<きちたび>中央アジアの旅2023🐪 キルギス🇰🇬 ビーチリゾートと化したイシククル湖と「Dolinnka Hotel」の庭

キルギスに行こうと調べ始めた時から、この湖には行ってみたいと思っていた。

イシククル湖。

観光ガイドには「中央アジアの真珠」とも「天空の湖」とも謳われ、かの三蔵法師も旅したシルクロードの絶景ポイントと聞くと、どうしても行きたくなってしまった。

しかし、実際に訪れてみると、想像とはかなり違っていた。

夕方6時ごろホテルに到着し、すぐに湖に行ってみるつもりだったが、支払いの件で少々手間取り、湖岸にたどり着いたのは午後8時近くになってしまった。

まだ明るさは残っていたが空には雲がかかり、対岸に見えるはずの天山山脈は雲の中、とても絶景といった感じではない。

それ以上にがっかりだったのは、イシククル湖北岸は夏のビーチリゾートとなっていて、特に私が宿泊したチョルポンアタの周辺はほとんどがプライベートビーチになっていて自由に湖岸を歩けないのだ。

それでも湖を背にして北を見ると、天山山脈から延びる支脈が聳える、その頂に万年雪が残っているのを見て多少救われた気分になった。

こちらが私が宿泊した「Dolinnka Hotel」。

イシククル周辺の中心地チョルポンアタの西隣ドリンカにある。

ずいぶん前に予約したのでなぜこのホテルを選んだかは覚えていないが、この周辺は夏のリゾート地帯となっているため、良さそうな宿はとんでもなく高く、手頃な宿は口コミの評価が最低で、エクスペディアでは気に入った宿が見つからず、ここだけのBooking.comを使ってなんとかこのホテルを見つけたという経緯があった。

部屋は広く、ソファーも付いている。

ただ全体的に設備は古め、イメージ的言えば個人経営のペンションといった感じだ。

ちょっと残念だったのは水回り。

洗面台が詰まり気味で、顔を洗っていると溢れそうになる。

とはいえ、決定的にダメというほどでもない。

ただ宿泊代がアルマトイの5つ星ホテルよりも高かったのでどうしても比較してしまうのだ。

ホテル代が割高なのはエリアの特性というだけではない。

朝晩だけでなく昼食も付いて3食付きの値段なのだ。

確かにホテルの周りにはご飯を食べるところもないし、のんびりリゾートを楽しむには全部の食事付きというのはありがたい。

ちなみにチェックイン直後にいただいた夕食がこちら。

マッシュポテトに牛肉が乗ったメインディッシュにトマトとキュウリのサラダ、ピロシキとリンゴも付いている。

パンや紅茶はセルフサービスで食べ放題だが、全体的にちょっと簡素な印象を受けた。

味もあまり美味しくない。

冷蔵庫の中にあるビールが目に止まったので、買って飲むことにした。

どうやらキルギスのビールのようで、後で銘柄を調べたら「アルパ」というらしい。

少し温くて特別美味しい訳ではないが、朝からずっと車に乗りっぱなしだったので、他の料理よりずっと美味しく感じた。

翌朝6時に起きて、夜明けのイシククル湖を見に出かけた。

ちょうど太陽が昇ったところだ。

散歩する人が数人いるだけで、とても静かである。

この日は朝から晴れていて、対岸の天山山脈を拝むことができた。

光の関係でくっきりとはいかず、霞がかかった状態ながら頂の雪も確認できる。

どれかは不明だが天山山脈の最高峰ポペーダ山もイシククル湖の南にあるはずで、天山山脈の反対側は中国の新疆ウイグル自治区になる。

しかし、ホテル近くの湖岸の西側が半島のように出っ張っていて、湖の東半分しか見ることができない。

朝の散歩がてらこの小さな半島の反対側まで歩いて湖の西半分も見てみようと思った。

そのためには、広大な敷地を持つどこかのプライベートビーチを通らなければならない。

キルギスの場合、その辺がいい加減そうで、明らかに宿泊客ではなさそうな人も勝手に敷地に入っていた。

意を決した私もプライベートビーチに足を踏みごんだ。

水際には古めかしいボートが並び、奥には立派そうなロッジも見える。

私は波打ち際に沿って半島の先端を目指す。

私が宿泊したホテル近くの湖岸は砂浜ではなく石と草むらでゴミも散乱していたが、さすがにプライベートビーチは砂浜で綺麗に保たれている。

宿泊客用に何本かの桟橋が湖に突き出していて、その先端で朝日を浴びながらヨガのようなことをしている女性たちガソリンいる。

中には長袖の服を脱ぎ、水着姿になって湖に入る人たちもいる。

この周辺はお金持ちの避暑地だけあって、都会より気温が低く、特に朝は半袖では寒く感じるぐらいだ。

宿泊客たちも結構厚着をして湖まで来るのだが、それを脱ぎ捨てて水に浸かるというのはどうも解せない。

イシククル湖は現地の言葉で「熱い湖」という意味があると聞くが、朝から水に入る人たちを見ると、ひょっとすると水の中の方が温かいのだろうかと思ってしまう。

結局、プライベートビーチの端まで行ってみたが行き止まりになっていて半島の先までは行けそうにもない。

行く手を阻む草むらの中に馬がいる。

ここで飼われている馬なのだろうか?

キルギスに来て2度ほど馬に乗って道行く人を見かけたが、さすがに野生の馬ということはないだろう。

波打ち際を進むのがダメならこのリゾートから出て、岬の反対まで歩こうと思い、広い敷地内を出口を求めて彷徨うものの、門には鍵がかかっていて出られない。

どうやらこのあたりにバカンスで来る人たちは、塀に囲まれたリゾート施設の中で泳いだりテニスをしたりして過ごすというのがキルギスのレジャーのスタイルなんだろう。

まだ宿泊客が起きてこない早朝に勝手にうろちょろさせてもらったが、緑の中にたくさんのバンガローが点在するこちらの施設はかなり高級なリゾートに違いない。

お昼になればみんな湖で泳ぎ、レジャーに興じるのだろう。

中央アジアと言えば日本人はすぐにシルクロードを連想してしまうが、彼かにとってイシククル湖は海の代わり、シルクロードのことなど考えて来る人はいないんだなということを思い知った。

朝の散歩を終えてホテルに戻ると、ひとりの子供が庭のプールで遊んでいた。

ドリンカ・ホテルに宿泊する客はロシア系の人が大半で、昼間はこの小さなプールを中心に芝生の庭でのんびり過ごし、気が向いたら湖まで泳ぎに行く、そんなバカンスを探している。

夜は遅くまで大音量の音楽な流れていたから夜更かしすら人が多いと見えて、朝食も朝9時から10時と遅い。

これがこの日の朝食。

メインはロシアの餃子ペリメニとオートミール?

ひょっとするとミルクで炊いたお粥かもしれない。

どちらもあまり美味しくない。

そのほかにハムやチーズ、スライスしたトマトとキュウリがつき、コーンフレーク、パン、紅茶はセルフサービスになっていた。

前の晩には気がつかなかったのだが、朝食を食べながら気になったことがある。

この宿の食堂には素敵なテラス席があるのだが、そこに案内されるのは全員ロシア系のファミリーなのだ。

ロシア国籍なのか、中央アジアに暮らすロシア人なのかは定かでないが、とにかくロシア人だけがテラス席を使っている。

アジア系の顔をしたファミリーは食堂内の北側のテーブルに座っている。

もちろん私も北側の一員で、働くスタッフは全員アジア系の顔をしていた。

単にロシア人が長期滞在する上客だから優先されているのかもしれないが、ロシア帝国による征服以来ソ連崩壊まで続いた民族的なヒエラルキーが今も残っているようにも私には見えた。

朝ごはんが済んだら私もイシククル湖の水に浸かってこようかなどと考えていたのだが、ベッドに横たわった瞬間うたた寝してしまったようで、気がつけばチェックアウト時間の11時が迫っていた。

慌てて荷物をまとめて部屋を飛び出し1階にいるオーナーのおばさんに鍵を返す。

お金の管理など全てこのおばさんが取り仕切っているのだが、残念なことに英語が一切伝わらない。

そのためチェックインの時にも支払いのことで行き違いがあり手間取ってしまったのだ。

でも基本的にはいい人で、午後1時からのランチまで快く私の荷物を部屋で預かってくれた。

そう、この宿は三食付き、チェックアウトしても昼食は食べられるのだ。

昼ごはんまでの2時間、私はイシククル湖ではなく、ホテルの庭で過ごすことにした。

雲が広がってきて山々が隠れてしまったからだ。

ドリンカ・ホテルの庭は大半が芝生で覆われているが、その一角にリンゴの木などが植えられ気持ちの良い木陰を作っている。

そこに4台ほどの天蓋付きソファーベッドが設置されているのを見つけ、その一つに寝転がった。

木陰には爽やかな風が吹き抜けて、最高に気持ちいい。

ここでブログを更新しながら思った。

わざわざ白タクをチャーターしてまでやってきたイシククル湖にはいささかガッカリしたけれど、この木陰にはわざわざ来た甲斐があったのではないか。

暑くもなく、寒くもなく、蚊もいなければ虫も寄ってこない。

ただ心地よい風だけが緩やかに吹き抜けていく。

これ以上、気持ちのいい時間があるだろうか?

岡山にもこんな素敵な木陰が作れたら最高なのに、そんなことを夢想して夢の時間を過ごした。

午後1時を待って食堂に行きと、私の席にもちゃんと昼食が用意されていた。

野菜スープと肉とキュウリの炒め物、そしてスイカだ。

やはりランチは軽めなんだなと思って食べ始めるともう一品運ばれてきた。

ソーメンのような細麺にミートソースのようなものがかけてある。

どうやらこれもラグマンの一種のようだ。

麺は柔らかくてボリュームもあったが、やっぱり今ひとつ美味しくない。

どうも中央アジアの人は日本人と似た顔をしているものの、味覚はだいぶ違っているんだろう。

『標高1,609メートルの高地に横たわる幻の湖・イシククル。広大な湖面と深い水底。岸辺に打ち寄せる遺物を頼りに湖底に潜り、住居跡が埋もれていることを水中撮影によって確認した。天山山中のイシククル湖には、古代の文明がすっぽり沈んでいる。』

これはNHKの名作「シルクロード」でのイシククル湖の紹介だ。

『幻の湖』というイメージを持ってここにやってくるとガッカリしてしまうかもしれないが、それこそが旅の醍醐味。

インターネットで何でも居ながらに知ることができる時代だからこそ、旅をして現実を自分の目で確かめることはますます重要になっていると改めて感じたイシククルの旅であった。

中央アジアの旅2023🐪

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