勝つためにドジャースに移籍した大谷翔平。
その選択は正しかった。

今シーズン打者に専念した大谷。
レギュラーシーズンでは史上初の「50−50」を達成し、ホームラン54本と59盗塁という前人未到の大記録を打ち立てた。
惜しくも打率ではリーグ2位に終わり三冠王は逃したが、2年連続のホームラン王と初の打点王のタイトルを獲得、チームは3年連続の地区優勝を果たした。
そして大谷の念願だったプレーオフでは、宿敵のパドレスに苦戦するも3勝2敗で退け、2度目のシャンパンファイトを楽しんだ。

そして勝ち進んだナショナル・リーグの覇者を決めるリーグ優勝決定シリーズ。
相手は、ワイルドカードから勝ち上がったニューヨーク・メッツだった。
先発投手陣に負傷者が続出したドジャースだったが、強力打線とリリーフ陣の踏ん張りによりメッツに打ち勝ち、4勝2敗で4年ぶりとなるワールドシリーズ進出を決めた。
相手はアメリカン・リーグの覇者ニューヨーク・ヤンキース。
ジャッジ、ソト、スタントンというメジャーを代表するホームランバッターを擁する最大のライバルだ。
過去、ワールドシリーズ制覇の回数で1位のヤンキースと2位のドジャースが全米No.1を賭けて激突するのは、実に43年ぶりのことだという。
東西の人気チーム同士によるワールドシリーズだけに、全米の注目度は極めて高く、しかも両リーグのMVP候補である大谷とジャッジの直接対決とあって、早くもチケット代は高騰し、最も安い席で15万円、高い席はなんと380万円の高額で売り出されたと伝えられている。

果たしてこの夢の対戦で大谷がどんな活躍を見せるのか、今から楽しみで仕方がないが、残念ながら私はこのワールドシリーズを生で楽しむことはできないのだ。
こんなことになるとは考えもせず、明日から来月4日までバルカン半島を中心にヨーロッパ周遊の旅行を計画してしまったからである。
しかも、チケット代を節約するために、値段が圧倒的に安い北京経由パリ行きの中国国際航空便を予約したため、うまくオンラインチェックインもできず、明日4時前に起きて羽田空港でカウンターに並ばなければならない。
もしドジャースが今日敗れていたら、リーグ優勝の行方もわからぬまま、もやもやした気持ちで機上の人となるところだった。
そういう意味では、とにかく大谷翔平のワールドシリーズ進出決定を見届けたということで満足することにしよう。

今回の旅行は、パリ特派員時代の1990年代、内戦の取材で何度か足を運んだボスニア・ヘルツェゴビナがメインの目的地である。
1992年から3年半に及んだボスニア紛争は、第二次大戦後のヨーロッパで最も多くの犠牲者を出した戦争で、冷戦が終わり平和な世界が訪れるという幻想を打ち砕いた出来事だった。
民族主義の高まりと共に、多民族を排除してなりふり構わず自分たちの領土を広げようとする動きは、今日のウクライナやガザでの侵略に通じる出発点でもあった。
1995年12月にパリで調印された「デイトン合意」によって、戦争はひとまず終結したものの、この国は今もイスラム教徒のボシュニャク人とクロアチア人を主体とする「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」とセルビア人による「スルプスカ共和国」に分断された特殊な状況にあるという。
この内戦の初めから最後まで取材した人間として、その後のサラエボを見てみたいと思ったのが今回の旅の動機である。

せっかくなので、まだ訪れたことのないバルカン半島の国々、アルバニアやモンテネグロにも足を伸ばして、アドリア海に面した世界遺産の港町ドブロブニクやコトルにも宿泊しようと思っている。
かつて都市国家ヴェネチアが地中海の交易を支配していた時代、アドリア海には城壁に囲まれたこうした美しい港町が次々に築かれ繁栄を謳歌していた。
そしてアルバニアと言えば、冷戦時代に独裁的指導者の下、共産主義陣営の盟主であるソ連とも敵対し鎖国政策を取っていた謎の国という印象が強い。
21世紀に入りバルカン半島でも西欧化が進み、これらの国でもEU加盟を目指す動きを強めているという。
果たしてその実態はどうなのか、自分の目で確かめてみるつもりだ。

ただ、間の悪いことに旅行中に総選挙もぶつかってしまった。
裏金問題で窮地に追い込まれる自民党がどこまで議席を減らすのか?
自公で過半数割れの可能性まで指摘される注目の選挙なので、できれば27日の投票日リアルタイムで選挙速報を見たかったが、残念ながらそれも叶わない。
遠くバルカン半島から、大谷と選挙の結果を見守ることにしよう。
その前に、明日の中国国際航空。
トラブルなくヨーロッパにたどり着けるよう、とりあえずそのことに集中したいと思う。
やっぱり何かにつけ、中国絡みはなんとなく気が重い。