<吉祥寺残日録>都知事選で浮かび上がった民主主義の変化!世界各地で続発する選挙の混乱はどんな未来を予言するのか #240709

7日に行われた東京都知事選挙は、事前の予想通り、現職の小池百合子さんが2位に100万票以上の差をつけて圧勝、3選を果たした。

事前に、週刊誌などで散々学歴詐称問題が蒸し返され、神宮外苑の再開発や都庁でのプロジェクトマッピングに批判が集まっていたが、小池さんは「公務優先」を大義に相手の土俵に上がることを巧みに避けた。

さすがは、古狸。

候補者討論会も1回だけしか行わず、不必要に都知事選に注目が集まることを回避したのが勝因だったのではないか。

ちょっと驚いたのは、知名度の高い蓮舫さんがネットで人気を集めた石丸伸二さんに敗れたことだ。

参院議員の職を捨て、立憲民主党を離党して臨んだ都知事選。

自民党に対する政治不信の追い風に乗れれば小池さんに勝てる可能性があると踏んだのだろうが、よもや3位になるとは出馬時には考えていなかっただろう。

かつては参議院選挙の東京選挙区で連続トップ当選を果たした人気者、このところの選挙で勢いに乗っていた立憲民主党としてはとっておきの切り札で勝負に打って出た戦いだった。

しかし蓮舫さんには「仕分けの女王」と呼ばれた時のヒステリックなイメージが付き纏い、もはやかつての期待感や清新さは失われていることを今回の選挙結果は如実に示したのだ。

過去最多の56人が立候補した今回の都知事選で、1万票以上獲得したのはこの11人だった。

テレビでは“主要4候補”として、小池百合子、石丸伸二、蓮舫、田母神俊雄の4候補を中心に取り上げることが多く、NHKはタレントの清水国明さんも主要候補に加えていた。

どういう基準でこの4人または5人を選んだのか私は知らないが、各メディア限られた枠の中で全員を平等に伝えることは難しいため、どこかで線引きしなければならない事情は私も元テレビマンとして理解している。

だが、この主要候補に入るか入らないかで得票数は確実に変わってくるため、ある意味では「生殺与奪」の権利をメディアが握っているとも言えるのだ。

4候補のうち、広島県安芸高田市長だった石丸伸二さんについては正直今回の選挙まで私は全く知らなかった。

大多数の有権者は私と似たり寄ったりだったのではないかと想像する。

しかし真っ先に都知事選出馬を表明し、その動画がネットで注目を集めたことで石丸人気は一部で急速に高まり、選挙戦が始まるまでには、各メディアも石丸さんを主要候補の一人として取り上げるところまで存在感を高めたわけだ。

広島ローカルおよび一部ネットユーザーだけに知られていた石丸さんは、この初動の作戦で都知事選の主要候補となれたことで一躍全国にその名が知られるようになった。

「政治屋の一掃」を掲げ、議会で居眠りする議員を「恥を知れ、恥を」と罵倒する姿はYouTubeで拡散し、既存の政治家と戦う若きリーダーとして人気と知名度は日を追うごとに高まっていった。

私もそんな石丸さんが気になって彼の動画を何本か見てみたが、正直漠然とした違和感を覚えた。

地方に巣食う「政治屋」を一掃するという石丸さんの主張には大賛成だし、彼が進めようとする地方分散社会の主張にも共感する。

ただ気になるのはアジテーターのような彼の政治スタイル、既存の政治家やメディアを敵と見定めてYouTubeとSNSを駆使して一方的に攻撃し、部分的に切り取った動画で自己演出しているように見えて仕方ないのだ。

ナチスや共産主義国が用いるプロパガンダのテクニックに似た印象を受けたのである。

石丸さんは都知事選でも具体的な政策をあまり語らず、刺激的なキャッチフレーズを繰り返し、メディアからの質問にも正面から答えずに質問者を小馬鹿にしたようにはぐらかす場面が見られた。

私は石丸さんのことをほとんど知らないし、正直彼の真価は判断できないのだが、どうも直感的に危険な香りを感じてしまうのである。

具体的な公約を明らかにしない政治家をリーダーに選んでしまうと、当選後その政治家は公約に縛られることなく暴君や独裁者に変貌してしまうかもしれない。

彼が今後どんな政治家に育っていくかはわからないが、今度の都知事選で私がそんな漠然とした警戒心を抱いたことは記録に残しておきたい。

私自身は、若いAIエンジニア、安野たかひろさんに一票を投じた。

小池都政に大きな不満は持っていないのだが、私が小池さんに投票しなくても彼女が勝つだろうと予想して、若く新しいタイプの候補者に投票してみようと思ったのだ。

なかなかデジタル化が進まない日本社会を変革するには、デジタルネイティブの若く優秀な政治家が必要でだろうとアナログな私は考えている。

安野さんのこともよく知らないが、動画を見る限り、地に足がついたまともな人物をいう印象を受けた。

結果的には、安野さんは主要4候補に次ぐ5番目の得票を集め、ちょっと驚いた。

既存メディアではほとんど無視されながらも、ネットを通じて支持者を増やしたようだ。

ほかにも上位に入った候補者たちを見ていくと、ネット上で知名度を上げた人たちが目につく。

中には気になる人もいる。

7位のひまそらあかね氏はフェミニスト団体を攻撃し裁判沙汰になっているユーチューバー、そして9位の桜井誠氏は外国人排斥を訴えるヘイトスピーチで有名になった極右の活動家だ。

民主主義の根幹をなす選挙のあり方が大きく変化しつつあることを感じる。

選挙における既存メディアの影響力は確実に衰え、ネット世論から新たな時代の指導者が生まれてくる可能性が年々高まってくるのだろう。

そうした民主主義の変化は世界各国で起きている。

たとえばフランスの下院にあたる国民議会選挙。

先月30日に行われた初回投票の結果、移民の流入制限などを掲げる「国民連合」が33%を獲得し得票率トップとなり世界を驚かせた。

そして都知事選と同じ7日に行われた決選投票は、ついに極右内閣が誕生するのかと注目を集めたが、危機感を持ったマクロン大統領の与党連合と左派の新人民戦線が呉越同舟の選挙協力に踏み切ったことで、極右政権の是非をフランス国民に問う選挙となった。

事前の調査では決選投票でも国民連合が第一党となると予想されていたが、結果は左派連合が最大勢力となる182議席、中道の保守連合が168議席を獲得、注目の極右・国民連合は143議席にとどまった。

しかし、イニシアティブを握った左派連合の新人民戦線は、かつての社会党に代わり急進左派の「不屈のフランス」などが主導していて、マクロン大統領の与党とは政策的な違いが大きいとされる。

過半数を握る勢力がいないまま、フランスの政局はしばらく混乱が続くことになるだろう。

とはいえ、フランスでは大統領の権限がとても強い。

今回一気に存在感を高めた極右勢力が次の大統領選挙までにさらに勢力を伸ばす可能性は十分にあるだろう。

EUの中核をなすフランスで極右と急進左派が躍進したことは、ドイツなど周辺のヨーロッパ諸国にも少なからぬ影響を及ぼし、世界で最も成熟した民主主義の牙城だったヨーロッパが徐々にアメリカで見られるような激しい分断の渦に巻き込まれようとしているのが気がかりである。

そのアメリカでは、先の討論会で老いをさらけ出したバイデン大統領に対する撤退要求が強まっている。

身内の民主党内からも公然と撤退を求める声が上がる中で、肝心のバイデン氏は撤退を断固拒否し苛立ちを募らせている。

テレビのインタビューに応じたバイデン大統領は、こう言い放った。

「私が出馬すべきだと思わない人がいるなら、対抗して立候補したらいい」

「どうぞ、大統領選に出馬表明しなさい。(8月の)民主党大会で私に挑戦すべきだ」

権力者になればなるほど引き際は難しいと言われるが、まさにバイデン氏はその長い政治人生の最後で老醜を晒そうとしている。

戦後民主主義を牽引してきた国々で相次ぐ選挙の混乱は、どんな未来を予言しているのだろうか?

トランプ氏の登場は、世界の民主主義が変容するきっかけだった。

どんなに違法行為を行おうと、スキャンダルにまみれようが、岩盤支持層には何の影響もない。

民主主義社会の基盤を支えてきたメディアの影響力は急速に衰えて、有権者は自分が見たい情報だけをネットから得る時代を迎えた。

ネットでバズる煽動的な言動や陰謀論が大手を振ってまかり通る世界。

極右と極左のポピュリストが台頭し社会を破滅に導く危険性が加速度的に高まっているように私には見える。

トランプ氏が再びアメリカの大統領になれば、社会の分断が世界各地でますます先鋭化するだろう。

トランプ再登場を防ぐために何がベストなのか?

フランスの中道と左派が極右阻止の一点で手を結んだように、バイデン大統領にも自らに代わる新たな候補者の擁立を真剣に検討してもらいたいものだ。

<吉祥寺残日録>トランプ氏に有罪評決!それでも揺るがぬ岩盤支持層の実態を描く戦慄のドキュメンタリー #240531

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