<吉祥寺残日録>パリ五輪2024🇫🇷 続々新たなメダリストが誕生する中、アリーナに響いた“絶対女王”阿部詩の号泣が耳に残る #240730

暑い夏がピークを迎える中で、パリオリンピックが始まった。

時差の関係でメインの競技が行われるのは日本時間の深夜。

外出を控えながら、録画機をフル稼働して片っ端から録画したオリンピック中継を楽しむ日々が始まっている。

うっかりいつのものようにネットを開くとオリンピックの結果がわかってしまうので、なるべくスマホには触らないようにしている。

大会はまだ始まったばかりだが、日本人メダリストも続々誕生している。

パリ五輪のメダル第1号となったのは、柔道女子48キロ級の角田夏実。

得意技の巴投げが面白いように決まり、ほぼ危なげなく金メダルを獲得した。

角田の柔道は独特だ。

長い手足を最大限に生かし、組み合った瞬間に相手を畳に引き込んで両足で巧みに持ち上げる。

たとえ技が決まらなくても、長い脚を相手に絡みつけてじわじわと関節技や絞め技に持ち込む。

まるで蜘蛛が獲物を襲うようなリスクの少ない柔道である。

東京五輪から始まったスケートボードでは現役中高生のメダリストが誕生した。

スケートボード女子ストリート決勝が行われたのは、コンコルド広場に設けられた特設会場、パリ特派員時代に勤務した支局が広場の近くにあり、コンコルド広場の地下にある駐車場を毎日のように利用していたので、とても懐かしい。

この種目で見事優勝したのは14歳の吉沢恋(ここ)。

世界ランキング1位で臨んだ初めてのオリンピック、安定した演技で予選をトップで通過すると、決勝でも大技「ビッグスピンフリップボードスライド」を決めて金メダルを手繰り寄せた。

日本人の金メダルは、東京大会の西矢椛(当時13歳)に継ぐ2大会連続。

スケートボードは日本のお家芸となった。

銀メダルを獲得したのも初出場15歳の赤間凜音(りず)。

世界ランキング2位の赤間は、吉沢を上回る安定感で決勝では終始トップをキープ、最後は吉沢に逆転を許すも堂々の日本選手ワンツーフィニッシュを飾った。

これで2大会連続で2つのメダルを日本が獲得した。

男子にも新たなスターが誕生した。

フェンシング男子エペ個人の加納虹輝。

フェンシングで日本人初の金メダルを手にした。

決勝の相手はフランスの英雄ボレルだった。

身長で20センチ上回る相手に対し、素早い攻撃で得点を重ねていく。

フェンシングはフランス発祥の国技であり、中でも全身を攻撃対象にできるエペは最も競技人口が多く「キングオブフェンシング」と呼ばれるそうだ。

そのエペで個人の金メダルを日本人選手が獲得するというのはまさに歴史的な快挙である。

競泳の世界にも新たなメダリストが現れた。

男子400m個人メドレーで銀メダルを獲得したのは大学生18歳の松下知之。

前半は先輩の瀬戸大也が先行する中でじっくり自分のペースを守り、最後の自由形で一気に2位に躍り出て自己ベストの好タイムでフィニッシュした。

長年日本競泳界の顔として頑張ってきた瀬戸は7位。

新旧交代を象徴するレースとなった。

こうして新たなスターが次々に現れる中、オリンピック2連覇を達成したのが柔道男子66キロ級の阿部一二三だ。

お互い研究し尽くしてなかなか技での決着がつかない試合が多いこの大会で、阿部一二三は美しい柔道で鮮やかな投げ技を決め、危なげなく勝ち進んでいく。

兄妹揃っての2連覇が期待される中、妹・阿部詩に異変が起きる。

柔道女子52キロ級の絶対女王で、オリンピック2連覇を狙う阿部詩は、初心にかえって闘うためにあえてノーシードでオリンピックに臨む道を選んだ。

世界ランキングのポイントを得るための国際大会に積極的に参加しなかったため、パリオリンピック前のランキングは9位。

その結果、1回戦を簡単に一本勝ちした阿部詩は、2回戦で世界ランキング1位ウズベキスタンのケルディヨロワと対戦することになった。

それでも試合開始早々に技ありを奪い、圧倒的優勢に試合を進めていた阿部詩。

しかし残り時間1分、素早く間合いを詰め腰付近をつかんだ相手の谷落としに、背中から畳に落ち一本負けを喫した。

何が起きたか分からず、畳の上で呆然とする阿部詩。

その後、涙が溢れて止まらなくなってしまった。

畳を降りても通路でうずくまり、人目も憚らず大声で泣いた。

次の試合が控えているため係員に移動を促されても立ち上がることができず、コーチに抱き抱えられるように会場を去る阿部詩に対し、フランスの観衆からも「UTA、UTA」の大声援が響いた。

このシーンとアリーナに響き渡った彼女の鳴き声は、金メダル以上にパリ五輪を象徴する映像として私たちの記憶に刻まれることになるだろう。

そんな衝撃的な妹の敗戦を受け、「妹の思いも背負って戦う」と兄は頑張った。

東京オリンピックの金メダル以来無敗の阿部一二三は、準決勝で世界ランキング1位の難敵モルドバのデニス・ビエルに技ありで勝利すると、決勝ではブラジルのウィリアン・リマを合わせ技一本で退け、危なげなく2連覇を達成した。

優勝を決めた阿部一二三は妹が見守る観客席に向かってVサインを送り、兄妹で誓った金メダルの約束を果たしたことを晴れやかに示したのだ。

涙といえば、白血病からの復活を目指す競泳の池江璃花子の涙も印象的だった。

女子100mバタフライ、準決勝で敗退した池江はプールサイドに座り込み一人涙を流した。

その後インタビューに応じた池江の口から出た言葉はちょっとショッキングだった。

「正直、頑張ってきた分だけ無駄だったのかというレースでした。」

しかしこれにめげることなく、彼女は「また4年後、リベンジしに帰ってきたい」と語ってプールを後にした。

メダルが期待されたメダルが期待されたビッグネームたちも苦杯を舐めた。

東京オリンピックで金メダルを獲得した卓球混合ダブルス。

日本は張本・早田の男女エースで連覇を狙ったが、初戦で北朝鮮ペアに敗れ去った。

東京五輪で最終聖火ランナーを務めたテニスの大坂なおみも初戦敗退。

世界を相手にする勝負の厳しさを見せつけた。

判定をめぐる疑問も浮かんだ。

柔道男子60キロ級の準々決勝、スペインのガリゴスの絞め技で失神し一本負けを喫した永山竜樹。

しかし審判が「待て」を宣言した後もガリゴスは6秒間絞め続けており、どう見てもルール違反と言わざるを得ない。

日本チームの抗議でも判定は覆らず、永山は敗者復活戦に回った。

スポーツに不可解な判定はつきものである。

永山はこの敗戦にくじけることなく、敗者復活から這い上がり意地の銅メダルに輝いた。

いただけないのは、心無い日本のファンたちがスペイン選手に直接嫌がらせのメッセージを送りつけたことだ。

スペインでは選手が日本から脅迫を受けたと報道されたという。

柔道女子の角田が準決勝で勝利した判定も不可解だったが、これについて問題にする声は聞いたことがない。

身内贔屓になるのは仕方がないが、過度な抗議はオリンピックを台無しにする。

判定も含めて全てが勝負、それがスポーツの世界である。

単なる勝ち負けだけでなく、世界中の選手たちがこの日のためにどれだけ見えないところで努力を重ねてきたかに想いを馳せながら、全力で応援し彼らの健闘を讃えたいと思う。

阿部詩の号泣する声が今も耳を離れない。

<吉祥寺残日録>【東京五輪3日目】金メダルラッシュ!競泳大橋とスケボー堀米、そして柔道の阿部兄妹も史上初の快挙 #210726

コメントを残す