🇯🇵 愛媛県/今治市 2024年5月24日~25日
しまなみ海道を通って四国の玄関口、今治に着いたのは5月24日の夕方だった。
以前、ドライブの途中に通過したことはあるが、宿泊するのはもちろん初めてである。

通りすがりに見た今治城は、三重の堀に海水を引き込んだ珍しいお城で、そのお堀の大きさに圧倒され、思わず車を止めた。
「築城三名人」と呼ばれた武将、藤堂高虎によって築城されたもので、海から直接城に入ることもできたらしい。
香川の高松城、大分の中津城と並び「日本三大水城」と呼ばれるのも納得である。

明治から昭和にかけての今治といえば造船の街。
今も日本最大の造船会社「今治造船」の本社が置かれ、市役所の前には、巨大な船のスクリューがモニュメントとして置かれていた。
「今治造船」は度重なる造船不況を乗り越えて、経営に息詰まった中小の造船所を吸収しながら成長し、日本国内では最大規模、世界でも依然として4位のシェアをキープしているというのはちょっと意外だった。

そして最近では、今治といえば真っ先に思い出すのが「今治タオル」だろう。
私は「すごいタオル」というバスタオルを愛用していて、ふるさと納税で今治市に何度も寄付をして返礼品の「すごいタオル」を手に入れたものだ。
今治に来た以上、「今治タオル」の本店に行ってみるしかない。
さまざまな種類のタオルがずらりと並んだオシャレなショップで、私は初めて「今治タオル」というのが企業名ではなく、130年間今治でタオルの生産に関わってきた200近くの工場が組織する組合が仕掛けた起死回生のブランド戦略だったことを知った。
2006年、アートディレクターの佐藤可士和さんを招聘して再生プロジェクトがスタート。
「安心・安全・高品質」にこだわったものづくりで、安価な外国製品に負けない競争力を手にいれ、今では「IMABARI TOWEL」は世界的なブランドに成長したのだ。

意外なところでは、焼肉のタレのCMで見覚えのある日本食研の宮殿工場も今治にある。
図書館で借りた旅行ガイドブックでそのことを知った私は興味本位で工場までドライブしてみたのだが、これが予想外に立派な“宮殿”で、ウィーンの世界遺産「ベルヴェデーレ宮殿」をモチーフにしたというのもまんざら嘘ではないようだ。
日本によくあるヨーロッパを模倣した安っぽいレジャー施設と比べ、フェンスなども本格的で、とてもこの宮殿の中で焼肉のタレが製造されているとはとても思えない。
中国の深圳で建設されていたファーウェイのテーマパーク顔負けの工場を思い出した。

そんな知らないことばかりの今治で、私たちが宿泊先に選んだのは、今年3月にオープンしたばかりの「しまなみプライムホテル今治」。
最上階に大浴場を完備したセンスのいいカジュアルホテルだった。

今回初めてシングルルームを2部屋予約した。
夜中に一旦目が覚めてしまうと眠れなくなるという妻のリクエストがきっかけだったが、私としても妻に気を使わずに自分のペースで消灯時間を決められるのはありがたい。
これからはビジネスホテルのシングル2部屋というのが、私たち夫婦の旅の定番になりそうだ。

その日の夕食は、ホテルから歩いて3分ほどの距離にある中華レストラン「白楽天 今治本店」を選んだ。
創業は1970年。
今治で最も古い中華料理店の一つだが、客の多くが注文する超人気メニューがあるという。

それが、今治のソウルフード「元祖 焼豚玉子飯」。
私がこれまで聞いたこともないB級グルメのようだ。
『発祥は、中華料理店のまかない飯。焼豚をのせたご飯に焼豚の煮汁をかけただけのものでしたが、1970年(昭和45年)に先代が「白楽天」を開店した際に、そのまかない飯を改良し、「やきぶた玉子めし」として初めてメニューに登場させました。当時の店舗は今治北高等学校の前にあり、その美味しさは瞬く間に学生たちに評判となりました。』
こうして、この店は「焼豚玉子飯」発祥の店として広く知られるようになったらしい。

店に入ると、これまでに来た有名人のサインがずらり。
私は全く知らなかったが、今治といえば白楽天の「元祖 焼豚玉子飯」と言われるほどの有名店なのである。

しかし、店内は昭和の中華料理店とはかけ離れた今風な造りである。
最近リフォームしたのだと思うが、個人的にはもう少し昔の雰囲気を残して欲しかった。

もちろん中華レストランなので、一般的な中華料理があるのだが、私の頭の中はすでにまだ見ぬソウルフードでいっぱいになっている。
なになに・・・「元祖 焼豚玉子飯の通な食べ方」?
『まずは着丼!! あなたの目の前に焼豚玉子飯が運ばれてきました!! 写真撮影をお忘れなく!
レンゲを使って黄身を一つ崩し、さっくり混ぜたら、まずは一口! ご飯&焼豚&タレのハーモニーを堪能しよう!
半分食べたら、もう半分も同じ要領でどんどん食べる! お好みで一味唐辛子や、正面の辛くなるタレなどもどうぞ! 甘辛いタレと相性バッチリ!』
どこが“通”なのかは不明だが、いかにも男子学生が好きそうな丼飯であることはわかる。

私は、いくつか用意されたセットメニューの中から「Bセット」(1200円)をオーダーした。
「元祖 焼豚玉子飯」に小エビ天とスープ、サラダがセットになったものだ。
お店オススメの「Aセット」は小エビ天の代わりに唐揚げが付いて1200円、そのほか揚げギョーザやラーメンと組み合わせたセットメニューもある。
ちなみに、「焼豚玉子飯」の単品は900円だそうだ。

それにしてもこのソウルフード、見た目がどうなんだろう?
表面に見えているのは単なる目玉焼き。
あえて下に隠れる焼豚を隠しているのだろうが、写真写りという点ではさほど美味しそうに見えない。

目玉焼きをめくってみると、タレが沁みた焼豚が登場するのだが、すでに犯人がわかってしまっている推理小説のようにも思う。
まあこれが先代が編み出した見せ方だったのだろうから、それを守りたい気持ちもわかるが、ガイドブックで初めてこの写真を見た私は正直な話、これを食べたいとは思わなかった。

「通な食べ方」に従って、黄身を潰して軽く混ぜ、肉と卵とご飯を一緒に口に放り込む。
まさに、想像通りの味。
男子学生がこよなく愛するであろう濃厚で甘辛い青春の味であった。

味変のための調味料はテーブル上にはなく、入り口付近のテーブルにまとめて置いてあった。
私も「通な食べ方」を試そうと、一味唐辛子と辛くなるタレをかけてみる。
う〜む、微妙!
個人的にはオリジナルの味のままの方が好みだ。

この濃厚な丼に合わせるドリンクだが、席に着くまでは私は生ビールと決めていたのに、メニューの中にあった「瀬戸内レモネードハイ」というのが妙に気になって、思わずこれを注文してしまった。
結果は単なる酎ハイ。
甘ったるくて、完全に失敗であった。
「焼豚玉子飯」は甘辛く味が濃いので、絶対に生ビールか甘くないドリンクにすべきだ。

ちなみに妻は「麻婆豆腐」を注文した。
ご当地グルメに踊らされない不屈の精神。
いつもながら、さすがである。
「焼豚玉子飯」は若い男性を魅了する食べ物であり、シニアの女性には全く魅力がないのだろう。

夕食を終えて、あまり人通りのない今治の中心街を歩く。
スーパーがあったので立ち寄ってみると、ここにも「焼豚玉子飯」の文字。
やっぱり、今治を代表するご当地グルメなんだと改めて脳裏に刻んだ。
食べログ評価3.49、私の評価は3.40。
「白楽天 今治本店」
電話:0898-23-7292(予約不可)
営業時間:11:00 - 15:00/17:00 - 21:30
定休日:火曜
https://www.hakurakuten.net/