<吉祥寺残日録>株価3万円は通過点?!その日、東京の空にはでっかい虹がかかった #210216

昨日2月15日、とうとう日経平均株価が3万円の大台を回復した。

バブル以来、30年と6ヶ月ぶりなのだという。

「この調子だと、日経平均が3万円になったとしても私は驚かない」とブログに書いたのは去年の11月10日のこと。

その頃の株価は、2万5000円だった。

あれから3ヶ月、第3波の大波が日本列島を襲い緊急事態宣言も出されているのだが、もう市場の関心はコロナにはないらしい。

『3万円は単なる通過点』

そんな威勢の良い声も聞かれるようになった。

そんな景気のいいマーケットをお祝いするかのように、東京の空には大きな虹が現れた。

端から端まできれいに見える虹は、空が狭い東京では珍しい。

そのせいで、テレビ局には視聴者から虹の写真や動画がたくさん送られてきて、各局とも天気予報やニュースで紹介していた。

我が家でも、買い物から帰ってきた妻が玄関を入るなり、「虹が出てるよ、見てごらん」と私に声をかけてくれたので、すぐにカメラを持ってベランダに出た。

ウチから見えた虹は、東は東京タワーあたりから立ち上がり・・・

西側は、吉祥寺の東急百貨店のあたりに降りていた。

北東方面にかかっていたので、虹の全体を見ることはできなかったけど、すごく立派な虹で、ちょっと気分がハイになった。

『景気は気から』というのは昔からよく聞く言葉だが、ファンダメンタルズと株価が乖離していることさえ気にしなければ、気分的には「3万円は通過点」と感じさせる雰囲気が確かにある。

日銀など各国の金融当局は、コロナが収まるまでは現在の金融緩和をやめられないし、アメリカ政府はさらに巨額の財政出動を行う気配で、日本でもそれに釣られて再度の10万円給付を求める声が政治家から出始めている。

もはや世界のどこにも、ブレーキが存在しないのだ。

ちょっと驚いたのは、コロナ禍で消費が落ち込んだ去年、日本の家庭の貯蓄額は2000年以降最も増えたというニュースだった。

消費を抑えた分が貯蓄に回ったと考えれば納得がいく。

もうすぐワクチンの接種も始まり、コロナの終わりがいよいよ見えてくると、このため込んだお金を使って我慢してきた個人消費が一気に動き出す可能性がある。

実際この私も、旅行に行きたくてうずうずしているのだ。

しかし、お祝い気分に水を差すような記事も日本経済新聞に載っていた。

『日経平均3万円、主役は外国人・日銀 個人に恩恵薄く』

つまり、株価3万円まで買い上げた主役は外国人と日銀であり、この間、個人投資家は持ち株を売り続けていたのだという。

この30年間、個人は保有株を売りっぱなしで、売越額は総額で68兆円に達する。結果、90年度末に20.4%だった個人の上場企業の持ち株比率は2019年度末は最低の16.5%に低下した。

米国は約半分の世帯が株を保有し、株と投資信託が家計の計45%を占める。かたや日本は個人金融資産の過半を現預金が占め、株と投信は計13%にとどまる。自国の株が歴史的な水準を回復しても、株を持っていない多くの国民にとってはまるで人ごとに映っている。

日本人が手放した株を一手に引き受けたのが外国人だった。外国人の持ち株比率は90年度末の4.7%から17年度末には30.3%に上昇した。

出典:日本経済新聞『日経平均3万円、主役は外国人・日銀 個人に恩恵薄く』

私の場合には、初手で失敗してその後はずっと値上がりするのをただ見ていただけだったが、この大波で稼いだ日本人は案外多くはないようなのだ。

ぼろ儲けしたのは外国人、どうもしっくり来ない。

しかも、ドル建てで計算すると、日経平均3万円は既に史上最高値を更新しているという記事も目にした。

外国人投資家は、逃げ足も早いのだ。

もう一つしっくり来ないのが、日銀とGPIFの存在だ。

12年末に始まったアベノミクス相場が一巡すると、外国人は日本株の売り手に回った。そこで外国人や個人が放出する株の受け皿となったのが、黒田東彦総裁の下で日本株の上場投資信託(ETF)購入を拡大した日銀だ。

日銀保有のETFは昨年末時点で46.6兆円となった。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の45.3兆円を超え、日銀は実質的に日本株の筆頭株主になった。

公的年金の株式運用は世界でも決して珍しくないが、中央銀行が金融政策の一環で株を買っている国は日本以外にない。いくら日経平均が3万円台を回復しても、日銀とGPIFが合わせて株の約1割を保有する「官製相場」のおかげと皮肉られるのは当然だろう。

出典:日本経済新聞『日経平均3万円、主役は外国人・日銀 個人に恩恵薄く』

日銀とGPIFあわせて90兆円以上も日本株を持っているというのは、どう考えても異常なことである。

値上がりしたところで、日銀はため込んだ日本株を適当に売っているのかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。

「コロナバブル」で両者の含み益は巨額になっただろうが、果たしていつ株を売るつもりなのか?

「出口戦略」を持っていればいいのだが・・・?

日経平均が3万円を回復した日、私は山梨の農家とオンライン会議をしていた。

桃とマスカットを武器に、まったく新しい農業のスタイルに挑戦しようとしている若手農業者たちだ。

「農業×スポーツ」だったり、「農業×宇宙」だったり、彼らの話を聞いていると、実に夢があって清々しい。

まだ仲間やスポンサーを集めて一歩ずつ歩を進めようとしている段階で、将来うまくビジネスとして成長して行けるかどうかまだわからないが、実態のない株の取引で儲けるよりもずっと農業の方が気持ちがいい。

アメリカが生み出した金融資本主義は、「無形資産」こそが富を産む世界を作り出したが、私には富よりも夢の方が価値がある。

この先、株価は史上最高値の3万8915円を目指してどこまで上がっていくのか、それとも力尽きて落ちていくのか、私にはさっぱりわからない。

先のバブルを経験した私にとって、「買いが買いを集める」状況はいつか見た光景である。

ひょっとすると、史上初めて4万円の大台に手が届く日がそう遠くない将来来るのかもしれない。

しかし所詮は、虚しい欲望の世界だ。

私は、地に足をつけて新たな商品を開発し、社会を本当に豊かにするために夢を追う人たちと一緒にいたいと思う。

彼らの上にこそ、大きな虹がかかることを願って・・・。

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