<きちたび>鳥取県の旅2024🇯🇵 歴代天皇も与謝野晶子も宿泊した三朝温泉の名旅館「依山楼 岩崎」に格安で泊まる @温泉

🇯🇵 鳥取県/東伯郡三朝町 2024年5月12日~13日

今月12日、私は鳥取の名湯「三朝温泉」に泊まった。

その日は終日、雨が降ったり止んだりの不順な天気。

だから私は、あえて山間の温泉旅館を宿泊先に選んだ。

「三朝温泉 依山楼 岩崎」

大正9年(1910)創業、三朝温泉一番の格式を誇る老舗旅館で、目の前を流れる三朝川に沿って広大な敷地を有する立派な宿である。

高級温泉旅館といえば敷居が高く宿泊代も高額になるというのが常識だが、私は前日にネットで宿探しをしていて、直前予約のためかこの老舗が朝食付き1万円という格安プランを見つけたのだ。

赤穂温泉でもそうだったが、直前予約の夕食のないプランであればリーズナブルに泊まれることを再認識した。

カーナビに誘導され、目的地である「依山楼 岩崎」に到着すると、入り口の車寄せに何人もの男性スタッフが待ち構えていた。

私が宿泊者であることを告げると、丁重に迎えてくれて荷物をすぐに預かってくれる。

こうしたサービスには慣れていないため、ちょっと恐縮してしまう。

ロビーに入ると、裏山を利用した見事な庭園「依水苑」が広がっていた。

庭の中に見える和風の建物は、昭和6年に皇室専用の離れとして建てられた「三朝閣」で、実際に昭和天皇が戦後この離れに宿泊したという。

ロビーには、現在の天皇や上皇ご夫妻が宿泊した際の写真も飾られていて、この宿が文字通り、鳥取県を代表する最高級旅館であることを物語っている。

もちろんこの旅館に泊まったのは皇室だけではない。

こちらは、与謝野晶子・鉄幹夫妻がこの宿に逗留した際の写真や2人が三朝温泉で詠んだ歌などが飾られている。

さらに「長寿」と認められたこちらの掛け軸は、戦前の首相、近衛文麿の手になるものだ。

さらに、明治の文豪、島崎藤村と田山花袋にまつわるエピソードも紹介されていた。

藤村は随筆「山陰土産」の中でその話を次のように書いている。

『三朝川は前を流れていた。私達は三朝温泉の岩崎という旅館に一夜を送り、7月13日の朝を迎えて、宿の二階の廊下のところへ籐椅子なぞを持ち出しながら、しばらく対岸の眺望を楽しんで行こうとした。雨もあがって、山気は一層旅の身にしみた。川の中洲を越すほど溢れていた水もいつの間にか元の瀬にかえった。河鹿の鳴声もすずしい。ゆうべは私は宿の女中の持って来て見せた書画帖の中から田山花袋君の書いたものを見つけてうれしく思った。大正12年この地に遊ぶとある。そうか、あの友達もこの宿に泊まって旅の時を送って行ったのかと思った』

この老舗旅館には、多くの著名人たちの足跡が残る。

チェックインの手続きを済ませ、ロビーに設けられたドリンクコーナーで一息。

ゆったりとした気分で庭を眺めた。

雨に濡れた新緑はまさに輝くようで、この宿に1万円で泊めてもらうのは少し申し訳ないような気分になる。

案内された部屋は、三朝川を見下ろす12畳ほどのゆったりとした和室だった。

私のような格安料金で泊まる客にも差別することなく、ちゃんとしたサービスが受けられる。

ありがたい。

窓からは温泉街を貫く三朝川が眺められ、文句のつけようもない。

やはり、山間の温泉場に雨は似合う。

洗面所やトイレもゆったりと作られ、ビジネスホテルのような窮屈さがない。

一応、部屋にもユニットバスが設えてあって、大浴場が苦手だという私の妻のような人にも配慮した造りになっていた。

そして、体の凝りをほぐすための道具が置かれているのも、温泉宿ならではだろう。

私もちょっと試してみたが、どうも使い慣れないためか、さほど気持ちよくはなかった。

そして、旅館にはつきもののお菓子。

「お着き菓子」というそうだが、この旅館の場合は、梨のケーキと焼かにせんべいだった。

浴衣に着替えて、何はともあれ風呂に向かう。

こちらが1階ロビー奥にある温泉の入り口。

入浴時間は午前11時から翌日の午前2時、そして午前5時から10時までとなっている。

あがり口が畳になっていて、ここでスリッパを脱いで大浴場へ。

三朝温泉について。

『昔々、源義朝の家臣、大久保左馬之祐という人が、白い狼の命を助けたことが縁で発見されたといわれております。透き通った肌ざわりの良さは他にその類を見ないもので、泉質は単純泉、含重曹食塩泉で、ラドン最高702マッヘを含有する世界一のラジウム泉です。疲労回復、健康増進、神経痛、筋肉痛、関節痛、婦人病、胃腸病、冷え性、皮膚病などに効能があります』

白い狼の話は、ジブリ映画「もののけ姫」を思い出させる。

「依山楼 岩崎」自慢の温泉は、回遊式大庭園露天風呂『山の湯』である。

「右湯」と「左湯」に分かれ、それぞれに種類の異なる複数のお風呂が用意されてあり、到着の日と翌朝で男女が入れ替わるため回遊しながら全ての風呂を楽しむことができるのだ。

初日はまず「左湯」から。

内湯は「逢山の湯」と呼ばれ、庭園を眺めながらゆったりとくつろげる木の香りのする温泉だ。

そしてこちらが左湯にある露天風呂「逢水の湯」

屋根のある岩風呂で、雨が降っていたが濡れずに入浴することができた。

残念だったのは、複数の風呂を作るために視界が遮られ、予想したほど裏山の新緑が楽しめなかったことだ。

その代わり、歩行湯や寝湯が付いていて、足裏マッサージをしながら立って歩いたり、ゆったりと寝転がって身をほぐしたりすることができる。

結局、この露天風呂で過ごした時間が一番長かった気がする。

露天風呂から階段を登っていくと「投入堂洞窟風呂」というちょっとプライベート感のあるお風呂もある。

三朝温泉から川を遡った山中にある国宝「投入堂」をモチーフとした洞窟風呂だが、個人的にはどうも閉鎖的で好きではなかった。

一方で、大いに気に入ったのがこちらの「ラジウム蒸気風呂」。

ラジウム温泉を利用したミストサウナで、ラドンが室内に充満し、呼吸と共に体内に吸収されることで細胞を活性化、ホルミシス効果を高めるという。

日が暮れると、露天風呂は間接照明に照らされてちょっと幻想的な雰囲気になる。

おまけに、大半の客は夕食の時間になるため、この広い回遊風呂に客は私ひとりという大変恵まれた状況になった。

今回の旅で気づいたのだが、食事なしで温泉旅館に泊まるというのは悪くない選択だ。

旅館では食事の時間がだいたい決まっていて、それに合わせて温泉が混雑したり誰もいなくなったりするので、みんなが食事をしている時間はお風呂を独占できるチャンスなのである。

部屋に戻ると、布団が敷いてあった。

こういうところ、やっぱり温泉旅館である。

ただ今時、こうした人手のかかるサービスは継続することが難しくなっているのだろうと要らぬ心配をした。

窓から外を見ると、温泉街にあかりが灯り、空の青と川に映るオレンジ色のコントラストが美しい。

日本の温泉旅館、やはり最高だ。

風呂に入る前には、温泉街の飲食店で夕食を食べようと思っていたのだが、雨も降っているし急に面倒になり、宿の売店で何か食べる物を買って部屋で簡単に済ませることにした。

調達したのは、「三朝政宗」という地酒と「あご野焼」というおつまみ、そして腹の足しになりそうな温泉まんじゅうである。

「山陰名物」と書かれた「あご野焼」は、飛魚を使ったちくわだった。

飛魚は5月から9月にかけて日本海で大量に獲れるらしい。

それをすり身にして炭火で焼き上げたものが「あご野焼」である。

まあ、想像通りの味というか、要するにちくわを肴に湯呑みで日本酒を飲むというだけのことだ。

翌朝、山にはいい感じで霧がかかっていた。

これはこれで風情があるものだ。

朝食の会場は個室だった。

案内された4畳ほどの部屋に入ると、すでに朝ごはんが用意されていた。

重箱にずらりと並んだ朝食にはちゃんとお品書きまで添えられ、味噌汁もわざわざその場で温めてくれる温泉旅館らしい心遣いである。

この日の朝ごはんは、ひじき海苔、烏賊麹漬け、切り干し大根、槍烏賊のお造り、倉吉おぼろ豆腐、鯵一夜干し、豆腐竹輪、田舎風焚合せ、出汁巻き玉子、野菜サラダ、蜆の味噌汁、依山楼岩崎特製焼き海苔、三朝米特選こしひかり、広島菜、柴漬け。

バランスの取れたおいしい朝ごはんであった。

朝食の後は、再び温泉へ。

日が変わって、朝は「右の湯」が男湯になっている。

こちらは右湯の内風呂「楽山の湯」。

「左の湯」が木のお風呂だったのに対し、「右の湯」は岩の内風呂だった。

一方、露天風呂は、「左の湯」が岩風呂であったのに対し、こちらは少しモダンなタイル張りのお風呂。

風情にかける分、頭上の緑は気持ちよく、現代風なしつらえになっている。

個人的には「左の湯」の方が好きだったが、どうせだったら湯船の数を減らして、もっと大自然と向き合えるような自然な温泉にしてもらえればもっと気持ちいいだろうと想像した。

朝風呂を堪能して、チェックアウトまでの時間。

雨もあがったようなので、三朝温泉の名所「河原風呂」までお散歩に出る。

せっかくなので浴衣姿のまま、タオルも持って出かけた。

三朝川の河原に造られた小さな湯船が見える。

あれが「河原風呂」かと思った瞬間、湯船にお湯がないことに気づいた。

よく見ると、男性が風呂を洗っているのが見えた。

奇数日の午前8時半から正午まで、清掃のために河原風呂には入浴ができないと書いてあった。

それにしても、この風呂、橋から丸見えである。

男でもちょっと入るのに勇気がいるこのお風呂に入る女性はいるのだろうか?

河原風呂越しに見える対岸の立派な旅館が、私が宿泊した宿である。

河原風呂を見下ろしながら橋を渡ったところにある路地を入ると、昔の温泉地にはつきものだったディープな歓楽街が残っていた。

スナックや射的、そしてストリップも。

昭和の頃には、温泉自体よりも夜の街を目当てにした社員旅行が普通に行われていた。

今から思えば、日本もまだ男尊女卑の途上国だったということだ。

ホテルに戻り、最後に美しい庭園を眺めながらお茶を一杯。

やっぱりこのロビーからの眺めが最高である。

どうせならこの庭園が見える位置に露天風呂を作ってもらいたいものだ。

それにしても、1万円がものすごく安く感じた「三朝温泉 依山楼 岩崎」での滞在。

機会があれば、ぜひまた来たいと思える最高の温泉体験だった。

「三朝温泉 依山楼 岩崎」
住所:鳥取県東伯郡三朝町三朝365−1
電話:0858-43-0111
https://izanro.co.jp/

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