<きちたび>チューリッヒの旅2023🇨🇭 旧市街にある名物ビアホール「ツォイクハウスケラー」で肉の塊「シュヴァインスハクセ」を食らう

🇨🇭 スイス/チューリッヒ 2023年12月10日

パリ特派員時代、スイスにはよく行った。

ジュネーブで国際会議が頻繁に開かれていたし、そのほかにもいろいろ取材することがあった。

家族旅行でも何度かスイスの観光地を訪れたが、あれ以来久しぶりの訪問である。

今回は未踏国リヒテンシュタインに足を踏み入れるのが目的で、最寄りの空港がスイスのチューリッヒだった。

リヒテンシュタインで1泊した後、スイス連邦鉄道(SBB)でチューリッヒ中央駅に到着したのは10日の午後3時ごろだった。

季節柄、駅の構内は賑やかなクリスマスマーケットで埋め尽くされ、鉄道を利用しない多くの人たちで賑わっていた。

まずは、予約してあった駅近くの「ブリストルホテル」という安宿にチェックイン。

最新の調査でシンガポールと並んで世界一物価が高い町に選ばれたチューリッヒで1泊2万円しない宿はありがたい。

しかも、駅から歩いて10分もかからないので、翌日早朝に空港を利用する私にとって最高のホテルと言ってもいい。

部屋は至ってシンプルではあるが、寝るだけなので全く問題はない。

ヨーロッパでは、駅の周辺は治安の悪いところも多いのだが、この宿のまわりは静かでヤバそうな雰囲気も全く感じなかった。

部屋に荷物を置くと、明るいうちにとチューリッヒの街を散策に出かけた。

チューリッヒの空港はかつて何度か利用したことがあったが、実はチューリッヒはいつも素通りで、ゆっくりとこの街を歩くのは初めての経験だ。

とりあえず旧市街のあるリマト川を目指して歩いていくと、この日はたまたまマラソン大会か何かが開かれる日だったようで、大勢のランナーが交通規制をした大通りを走っていた。

街の至る所が通行止めになっていて歩行者も自由に歩くことが許されない。

そんな不自由なチューリッヒの街を歩いて、なんとかたどり着けたのが街を見下ろす「リンデンホフの丘」。

パリでいえばモンマルトルの丘のようなところなんだろう。

丘から見るチューリッヒは、リマト川を挟んで両岸に中世の面影を残したヨーロッパらしい街並みが続き、なかなか素敵である。

青銅の尖塔は教会かと思いきや、なんと「チューリッヒ中央図書館」の建物らしい。

元を辿ると13世紀に作られた修道院の図書館だったとか。

それを商人たちが中心となって市民のための図書館に育てていったというのだから、やはりヨーロッパの文化度は高いと感じる。

川上のチューリッヒ湖の方向に目を転じると、アルプスの山々をバックに2本の塔が目を引く。

これがチューリッヒのランドマークである大聖堂「グロスミュンスター」である。

カール大帝の時代の創建と伝わるが、現在の建物は消失した後18世紀に再建されたものだそうだ。

丘の見晴らし台から下っていくと、細い石畳の路地が複雑に入り組んだちょっと面白い繁華街が続く。

この界隈にはホテルやレストラン、さらにおしゃれなショップが軒を連ねる。

中世から残る個性的な建物と建物の隙間から教会の時計台が見える。

パステルカラーに塗り分けられた建物。

注意深く見て歩くと、凝った作りの出窓があったり、立派な画家が描いたであろう壁画があったりする。

道もまっすぐなものはなく、直角に交わる角もなく、微妙な高低差がある。

実に面白い。

狭い路地から不意に広場に出たと思ったら、目の前に教会が現れた。

「聖ペーター教会」

直径8.46メートルというヨーロッパ最大の文字盤を持つこの時計は、15世紀に後からこの教会に設置されたものだという。

こうして「リンデンホフの丘」の周囲を散策しながら、私はネットで見つけた1軒のレストランに向かっていた。

それがこちらのお店「ツォイクハウスケラー」。

スイスの郷土料理が食べられる観光客に大人気のレストランというかビアホールのようなお店である。

まだ午後4時半にもなっていないにもかかわらず、店内はかなりの客で賑わっていた。

店名の「ツォイクハウスケラー」というのは『武器庫』という意味だそうで、かつて武器庫だった倉庫を改装してレストランを作ったことに由来する。

そのため、店内には弓矢や刀、さらには機関砲まで時代を越えた様々な武器が展示されていた。

さまざまな言語圏が入り乱れるスイスでも、チューリッヒはドイツ語圏。

となればビールを注文することになる。

この店のオススメの“ハウスビール”を注文する。

渡された英語のメニューにも「Zeughauskeller House Beer」と書いてある。

コクもキレもある美味しいビールで、大きいサイズの4dlで6.80スイスフラン、約1130円だった。

料理もいろいろオススメのものがあるようだが、私は近くの人が食べていた肉の塊が気になった。

店員さんに「あれが食いたい」と伝える。

「シュヴァインスハクセ(Schweinshaxe)」という名前の料理らしく、豚のすね肉を焼いた骨つきのローストポークといった感じだ。

値段は33スイスフラン、およそ5500円である。

写真を撮るのを忘れて食べ始めてしまったため、手前部分が白くなったが、運ばれてきた時には全体に焼き色がついて、まさに肉の丸焼きといったガッツリとした雰囲気だった。

いかにも漫画に出てくる肉という感じで大味そうに見えるのだが、実は豚肉をスパイスやハーブでマリネして、下茹でしたものをオーブンでローストしているので、食べてみると実に柔らかくてソースも肉の味を引き立ててくれている。

スイス料理を侮るなかれ、どうしてどうして実に美味い肉であった。

肉にはたっぷりのじゃがいも。

この店の名物のポテトサラダなのだそうだ。

これも間違いなく美味しくて、パンがなくてもお腹いっぱいになる。

とにかく量がたっぷりあるので、途中でビールが足りなくなり、ハウスビールをおかわり。

この円安の折、ヨーロッパのどこで食べても結構なお値段になってしまうが、今回の旅行で食べた料理の中で一番満足度は高かったと思う。

お腹いっぱいになって店を出ると、いい感じの夕暮れ時になっていた。

空に残る深いブルーと街角の電灯色が絡み合って、いかにも年末のヨーロッパといった華やいだ雰囲気を漂わせている。

この時間、最高に好きだ。

広場ではクリスマスマーケット。

子供たちが電飾のソリに乗って記念写真を撮っていた。

実に平和な光景である。

広場に面した大きな教会「フラウミュンスター」は、9世紀に建てられた歴史ある建造物で、リマト川を挟んで2本の塔がある「グロスミュンスター」と向き合っている。

この教会にはシャガールやジャコメッティの手になるステンドグラスもあるそうだが、あいにく教会の前がマラソンコースとなっていたため、内部は見られなかった。

夕暮れ時のヨーロッパの街は本当に美しい。

柔らかい光が水面に映り、ゆったりとした時が流れていくようだ。

やっぱり、ヨーロッパは好きだなあと、改めて思う。

グロスミュンスターの裏手をまわり、旧市街を抜けてホテルに戻る。

この日はクリスマス前の日曜日ということもあり、大勢の人が街歩きを楽しんでいた。

リマト川から一本入った「ミュンスターガッセ通り」は、旧市街を貫く人気の裏通り。

たくさんの飲食店が観光客も地元の人も引き寄せる。

ぶらぶら歩いている間に、空の色も青から黒へと変わった。

チューリッヒ中央駅まで戻ってくると、何やら駅の中が光っていた。

ちょっと覗いてみることにする。

巨大なクリスマスツリーがライトアップされ、賑やかな音楽が鳴り響く。

さながらそこはパーティー会場。

でも、公共の駅であることには変わりない。

昼間から賑やかだったクリスマスマーケットが、夜に入り一段と大勢の人でごった返しているようだ。

人をかき分けながら、店を見て回る。

ヨーロッパでは12月になると寒くて天気も悪いけれど、クリスマスが来る高揚感がそれを全て吹き飛ばしてくれる。

キリスト教徒ではない私は、そろそろホテルに戻るとしよう。

スイス最大の都市にして、ヨーロッパの金融の中心地でもあるチューリッヒは、中世の面影をしっかり残した素敵な町でもあった。

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