<吉祥寺残日録>注目の米大統領選はトランプ氏圧勝!もはや何が起きても驚かない「新たな時代」の到来 #241108

やはりトランプさんが戻ってきた。

5日に行われたアメリカ大統領選挙は、史上稀に見る大接戦という事前の予想を覆し、共和党のトランプ前大統領がアメリカ初の女性大統領を目指した民主党のカマラ・ハリス副大統領を圧倒し勝利を収めた。

勝敗を分けるとして注目された激戦州7州をすべてトランプ氏が制するまさに圧勝だった。

トランプさんが前回大統領に選ばれたのは2016年。

まさにこのブログを立ち上げた年だった。

あの時にはほとんどの人がヒラリー・クリントン新大統領の誕生を確信していて、トランプさんの勝利はものすごい衝撃を持って受け止められた。

私もブログに次のように記している。

トランプ氏が第45代米大統領となることが正式に決まると、「驚くべき番狂わせ」と米メディアは一斉に伝えた。

みんな、この先何が起きるのか予想がつかない。時代の大きな変わり目になるかもしれないが、心配したほどのことはないかもしれない。個人的には、レーガンやブッシュに比べると戦争好きではない気もするので、そこまで心配はしていない。

ただ一番心配なのは、アメリカがこれまで演じてきた「世界の警察官」の役割を本当にやめて国内に閉じこもってしまうこと。そうなれば、相対的に中国の存在感が高めることになるだろう。

もう一つ気になることがある。今回の選挙で、アメリカのマスコミは完全に権威を失った。アメリカだけではない。世界中で既存のメディアが市民の信用を失いつつある。明らかにインターネットの影響だろう。

既存メディアの伝統は、理想主義である。権力を監視し、人権を重視し、より良い社会を作るために情報を発信する。欲望のままの社会ではなく、理性的な寛容な社会を志向してきた。

しかし、ネット世論はもっとむき出しの本心だ。皆が何となく心の中に抱いている本音を誰かがネットで発信すると、そこに同調して世論が形成される。それはメディアが伝える情報とずれる。そのためメディアが嘘の情報を流しているという不信感が広まる。マスコミを通じてしか情報を得られなかった時代には、自分の感情は間違っていると感じていた人が、ネット上に自分と同じ気持ちを持つ人がいることを知り、自分の感情により素直に行動するようになる。

文字通り「本音の時代」が世界中に広がっていくのだ。

しかし今回は、がっかりではあるがサプライズではない。

今年7月にトランプ氏を狙った暗殺未遂事件が起きた時、もうトランプ氏の再登板は避けられないと覚悟した。

その後バイデン大統領が選挙戦から撤退する決断をし、ハリス氏が民主党の大統領候補になったことでアメリカの有権者が良識を発揮してくれるのではと少し期待したがやはりダメだった。

選挙結果を見ると、若者、女性、黒人、ヒスパニックといった前回バイデン勝利の原動力となった層すべてでトランプさんが票を伸ばしたことが指摘されている。

ハリス氏の力量不足を指摘する声もあるが、コロナ後の激しいインフレによる生活苦、それに対して解決策を持たない民主党政権に対する不満が政権交代をもたらしたとの分析が多く見られる。

議事堂襲撃事件などさまざまな罪に問われ、妊娠中絶の権利を妨害し、自分に都合のいい嘘を垂れ流す人物でも、トランプさんなら今の苦境を救ってくれる、そんな願いにも似た幻想がトランプ氏を再びホワイトハウスの主人にしたのだ。

トランプさんが大統領になれば、現在の最大の懸案であるウクライナと中東の紛争に間違いなく大きな変化が起きるだろう。

先の見えない戦争が早期に終結に向かう可能性もある。

ただその着地点は「力の強いものが勝つ」という前時代的な解決方法であり、G7諸国が一貫して主張してきた「力による現状変更を認めない」という大義を放棄するものになるだろう。

トランプ氏がウクライナに領土の割譲を迫った時、EU諸国はただそれに従うのだろうか?

個人的に懸念しているのは、誰もトランプさんを止める人がいないことだ。

前回は、副大統領のペンス氏はトランプさんを全面的にサポートしながらも、議事堂襲撃事件の際にはトランプさんの支持を拒み憲法に従った行動をとった。

しかし今回副大統領となるとなるバンス氏は完全なイエスマンであり、トランプ氏以上に過激な言動をして状況をさらに悪化させると予想される。

そしてトランプさんを支える岩盤支持層は、この4年の間に返り咲きのためのさまざまな準備を行ってきた。

私が一番懸念していることは、ワシントンの官僚組織をトランプ支持者に入れ替えてしまおうという陰謀であり、そのこともこのブログで以前書いている。

昨夜放送されたNHKスペシャル『混迷の世紀 パラレル・アメリカ〜銃撃事件の衝撃 分断のゆくえは〜』を見た。

番組では、私が知らなかったトランプ支持者たちの活動や意見がいくつか紹介される。

それは単なるイデオロギーの違いを超えて、思考ではなく信仰、トランプ氏という神に選ばれし強きリーダーの主張に盲目的に服従する人たちの姿だった。

中でも私が戦慄を覚えたのは、ワシントンの官僚組織を自らの支持者に入れ替えるというトランプ氏の公約。

現在大統領が指名できる政府の要職はおよそ400人だが、トランプ氏はこの数を大幅に増やそうとしていて5万人規模になるのではないかと伝えられている。

トランプ氏のブレインたちも参加して保守系シンクタンクが作成している「プロジェクト2025」という計画書には、「(議会の承認なしに)FBIの部署を廃止できる」など大統領の権限を大幅に強化して、それを実現する官僚を育成しようというプランが盛り込まれているという。

ヘリテージ財団「プロジェクト2025」の総責任者ポール・ダンス氏は次のように述べる。

『大統領が政府を掌握するためには同調する官僚が必要です。しかし前回のトランプ大統領の就任時は足並みをそろえられませんでした。多くの官僚が反トランプだったため一種の機能不全になったのです。トランプ氏が再任された時に官僚機構をどう管理するかは非常に重要なのです。』

シンクタンクでは官僚養成のためのeラーニング動画サイトを立ち上げ、トランプ支持者たちに学ばせている。

兵士としてアフガニスタンに従軍した経験を持つアルゲイロさんは、自ら官僚になって、ウクライナ支援に消極的なトランプ氏を支えたいと考え半年前からこのサイトで学んでいるという。

『政府の支出は大きくなっているのに国民には還元されておらず、国民のためになっていません。それが今の問題です。官僚機構を利己的なものから国民のものへと変える必要があるのです』

自らの意のままに動く官僚を養成する。

それは、まるでかつてのナチスドイツのようであり、習近平体制の中国のようだ。

すなわち独裁者が必ず求める入り口であり、アメリカを個人崇拝の「独裁国家」に変える危険な匂いを感じる。

「プロジェクト2025」にある官僚の入れ替えが実行されるかどうかはわからない。

しかし、前回の大統領就任時にさまざまな抵抗に遭い、なかなかトランプさんの公約が実現できなかったことを踏まえて、今回はあらかじめ抵抗勢力の排除に動く可能性は大いにあると私は懸念している。

誰も止める者のいない2期目のトランプ政権で果たして何が起きるのか?

もはや何が起きても驚かない。

アメリカは民主主義陣営のリーダーという地位を捨て、自国の利益を優先し、同盟国を振り回すことになるだろう。

歴史を振り返れば、アメリカが「世界の警察官」として振る舞うようになったのは第二次大戦後の冷戦時代になってからの話であり、それまでは「孤立主義」を基本的に貫いていた。

トランプさんがそうした伝統に舞い戻ろうとしているのであれば、我々もアメリカ頼りの従来の姿勢を改めて、自国の外交や安全保障についてもっと真剣に考える必要がある。

そういう意味では、トランプさんの復活は日本に自立を促しているのかもしれない。

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