我が家のブドウが実ったとの知らせを聞いた友人たちが岡山にやってきた。
宿泊先は倉敷。
白壁の街として知られる岡山県随一の観光地である。
私も倉敷の飲食店などさして知らないし、夜の会食場所をどうするかちょっと悩んだ。
ホテル「倉敷アイビースクエア」近くで、岡山らしい料理が食べられる店を調べた結果、見つけたのがこのお店だった。
「地酒と郷土料理 さわらや」。
ホテルからほど近い路地裏に立ついかにも倉敷らしい白壁のお店だった。
店名の「さわら」とは魚の鰆のこと。
岡山では、鯛など瀬戸内海の魚がいろいろ食べられるが、中でも鰆の刺身は珍重されている。
いたみやすい鰆は関東などでは味噌漬けで食べるのが一般的、鰆を刺身で食べられるのは全国的にも珍しいということで、いつの間にか岡山名物のようになっているのだ。
去年オープンしたばかりのこのお店は、岡山名物となった鰆の専門店。
店内の壁には、さまざまな鰆料理が並んでいた。
「お造り」「藁焼き」「しゃぶしゃぶ」「釜めし」「づけ丼」「西京焼」などなど。
鰆料理をほとんど食べたことのない友人たちは興味津々だが、スーパーで売られている鰆の刺身をたまに食べる程度の私は、果たしてみんなの期待に応えられるような味なのか急に心配になった。
店に入ると階段で2階に上がるように促された。
築240年を超えているという蔵を改装したお店の外観は壁も真っ白で最近手を加えたことが伺えたが、2階に上がると古民家の屋根裏そのまま、天井の高いレトロな空間に仕上げられていた。
小さな窓からまだ外光が入ってはいるが、ランプ風の暗めの照明に照らされた室内はなかなかいい雰囲気である。
「地酒と郷土料理」と謳っているだけあって、飲み物も岡山にこだわったセレクションだ。
日本酒はもちろん、ビール、焼酎、ウイスキー、ワインまで岡山産が揃っていた。
地酒の飲み比べセットもあって、静かにお酒を楽しむ人も楽しめそうだが、この夜の私たちは文字通りの宴会で、とりあえずの生ビールから始まり各自が飲みたい酒を適当にオーダーし、結局何を飲んだのかはっきりと覚えていない。
そして、鰆料理を片っ端から注文する。
まず最初は、岡山の定番、鰆の「お造り」(1900円)から。
スーパーで売られている鰆の刺身とは比較にならないような美しい刺身が運ばれてきた。
みんな1切れ食べては、感嘆の声をあげた。
これはマジで、美味い。
「全身トロ」と呼ばれるほど脂の乗った刺身は口の中に入れると溶けていくようだ。
スーパーの鰆とは、見た目だけでなく味も別格である。
続いては、「藁焼き」(2000円)。
藁焼きといえばカツオをイメージするが、脂たっぷりの鰆の藁焼きも絶品だ。
薄く塩味が効いているのでそのままでも美味しいが、お好みで塩をかけて食べるように言われる。
1口目はそのまま、2口目は添えられた塩をかけていただく。
個人的には、塩を少しかけた方がより美味しいと感じた。
いずれにせよ、初めて食べる本格的な鰆料理に友人たちは大満足、幹事役の私の不安も吹き飛んだ。
続いて注文したのは「レアカツ いぶりがっこタルタル」(1900円)。
こちらは、いささか手を加えすぎて鰆らしさが今ひとつ感じられなかった気がする。
やはり岡山名物の黄ニラと一緒に食べる「鰆と黄ニラのしゃぶしゃぶ」(1900円)も楽しみにしていた一品だったが、期待したほどではなかった。
逆に期待を上回る美味しさだったのが「鰆マヨ バケット添え」(1100円)。
これは鰆の身と自家製?マヨネーズを混ぜたディップをバケットに塗っていただく料理だが、独特の食感と味が楽しめる楽しい一皿に仕上がっていた。
鰆以外の料理も岡山県産の食材にこだわり、こちらは鰆料理に比べてリーズナブルなお値段。
牛すじ煮込みと鶏の唐揚げをする。
普通に美味しいのだけれど、やはり鰆のような目新しさはなく写真を撮るのも忘れてしまった。
こうしていろいろ食べた後、最後の〆で注文したのは、やっぱり鰆だった。
「鰆みそ漬 釜めし」(1900円)。
テーブルに運ばれた釜の蓋を取ると、ドドーンと鰆の切り身で覆尽くされていた。
「底までよくかき混ぜてからお召し上がりください」
店員さんの指示に従って混ぜて食べると、これまた至福の釜めしだったのである。
鰆の濃厚な旨みがご飯全体に染み込んで、文句のない〆の一品となっていた。
この日、67歳の誕生日を迎えた友人も初めての鰆料理に「最高の誕生日だ」と喜んでくれ、みんなで花火を立てたシャーベットでお祝いをする。
宴会を終えて店を出た時には、午後9時を回っていた。
昼間と打って変わって歩く人もほとんどいない倉敷の美観地区。
友人の一人が「もう一杯だけ行こう」と空いているお店を探すが、もう営業しているお店はほとんどなかった。
夜の倉敷はお散歩するには気持ちがいいが、酔っ払ったオヤジたちには物足りない街でもあった。
でも、美味しい鰆が食べられた満足感から暴れる奴もおらず、おとなしくホテルに戻ったのである。
食べログ評価3.47、私の評価は3.80。
「地酒と郷土料理 さわらや」
電話:050-5600-1457
営業時間:月〜金17:00 - 22:00
土日祝11:30 - 14:00/17:00 - 22:00
定休日:無休
https://www.instagram.com/achinosato_sawaraya/
