<吉祥寺残日録>パリ五輪2024🇫🇷 オリンピックの女神に愛された者たち!堀米雄斗と男子体操、大逆転の金メダル #240731

オリンピックは特別な大会である。

そこで勝つためには、実力があるだけではなく、オリンピックの女神から愛されることが必要だ。

柔道男子81キロ級で史上初の連覇を果たした永瀬貴規もきっと女神に愛された一人なのだろう。

リオで銅メダル、東京で金メダルを獲得しながら、さほど注目されなかった永瀬だが、3回目のオリンピックでもさほど期待を集めることはなかった。

なぜなら東京オリンピック後の3年、彼はあまり勝てなかったからだ。

そんな永瀬が決勝で対戦したのは、ジョージアの24歳タト・グリガラシビリ。

東京五輪の後、世界選手権で3連覇を達成した現役最強の絶対王者である。

この日の永瀬は調子が良くて、準々決勝でベルギーの宿敵カッセを大外刈りで退けると危なげなく決勝に勝ち上がったのに対し、いつもは野獣のような闘争心で相手を圧倒するグリガラシビリは初戦から元気がなく、何とか決勝まで進んだものの疲労の色がはっきりとうかがえた。

そんな二人の対戦は、試合開始直後から永瀬のペース。

早々に技ありを奪うと、逆転の投げを狙って前傾姿勢になった相手を谷落としで畳にたたき付け鮮やかな一本勝ちを収めた。

もちろん永瀬の熟練の試合運びが勝利をもたらしたことは間違いないが、東京五輪の金メダル後、ほとんど国際大会で優勝できなかった男がこの階級では誰も成し遂げたことのない連覇を達成できたのは、単に実力だけでは説明できない。

永瀬とは対照的なのが、同じ日に登場した柔道女子63キロ級の高市(旧姓田代)未来だろう。

高市も国内の激しい代表争いを勝ち抜き、永瀬と同じくリオ、東京に続く3回目のオリンピック出場を果たした。

しかし、パリでも女神は微笑まなかった。

2回戦でクロアチアの伏兵カタリナ・クリストに延長線の末に技ありを取られてまさかの敗戦、東京五輪に続いて2大会連続の2回戦負けで敗者復活戦にも進めなかったのだ。

オリンピック以外の国際大会では何度も優勝しているのに、オリンピックでは3度出場してメダルなし。

試合後、自分に対して「何やってんだよ」と述べ、悔しい胸の内を吐露した高市だが、彼女はつくづくオリンピックの女神から見捨てられているのだと気の毒になった。

オリンピックの女神に愛されているという意味では、この男の右に出るものはほとんどいないだろう。

スケートボード男子ストリートの東京五輪金メダリスト・堀米雄斗。

新種目として採用された東京オリンピックでは、予選6位で何とか決勝に進んだものの最初の「ラン」ではいい演技ができず、メダルは絶望的かと思われたが、後半のベストトリックで大技を決めて高得点を連発、最後には大逆転でこの種目の金メダル第1号をかっさらった。

6歳でスケートボードをはじめ単身渡米してプロスケーターとして成功した堀米は一躍時の人となり、堀米の後を追ってスケートボードを始める子どもたちが全国で急増した。

その結果、日本人スケーターのレベルがこの3年で一気に上がり、世界ランキングの上位に日本人がひしめき、皮肉なことに堀米自身が日本代表から落選するギリギリのところまで追い込まれたのだ。

堀米は東京オリンピック後の日々を「地獄のような3年」と語る。

代表選考の大会で予選落ちが続き、最後の大会で優勝してギリギリで日本代表の3人目に滑り込んだ。

パリ五輪開会前の世界ランキングでは堀米は3位。

2位は東京五輪にも出場した22歳の白井空良、1位はなんと14歳の小野寺吟雲で、この3人が日本代表に選ばれたのだ。

しかし、オリンピックは世界ランキングの関係ない一発勝負。

出場選手最年少の小野寺は「ベストトリック」で1回しか成功できず、残念ながら予選で姿を消した。

堀米は4位、白井は3位で予選を突破、上位8人による決勝に進んだ。

今大会から「ラン」1回、「ベストトリック」2回のベストスコアの合計で順位を決めるルール変更が行われたが、「ラン」を終了した時点ではアメリカのカリスマスケーター、ナイジャ・ヒューストンが余裕のトップに立つ。

白井は3ポイント差の3位、堀米は6ポイントの4位でアメリカ勢を追う。

後半の「ベストトリック」に入ると、白井が90点台のトリックを2本決め優勝争いに食い込む一方で、堀米は4本を終わって成功は1回だけ。

最後のトリックを残した段階で、アメリカ勢が1位2位を競り合い、白井が3位のメダル圏内。

連覇を狙う堀米は7位と出遅れ、最後のトリックに一発逆転を賭けるところまで追い込まれた。

最後のトリックに選んだ技は最高難度の「ノーリーバックサイド270テールブラントスライド」。

守りに入ることなく、3回連続で失敗した大技にあえて挑んだのだ。

レールにひらりと飛び乗った堀米はボードをスライドさせて完璧な着地に成功する。

得点はこの日最高の97.08。

一気にトップに躍り出る。

2位とわずか0.1ポイント差の大逆転劇だった。

堀米がトップに躍り出たことで、3位だった白井はメダル圏から弾き出されてしまう。

白井も再びメダルを目指して最後のトリックへ。

しかし、失敗。

この時点で白井の4位が確定した。

世界ランキング3位で臨んだ東京五輪では予選落ち、そして世界2位でリベンジを誓ったパリでもメダルには手が届かなかった。

堀米と実力差はなくてもメダルの有無で注目度は格段に変わる。

今回も白井に女神は微笑まなかった。

女神で愛されたといえば、体操男子チームも奇跡の大逆転を果たした。

団体での連覇を狙った東京五輪では0.103点差でロシアに敗れた日本男子チーム。

ロシア不在のパリオリンピックでは金メダルの奪還を目標に掲げて臨んだが、新世代の岡慎之助が活躍するもエース橋本大輝が今ひとつ調子に乗れず、中国に2点以上の差をつけられて2位で決勝に臨んだ。

しかし、この日も橋本らしからぬミスが出た。

2種目目のあん馬でまさかの落下、その後日本は4位にまで順位を下げ、トップ中国との差も5種目目を終えて3.267に開いた。

ぶっちぎりの中国に追いつくのはもはや不可能と思われた最終種目、日本と中国はともに鉄棒だった。

中継アナウンサーの関心事も、アメリカ、イギリス、ウクライナとの2位争いに移っていた。

ところが、ここで思いもせぬ女神のいたずらが起きる。

中国選手にミスが連続し、特に2人目に登場した鉄棒のスペシャリストが2度落下して急失速、最終演者を残して日本が中国をわずかながら逆転したのだ。

日本チームの最後に登場したのはに登場したのはエース橋本。

鉄棒が得意な橋本だが、今大会は予選で失敗し目標としていた鉄棒の種目別進出を逃している。

チームメイトが肩を組んで見つめる中、橋本は慎重に得意の離れ業をこなしていく。

F難度の「リューキン」、G難度の「カッシーナ」、E難度の「コールマン」・・・。

橋本が着地を決めた瞬間、会場は大歓声に包まれ、金メダルを確信した日本チームも歓喜する。

中国の最終演技者の鉄棒は、完成度は高いが高難度の離れ技は少なく日本を再逆転することはできなかった。

普通であれば考えられない大逆転劇。

オリンピックの女神は本当に気まぐれだ。

鉄棒で大失敗した中国選手は大丈夫だろうか?

<吉祥寺残日録>【東京五輪6日目】「競泳女子初の二冠」大橋悠依と「体操の若き王者」橋本大輝 #210729

コメントを残す