🇯🇵 福岡/福岡 2020年10月25日
今回、北部九州に行こうと思ったのは、1万年続いた縄文時代を食い潰していった朝鮮半島から来た集団と文化を知りたいと思ったからだ。
福岡での主要目的地は「九州国立博物館」。
ここに行けば、邪馬台国も含む九州北部の古代史について学ぶことができると考えていたのだが、結果は・・・
太宰府ライナーバス旅人

博多駅でラーメンを食べて、その足で駅に隣接する「博多バスターミナル」に向かった。
「九州国立博物館」は太宰府にあり、このバスターミナルから太宰府行きのバスが出ているのだ。

博多駅と太宰府を結ぶ「太宰府ライナーバス旅人」。
片道40分で、料金は610円。
太宰府には、天神から西鉄を利用するのが一般的だが、博多駅から行くならこのバスも簡単だ。

バスは、奈良・平安時代に九州全体を統治し、外交・軍事部門を担った「大宰府政庁跡」や令和ゆかりの地として脚光を浴びた「坂本八幡宮」を通って・・・

終点の西鉄太宰府駅に到着した。
太宰府を訪れるのは今回が初めて、私には地理がまったくわからない。
太宰府天満宮参道

人の流れについていくと、すぐに賑やかな参道に出た。
この道を進むと、人気の観光地「太宰府天満宮」につながっている。

しかし観光客には参道でのショッピングの方が楽しみなようで、人気のお店には長蛇の列ができていた。
中でも人気は、太宰府名物「梅ヶ枝餅」のようだ。
こちらの、「やす武」も行列の先には、梅ヶ枝餅。

こちらの「かさの家」でも、お客さんのお目当ては梅ヶ枝餅のようだ。
後で知ったのだが、太宰府に店を構える全店が「梅ヶ枝餅協同組合」に加入しているということで、太宰府といえば梅ヶ枝餅と昔から決まっているようである。
ただ、私は行列に並ぶ気もなく、先ほどラーメンを食べたばかりなので、参道を素通りして先に進む。

快晴の日曜日、参道はすごい人混みだ。

牛の銅像の前に行列ができている。
「御神牛」というこの牛の像は、菅原道真公のお使いの牛なのだそうだ。
太宰府で生涯を閉じた道真は、遺言で「遺骸を牛車にのせて人にひかせず、牛の赴くところにとどめよ」と言っていたので、その牛が動かなくなったところを墓所と定めたという話などが残っていて、御神牛が信仰の対象となったらしい。
いつの間にか、牛の頭を撫でると賢くなり、痛いところを撫でると恢復すると根拠の定かでない庶民信仰が定着し、牛の鼻や角はてかてかしていた。
心字池と太鼓橋

御神牛像の置かれた場所で参道は直角に曲がり、太宰府天満宮へと伸びる。
天満宮の入り口には、「太鼓橋」が架かる。

太鼓橋の下には「心字池」。
「心」という漢字の形をしているのだというが、地図を見るとどう見ても「心」には見えない。

この太鼓橋、何の予備知識もなく訪れたが、私が一番印象に残ったのは周囲に生えた大木の美しさだ。
他の観光客が太鼓橋をバックに自撮りに励む中で、私はひたすら樹々の凛々しさを何とかカメラに収めたいともがいていた。

創建から1100年を迎える太宰府天満宮。
長い歴史の中で大きく育った大木の圧倒的な存在感をカメラに収めるのはとても難しかった。
でも、この大木を見上げるだけで、太宰府天満宮を訪れた価値があったと思う。
太宰府天満宮

太鼓橋を渡ると目の前には「楼門」が現れる。
太鼓橋側と本殿側で形状が違うのだそうだ。

私が訪れた10月25日には、七五三のお参りをする親子連れの姿がたくさんあった。
菅原道真を奉る太宰府天満宮は学業の神様として信仰を集めているが、もともとは藤原時平らの策謀によって左遷された恨みが「怨霊」となって都に数々の「祟り」をもたらし、道真の怨霊を鎮めるために天皇や有力公家が建立したのがこの太宰府天満宮だったのだ。

時の権力者たちを震え上がらせた菅原道真の怨霊の凄まじさには驚くしかない。
しかし、こうした経緯でできた天満宮が1000年以上にわたって庶民の信仰を集めているメカニズムについては、どうも私には理解できない。

本殿では、多くの人が祈願を受けていた。
初穂料は個人の場合1人5000円だそうだ。
一言で言えば、怨霊となった菅原道真を神に祭り上げ、学問の神様に仕立てた人間が商売上手だったのだろう。

信心深くない私は、ろくに拝みもせずに境内を後にしたが、絵馬を見ると「合格祈願」の札が圧倒的に多かった。
やっぱり、商売っけの強い、私好みではない神社だという印象である。
九州国立博物館

太宰府天満宮を出て、目的地の「九州国立博物館」を探す。
その入り口は、丘の斜面に作られたエスカレーターだった。

東京、奈良、京都に次ぐ4番目の国立博物館としてオープンした「九博」も、今年15周年を迎えたらしい。
それにしても、このエスカレーター、無駄なところにお金をかけているような気がした。

長いエスカレーターを上がりきると、ガラス張りの近代的な建造物が現れた。
私の想像を超えた立派な博物館だというのが第一印象だったのだが・・・。

中に入ると、ほとんどは空洞。
しかもコロナの影響もあって、現在公開されているのは4階の「文化交流展示室」だけだという。
観覧料700円を支払って、エスカレーターで4階に上がる。

そこには、「太宰府政庁 南門」の模型が・・・。

当時の人々の衣装などはわかるが、それ以上の説明はない。
そして、展示室の内部は原則撮影禁止となっていた。

唯一、撮影が認められたエリアは、「奈良」に関する特別展示だけだった。
どうして九州まで来て、奈良に関する展示を見る必要があるのか私にはさっぱり理解できなかった。
そして、私が知りたかった九州北部の古代史については、ほとんど何も参考になるような展示がないのだ。

九博の公式サイトから写真を拝借して説明すると、常設展は5つのテーマから成り立っていた。
最初のテーマは「縄文人、海へ」。
説明は、極めて一般的なありふれたものだった。
『氷河期であった旧石器時代。人々は大型動物を狩り、植物を採集し、遊動生活をおくっていた。縄文時代には気候が温暖化し、森にはたくさんの木の実がなり、小型動物が現れ、海は豊かな漁場となった。人々は土器を作って食料を煮炊きし、定住生活をおくり、飾り、祈り、弔いも行った。サケなどの食料が豊富な東日本では、特に文化が花開いた。』
展示されているのは、石器や土器が中心で、大きい物としては丸木舟があるが、これは滋賀県で見つかった物だという。

2番目のテーマは、「稲づくりから国づくり」。
『弥生時代、大陸から米作りや金属器が九州に伝わった。農作業を共同で行なう中で人々をまとめる人が現れ、やがて地域を治める王になった。古墳時代には列島の大半を治める大王が現れた。大陸からは多くの人々が渡来し、乗馬の文化や須恵器製作の技術を伝えた。九州では石人や装飾壁画によって首長の死後の安寧を祈る独自の古墳文化が展開した。』
個人的には、この時代、大陸から米作りの文化を持った集団が移り住んだ時代のことをもっと詳しく知りたかったのだが、はっきり言って肩透かしもいいところだった。
卑弥呼の時代、北九州にあったとされる「伊都国」の王墓の模型は興味深かったが、説明は不十分で、体系的に歴史を理解できるような展示は一切なかった。
それでいて、説明文の撮影も禁止とは、一体何のための博物館なのか!
日本の博物館職員の頭の固さはどうしようもない。
博物館は何のためにあるのか?
国民に日本の歴史に興味を持ってもらうためではないのか?
全く理解不能で、海外の博物館との差に今更ながらあきれ返ってしまう。

おまけに、楽しみにしていた8Kの「スーパーハイビジョンシアター」もコロナのため上映中止が続いていて、はっきり言って本当にがっかりな博物館だった。
水城
そんながっかりな「九州国立博物館」の中で、個人的に勉強になったと感じたのは「文化交流展示室」に入る前のスペースに設けられていた「水城(みずき)」に関する簡単な展示だった。

水城とは、太宰府を防衛するために築かれた古代の城のことである。
663年、白村江の戦いで敗れた天智天皇は、対馬・壱岐・筑紫国に防人や烽を配備し敵の侵攻に備えた。
その上で、太宰府を防衛するため築かれたのが、全長1.2キロ、高さ9メートル、幅80メートルの「水城」と「大野城」だった。
百済救援に失敗した倭国は、有史以来の危機に直面していたのだろう。

展示コーナーには、こんな説明書が・・・。
『土塁の外側(博多湾側)には、敵軍の侵攻を防ぐ幅60mの外濠が掘られている。土塁の地下には、外濠に水を流す巨大な「木樋(導水管)」がいくつも埋設されており、水城築造にいかに多大な資材と労働力が投入されたかがわかる。』

ガラスケースに収納されているこの丸太のような物が、外濠に水を流すための「木樋」だという。
使われている木は、ヒノキだ。

こうして人海戦術によって「水城」は完成した。
結局、朝鮮半島から敵軍が攻めてくることはなく、倭国は中国・朝鮮の諸国に対抗できるよう律令国家としての整備を急ぐことになる。

このように、私たちが知らないことを学ばせてくれるのが博物館のはずだ。
その意味で、「九州国立博物館」はまったく期待に応えられていない。
学芸員が悪いのか、もっと別に原因があるのかはわからないが、この無用に巨大な建物に予算を使ってゼネコンだけが潤う典型的なハコモノ行政を見た思いで、非常に残念であった。
「九州国立博物館」 開館時間:09:30-17:00 休館日:月曜 https://www.kyuhaku.jp/
2泊3日福岡&対馬の旅2020
① 博多駅直結「博多めん街道」で味わう「元祖博多だるま」の「博多セット」
こんにちは!わたしは、九州出身で、この博物館には期待しておりました。ゼネコンが潤わせるためのハコモノというのは、ちょっと残念ですね。