🇯🇵 兵庫県/赤穂市 2024年5月10日~11日
岡山の古民家に左官工事が入るため、数日家を留守にする必要があって車で一人旅に出ることにした。
とりあえず、最初の1泊だけは宿を予約しておこうとガイドブックを借りてきて検討した結果、海が見える温泉宿がいいかなと思い、初日の滞在先を兵庫県の赤穂温泉に決めた。
山陽自動車道を使えば我が家から1時間、国道でも1時間半あれば行ける。

選んだのは、赤穂温泉の南端、瀬戸内海に突き出した御崎の先端に位置する「潮彩きらら 祥吉」。
通常2食付きで3万円はする温泉旅館だが、偶然ネットで1泊9900円の素泊まりプランを見つけたのだ。
赤穂の中心部からさほど離れているわけではないし、今回は車での旅なので食事は何とでもなると考えた。

チェックインの際、まず気に入ったのはロビーからの眺め。
大きく開かれた窓からは瀬戸内海と沖合に浮かぶ島々が一望できる。
しかも、座りごごちの良さそうなさまざまなタイプの椅子が置かれていて、ゆったりと海の眺めを堪能できる。

フロントでチェックインの手続きを済ませると、好きな椅子に腰掛けるように促される。
すぐにウェルカムドリンクが運ばれてきた。
暖かいゆず茶とカワハギの干物である。
それをいただき終わると、スタッフの女性が部屋まで案内してくれた。
1万円の素泊まり客なのに、何だか申し訳ないようだ。

案内された部屋は、建物の一番北側に位置するシングルルーム。
畳の上に民芸調のベッドが置かれていた6畳ほどのお部屋だ。

ベッドはとても寝心地が良く、足元に置かれた低いテーブルと椅子も雰囲気がある。
ちょっとした大人の書斎という印象だ。

6畳間に続いて明るい洗面台とトイレが設置されていた。
部屋にお風呂はなかったが、どうせ大浴場が目当てなので全く問題はない。

窓の障子を開けてみると、赤穂温泉の街並みが見えた。
1フロアに5部屋あり、他の部屋はすべて海に面して配置されているため、どうやらこのシングルルームだけ値段が安く設定されている理由はどうやらこの窓からの眺めにあるらしい。
とはいえ、赤穂御崎と呼ばれるこの街を代表する景勝地は緑も美しく、家々の向こうにはちゃんと海も見え、私にはまったく問題ではない。

部屋の反対側にも小さな窓があって、そこからは眼下の海を眺めることもできる。
ただ、海が見たければ先ほどのロビーでくつろげばいいのだ。

荷物を置くと、早速お風呂へ。
この旅館には2つの大浴場があって、1日ごとに男女が入れ替わる。
私が到着した10日、男性には「爽天(そうてん)の湯」が割り当てられていた。
地下1階に新たに作られた大浴場で、まさに瀬戸内海を一望できる絶景の温泉だ。
地下とはいえ、旅館が断崖の上に立っているため目の前を遮るものが何もない。
カメラを持ち込めないため、この写真はホテルのサイトから借用したが、タイル張りの浴槽の他に陶器でできた五右衛門風呂や寝湯もあって、まさにイメージ通りの海が見える最高の温泉である。
露天風呂には太陽が燦々と降り注ぎ、湯船に寝転がっていると顔がジリジリ焼かれて日光浴をしているようだ。

早めの夕食を済ませて、ホテルのロビーで沈む夕日を眺める。
この時間、大浴場はきっと混雑すると思い、あえてロビーの安楽椅子を選んだ。

ロビーには無料のドリンクサービスがあり、コーヒーをいただきながらのんびりと過ごす。

他にも地元のお菓子なのだろうか、いろいろなおつまみやアイスキャンディーも無料でいただける。
チェックインの際に利き酒ができる日本酒も何種類が置いてあったので後で飲もうと思っていたら、午後6時までだったようで、すでに撤去されていた。

そんな無料サービスの中で、特に気に入ったのが「塩まんじゅう」。
天下に知られた赤穂の塩を使ったという蒸饅頭で、これが何とも美味いのだ。
実は赤穂城を訪れた時、大手門の前にあった和菓子屋で塩まんじゅうを1個だけ買おうと思ったらばら売りはしていないと断られた経緯があり、ロビーでこの饅頭を見つけた時には大変嬉しかった。
1個食べると止まらなくなり、結局その場で3個食べ、さらに2個部屋に持ち帰ってしまったほど美味しかった。

夕日が沈むのを見届けて、たそがれ時にもう一度温泉に向かう。
まだ青みが残る快晴の空に薄い三日月が浮かんでいた。
昼間のような暑さもなく、海風が実に気持ちがいい。

ほとんどの宿泊客はこの時間夕食を食べていると見え、大浴場はガラガラで、のんびりと湯に浸かることができた。
波の音を聞きながら、ゆったりとした時間が過ぎていく。

翌朝、みんなが朝食を食べるであろう7時半ぐらいを狙って、もう一つの大浴場「蒼海(そうかい)の湯」に行ってみる。
地下3階にあり、以前2つの大浴場だったものを「爽天の湯」の完成に合わせ、1つに繋げてリフォームしたらしい。
そのため、脱衣所も内風呂も2箇所に分かれていて、露天風呂で繋がっていた。
2つの大浴場を繋げたことで、露天風呂の広さは瀬戸内で一番になったそうで、まさに180度の大パノラマが目の前に広がる。
「爽天の湯」と比べて海に近いため波の音が印象的で、開放的な印象を受ける。

併設されているサウナも利用して、水風呂で体を整える。
いつの間にか他の客の姿も消え、この大浴場を一人で独占する形になった。
みんな朝食を食べているのだろう。
こうしてみると、純粋に温泉を味わう目的ならば素泊まりという選択も悪くない。

長風呂の後は、ロビーに置かれたステレオの前でチェックアウトまでくつろぐ。
朝はクラシック、前夜は昔懐かしいソウルバラードのCDがかけられていた。
オーナーが使わなくなったステレオとCDをロビーに置いたのかもしれない。
私は妻にせき立てられて持っていたステレオもCDもとっくの昔に処分してしまったので、なんだかこのスペースが懐かしくて、風呂上がりにはいつもここでロッキングチェアに揺られながら音楽に身を委ねて時間を過ごした。
部屋から海を眺めなくても、この最高のロビーと温泉から瀬戸内海の眺めは満喫できる。

赤穂温泉の「潮彩きらら 祥吉」。
1万円では申し訳ないような素敵な旅館だった。
日帰り入浴も可能らしいので、またぜひ利用させてもらおうと思っている。
「潮彩きらら 祥吉」
住所:兵庫県赤穂市御崎2-8
電話:0791-43-7600
https://www.ako-syokichi.com/