<きちたび>ブルネイの旅2025🇧🇳 水上タクシーをチャーターし絶滅危惧種のテングザルとワニと水上集落「カンポン・アイール」を見にいく

🇧🇳 ブルネイ/バンダル・スリ・ブガワン 2025年2月17日

正直、ブルネイという国についてはほとんど知識がなく、何が見たいか自分でもよくわかっていなかった。

漠然と思い浮かぶのはリッチな王様、そして水上集落ぐらいだろうか。

だから、ブルネイ滞在の2日目はブルネイ川の唯一の交通手段「水上タクシー」を使って、対岸の水上集落と王宮を見に行きたいと思った。

幸い朝起きると前日の激しい雨は上がっていた。

またいつ雨が降り出すかわからないし、朝のうちの方が多少涼しいので、明るくなった午前7時半にホテルを出て、まっすぐ河岸の船着場へ向かった。

川の対岸にはブルネイ名物の水上集落「カンポン・アイール」が見え、その前を猛スピードでボートが行き交う。

とにかく、あそこに行ってみよう。

さらに川の下流に目をやると、金色のドームを持つ巨大な建築物が森の中に立っている。

あれが、ボルキア国王が暮らす王宮に違いない。

王宮には川からでもアプローチできるのだろうか?

そうして川を眺めていると、一艘の水上タクシーが近づいてきて操縦していた男が私に向かって手をあげた。

私は男に話しかけ、「水上集落と王宮に行きたい」と伝え料金を聞くと25ブルネイドルだという。

およそ2800円、まあいいだろうと思ってそのボートに乗り込んだ。

おそらく相場よりも少し高かったのだろう。

男は機嫌よく舟を出し、一路王宮に向けて出発した。

川はとても穏やかで波ひとつなく、ボートがスピードを上げると風を切る心地よさが熱帯の暑さを忘れさせてくれる。

川辺に立ち並ぶ水上住宅の向こうに緑色のドームを戴いた大きなモスクが見える。

「あれがニューモスク?」と聞くと、男は「そうだ」と答えた。

その時はそれで納得したのだが、後で調べるとこれは現ボルキア国王が1994年に建設したブルネイ最大の「ジャメ・アスル・ハサナル・ボルキア・モスク」、通称「ニューモスク」ではなく、別の「Masjid Duli Pengiran Muda Mahkota Pengiran Muda Haji Al-Muhtadee Billah」という長い名前のモスクだということがわかった。

このモスクも1999年完成なので、確かに「ニューモスク」ではある。

7〜8分走って、王宮の黄金のドームが近づいてきた。

王宮と水上集落のコントラスト、これは格差の象徴のようにも見えるが、この国では必ずしもそうでもないらしい。

政府は陸上に新しい住宅を建設して、水上住宅の住民たちにこちらに移るよう促しているというが、皮の上での生活は見かけによらず快適らしく、なかなか移住が進まないのだという。

近くに行けばもっと王宮の全貌が見えるかと期待していたが、近づくにつれて王宮は川辺を覆うマングローブの森に隠れてしまい、逆に見えなくなってしまった。

ただ、その規模の大きさだけは王宮の敷地の広さを見ることでおおよそ把握できた。

水上タクシーは、王宮の前を通過しそのまま川を直進する。

実はこの水上タクシーに乗った後、私が船長に聞いたからだ。

「モンキーが見られる所って遠いの?」

すると、船長は「あと25ドル出せば連れて行くよ」と言った。

「OK。今現金ないから、戻った後両替するので良ければ見に行きたい」と伝えた。

王宮を過ぎると人間の家は見えなくなり、川沿いにはマングローブの森が延々と続く。

一隻のスピードボートがものすごい速さで我々の舟を追い越していき、川の分岐点を右に回った。

ジャングルの中をうねうねと流れるブルネイ川は、海が近づくにつれたくさんの支流に枝分かれしている。

私たちのボートもここから川幅の広い本流を離れ、支流に入って行った。

支流に入ると川幅が狭くなり、樹木の密集度も若干下がった気がする。

すると、支流に曲がり込んですぐ、船長が「モンキー!」と叫ぶ。

私は、船長が指差す方向に一生懸命目を凝らしたがよく見えない。

マングローブの木からは無数の呼吸根が垂れ下がっている。

果たしてこんなに街から近い場所に猿がいるのだろうか?

すると次の瞬間・・・

いた!

ガサガサと木が揺れ、茶色い比較的大きめの猿が枝を渡っていく。

テングザルのようでもあるが、高い木の上にいるためはっきりとはわからない。

ブルネイのマスコット的な存在であるテングザルは、ボルネオ島のみに生息するテナガザルの仲間で、体長は60センチぐらい、尻尾の長さも同じぐらいの長さがあるという。

こちらにいる別の猿は枝に座り、のんびり葉っぱを食べている。

垂れ下がっている長い尻尾が見えた。

やっぱり、これはテングザルか?

あちらにも、こちらにも、かなりの数の群れのようだ。

しかし、私のiPhoneのカメラだと15倍ズームが最大なので、これが限界。

テングザルの特徴である大きくて長い鼻は残念ながら確認できない。

こちらがネット上から拝借したテングザルの写真。

まさに天狗のような大きな鼻だ。

なんとも面白い顔だけれど、ブルネイの森には他の種類の猿たちも暮らしているから、猿を目撃したからといって必ずしもお目当てのテングザルとは限らないのだ。

でも、帰国してからネット上の資料写真と見比べたところ、その毛の色や体の特徴から判断して、この群れがテングザルなのはほぼ間違いないだろう。

一応、動画も撮ってみた。

じっとしていると見つけにくいが、動いてくれると枝が大きく揺れるため、どこにいるのかすぐにわかる。

葉の繁った木にいるとなかなか見づらいけれど、この時は比較的葉の薄い木にいてくれたため、かなりはっきりと見ることができた。

案外あっけなくテングザルを目撃できたため、このまま街に戻るのかと思っていたが、船長はそのまま支流を下っていく。

何かを探している様子。

すると突然河岸にボートを寄せて舳先に移動して何やら始めた。

すると次の瞬間・・・

ロープを引っ張ると、水中から小さなワニが現れ暴れ出した。

どうやらブルネイのリバークルーズでは、テングザルと並んでワニが見られることも売りのようで、ワニが見られなかった観光客用にロープに繋がれたワニが用意されているということのようだ。

しかし、そんな配慮は必要なかった。

そのまま進んでいくと、船長が「クロコダイル!」と叫んだ。

言われる方向をよく見ると、遠く離れた浅瀬に口を開けたままのワニが寝そべっているのに気づく。

体長4〜5メートルはあるだろうか、かなり大きなワニである。

船長はエンジンを切り、静かにワニに近づいていく。

我々に気づいてかそれとも気づいていないのか、ワニはじっとして動かない。

しかし、次の瞬間・・・

突然動き出し、体を捻って反転すると・・・

そのまま、濁った川の中に飛び込んだ。

川に落ちて、こんなワニに遭遇したら人間なんてひとたまりもない。

ここは弱肉強食の熱帯雨林。

ワニはその生態系の頂点に君臨する森の王者なのだ。

この後も、猿やワニを目撃した。

今度の猿は少し小柄で、しかも逆光で体の色もはっきりしないため、テングザルの子供なのか、それともカニクイザルなど他の猿なのか判断はできない。

それにしても、単なる思いつきで船長に話してみた時には、こんなに簡単に絶滅危惧種のテングザルに出会えるとは思わなかった。

こうして1時間を超えるリバークルーズを終え、水上タクシーは広い本流に戻ってきた。

ボートがスピードを上げる。

その疾走感がたまらない快感だ。

下流から眺める王宮は、深い森の上に浮かび上がる秘密基地のように見える。

値切ればもっと安い値段でも交渉成立するかもしれないが、旅行者が主催するモンキーツアーに参加すると1人1万円以上は取られるようなので、50ブルネイドルを支払ってもほぼ半値ということになる。

街にたどり着く頃、ライフジャケットを身につけた旅行者を満載したツアー船とすれ違った。

ツアーの場合、安全対策としてライフジャケットの着用が義務付けられているようだが、水上タクシーにはそうした決まりはなく、あくまで川に落ちないよう自己責任が求められる。

でも個人的には、こんな大勢で一艘のボートに乗るよりも、こうして1人でボートをチャーターし自分のペースで自然と向き合える方がずっといいと思う。

ボートは、対岸の水上集落「カンポン・アイール」に接近した。

600年前から存在というこの水上集落。

世界最大の水上集落と言われ、現在もおよそ3万人が暮らしているという。

水没したように見える集落に沿って電線が伸びている様子は不思議な光景である。

船長に「上陸して10分ほど歩きたい」と伝えると、水上集落の船着場にボートをつけてくれた。

長時間待たせないよう、さっさと舟を降りて、水上に張り巡らされた通路を歩いて回る。

木の板を並べただけの通路は、ところどころ朽ちて穴が空いている。

手すりなどはなく、気をつけなければ踏み抜いて川に落ちる危険もある。

ただ、こうした集落は東南アジア各地にあり、バンコク特派員時代には様々なスラムなどを取材したこともあったので、特別珍しくもなかった。

歩く人もおらず、比較的生活臭が薄い。

水道管だろうか?

青い管が通路に沿って設置され各戸に引き込まれている。

テレビのパラボラアンテナを設置した家もあり、水上とはいっても普通の生活がここにはある。

こうした集落では、野菜を育てていたり家畜を飼っていたりすることもよくあるが、そうした家は少なくとも私が見た限りでは見当たらなかった。

その代わり、家の前に植木鉢を並べ、東京の下町さながらに植物を育てる家もある。

自然と一体となった水上の暮らしの中にも人間らしい潤いを求める人がここにも住んでいる。

水上集落の見学を終え、最初の船着場に戻ると、船長を待たせたまま陸に上がり、両替屋を探す。

余分にお金を換えても、ブルネイでの滞在はこの日限りなので、残りの代金分だけをブルネイドルに替えて、それをそのまま船長に支払った。

清算を終えて船着場の周辺を歩いていると、こんな看板に気がついた。

下はワニの絵と共に「注意!クロコダイルエリア」、上にはライフジャケットの絵と共に「船の安全義務を守るように」というようなことが書いてある。

しかし、ツアー客以外にライフジャケットなど着てボートに乗っている人は見かけない。

ブルネイに行ったら、何をおいてもブルネイ川の水上タクシー。

絶対にオススメである。

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