🇫🇷フランス/パリ 2024年11月1日
サラエボからチューリッヒ経由でパリのシャルルドゴール空港にたどり着いたのは、サラエボ発のフライトが遅れたため乗り継ぎができず、予定より2時間近く遅い午後8時半だった。

すっかり日も暮れてしまい、ホテルには一応連絡はしたがゆっくり晩ごはんという感じではなくなってしまった。
さて、ホテルまでどうやって行くか?
パリ特派員時代にはいつも自分の車を運転して空港の駐車場に止めてしたので、パリ市内への普通の行き方を知らない。
ネットで調べると、郊外電車RERを利用するか「ロワシーバス」という空港リムジンを使うのが一般的らしい。
夜間はRERの治安に問題があるため、ネットでは「ロワシーバス」を勧める書き込みが多い。

乗り継ぎトラブルのため、私が到着したのは当初予定のターミナル1ではなく、ターミナル2Eだった。
入国手続きを済ませて到着ロビーに出ると、バスと書かれた案内板に従って進む。
「ロワシーバス」は順番に各ターミナルのすぐ目の前に停車するのだが、ターミナルEとターミナルFだけは、その中間点にバス乗り場があるようだ。

券売機があって事前にチケットを買うことも可能なようだが、慣れない機械はわかりにくいため、結局運転手に直接現金で支払う方法を選んだ。
パリ市内の中心にあるオペラ座まで途中止まらない直行便で、料金は16.60ユーロ(約2800円)である。

バスは夜の高速道路を失踪する。
土曜日の夜だからか、全く渋滞がない。

高速を降り、街の中心に近づくと共に、きらびやかな街の灯も増えてくるが、全体的には東京に比べて暗い。

空港を出てから50分で、ロワシーバスはオペラ座の西側の道端に止まった。
まあまあ、スムーズでトラブルの少なそうな移動手段といっていいだろう。

オペラ座は今改修中なのか、正面の壁一面にラルフローレンの巨大なポスターが貼られていた。

さて、どうやってここからバスティーユに移動するか?
タクシーを捕まえるか、Uberを使ってみるか?
Googleマップで移動手段を検索してみると、少し離れたバス停からバスティーユ行きの路線バスが出ていることがわかった。
本当にGoogleマップは便利である。

夜ということもあって、バスは空いていた。
乗り降りする客が少ない代わりに、バスは狭い路地をぐねぐねと進んでいって頻繁に信号に引っかかるため思いのほか時間はかかる。

ただ車内は清潔で、次の停留所を知らせるパネルもあり、音声でもフランス語と英語で教えてくれるので降り損ねる心配はない。
30年前にはバスの路線図を読み解いて路線バスを利用するのは外国人には至難の業だったが、今ではGoogleマップを見ていれば、自分がどこを走っているのかもわかるし、乗り換える場所、乗り換えるバスの番号まで教えてくれる。
すごく便利な時代になったものだ。

バスティーユ広場でバスを降りた時には、すでに午後10時を回っていた。
フランス革命の発火点となったバスティーユ牢獄があった場所として知られるこの広場には、この夏に開かれたパリオリンピックの名残である五輪のオリンピックシンボルが飾られていた。

東京に比べると全体的に暗いパリの街中で、広場のランドマークとなった新オペラ座「オペラ・バスティーユ」だけが明るかった。
パリに暮らしているといつの間にか夜の暗さにも慣れてしまうのだが、久しぶりに訪れるとやはり暗さを感じ、ホテルを探す前に警戒体制を一段引き上げる。
私が住んでいた1990年代、バスティーユを含むパリの東部は比較的治安が悪いとされていて、何か用事がある時以外は行くことはなかった。
ホテル代が比較的安いのはそのせいだろうと思い、ある程度覚悟してバスティーユに宿を取ったのだ。

ところが、予想外に広場の周辺に不穏な空気はなく、人通りは多くはないものの危険を感じることは一切ないままホテルにたどり着いた。
「CASTEX HOTEL」
広場から5分ほど歩いた路地裏に建つ古い三つ星ホテル、ここが予約しておいたホテルである。

あらかじめ到着が遅くなることは連絡していたので、おじさんが一人フロントで待っていた。
それにしても、このロビーの暗さはなんだろう。
やっぱり安いだけあって、かなり胡散臭いところを予約してしまったか?

それでもスムーズにチェックインを終え、エレベーターで4階に上がる。
張り紙には最大2人までしか乗れないと書いてある。
今時どんなエレベーターだ。

エレベーターを降りると狭いホールに面して5つほどの扉が並んでいた。
不思議なのは1つの扉に2つの部屋番号が書かれていたこと。
まさか相部屋かと思いながら恐る恐る鍵を開けてドアを開けると、中にまた2つの扉があった。
なんでこんなややこしい構造になっているんだろう?

予想通り、狭くて暗い部屋だった。
しかし、変なにおいなどはない。
床はタイル敷き、照明はかつて私が住んでいたアパートにもあったろうそく型の間接照明である。
フランス人は明るい白色照明を好まず、たいていのアパートではこうした暗めの間接照明やスタンドで夜を過ごすのだ。

部屋の割にベッドは大きく、クローゼットがある窓側に回る時にはベッドの角を跨がなければならない。
とはいえ、ベッドが広いのはありがたい。

窓を開ければ、当然のことながら路地を挟んだ反対側の建物が見える。
だからカーテンを開けっぱなしにしたり、ましてや窓を大きく開くことは躊躇する。

ただ嬉しいことに、窓辺には旧式のヒーターがありバルブを捻ると熱いお湯が管の中を流れて部屋を温めてくれた。
バルカン半島では部屋が寒くて困ったことも多かったが、パリではこのお湯のヒーターで部屋は暑いくらいにぽっかぽか。
部屋の暗さを吹っ飛ばす快適さである。

さらに嬉しかったのはバスルームを見た時だった。
古いホテルにしては新しめで清潔感のある水まわり。
そして何とバスタブがあるではないか。
ちゃんとお湯もでる。
もうそれだけで私は大満足で、早速温かなお風呂に入ってからベッドに入った。

翌朝。
ホテルでも朝食は食べられるのだけれど、1食13ユーロとちょっとお高めなので、今回はあえて朝食は頼まず、外が明るくなるのを待って何か食べ物を求めて街に出た。
バスティーユ広場周辺には、いくつものパリらしいカフェがあって朝から営業している店もあったが、やはり値段はホテルと変わらず、もう少し歩いてみることにする。

広場の反対側に「Carrefour City」というコンビニらしきものを見つけた。
名前からしてフランスの大手スーパー「カルフール」が展開する小規模店舗のようだ。
ここでパンとジュース、そしてミネラルウォーターを購入してホテルに戻る。
合わせて5.59ユーロ、およそ930円。
それでもまあ、だいぶ節約できた。

コンビニとはいえ、さすがに本場のクロワッサンとパンオショコラはそれなりのクオリティーである。
お湯を沸かして部屋に備え付けのコーヒーを淹れる。
パンとコーヒー、これがパリジャンの朝ごはんの定番だった。

実は、部屋にはサービスで赤ワインも1本置いてくれていた。
その日の夕方、スーパーでおつまみのチーズを買ってきてワインをいただく。
ワインもチーズも少し量が多く余ってしまったが、どちらも美味しかった。

交通の便のいいバスティーユ広場からすぐのところにある「CASTEX HOTEL」。
1泊5万円が当たり前のパリ市内では、2泊で4万3508円のこのホテルは安宿の部類に入るだろう。
でも思いのほか居心地は良くて、またパリに泊まることがあれば選択肢の一つに加えたいと思った。

ちなみに、到着時に暗くて薄気味悪かったホテルのロビーも昼間に見るとこんな感じ。
特に不気味な印象はない。
そして階段を降りて行った地下に朝ごはんを提供する食堂があるらしい。
ホテル代がめちゃ高騰している昨今、こうした古い宿を上手に利用しないとなかなかパリに泊まることは難しくなっていると感じた。