<きちたび>南太平洋の旅2023🌴 痛恨のミス!パプアニューギニアはビザが必要で羽田空港で搭乗を断られる

今日からまた海外に出かける・・・はずだった。

行き先は南太平洋。

パプアニューギニアとお隣のソロモン諸島である。

目的は旧日本軍が泥沼の戦いを繰り広げたガダルカナルやラバウルを訪ねること。

中央アジアの旅から戻ってすぐに予約して、満を持しての出発となるはずだった。

出発2時間半前の午後12時半過ぎに羽田空港に到着。

搭乗予定のマニラ経由パプアニューギニアの首都ポートモレスビー行きのカウンターには長蛇の列ができていた。

これは少し時間を潰した方がいいと思い、両替をしたりコンビニでサンドイッチを買って食べたりして再び列に戻ってみると、案の定、列はだいぶ短くなっていた。

おまけに、航空会社のスタッフが「オンラインチェックインを済ませている人はこちらへ」と声をかけてくれたので、長い列に並ぶことなくスムーズにチェックインの手続きに入ることができた。

ところが、である。

にこやかに対応してくれていた女性スタッフが「パプアニューギニアのビザはお持ちですか」と聞く。

「到着時にアライバルビザを取るつもりです」と答えたが、女性は困った顔になった。

どうやらパソコンに映し出された搭乗の条件の中にビザを事前に取得していることという項目が含まれているようなのだ。

私はすぐにスマホで検索し、パプアニューギニア大使館のサイトを開くと、次のように書いてある。

『観光および商用目的で入国する場合、ポートモレスビーのジャクソン国際空港とラバウルのトクア国際空港では、到着時にビザを取得することが可能です。』

私はそのサイトを女性スタッフに示すが、女性はますます困った顔になり、同僚と相談を始めた。

私も不安になってもう一度大使館のサイトを読んでみると、ショックな一文が書いてあるではないか。

『(注:2020年3月以来コロナ禍の影響でアライバルビザは停止しております。)』

これは、ヤバい。

完全に見落としていた。

旅行の予約を始める時、当然ビザについては調べていて、アライバルビザでOKだと完全に思い込んでいた。

パプアニューギニアを旅行した人のブログを見ても、みんな治安のことばかりで、入国に関しては簡単に空港で取得できたと書いてあり、すっかり油断していた。

どうやらビザが必要なのは間違いないらしい。

つまり、ビザを持っていない私はフィリピン航空の飛行機に乗ることはできないということだ。

「マニラまでは行けますか?」と聞いてみる。

すると女性は申し訳なさそうに、「90日以内に出国するチケットを持っていれば搭乗可能です」と答えた。

すなわち、私のチケットはマニア経由ポートモレスビー行きであり、マニアからポートモレスビーの便に搭乗できない状況だと、羽田・マニラ便に乗るためにもフィリピンから出国する別のチケットを買う必要があるというのだ。

私は急遽、スマホのアプリを開き、マニラから直接ソロモン諸島に行く便やフィジーやパラオに行く航空券を探す。

パラオの往復が一番リーズナブルだったが、それでも新たに10万円以上の出費となってしまう。

さあ、どうする?

しばし思案した後、女性スタッフに改めて確かめてみた。

「マニラからどこかに往復して、帰りのマニラ・東京便には乗れますか?」

すると彼女は再び申し訳なさそうに、ポートモレスビーへのフライトに乗らない段階で、その先のチケットは無効になるというのがルールであるため、帰りのマニラ・東京便にそのまま乗ることはできないと私に告げた。

万事休す、である。

出発時刻まで残り1時間ほどになり、今更ジタバタしてマニラに飛んでもろくなことはないだろう。

ここは潔く自らのミスを認め、今回の旅行を断念し、キャンセルできる予約はキャンセルして損失を減らすべきと私は判断した。

自宅に戻るモノレールを待ちながら、これは「ラスカルの呪い」かもしれないと思う。

今回の旅行は最初からどうもうまくいかないことばかりだった。

予約サイトでローカルフライトの手配をしている時も、予約したソロモン航空の出発時刻が違っていて慌ててキャンセルするものの、全額返金はできなかった。

パプアニューギニアの治安状況が世界でも最悪クラスであることを知ったのも、予約を始めた後だった。

特に首都ポートモレスビーは「世界一治安が悪い首都」とも呼ばれているそうで、「ラスカル」と呼ばれる武装強盗団による犯罪が多発、殺人事件も頻発していて旅行者が街中を歩くことは極めて危険だと何を読んでも書いてある。

このまま、パプアニューギニア行きを強行したら、ひょっとすると私は重大なトラブルに巻き込まれていたのかもしれない。

そう思うと、多少心が慰められた。

岡山から戻ってからの3日間、図書館でパプアニューギニアやソロモン諸島に関連する本を借りてにわか勉強に励んだ。

その中の一冊、西村誠著『太平洋戦跡紀行 ニューギニア』の中には、「ラスカル」についての実に生々しい記述があったので、ここに引用させてもらおうと思う。

ポートモレスビー港から、市街地へ向かう途中に少しだけ山岳地帯を走り抜ける道がある。その中程まできたところで、

「ここ、すごいでしょ」

N氏が指さしたのは、巨大なゴミ集積所だった。

「この中に、一つの町があるんですよ。ゴミの中から売れるものを漁って、それで生活している人々がいるんです」

見ると、幾重にも連なるゴミの山の各所に、人々が取りついている。あまりにも不思議な光景だったので、

「中、見ても大丈夫ですか?」

「大丈夫です。写真も撮れますから、入ってみましょうか」

運転手に合図して、ゴミの山の中に車を進めたのだった。湯原君がウインドーを降ろして、カメラを向けた瞬間だった。遊んでいた子供が、私たちの車を指さして何やら大声で叫ぶ。すると、男たちが一斉に、走り寄ってきた。

運転手はそれを見て、慌ててバックギアを入れる。ものすごい勢いで後進したが、男たちの足のほうが早かった。先頭を走ってきた男が、鉄パイプを車めがけて振り降ろす。フロントガラスが木っ端みじんに砕け散った。その瞬間、運転手はハンドル操作を誤り、後輪が路傍の溝に落ち込んで動けなくなってしまう。

すでにゴミ集積所の敷地の外にまで出ていたが、そこで30人ばかりの男が車を周りを取り囲んだ。何人もが鉄パイプを振り回すので、車のガラスはすべて割られてしまい、私も湯原君も細かい破片を全身に浴びてしまう。

幸いにも、男たちの攻撃は運転手ばかりに集中していた。割れた窓から鉄パイプを突っ込み、すでに運転手は血まみれ、私や湯原君のところにも男たちは手を入れてくるがなぜか危害を加えようとはせず、カメラを奪おうとするので湯原君は必死に一眼レフをかき抱いていた。

「どうなるんだよ」

N氏に大声で問い掛けると、

「やばいです」

おいおい、こんなときに客に怖がらせるガイドがあるもんか。しかし、この時は冗談ではなく殺されるかもしれないと思った。

時間にすれば、ほんのわずかの間に過ぎなかったのだろう。車がすでにゴミ集積所の敷地外で出ていたのが幸いした。それまで盛んに車に攻撃を加えていた男たちの動きが急に止まり、一斉に逃げ出した。

道の反対側に一台のバスが止まり、20人ほどの男が走り出てきている。バスから降りた男たちは路傍に転がっている巨大な石を掴むと、まるで吶喊の号令がかかったかのようにこちらに向かって駆けてくるのだ。

ラスカルによる被害が増加しているので、ポートモレスビーの市民たちは互いに助け合って防衛策を取っている。だから、私たちを見捨てることなく、助けようとしてくれたのだ。ラスカルたちは、そんな男たちに抵抗しようとはせず、集積所の中に逃げ込む。その直後に今度は警察車両が到着して、ライフルを持った2名の警官が駆け込んでくる。

やっとのことで私たちは一命をとりとめたのだが、男たちが逃げる直前に、窓から手を差し込んできて、

「フィルム」

と一言。撮影途中のフィルムをカメラから取りだして手渡すことでことなきを得ていた。

警察車両に先導されて、最寄りの警察署に連れていかれた。まずは水道水を被り、ガラス片を洗い流す。汗ににじんで出血は広がっていたが、かすり傷程度だった。その後、懇々と警官に説教されるが、この内容はピジン語であったため私たちにはさっぱりわからない。後でN氏に説明してもらったところ、

「もし、敷地の中で車がエンコしてたら、全員殺されてたそうです。ゴミの山の中に埋められたら、なんの痕跡も残らないですから」

まるで他人事のようにそんなことをいう。

西村誠著『太平洋戦跡紀行 ニューギニア』より

マニラにも同じようなゴミの山「スモーキーマウンテン」という場所があり、そこを取材したことがあるが、こういう場所を取材する際にはそれなりの段取りをつけないと危険だ。

この時のガイドが素人だったということかもしれないが、旅行者にはどこが危険地帯なのかを判断するのは難しい。

パプアニューギニアの場合、普通に街を歩いているだけで殴られて現金を奪われるといった事件が多発しているそうだ。

今回の旅行に備えて外務省の「たびレジ」という海外安全情報サービスに私の渡航情報を登録したところ、すぐにこんなメールが送られてきた。

パプアニューギニアにお住まいの皆様及び渡航中又は渡航予定の皆様へ

 9月21日(木)午前5時50分頃、ポートモレスビー市内ボロコにおいて、観光目的で当地渡航中の邦人男性1名が滞在先のホテル前の路上において、後方から来た男性2人組により所持していたバッグ(財布、旅券、携帯電話、モバイルバッテリーを含む)を強奪される強盗被害が発生しました。

 18日付領事メールにてご連絡差し上げた、東ハイランド州ゴロカにおける邦人に対する路上強盗致傷被害に続き、邦人に対する被害事件が立て続けに発生しています。

 当地にご滞在中または渡航を計画されている皆様におかれましては、祝祭日を含め日頃から滞在・渡航先の治安状況に関する最新情報の収集を徹底いただくとともに、人通りの少ない早朝の時間帯や夜間の単独での外出、徒歩での移動は可能な限り避け、外出される場合には、複数で行動することや民間警備会社のエスコートサービスの利用等も検討の上、身の回りの安全確保に十分留意してください。併せて、万一被害に遭われた際は、不用意な抵抗を避け身の安全を第一に行動しつつ、被害の発生について大使館へ速やかに報告いただきますよう、よろしくお願いいたします。

在パプアニューギニア日本国大使館から届いたメール

その1週間前には、私も利用する予定のラバウルの空港が暴徒の襲撃を受けて破壊され無期限の閉鎖となったとのメールも届いていた。

パプアニューギニア恐るべし。

私もいろいろ危険な国に行っているが、迂闊に街中をぶらぶらできないなと心を引き締めているところだ。

ネットを見ても、パプアニューギニアについて調べると必ず「ラスカル」に関する情報が溢れている。

特に現地で暮らしている日本人の情報は興味深い。

たとえば、こちらの『パプア服部くんのPNG日記』には「パプアの賊、ラスカルの傾向と対策」という記事。

面白いのでちょっと引用させていただく。

先日の
ブログの記事に
いただいたコメントで、

「ラスカルの傾向と対策」

的な記事を書いてほしいという要望があったので
書いていきたいと思います。

まず

「ラスカル」

って何…?アライグマ…?

という方もいらっしゃると思いますので
ザックリ定義から。

『ラスカル』

パプアにいる賊の総称。

日本人からすると1つの犯罪組織を
イメージしがちですが、あくまで
悪い奴らの“総称”です。

英単語の
「rascal
:悪漢、やくざ者、いたずらっ子

から来ているみたいです。

決してアライグマではありません。

“総称”なので
色んなタイプがいます。

銃やナイフを持った奴から、
(パプア人は大体皆ナイフ持ってるけどね)

チンピラ、酔っぱらい、強盗、空き巣
まで種類は様々。

こういうやつらに
襲われることをパプアでは

「ラス狩られる」といいます。

引用:『パプア服部くんのPNG日記』より

なるほど・・・「ラスカル」というグループがあるわけではなく、悪い奴らの総称が「ラスカル」なんだ。

そのうえで、危ない場所として次の3つを挙げている。

  1. 人の多い場所
  2. マーケット
  3. 人気のない場所

要するに人が多くても危険だが、人気がない場所はもっと危険だということのようである。

そして、出歩く時の対策として、次のようにアドバイスしている。

  1. なるべく1人で歩かない
  2. 信頼できるパプア人を連れて歩く
  3. 小ぎれいな格好をしない

こうした対策をしたうえで、もしもの時には店に逃げ込めという。

どうしても一人で行かないといけない場合は
光の速さで用事を済ませましょう。

また、お店の中は基本的に安全です。
変なヤツがついてきた場合は、
店に入るとセキュリティがいるので
そいつに話しかけると変なヤツを追い払ってくれたりします。

お店は
出入り口を鉄の門で
塞いでいる↓ので

ケンカや暴動が起きた時は、
お店の中に逃げ込めば安全です。
お店も門を閉めて店に被害が出ないように動きます。

お店の中にいればスタッフの動きで大体
外の様子がわかるので、じっとしてましょう。

以上が
『街』のラスカル対策・安全対策です(笑)

引用:『パプア服部くんのPNG日記』より

なるほど。

どうあがいても、自分一人で気ままに旅行することは難しそうだ。

アジアでもアフリカでも、ここまで口を揃えて治安の悪さを警告されることはこれまでなかった。

今回、ビザの問題で飛行機に乗せてもらえなかったのは、何かが私を引き止めてくれたんだと考えよう。

まだまだ行きたい場所はたくさんある。

せいぜい旅行を楽しんだ後で、もう一度パプアニューギニア行きをトライすることにしよう。

そう気持ちを切り替えたら、もう次の旅行の計画を立てたくなっている。

<きちたび>南太平洋の旅2023🌴 パプアニューギニア🇵🇬 ラバウル空港が暴徒に襲われ無期限閉鎖になってしまった!

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