今年1年、我が家のトイレにはダイソーで買った週めくりの「名言カレンダー」がかけられていた。
中にはいくつか、私の心にも響く名言があった。
2025年に大晦日にあたり、そうした名言の中から私が残りの人生における座右の銘にしたいと思う言葉を見つけたので、書き残しておきたい。
『明日、世界が終わるとしても、今日、私は林檎の木を植える』
ドイツの宗教改革家マルティン・ルターの有名な言葉である。
もともとは宗教的な意味合いが強かったのだろうが、「世界がどんな状況になっても、それに動揺することなく、未来のために自分がやるべきことをやろう」という風に解釈すると、いつの時代にも響く言葉であり、作家・開高健も色紙によくこの言葉を書いたという。
今年、この言葉が私の心に響いたのは、私がこれまで信じ大切にしてきた価値観が急速に破壊されてどんどん悪い方向に向かっているように感じているからだろう。
将来人類の歴史を振り返る時、ひょっとすると2025年は世界の大きな転換点として位置付けられるかもしれない。
マルティン・ルターといえば、それまでキリスト教の総本山だったカトリックに対して異論を唱え、プロテスタントの源を作った人物という認識でしかなかったが、今回調べてみて私の想像以上に彼の影響が現代社会に広がっていると感じた。
ルターの思想の根幹をなすのは、聖書の記述を絶対視するいわばキリスト教原理主義と言ってもいい。
同時に、ルターの主張の中にはドイツ民族主義や反ユダヤ主義の要素も含まれ、それが後のヒトラーにも影響を与えたと言われる。
ルターの教えに忠実な信者たちはプロテンスタントの主流派とは一線を画す「福音主義」を呼ばれ、トランプ政権最大の支持母体となっているアメリカの福音派も広い意味で言えばルターの流れを汲む人たちということらしい。
ルターが植えたリンゴの木は、宗教的な情熱が決して高いとは思えないトランプという野心家の登場により、人類が戦禍と葛藤を乗り越えて掴み取った民主主義という果実を蝕み、世界を再び荒野に変えようとしているように私には見える。
このブログを始めて10回目の年末、いろいろあった2025年を毎年恒例、読売新聞の「読者が選ぶ10大ニュース」を通して振り返ってみたいと思う。
まずは、国内の10大ニュースから。
【1位】大阪・関西万博 来場2557万人
【2位】街にクマ 被害相次ぐ
【3位】高市氏、女性初首相
【4位】コメ高騰 備蓄放出
【5位】ドジャース連覇 大谷ら貢献
【6位】長嶋茂雄さん死去
【7位】八潮道路陥没 男性死亡
【8位】坂口さん、北川さんノーベル賞
【9位】参院選、自公過半数割れ
【10位】今夏の平均気温最高
テレビニュースをつけると連日、クマやコメ、物価高や暑さのニュースばかりだ今年、読者が選んだトップニュースは意外にも大阪関西万博だった。
始まる前はさまざまな批判に晒され散々だったけれど、終わってみればまずまず成功という評価に落ち着いた。
クマやコメも確かに身近で気になるニュースではあるし、誰もが一家言あるところではあるが、こう連日そんなニュースばかりだと、他にも伝えるべきことがあるだろうと元テレビマンとしては叫びたくなる。
今年やはり個人的に気になったのは、女性初の総理誕生に沸いた高市政権の動向、そして参院選以降俄かに盛り上がった外国人に対する厳しい世論である。
続いて、11位から30位も見ていこう。
11位 イチロー氏、米殿堂入り
12位 性加害問題でフジテレビの会長と社長が引責辞任
13位 「国宝」興収100億円突破 実写邦画22年ぶり
14位 公明が連立政権から離脱表明 維新が連立合意
15位 日経平均株価 初の5万円台
16位 旧統一教会に解散命令
17位 岩手県大船渡市で大規模な山林火災
18位 アサヒビール一時生産停止 サイバー攻撃
19位 石破首相退陣表明
20位 「ニンテンドースイッチ2」発売
21位 和歌山のパンダ4頭 中国へ返還
22位 第74代横綱に豊昇龍、5月には大の里が第75代横綱に
23位 車・相互関税 対日15%で米と合意
24位 貸金庫から金塊窃盗容疑で元三菱UFJ行員逮捕
25位 26年前の殺人容疑で女逮捕
26位 80回目の終戦の日 平和誓う
27位 東京で世界陸上開幕
28位 日鉄がUSスチールの買収完了
29位 サッカー日本代表、8大会連続8度目のW杯出場決定
30位 悪石島で震度6弱 トカラ列島近海で地震相次ぐ
去年4万円の史上最高値を更新したばかりの日経平均株価は、今年一気に5万円の大台を軽々と超えた。
止まらぬ円安は株価には好材料でも庶民の暮らしには大きなダメージを与えている。
それでも膨大な借金を抱える政府日銀は金利の引き上げには慎重にならざるを得ず、高市政権はさらに「責任ある積極財政」を唱えてアベノミクスの再現を夢見ている。
日本経済が長年のデフレから脱却しインフレ局面に入っているにも関わらず、そんな方針で大丈夫なんだろうか?
個人的にさらに気になるのは、アベノミクスの弊害に対する危機感が国民の間に希薄なことで、読売新聞の10大ニュースの結果も私から言えば拍子抜けするほどにお気楽な印象を受ける。
続いて、海外の10大ニュースを見てみよう。
【1位】第47代米大統領にトランプ氏が就任
【2位】首相の「台湾」答弁反発
【3位】「相互関税」発動
【4位】ロス山火事24日続く
【5位】ルーブル盗難被害 8800万ユーロ
【6位】ミャンマーM7.7 3700人死亡
【7位】ゼレンスキー氏を罵倒 露侵略3年
【8位】新教皇レオ14世 初の米国出身
【9位】韓国の尹大統領逮捕 現職初
【10位】旧統一教会の韓総裁 逮捕
今年最大のニュースが、トランプ大統領関連であることは議論の余地がないだろう。
彼は連日、世界に向け次々に新しいニュースを提供し、世界中の人たちに様々な問いを突きつけてきた。
2016年、彼が初めて大統領に就任した際には多くのメディアや知識人が彼の政策を批判したが、あれから10年が経ち、彼の信奉者は世界中に広がり世界各国の政治状況を劇的に変化させている。
トランプ大統領はまさに王様のように振る舞い、アメリカはもはや民主主義国家とは呼べない国になってしまった。
しかしその結果、戦後アメリカに頼り切っていたヨーロッパも日本も自分の足で立つことを真剣に考え始め、軍備強化の流れが一気に高まった一年でもあった。
11位から30位は以下の通り。
11位 トランプ氏と習近平国家主席が6年ぶりに対面会談
12位 米イスラエル、イラン核施設をそれぞれ空爆
13位 大相撲のロンドン公演 34年ぶり
14位 ガザ和平計画「第1段階」合意
15位 中露朝首脳が北京で軍事パレードを参観
16位 韓国大統領選で李在明氏勝利
17位 インド旅客機墜落 死者200人超
18位 米がハーバード大の留学生受け入れ停止発表
19位 米露首脳、アラスカで対面会談 停戦合意至らず
20位 英仏カナダがパレスチナを国家承認
21位 米テキサス州で大規模洪水、130人以上が死亡
22位 中国がレアアースの輸出規制強化を表明
23位 ノーベル平和賞にベネズエラの野党指導者
24位 イスラエルがカタール空爆
25位 トランプ氏に近い保守系団体代表が銃撃死
26位 中国がスパイ罪で邦人に実刑判決
27位 IOC会長にコベントリー氏 初の女性、アフリカ出身
28位 セブ島で地震 70人以上が死亡
29位 カナダでG7サミット 首脳宣言は見送り
30位 インドとパキスタンが軍事衝突
ガザでの戦闘がひとまず終結したことは個人的には重要な出来事だと思うのだが、多くの日本人にとってはやはり遠い世界のお話なのかもしれない。
この戦争を通してイスラエルは、トランプ大統領の揺るぎない支持を背景に、最大の敵とみなすイランとその仲間たちを相次いで攻撃し、中東のパワーバランスを大きく変えたように見える。
またトランプさんの激しい動きの陰に隠れた印象の中国も、国内の不景気にも負けず、最先端分野での技術力を着実に伸ばし、アメリカに対抗できる国力を身につけつつある。
10大ニュースでは捉えきれない世界的な地殻変動に、私たちはもっと敏感にならなければならないと感じる一年であった。
それでは恒例により、私が独断と偏見で選ぶ2025年の10大ニュースを発表しよう。
【1位】「王様」トランプが1年で劇的に変えた世界秩序
復活したトランプ大統領が2期目の就任式に臨んだのは今年1月のこと。しかしそれがもう遠い過去に感じられるほど、トランプさんが連日ニュースを賑わせた一年だった。政治にはまだ不慣れだった1期目とは違い、自身も彼を支える支援者たちも周到に準備を重ねていたこともあり、就任直後から世界を驚かせる政策を次々に実行に移している。これまで培ってきた我々の常識も、長年築いてきたアメリカの価値観も、自由主義陣営の盟主としての国際秩序もわずか1年の間に劇的なほどに塗り替えてきたのだ。世界中を驚かせた相互関税の発動では日本や西欧の同盟国も容赦しなかった。アメリカ第一主義の下、同盟国には大幅な軍事費増強を求める一方、中国やロシアに対する強硬措置は手控えている。そのため、有事の際にはアメリカが助けてくれるという信頼感が急速に後退し、ヨーロッパでも日本でも自主防衛の機運がかつてなく高まったと言えるだろう。またバイデン政権が推し進めてきた多様性や地球温暖化に関する政策を180度転換。アメリカ社会の分断はさらに深まったが、もはや彼を止める者は誰もいない。1期目には盛んだった反トランプデモにも勢いはなく、デモ参加者たちの「王様はいらない」との叫びも虚しく響く。とはいえ、公約に反してアメリカのインフレは未だ収まる気配がない。トランプさんの支持率は過去最低にまで落ち込んでいて、来年予定される中間選挙では与党共和党の苦戦も予想される。
【2位】初の女性総理誕生!高市路線と緊張する日中関係
トランプ時代の到来とともに、多様性を認める方向に動いてきた社会の流れが逆回転している。その風潮はSNSによって世界に拡散され、日本人の価値観にも大きな変化をもたらしている。そうした中で「ガラスの天井」を破り誕生したのが日本初の女性総理、高市早苗首相である。安倍元総理の後継者を自認する高市さんは、アベノミクスを踏襲する「責任ある積極財政」を掲げる一方、影響力を強める中国を念頭に安全保障強化に力点を置き、石破前政権の方針を明確に軌道修正した。そんな高市路線は若い世代を中心に高い支持を受け、株価も一気に5万円の大台を突破した。その一方で、台湾をめぐる高市総理の国会答弁に中国が強く反発。中国国民に対し日本への渡航自粛を呼びかけるなど、あからさまな対抗措置を打ち出して、日中関係は一気に冷え込んでいる。しかし、高市さんの支持者にはもともと中国嫌いが多いため、中国が反発すればするほど逆に高市さんへの支持が高まるという現象も見られる。中国人観光客が激減してインバウンド産業などには負の影響も見られるものの、当面は緊張した日中関係が続くことになるだろう。
【3位】ついに日本にも波及した外国人排斥の動き
大統領に就任したトランプ大統領は選挙中の公約を実施に移し、アメリカ国内に暮らす不法移民の摘発と国外追放を断行した。追放された不法移民の受け皿となっているのが主に中米諸国で、エルサルバドルなどでは巨大な刑務所を建設し、対価と引き換えに不法移民を積極的に受け入れる国も現れた。ヨーロッパでも不法移民をアフリカなどに移送する動きが表面化しているが、そうした外国人排除の動きがついに日本にも波及してきた。直接のきっかけとなったのは今年行われた参議院選挙だ。政権交代が大きな争点となると見られていたが、蓋を開けてみるとこの選挙で最も注目を集めたのは外国人問題、「日本人ファースト」を掲げた参政党だった。背景には、ここ数年日本を訪れる外国人観光客が急増し、各地でオーバーツーリズムの問題が起きていたことがある。さらに軍事的な圧力を強める中国の存在が日本人の間に漠然とした不安を醸成したという理由もあるだろう。外国人との共生を口にする政治家は「媚中派」と糾弾され、これまでヘイトスピーチと呼ばれてきた一部の過激な排外主義的な主張がネット上に溢れ、高市政権の誕生でそうした声が一層勢いを増すことが懸念される。
【4位】自公連立崩壊!進む多党化と右傾化の流れ
石破政権の下、自民・公明の連立与党が衆参で過半数割れに陥ったことにより、日本の政治は新たな時代に突入した。野党の提案を受けて、ガソリンの暫定税率廃止やいわゆる「年収の壁」が引き上げられたのも、少数与党となった今年の特徴だ。自民党総裁選で高市さんが勝利すると、長年連立を組んできた公明党が政治とカネの問題を理由に与党からの離脱を宣言したのにも驚かされた。戦後、自民党を中心に一定の安定を保ってきた日本の政治が一気に多党化し、イタリアのように混迷状態に陥るのではないかと心配した矢先、日本維新の会が自民党に急接近、新たな連立の枠組みが出来上がった。この連立の形はまだ盤石とは言えないものの、公明党時代と比べると保守的な傾向が強く、自民党右派が長年求めてきた憲法改正や防衛力の強化にも積極的である。野党の中にも、自民党よりも右寄りの政策を掲げる政党も増えており、当初厳しい政権運営が予想された高市政権は高い支持率を背景に安定した政権になる可能性が高まっている。このまま行けば日本の国の形は数年で大きく変わることになるだろう。
【5位】日常生活に入り込んだAIがもたらす未来
2023年の10大ニュースで、私は『生成AI元年、「チャットGPT」が変える世界』を1位に選んだ。それから2年、AIはいよいよ私たちの日常生活に深く入り込んできた。今年の流行語大賞でも、「ChatGPT」の愛称である「チャッピー」が候補に選ばれたほどに、若者たちにとってはもはやAIは生活に欠かせない身近なツールになった。入社試験の定番だったエントリーシートの作成にAIを使う学生が多すぎて判定が不可能だという理由で、今年からエントリーシートをやめる企業も出るほどである。簡単な文字を入力するだけで、AIが精巧な映像を瞬時に作ってくれるため、私が生きてきた映像制作の世界も大きな岐路に立たされているほか、数年前には大問題だと騒がれたディープフェイクも、もはやネット上に溢れかえりもはや規制することは不可能になってしまった。株式市場ではAI関連株が相場を牽引し、代表的な銘柄であるエヌヴィディアの時価総額はすでに日本のGDPを超えたという。わずか数年のうちに驚くべき進化を遂げたAIは、私たちの日常生活に関わるだけではなく、宇宙開発や軍事の分野でも人類の未来を左右する存在になりつつある。アメリカと中国が熾烈な開発競争を繰り広げるAI技術がこの先、私たちをどこに導くのか私には全く予想もつかないけれど、ユートピアよりもディストピアが待っているような不安が日々高まっている。
【6位】ガザとウクライナ、「平和の仲介者」トランプ
トランプ大統領は1期目の時からノーベル平和賞を受賞することを熱望している。当初私を含めて世界の多くの人はそれを悪いジョークだと笑っていたが、どうやら彼は本気らしい。バイデン前大統領がNATO諸国を団結させてロシアに対抗しようとしたのとは対照的に、トランプさんは就任直後からウクライナや西欧諸国の仲間ではなく調停者として振る舞おうとしている。大統領選の最中からトランプさんは「私が大統領だったらロシアの侵攻はなかったし、私が大統領になれば1日で戦争を終わらせる」と豪語していた。就任から1年経ってもまだウクライナ戦争の終結は見通せないものの、国連もヨーロッパ諸国も中国でもなしえなかった仲介者の役割を今トランプさんが果たそうとしていることは認めざるをえない。民主的なバイデンさんよりも独裁的なトランプさんの方が平和の使者になりそうな現状は、ある意味、強烈な皮肉にも感じる。しかし、実際にトランプ大統領はガザでの停戦も実現させたし、インドとパキスタン、タイとカンボジア、アゼルバイジャンとアルメニア、コンゴとルワンダの紛争でも和平を仲介した。実績から言えばトランプさんがノーベル平和賞を受賞しても全く不思議ではないのだけれど、ノルウェーの選考委員会は2025年の平和賞にベネズエラの反政府指導者マリア・コリナ・マチャド女史を選んだ。
【7位】ドローンが変える戦後80年目の戦場
今年は第二次世界大戦の終結から80年の節目の年。メディアでは戦争の教訓を伝える企画も目にしたけれど、世論の関心は決して高くはなかった。戦争の痛みを知る日本人がいなくなるにつれ、中国を意識した好戦的な主張が目立つようになった。高市政権は防衛費のGDP比2%達成を前倒しすると表明、日本の安保政策を定めた「安保三文書」の見直しも進めている。さらに、原子力潜水艦の購入についても検討を始める中で、官邸幹部から核兵器の保有についての発言も飛び出した。軍事大国となった中国が台湾への包囲を強める状況下において、台湾有事への備えを含む国民的な議論が必要な段階に来ていると私も思うが、こういう時こそ冷静で現実的なプラン作りが肝要である。現在の戦場を見ると、第二次大戦当時とは兵器も戦術も大きく変化している。ウクライナの戦場では、ドローンが戦車にも勝るとも劣らない主要な兵器となっているらしい。海上でも無人の水中ドローンが戦艦を破壊し、両軍が投入した膨大な数のドローンが歩兵の進軍を拒み戦線は膠着状態になっているというのだ。一方で、兵器のAI化も急速に進む。中国では高性能の人型ロボットがカンフーの技まで習得していると伝えられ、ロボット兵士の実用化、大量投入も遠い未来の話ではなくなってきているようである。そんな中で、高齢化が進み莫大な財政赤字を抱える日本にどのような防衛力強化ができるのか、現実を踏まえた議論が必要だろう。
【8位】史上最も暑い夏でも後退する地球温暖化対策
このところ毎年暑い暑いと言われているが、今年の夏はまた平均気温の記録を更新して観測史上最高に暑い夏だった。秋以降、日本中が大騒ぎした熊の問題も高温のため山の木の実が不作で、食べ物を求めて熊が街に出没するようになったという側面もある。海水温の上昇は、魚介類の生態にも大きな変化をもたらし、瀬戸内海の牡蠣が各地で大量死したり、日本人の食卓に欠かせない秋鮭やスルメイカが歴史的な不漁に陥ったりしている。海外でも、地球温暖化が原因と見られる異常気象が各地で起こっているが、「地球温暖化はフェイクだ」と主張するトランプ政権の復活により世界的に温暖化対策への熱意は明らかに後退した。EUや中国が強力に推進してきた電気自動車への転換も、ここにきて目標を引き下げる動きも見え始め、日本では近頃地球環境の話題をあまり聞かなくなった気がする。
【9位】日本人トリオの活躍でドジャース連覇
今年もドジャース中継には大いに楽しませてもらった。手術を乗り越えて二刀流を復活させた大谷翔平はホームラン王のタイトルとともに4度目のシーズンMVPを受賞。2年目を迎えた山本由伸はシーズンを通して先発ローテーションを守り、ポストシーズンでは獅子奮迅の活躍でワールドシリーズのMVPを獲得した。そして今年から加入した佐々木朗希はケガでシーズンを棒に振ったけれど、ポストシーズンでは守護神として大事な場面でチームを救い、球団史上初となるドジャースのワールドチャンピオン2連覇に貢献した。さらにメジャーリーグでは、引退したイチロー選手が日本人として初めてアメリカの野球殿堂入りを果たしたのも天晴れである。一方、こちらも大変お世話になった大相撲では今年、豊昇龍と大の里という2横綱が誕生。ウクライナ出身の安青錦が怒涛の勢いで一気に大関に駆け上がった。隠居生活を送る私にとって、メジャーリーグ中継と大相撲中継は欠かすことのできない生活の一部ではあるが、まあ10大ニュースの9位ぐらいが適当だろうと思う。
【10位】老いる日本!農業とインフラの10年後
日本人は長年、金利のない世界で暮らしてきた。そのため、日々物価が上がるインフレになるとどうしていいのかわからなくなってしまうのだろう。テレビニュースは毎月、約束事のように今月値上げになる商品を丁寧に説明し、視聴者にこれでもかとばかりに物価高を印象づける。確かにスーパーに行けば嫌でも値上げを実感するわけであるが、アベノミクスの目標は「デフレからの脱却」であり、これが目指してきた状況なのである。そんな物価高の一年にあって、今年象徴となったのが日本人の主食コメだった。石破政権は政府備蓄米の放出を決断し長年続けてきた減反政策を改めて米の増産に舵を切った。ところが高市政権はあっさりこの方針を見直したため、コメの価格は再び上昇し最高値を更新してしまったのだ。この先米価がどのように推移するかはわからないが、私が気になるのはもっと大きな日本の農業の未来である。農業従事者の高齢化が進み、後継者は十分に育ってはいない。増産しようにも作る人がいなくなるのだ。高市政権が掲げる食料安全保障を推進するためにも、日本の農業の現場をどうするのか極めて重要な課題である。同様に日本人の生活を支えるインフラの深刻な状況も、今年1月埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故で明らかとなった。排水管の老朽化によって道路の地下に穴が開き、その穴にトラックが転落して運転手が亡くなった事故から1年が経ってもまだ現場の復旧工事は終わっていない。排水管に関わらず、水道やガス、橋やトンネル、高速道路など、私たちの生活インフラは全国各地で耐用年数を迎えている。私が暮らすマンションも含め築50年を越す老朽化マンションがどんどん増加しているものの、抜本的な対策は打ち出されていない。人間の高齢化とともに日本という国の老いも進んでいるのである。石破政権が掲げた防災庁の設置も道半ば、巨大地震が迫る中で国土強靭化も待ったなしなのだ。しかし、日本政府には金がない。何かと理由をつけて赤字国債を出し続けてきたツケがこれから日本人を襲うことになるかもしれない。日本の財政赤字の総額が1466兆円に対して、日本人全体の個人資産の総額は2286兆円、どちらも過去最高だという。それでも与野党揃って減税を主張するって、やはりどこかおかしいと私はどうしても感じてしまうのである。
『明日、世界が終わるとしても、今日、私は林檎の木を植える』
民主主義国家が衰退し専制的な政治リーダーたちが幅を効かせる時代には、常に戦争のリスクと向き合いながら生きるしかない。
核抑止力は今のところまだ機能していて、NATO諸国がウクライナ戦争への直接関与をためらったのも、プーチン大統領が核兵器で脅すことはあっても実際にそれを使用することを控えているのも、核戦争がもたらす世界の終わりが頭をよぎるからだ。
国際的な批判をよそに北朝鮮が核ミサイル開発を急ぐのも、それが体制維持のため最善の方法だと考えているからである。
さて、日本はどのようにして国の安全を守るのか?
来年2026年は、日本人が本気で戦争と国防について考える年になるかもしれない。
少なくとも高市政権は真剣に戦後の安全保障体制を見直す考えであり、それに協力する野党も少なくない。
さらに、選択的夫婦別姓を否定し、旧宮家から男系男子を養子として皇族に迎える方針も示されそうであり、状況が整えば憲法改正も具体的に動き出すかもしれない。
このまま高市内閣への高い支持が続けば、戦後日本の国のありようが一気に変わってしまう可能性もあるだろう。
習近平政権が軍事力の増強を着実に続け、中華帝国が東アジアを支配した200年前の秩序を再構築しようとする中で、中国人の中には台湾のみならず沖縄=琉球の領有にまで言及する世論も出始めている。
歴史を少し勉強すれば、守りをおろそかにした国が野心を持った軍事大国に簡単に飲み込まれた例はいくらでも見つけられるだろう。
世界の紛争地をいくつも取材してきた私は、今の平和な日本が長く続くことを心から願うけれど、そのためにも日本人もそろそろ真剣に国防について学び自分ごととして考えた方がいいと感じている。
ただ高市政権を支持する国民のうち、どれほどの人が東アジアの安全保障環境や日本の国力について冷静かつ客観的に考えているのか、その点が大いに気になるところだ。
闇雲に中国を敵視し過激な言葉で罵ってみても仕方がない。
本気で抑止力について考えるのであれば、核兵器を搭載可能な原子力潜水艦を日本近海に配備することも現実的な選択肢であろう。
しかし唯一の被爆国として核廃絶を一貫して訴えてきた日本が、核兵器保有に舵を切ることは容易ではないし、アメリカもそれを望んでいないようだ。
では、どうするか?
現実的な選択肢としては、やはりなるべく多くの同盟国と強固な関係を築くとともに、中国と粘り強く付き合っていく以外に道はないのではないか。
時には妥協も必要であり、勇ましいだけの言葉が百害あって一利なしである。
習さんの中国だけでなく、トランプさんのアメリカ、プーチンさんのロシア、モディさんのインドが来年どう動くのか、それを予測するのは不可能であり、もはや何が起きても不思議ではない時代に私たちは突入したと認識するべきなのだろう。
まずは、高市さんのお手並み拝見である。
増額した防衛費を何に使うのか?
若い自衛隊員の不足をどのようにして補うのか?
そして外交でどんな手を打っていくのか?
間違っても、危機を過剰に煽って今の日本にある自由な空気を壊さないよう、かつて高市さんが総務大臣時代に口にしたような言論統制だけは御免被りたいものである。

