🇯🇵 鹿児島県/指宿市&鹿児島市 2024年11月24日~25日
鹿児島を旅するなら絶対に体験したいものがもう一つあった。
薩摩半島最南端、指宿の名物「砂むし温泉」である。

テレビなどでよく登場するのは、波打ち際に設けられた公営の「砂むし会館 砂楽」。
しかし、今回幹事が用意してくれたのは自前の砂むし温泉を併設した指宿を代表する巨大温泉旅館「白水館」だった。
どうせなら公営に行きたかったという気持ちと、むしろお手軽でいいやという気持ちがないまぜになる中で、旅館のロビーに入った。

フロントロビーには客があふれ、正面に将棋の藤井聡太七冠の大きな写真が。
12月この旅館を舞台に「竜王戦」第6局が行われるということらしい。
さすが指宿きっての名門旅館である。

チェックインを済ませると、離宮という建物に案内される。
海を望む広大な敷地にはよく手入れされた松が並んでいた。

部屋は真正面に海が広がる和洋室。
ここに4人で雑魚寝する。

窓から外を見ると、見渡す限りこの旅館の敷地であり、幾つもの建物が立っている。
目の前に広がる海は鹿児島湾の入り口付近、対岸に見えるのは大隅半島らしい。
それにしてもこんな巨大旅館、自分では絶対に予約しないタイプの宿であり、これも団体旅行の面白さとも言える。

荷物を置いて浴衣に着替えると、早速風呂場に向かう。
この宿には「元禄風呂」という巨大浴場があり、岩風呂・釜風呂・うたせ湯・泡泉・樽風呂・腰湯・柘榴風呂・浮世風呂・水風呂などさまざまな温泉を楽しむことができる。
そしてお目当ての「砂むし温泉」もこの大浴場を通ってアクセスすることになるが、さすがにここだけは別料金で一人1540円を受付で支払い、専用の浴衣に着替えて順番待ちの列に並ぶ。

自分たちの順番が来ると、案内の人についていざ砂の上に。
旅館の付属施設とはいえ、一度に100人近く寝っ転がれるぐらいの広さがある。
公営のような波打ち際ではないのがいささか残念ではあるが、清潔で立派な施設だ。
指示された通り仰向けに横たわると、男性スタッフがスコップで砂をかけてくれる。
その光景はテレビなどで何度も見ているので驚きはしないが、実際に体験してみるとその重さ、じわじわと体に染み入ってくる熱さは、やはりテレビでは伝わらない。

10分から15分経ったら自分の判断で砂から出てくださいと言われたけれど、10分過ぎてもまだ余裕があったので少し舐めていたら、そこからどんどん暑くなってきた。
カメラは持ち込み禁止だし、とても自撮りができる状況でもないので、会場を回っている写真スタッフに撮影を依頼するしかないのだが、どういうわけか私たちの所にはなかなかきてくれない。
ようやく写真班が来たのはまさに砂に埋もれて15分ほど経った頃。
さすがに我慢の限界に近づいていた。
それでもなんとか堪えてカメラの方を向いて一枚、もちろん有料でチェックアウトの際に代金を支払い購入した。

風呂からあがるとすぐに夕食。
この日も話題は来年の旅行の目的地である。
もはや前日までのような熱心な議論は影を潜め、どこでもいいから誰か決めろよという空気が漂い、旅行も3日目になるとみなさん疲れが見え始めた。
おかげで、旅館が用意してくれた料理も何を食べたのやら記憶が全くない。

翌朝、東の空が白み始めた頃に大浴場に行き、露天風呂の一番いいポジションを確保して、刻々と色が変わる空を眺めて1時間近く過ごした。
黒から赤に変化する時間の中で一瞬現れる薄紫色の時間が目に焼き付く。

そして朝食、ついに来年の目的地が決まった。
城崎温泉と丹波篠山。
私は全く訪れたことのないエリアなので歓迎だが、JRに勤める友人がいい宿を確保できたら、という条件付きで、もしもダメならば福井がB案とされた。
まあ、どこでもいい。
これでゆっくり飯が食える。

指宿を代表する豪華旅館「白水館」。
当然1人1泊3万円は致し方ないけれど、個人的には前夜に宿泊した霧島温泉の「旅行人山荘」の方が遥かに好みであった。
やはり私には巨大温泉旅館は似合わないのだ。

そして白水館の前後、2日に分けて開聞岳の周辺を案内された。
こちらは、「瀬平自然公園」から見た開聞岳。
松と海とセットで「薩摩富士」と呼ばれる美しい開聞岳の山容を間近から眺められる人気スポットだそうだ。

少し離れて、こちらは「番所鼻自然公園」から望む開聞岳。
ここは地図作りで有名な伊能忠敬が、「天下の絶景なり」と称賛したとされる景勝地である。
ここからは屋久島などの島々も間近に見え、みんなそんな景色をしきりにカメラに収めていたが、私の関心はこの地が日向三代の「海幸彦」「山幸彦」神話に関係するスポットだという案内板を見て一人興奮していた。
ここの岩場には岩の堤防で仕切られた三角形の天然プールのようなものがあるのだが、火山活動によって生まれたこのプールが神話に登場する竜宮城の入り口だと昔の人は考えたらしい。
なるほど、ちょっと不思議な地形で、そういう物語が生まれるのもわかる気がする。

番所鼻自然公園のすぐ近くにある「釜蓋神社(射楯兵主神社)」からも開聞岳がよく見える。
ここはアマテラスの弟スサノオノミコトを祀った神社だそうだが、観光客がここを訪れる理由はこの釜の蓋を頭の上に乗せて鳥居から拝殿まで落とさずに歩ければ願いが叶うのいう言い伝え?によるところが大である。
かなり胡散臭い。

一方こちらは「牧聞(ひらきき)神社」。
こちらは古代から続く由緒正しい歴史ある神社だそうで、鳥居の間から真正面に開聞岳が見える。
神聖な開聞岳を御神体として鳥居を立てたのがこの神社の始まりだったのだろう。

「日本最南端の駅」だというJR九州の指宿枕崎線の「西大山駅」にも行った。
何もない田園風景の中にポツンと佇む無人駅だけれど、ホームからの開聞岳がまた美しい。
いずれにせよ薩摩半島南部の観光地は全て開聞岳がらみで成り立っているようである。

こんな指宿周辺の名物グルメが「そうめん流し」と聞き、私はいささか拍子抜けする気分だった。
そうめん流しなんて全国どこにでもあるだろうと。
しかし私は全く知らなかったのだけれど、「流しそうめん」と「そうめん流し」は別物だそうで、流しそうめんのルーツは宮崎県の高千穂、そして指宿市にある「唐船峡」はそうめん流し発祥の地なんだそうだ。

ランチに連れて行かれた「唐船峡そうめん流し」は指宿市が運営する公営の施設で、駐車場から階段を降りていくと、渓谷に造られた大屋根の下にたくさんのテーブルが並んでいた。
それぞれのテーブルの上にはカラフルな円形の機械が置かれている。

そう、これってそうめんがぐるぐる回るやつ。
これこそが唐船峡発祥の「そうめん流し」機である。
60代のおっさんたちがぐるぐる回るそうめんを掬って食べている絵柄はなかなかシュールではあるが、なんとこの施設、年間20万人もの利用客を集めるという大人気観光スポットなのである。
実際食ってみると、冷たく冷えた素麺は秋でも十分に美味しく、これはこれで楽しい時間を過ごすことができた。

そうめん流しには、鯉の洗いと川魚の塩焼きをセットにするのが定番だそうで、大きなおにぎりも付いた定食が2000円だった。
そうめんを食べるのにおにぎりは要らないだろうと予想した通り、私を含めみんなおにぎりを持て余し残していた。
過去にここでそうめんを食べたことのある友人はちゃっかり定食ではなく単品でそうめんと鯉と川魚を注文していて、巧みにおにぎり攻撃を交わしていた。

昼メシついでに書き添えると、この前日の昼過ぎ、指宿に向かう途中で立ち寄ったのは鹿児島を代表するラーメンチェーン「ざぼんラーメン」の本店である。
鹿児島市郊外の埋立地にあり、ラーメンだけでなく客のあらゆるニーズに応えられるよう、同じグループの4つの大型店が一ヶ所に集まっていた。
ラーメンを中心としたこれほど巨大な複合店舗、私は初めて見た。

鹿児島なので当然豚骨ラーメンではあるのだが、東京でイメージする濃厚なラーメンとは趣を異にしていた。
見た目よりもずっとあっさりしているのだ。
私はつい調子に乗って、学生時代に戻った気分でラーメンライスを注文してしまったため、スープまできれいに飲み干す羽目になってしまった。
後で胃が苦しくなり少し後悔したが、胸焼けすることはなかった。

美味い!ということで言えば、知覧の武家屋敷で食べた知覧茶のソフトクリームは絶品だった。
これまた全然知らなかったけれど、知覧茶を生産する南九州市は今や日本一の生産量を誇る緑地の生産地なのだそうだ。
濃厚な抹茶アイスの上に香り豊かな抹茶がふりかけてあり、単なるソフトクリームとあなどることを許さないほどの完成度である。
やっぱり日本はどこに行っても美味いものにありつける。

鹿児島市に戻って、最後に食ったのが鰻だ。
養殖うなぎの生産高日本一の鹿児島に来て鰻を食わずに帰るわけにはいかない。
ということで選んだお店は創業90年、繁華街天文館の老舗「うなぎの末吉」。
老舗と聞いて店に行ってみると、大阪難波かと見紛うばかりのド派手な装飾に彩られたお店であった。

「うな重 竹」を注文すると、ご飯と蒲焼が別々に出てきた。
これが鹿児島のスタイルなのか?
それでもこのボリュームで2450円、さすが日本一のうなぎの産地だ。
安くて美味い!
初日の「黒熊鍋」から最後のうなぎまで、鹿児島の食を満喫した。

そういえば、開聞岳の麓にある九州最大の湖「池田湖」のほとりで「大うなぎ」と対面した。
体長は1メートル以上、これまでに見つかった最大のものは1.8メートル、体重20キロあったというから蒲焼には向きそうにない。

池田湖にはこんな大うなぎがたくさん住んでいるそうで、昭和の時代に目撃されたとされる未確認動物「イッシー」も巨大な大うなぎだったのかもしれない。
いずれにせよ、知らない土地を旅すると知らない物語や知らない食べ物に出会うことができ、己の無知を改めて痛感されられるとともに、視野がちょっとだけ広くなった気がしてくる。
学生時代の仲間たちと巡る年に一度の国内旅行。
できることならみんな元気で、長く続けられるといいのだけれど。
「鹿児島 砂蒸し温泉 指宿白水館」
住所:鹿児島県指宿市東方12126−12
電話:0993-22-3131
https://www.hakusuikan.co.jp/