて無料化すると発表し、世界を驚かせました。
交通渋滞の緩和と環境対策のため、自家用車を減らして公共交通機関の利用を促すのが狙いだそうです。
さすが世界一豊かな国です。
理由④ 近隣諸国へのハブ
ルクセンブルクをオススメする理由の4つ目は、簡単に近隣諸国に行くことができるという利便性です。
近隣諸国へのハブとなるのが、ルクセンブルク中央駅。
ルクセンブルク国鉄の起点で、ここからパリまではTGVで2時間、ブリュッセルまでは高速鉄道で3時間20分です。
ただ、ルクセンブルクを拠点とするメリットは、ヨーロッパの田舎、知らない町や村を尋ねることです。
私はフランスの古都メッスに日帰りで行きました。
ルクセンブルクから列車で1時間。
シャガールのステンドグラスがある「サンテティエンヌ大聖堂」など、様々な歴史が刻まれた素敵な町です。
さすがフランスの町だけあって、素敵なマルシェがありました。
豊富な肉や魚、新鮮な野菜。
どれも美味しそうで市場を歩いているだけで、楽しくなってきます。
ルクセンブルク南端のシェンゲンでは、歩いてドイツとフランスへ入国しました。
わずかに1キロ歩いただけで3カ国を旅する特別な体験です。
「ベルギーの美しい村」に選ばれた小さな村にもルクセンブルクから日帰り旅行が可能です。
ルクセンブルクの周辺には、美しいヨーロッパがいっぱいです。
理由⑤ 欧州統合の都
欧州の穴場ルクセンブルクへの旅をオススメする理由の5つ目。
それはブレグジットに揺れるEU、欧州統合の歴史を知ることです。
ルクセンブルク旧市街の東側に広がるキルシュベルク地区には、欧州議会や欧州司法裁判所、欧州投資銀行など、EUの主要機関の建物が並びます。
欧州統合の先駆けとなった欧州石炭鉄鋼共同体の創設メンバーであり、その本部がルクセンブルクに置かれて以来、この街はブリュッセルやストラスブールと並ぶヨーロッパの都となったのです。
欧州統合の原点となったのが、第二次世界大戦。
ヨーロッパ諸国が武力ではなく話し合いによって統合を進めたのは、度重なる戦争で甚大な被害を被った反省からでした。
激戦地となったルクセンブルクにも、戦争で命を落としたアメリカ兵たちの墓地が設けられています。
時間があれば、英雄パットン将軍も眠る「アメリカ軍墓地」もぜひ訪れてください。
ルクセンブルク南端の町、シェンゲン。
「国境のないヨーロッパ」を実現したシェンゲン協定が締結された町です。
小さな博物館があり、橋を渡ってドイツとフランスに歩いて行ける以外、特に何もない町ですが、「国境がないヨーロッパ」の素晴らしさを体感できます。
知っているようで知らない欧州統合の精神と歴史は、日本人にとっても学ぶべき点が多くあります。
ルクセンブルクの旅で、ぜひその一端に触れてください。
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