<きちたび>アイスランドの旅2023🇮🇸 忍耐と熱狂のオーロラツアー!私のiPhone14Proで三脚なしのオーロラ撮影に成功

🇮🇸 アイスランド/レイキャビク近郊 2023年12月4日

私はパリ特派員時代、オーロラの研究をする日本のグループを取材するため10日ほどスウェーデン北部のキルナという街に滞在したことがある。

忘れもしない1995年のことだ。

あの時代、テレビカメラでオーロラを撮影するのは至難の業だった。

普通にニュース取材に使っているプロ用のカメラでもオーロラは暗すぎて映らなかった。

私はわざわざロンドンで超高感度カメラをレンタルしスウェーデンに乗り込んだ。

美しいオーロラを撮影することに成功すれば、それだけで充分価値がある時代で、費用は嵩むが本社の許可もすぐに降りた。

結果的にこの取材は思いもしない結末を迎える。

3月10日に地下鉄サリン事件が発生し、オーロラなど放送する枠がなくなってしまったのだ。

それだけではなかった。

毎夜氷点下の屋外で何日もオーロラが出るのを待っているのに、どういうわけかちっとも美しいオーロラが現れなかったのだ。

薄い雲のような小さなオーロラは出てもすぐに消えてしまう。

研究者たちがいうには、その頃キルナの気温が氷点下10度にも達せず暖かすぎて水蒸気に邪魔されているとのことだった。

私は全天を覆い尽くすような絵になるオーロラが撮影できないまま、すごすごとバリに戻ってきた。

結局、東京に対して絶対に放送すべきだと主張できるほどのリポートが作れず、10日に及んだオーロラ取材は全てボツとなったのだ。

あの時の教訓は、オーロラの撮影は非常に難しいということ、そしてオーロラがいつどこに現れるのか専門家でもわからないということだった。

だから、今回冬のアイスランドに行くにあたり、オーロラが見えると嬉しいなとは思いつつ、心のどこかで、でも無理だろうという諦めの気持ちを持っていた。

私が、アイスランドでオーロラツアーに参加したのは4日の夜だった。

オーロラ目当てに世界中から集まった観光客が防寒対策を完璧に整えてツアーバスを待つ。

私も指定された午後8時に、いつもの市庁舎のバス停に完全武装して出かけた。

この日の昼間はずっと曇っていて、今日も中止かなと思っていたが、ツアーのバスは予定通りやってきた。

参加者は前日のゴールデンサークルへのツアーよりも多く、いかに多くの人たちがオーロラ目当てに冬のアイスランドに来ているかがよく分かる。

実はこのツアーまでの間にはちょっとした経緯があった。

オーロラが強いとレイキャビクの街からも見えると聞いていたので、アイスランドに到着した日の夜、私は一人でオーロラハンティングに出た。

多少雲はあるものの、レイキャビクは晴れていたからだ。

ただ闇雲に探したわけではない。

東京でダウンロードしてきた「Aurora Forecast」というアプリを使い、いつ頃レイキャビクあたりにオーロラが現れそうか目星をつけながら、北の空がなるべく暗い場所を求めて海岸線をウロウロした。

オーロラというのは、太陽風のプラズマが地球の磁力線に沿って高速で降下して地球の大気に含まれる酸素や窒素の原子を励起することによって発光する現象とされる。

だから、夜になればどこにも現れるというわけではなく、きちんとした法則があるようなのだ。

それを元にその時間、地球上のどの場所でオーロラが見える可能性があるかを予報してくれるのがこのアプリである。

まだ土地勘もないためどっちに行けばいいのかもわからないまま、北側に暗い海が広がる海岸線にたどり着いた。

時刻は午後9時半。

そろそろだと思った。

周辺には誰もおらず、時折通りかかる通行人が怪しい目で私を見た。

寒さに耐えながらその場で時間を過ごしたものの、オーロラは一向に現れず、代わりに月が出てきてしまった。

こりゃ、ダメだ。

月明かりでオーロラが出ても見えないだろうと思い、その夜は断念してホテルに戻ることにした。

翌3日。

ゴールデンサークルのツアーと合わせて、この日の夜、オーロラツアーをセットで申し込んでいた。

これはバスに乗ってレイキャビクの街を離れ、天気なども見ながら一番見えそうな場所に連れて行ってくれるというツアーである。

もちろん、このツアーに参加したからと言って、そう簡単にオーロラが見えるはずがないとかつて苦い思いをした私は最初から疑っていた。

だからゴールデンサークルのツアー中に、その日の夜のオーロラツアーは天気の関係で中止するとのメールを受け取った時もさほどがっかりもしなかった。

そんなことは織り込み済みである。

体調もイマイチだったので、そのままキャンセルにして返金してもらっても良かったのだが、バスによるオーロラツアーがどういう場所に観光客を連れて行くのかが知りたくて、翌日に変更してくれるようお願いしたのだ。

オーロラツアーは、バスターミナルで別のバスに乗り換えることなく、市庁舎に迎えにきたバスがいくつかのバス停で客を拾い終えるとそのまま市外へと私たちを連れて行ってくれた。

アイスランドに来てからまだ一人の日本人にも会っていなかったが、このバスには2組の日本人新婚カップルが乗っていた。

彼かも日本人に会って少し安心したようで、その夜は彼ら4人と行動を共にすることになった。

Googleマップでバスの位置を確認すると、レイキャビクを出た後、北に向かって走っているようだった。

集合時間にはレイキャビクの上空には雲がかかっていたが、北に行くと晴れ間があるのだろうか?

ツアーをキャンセルしてしまうと代金を戻さないと行けないので、多少でも可能性があれば強行して、残念でしたねと言われるだけなんじゃないかと私は内心疑っていた。

バスは途中から脇道にそれてどこかの半島のようなところでようやく止まった。

時刻は午後9時半、1時間以上北に走ったようだ。

確かにバスが止まったあたりには1軒の民家もなかく、バスのヘッドライトが消されると目を凝らさないと人がいることさえわからないような暗闇だった。

2組の新婚さんはこのためにわざわざ一眼レフカメラと三脚を購入し、オーロラを撮影するための操作を調べて日本で予行演習をしてきたという。

奥さんに励まされながら、2人の新郎さんは頑張ってカメラのセッティングを始める。

アプリでオーロラの状態を確認する。

まさにこれからアイスランドにオーロラ出現の可能性が高いオレンジ色がかかろうとしている。

時間はピッタリだ。

上空を見上げると、まだかなり雲は残っているが、一部星が見えている部分もある。

北に移動したことで、いつの間にか晴れ間が顔をのぞかせたようだ。

昼間の絶望的な気持ちは徐々に期待へと変わっていった。

下着を何枚も重ね、防寒対策もバッチリなので、屋外に立っていてもさほど寒さは感じない。

みんな目の見開いて北の空を見つめて耐える。

突然、バスから黄色い光が照射された。

すでにこの場所に到着してから1時間が経っていた。

オーロラは一向に現れず、バスは移動するのだろうか?

それとも、これで終わり?

私は一緒にいた日本人の新婚さんたちと別れて一旦バスに戻るが、別に移動する気配はない。

寒くなってバスの中に逃げ込んでいる人もそれなりにいるが、梃子でも動こうとしない人もいる。

時刻は午後10時半、夜空にはますます晴れ間が広がってきた。

肉眼で北斗七星を見たのは一体いつ以来だろう。

午後11時をすぎ、私も少し寒くなってきてバスの中で少し体を温めていると、ガイドさんが車内にいた乗客たちに声をかけた。

「弱いですが少しオーロラが出てます」

その声を待ってましたとばかりに、みんな一斉にバスの外に出る。

ガイドさんが指摘する方向を見ると、薄い雲のようなものが出ている気がするが、私たちがテレビで見るオーロラとは似ても似つかない。

それでもダメもとでiPhoneで撮影してみると、雲のように見えたものが緑色に映った。

そうだった。

オーロラはカメラで撮影すると緑色に映るが、肉眼で見ると白い雲にしか見えなかったことを思い出す。

しかし、あまりに弱々しいオーロラはそのまま強くなることなく、徐々に消えていった。

時刻は午後11時半、この場所に到着して2時間寒空で耐えてようやく出たオーロラがこれか・・・。

嬉しい気持ちよりも、「やっぱりな」というのが偽らざる気持ちだった。

昔キルナで何日もオーロラを狙った時も、こんな感じの連続だったのだ。

張り切っていた新婚さんたちも、敏妙な反応だった。

オーロラが消えるのを見届けて、ガイドさんが全員にバスに乗るように言った。

「今日はもう少し見えるかなと思っていたが、残念な結果でした。希望する方は無料で別の日に参加してもらうことができます」

この日のツアーは失敗だったという宣言である。

オーロラは天気と太陽次第で全く見えないことも珍しくない。

そうした場合には、見えるまで追加でツアーに参加することができるということなのだろう。

そう言われても、私は翌朝にはグリーンランドに旅立たなければならない。

まあ、予想した結果だったので失望はしなかったが、せっかく晴れたのに残念ではあった。

私は再びアプリをチェックした。

ぼんやりしたオーロラが現れた午後11時半は、オーロラ出現率の高い中心がまさにアイスランドを通過するタイミングだった。

今夜はもう終わったな、グリーンランドで見えないかな。

そんなことを考えながら、レイキャビクに向けて走り出したバスの中でぼんやり外を眺めていた。

すると、ガイドさんが突然バスを止めるように運転手に言った。

バスは脇道に入り暗い場所を探す。

バスが停車して、私もみんなと一緒にバスを降りると、先ほどより明らかに強いオーロラが出ていた。

しかも雪山の上に輝いているではないか。

私はiPhoneを取り出してオーロラが消える前に何枚か撮影した。

最近のiPhoneがよくできていて、何もいじらなくても勝手にナイトモードに切り替わり、露出時間を長くしてくれる。

しかも手ブレを自動で補正してくれるようで、手持ちで撮ってもちゃんとオーロラが写っていたのだ。

しかも手前の雪山もしっかり写っている。

私がスウェーデンで撮影した頃のプロ用超高感度カメラよりも遥かに性能がいい。

新婚さんもようやく満足したようだ。

日付は変わり、5日の午前0時20分、粘った甲斐があった。

でも、これで終わりではなかったのだ。

再びレイキャビクに向けて走り出したバスは20分もしないうちにまた止まった。

今度はイルミネーションが施された森だった。

先ほどまでとは比べ物にならないほどはっきりとしたオーロラが夜空を横切っていた。

iPhoneで撮影した写真を見て、私も驚いた。

美しい緑色の線がイルミネーションの上にくっきりと写っていたのだ。

やった! ついにオーロラを撮ったぞ!

これは自分でも予期せぬ上々の成果だった。

時刻はもう午前1時に迫っていたが、誰も時間を気にする者はいない。

偶然とはいえ、煌びやかなイルミネーションの上空に出現した見事なオーロラ。

突然、最高の被写体に出会ってツアーに参加した全員が興奮していた。

これだけはっきりとしたオーロラならば記念撮影したも、人物の背後にオーロラが写り込む。

もうそこら中が大撮影大会になった。

ようやく撮影を終えてみんながバスに乗り込むと、ガイドさんは前言を撤回し「今日のツアーは大成功でした」と言った。

「だからもしまたオーロラを見たくなったら、再予約をお願いします」と言い添えることを忘れなかった。

しかし、なんとこれで終わりではなかったのである。

期待を超えるオーロラが撮影できたことで、私はこの後の予定が気になり始めた。

レイキャビクに帰り着くのはおそらく午前2時を回るだろう。

午前5時には、グリーンランド行きの飛行機に乗るため空港行きのバスに乗らなければならない。

「こりゃ寝られないな」と思い、少しでもバスで寝て帰ろうと思って目を瞑って眠る体勢に入っていた。

ところが、バスがまた停車したのである。

降りてみると、さっきをさらに上回るオーロラが草むらの上に出ているではないか。

しかも単なる線ではなく、ヒダのようにうねっている。

これぞまさにテレビで見るオーロラそのものだ。

これは見事だ。

体調を考えてオーロラツアーを一時キャンセルしようと考えた自分が恐ろしい。

こんなチャンス、2度となかったかもしれない。

新婚さんたちを見つけ、「撮ってあげようか」と声をかけると、いろいろポーズを決めて何枚か撮影した。

私がiPhoneで撮影した写真を見て、「一眼レフよりiPhoneの方が全然きれいですね」と言った。

世界を制覇した日本のカメラは、もはやスマホに完敗したのだろうか。

でも、手持ちでこんなに綺麗にオーロラが撮影できるとは、心の底から驚いていたのは私自身だった。

この後、オーロラは消えるどころか、ますます立体的にゆらめき始めた。

私は必死でシャッターを切る。

私はついに念願のオーロラ撮影に成功した。

スウェーデンでの苦い思い出から28年、あの時の心残りをようやく払拭したのである。

とはいえ、私がやったのはスマホのボタンを押しただけ。

絞りもシャッタースピードも全て私の「iPhone14Pro」がやってくれた。

iPhoneに初めて三眼カメラが搭載されたタイミングで買い直しておいたのが、今回大いに役立った。

実はオーロラ撮影のために、スマホ用の三脚を兼ねた自撮り棒を買い求めて持ってきてはいたのだが、全く必要がなかったのだ。

それほど最新のスマホが進化していることを今回の出来事で初めて理解した。

こうした大興奮のうちに終了したオーロラツアー。

レイキャビク市内に戻り、バス停で降ろしてもらい、ホテルに帰り着いた時には時刻は午前2時半を回っていた。

空港へのバスのピックアップまで2時間半しかない。

結局ベッドで横になり休息はとったが寝ることなくホテルをチェックアウトすることになった。

でも、徹夜に十分値する一生忘れられない夜であった。

この夜の気温はせいぜい氷点下数度ぐらいだったので、オーロラで有名な北欧やカナダのスポットに比べると、冬のアイスランドは遥かに楽にオーロラを見るチャンスがある。

オーロラが見たいという方には絶対オススメだと思う。

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