聴力回復のための手術を受けるため入院した義妹のお見舞いに行くと妻が言うので、私も一緒に電車に乗ってお茶の水まで出かけた。
病院の規則で面会はできないため、差し入れの品だけ託けて、近くのお店で遅いランチを食べる。
「春夏秋冬 季の庭」という名の和食のお店。
ランチタイム終了間際に飛び込んだので、お客さんはもうほとんどいなかった。
妻は「鯖味噌煮と焼豆腐」という定食を注文し、私は「大山鶏 味噌そば」(950円)というラーメンをいただくことに。
ラーメンに一品付くというので「ちりめん山椒ご飯」を選ぶ。
ちょっと和風なのか、味噌汁のようなラーメンで、個人的には今ひとつ。
鯖の味噌煮は美味かったらしいので、どうやら選択を誤ったようだ。
久しぶりに夫婦で都心まで出てきたので、お茶の水界隈に多い老舗の喫茶店にでも寄って帰ろうという話になった。
少し歩いてまず向かったのは「高山珈琲」。
淡路町で人気No.1のこの店は、午後2時すぎだというのに行列ができていた。
コーヒー1杯飲むのに、わざわざ並んでまでと思い、別のお店を探すことにする。
続いて向かったのは、神田藪蕎麦の向かいにある老舗の喫茶店「珈琲ショパン」。
昭和8年に創業して、1986年に再開発に伴って現在の場所に移転したという。
入り口のポスターには、次のように書いてあった。
『頑固なほど昔のままの濃い珈琲と深い香りがショパンには残っています。大きい椅子、ステンドグラス、自分の部屋の様にとけこんで座る人、永い時の流れを感じる所、それがショパンです。』
中に入ると、イメージしていたよりも素朴な昭和の喫茶店だった。
「ショパン」という名の通り、クラシックがゆったりと流れるものの、気取ったところはない。
店の奥に置かれたこの家具は移転の際に持ってきたこだわりの品のようで、昭和の雰囲気を今に伝えている。
そういえば、昭和の時代、食器をわざと見せるようなサイドボードがどこの家庭にもあった気がする。
トイレ脇の壁には「CHOPIN」の文字が刻まれたステンドグラスが嵌め込まれていた。
こちらも創業当時から使い続けている大切なものなのだろう。
昭和というよりも大正ロマンを感じさせるインテリアである。
ただ、すぐ隣に大声で話をするグループがいたため、店内は決して静かとは言えず、それはいささか残念であった。
メニューを開く。
この店の名物はあんこを挟んだホットサンド「アンプレス」(600円)。
でもこの日はすでに売り切れだという。
そこで、私も妻も「ブレンド珈琲」(550円)を注文した。
わざわざメニューに「通常の珈琲よりも濃いめです」と書いてあり、注文した時も店員さんから「濃いめですが」とお断りがあった。
果たして、どんなお味なのか?
クリスマス前ということもあり、私はプラス300円で「パウンドケーキ」をつけてもらった。
レーズンが散りばめられた素朴なパウンドケーキで、ずっしりと身が締まった混じりっ気のない一品である。
パウンドケーキを一切れ食べてから、コーヒーを飲む。
なるほど。
濃さもあるが、それ以上にかなり強い酸味を感じる。
砂糖とミルクは昔ながらのカラス容器に入っていた。
まずはお砂糖だけ入れて味の変化を試し、続いてミルクも入れて飲んでみる。
何も入れない状態と、砂糖だけを加えた状態、さらに砂糖とミルクを加えた状態、その変化がかなりはっきりと楽しめるコーヒーである。
酸味が強い分、個人的には砂糖もミルクも入れた方が好みだ。
今時のコーヒーは薄いと感じることが多いので、私はやはり昔のコーヒーの方が好きである。
いやはや、決してコーヒー好きではない私でも美味しいと感じた老舗の味。
わざわざお茶の水まで来た甲斐があったというものだ。
これからもたまには都心に来て、老舗の味を楽しみたいものである。
食べログ評価3.71、私の評価は3.50。
「珈琲ショパン」 電話:03-3251-8033 営業時間:[月~金]8:00~20:00 [土]11:00~20:00 定休日:日曜・祝日