<吉祥寺残日録>緑色に染まった井の頭池を眺めながら想ったこと #210810

台風通過で激しい風が吹き荒れた昨日から一転、今朝は真っ青な青空が広がった。

熊谷では最高気温40度の予報が出されていて、東京都心でも今年初の猛暑日になるという。

オリンピックも終わりちょっと暇になったので、ぼんやりと外を眺める。

井の頭池が緑色に変色しているのに気づいたのは数日前のことだろうか。

抹茶色といえば聞こえがいい気もするが、水面に緑の絵具を流し込んだようなその光景はちょっと毒々しい。

緑の池に誘われて公園まで行ってみると、お茶の水橋付近の水面は完全に抹茶色に染まっている。

この緑色の正体は、毎年8月になると発生する「アオコ」。

引っ越してきた当初は異常事態が起きているのではと思い心配したが、毎年のことなのですっかり慣れてしまった。

井の頭池北岸に設置された案内板にも「アオコ発生中」と書かれていた。

『植物プランクトンの一種であるアオコは、高温になる8月頃に発生してしまいます。秋冬には落ち着きます』

「高温になると出てしまう」というフレーズからも、池の浄化を進めている「かいぼり隊」の皆さんにとってこの「アオコ」が望まない客であることは一目瞭然だが、あれだけ水質改善に努力してもこの季節アオコの発生を食い止めることはできないのだろう。

アオコは単に水を緑に染めるだけではない厄介者である。

水源の水にアオコが発生すると水道水の臭いの原因となり、アオコが水面を覆うことにより水中に入る日光を遮断し水生植物が死滅し、そこを住処とする稚魚にも影響が及ぶ。

さらには、水中の酸素不足を招いたり、アオコが毒素を発生させるというケースもあるようで、井の頭池が緑に染まるのも夏の風物詩として見過ごすことはできないようだ。

緑色に染まる井の頭池を見ながら、地球温暖化の未来を想う。

東京オリンピックは巨大台風の直撃を免れたが、今年もヨーロッパや中国で水害が起き、今もギリシャで山火事が発生している。

世界の気温上昇のスピードは加速しているようだ。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達するとの予測を公表した。18年の想定より10年ほど早くなる。人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定した。自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする必要があると指摘した。

引用:日本経済新聞「気温1.5度上昇、10年早まり21~40年に IPCC報告書」

これまでの生活を維持しようと思えばCO2を出さない生活をすることがいいのはわかっている。

しかし、世界中の人が地球環境のことを考えているわけではない。

途上国を中心に大半の人は目の前の生活で精一杯なのだ。

とはいえ、世界のCO2排出量をよく見ると、中国が28.4%、アメリカが14.7%、インドが6.9%と上位3カ国だけで世界の半分のCO2を出していることがわかる。

日本は3.2%で5位。

ただし、日本人が消費する物資の生産のために消費されるCO2が世界各国に分散していることは知っておく必要がある。

菅総理は、グリーン&デジタルの名の下にCO2の排出削減に国をあげて取り組む姿勢を表明し、これまでの自民党政権に比べて経済界を巻き込んで真面目に取り組もうとしている。

私はそうした菅さんの方針を支持して見守っているのだが、口下手な菅さんは国民から支持されず、東京オリンピック後の内閣支持率は過去最低を更新したという。

読売新聞の世論調査によると、「東京五輪が開催されてよかったか?」との問いに対し、「よかったと思う」人が64%で「思わない」人の28%を大きく上回ったが、菅内閣の支持率は過去最低の35%で不支持は過去最高の54%になったという。

デルタ株による急速な感染拡大も影響しているのだろう。

菅総理については「9月の総裁任期までに辞任」してほしいという人が66%に達したと読売新聞は報じているので、これを受けて自民党内で菅降ろしの動きが強まってくる可能性がある。

でも今の時期、誰が総理をやってもきっとコロナにはうまく対応できないだろう。

妙に演説だけうまいポピュリストが出てくるよりも、菅さんのような耳障りのいいことを言わず、黙々と仕事をするタイプの総理がいいと私は思うのだが・・・。

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地球環境を守る上で、私はプラスチック削減などよりもさらに重要なファクターは世界の人口問題だと考えている。

19世紀初め、世界の人口は10億人だった。

それから100年あまりかけて1927年に20億人となったが、産業革命によって人類の生産能力が飛躍的に伸びたことが原因だろう。

1927年といえば昭和2年。

つまり昭和の初めには、地球上にまだ20億人しか人類がいなかったのである。

世界の人口が30億人に達したのは1961年、最初の東京オリンピックが開かれる3年前のことだ。

第二次世界大戦を挟んで10億人増えるのに34年かかった。

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ところが、ここからの人口爆発は半端ない。

1974年には40億人、1987年には50億人、1998年には60億人、2011年には70億人と、ほぼ11〜13年で10億人ずつ増えて、現在の世界の人口は77億人に達している。

この先、今世紀末には100億人を突破するという説もあれば、出生率の低下によって1964年頃に97億人ぐらいでピークをつけその後減少に転じるとする研究もある。

人間が増えればそれだけ食料が必要となり、必要なエネルギーも増加するだろう。

日本にもかつて、「産めよ増やせよ」と国家が人口増加を推奨した時期があった。

人口によって国力を高めるという20世紀的発想を転換し、一人一人の幸福度を高める世界に移行できるのか、それが問われている気がする。

孫の枝豆

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