今日は二十四節気の「啓蟄」。
「冬籠りの虫が這い出る」季節となった。

快晴続きだった2月も終わり、次第に遠くが霞むようになってきた。
しばらくはぐずついた天気が続くようだ。

公園のヤナギは、いつの間にか薄緑色になっている。
3月に入ると、虫だけではなく、止まっていた時間が一斉に動き出す気配だ。

スギ花粉の方も、これからが本番。
東京地方でも今週から「非常に多い」という予報に変わり、このところジョギングもすっかり控えてますます家に閉じこもっている。

七十二候でいうと、「啓蟄」の初候は「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」というのだそうだ。
意味はほぼ「啓蟄」と同じで、『冬のあいだ土の中にいた虫も地上に出てくる頃』と我が家のカレンダーには書いてある。
ということで、井の頭公園に虫を探しに行くことにした。

地面を眺めながら歩くが、地面はまだ落ち葉に覆われていて、虫の姿を見つけることはできない。
この草、なんていう名前なんだろう?
逆にそんなことが気になって、帰ってから調べてみると、どうやら『ヒメオドリコソウ』という名前らしい。
道端で見かける雑草だが、もともとはヨーロッパが原産で、明治時代に日本に帰化して根づいたようだ。

虫は見つけられなかったが、公園案内所で、ちょっといいものを見つけた。
入り口に桜の開花状況という紙が張り出されていて、「カワヅザクラ」「オオカンザクラ」「カンヒザクラ」はいずれも満開の表示になっている。

場所は、私がストレッチのために訪れている「西園」。
ここにはなんと、19種類もの桜が植えられているということを初めて知った。
このところ花粉を嫌って運動をやめている間に、その中の数種類、早咲きの桜が咲いたようなのだ。
久しぶりに、「西園」まで足を伸ばしてみることにする。

思った以上に、たくさんの桜が咲いていた。
今まで気にしたこともなかったが、確かに木によって、ぜんぜん花の様子が違う。

早咲きの代表格「カワヅザクラ」。
こちらは、もう葉が出てきている。

これは、「オオカンザクラ」。
普通の寒桜より花が大きいのが特徴だという。

色の濃いのは「カンヒザクラ」。
沖縄で花見といえば、この桜だそうだ。
これらの桜については、『井の頭公園の植物』シリーズとして改めて書くことにする。

桜に集まる鳥もいる。
枝から枝に渡りながら、くちばしを花につっこんで蜜を吸っているらしい。
どうやら「ヒヨドリ」のようで、花の蜜が大好物なのだそうだ。

コロナのおかげで、井の頭公園の植物を観察する癖がつくと、自ずと他の生きもののも関心が湧いてくる。
老後の趣味としては、金銭もかからず、いいかもしれない。

そういえば、このところチェーンソーの音を頻繁に聴くようになった。
井の頭公園で樹木の伐採が始まったようだ。
古くなって危険になった樹木は除去し、健康な木も適度に枝を剪定していく。

個人的には、葉の落ちた落葉樹の樹形だったり、ありのままに伸びた木々の枝ぶりが好きなのだが、こうやって人が定期的に管理することできっとメリットもあるのだろう。

でも、トーテンポールのようになった木々は、どうも人工的な印象を受けて、好きになれない。
冬の植物観察も、もう今年は終わりだなと思った。

本来ならば、春の日差しに誘われて、人間も「啓蟄」する時期なのだが、今年ばかりはそうもいかない。
政府は今日、首都圏での緊急事態宣言を2週間延長することを決める予定だ。
下げ止まった今の数字は、2週間前のみんなの行動の結果にすぎない。
街を歩く人の数が「増えたな!」と感じたら必ず、2週間後の数字が跳ね上がっている。

「啓蟄」と「桜」と「緊急事態宣言」。
動きたいのに動けない、もどかしい春の訪れである。
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