昨日は、吉祥寺のマンションでエレベーターなど共用部の工事があり、午後はエレベーターが使えなくなるうえ数時間断水することになっていた。
家にいてもトイレも不自由で落ち着かないため、妻と2人で都心にランチに出かけることにした。
選んだお店は、目黒のインドネシア料理店「チャベ 目黒店」。
私がカリブに旅行に行っている間に、妻がテレ東の人気番組「孤独のグルメ」で見て興味を抱いたらしい。
インドネシア料理というのもものすごく久しぶりなので、私も迷わず同意した。
お店は目黒駅の東口から5分ほど歩いた古い雑居ビルの2階にあった。
暗い階段の入り口に渋い看板が出ている。
ランチメニューのパネルも置かれていたが、インドネシア料理といえばナシゴレンとサテぐらいしかわからない。
階段を上っていくと、インドネシアらしい品やパネルが雑然と置かれていた。
インドネシアに行ったのは、バンコク特派員時代の1980年代。
その後の経済成長により、インドネシアのGDPはすでに世界第6位となっていて、2030年までには日本を抜いて世界4位に浮上すると予想されている。
インドと並んで、もっともっと私たち日本人が知るべき「グローバルサウス」の大国の一つなのだ。
お店の入り口にはインドネシアの駄菓子などが置かれていた。
まさに東南アジアの道端にある雑貨店のような佇まい。
この店のオーナーはよっぽどインドネシアのことが好きなんだとわかる。
ちょうどランチタイムということもあり、店内は満席だった。
やはり私たちと同じように「孤独のグルメ」を見て訪れた客も多いようだ。
少し店の外で待ってから小さな2人用のテーブルに案内された。
目の前には紅白のインドネシアの国旗。
金色の鳥は「ガルーダ・パンチャシラ」と呼ばれるインドネシアの国章である。
インドネシアのナショナルフラッグである「ガルーダ航空」の名称にも使われている「ガルーダ」はインド神話に登場する神の鳥、そして「パンチャシラ」は1945年の独立の際に定められた建国5原則を表す。
- 唯一神への信仰
- 公正で文化的な人道主義
- インドネシアの統一
- 合議制と代議制における英知に導かれた民主主義
- 全インドネシア国民に対する社会的公正
日本ではあまり知られてはいないが、インドネシアは世界最大のイスラム教国家でもある。
壁には様々な名も知らぬアラカルト料理が記されていたが、インドネシア料理に馴染みのない日本人にはやはりあらかじめ用意されたランチメニューがありがたい。
妻はいろいろ盛り合わせになった「定食(ナシチャンプル)セット」(1100円)を選ぶというので、私は食べたことがあるナシゴレンを避けて「アヤムゴレン(フライドチキン)と生野菜、サンバルトラシ添え+ごはん」(1045円)を食べてみることにする。
「チャンプル」というと沖縄料理を思い出すが、実はインドネシア語で「チャンプル」は「混合・混ぜる」という意味があるそうで、沖縄の「チャンプルー」の語源ではないかとの説もあるという。
こちらが、妻がオーダーした「ナシチャンプルセット」。
インドネシア語で「ナシ」は「ごはん」、そして「チャンプル」は「混ぜる」で、ご飯を盛ったプレートに好きなおかずを乗せる形式の料理を「ナシチャンプル」と呼び、インドネシアではとてもポピュラーなローカルフードなのだそうだ。
カレーのほか、甘辛いピーナッツソースがかかった温野菜「ガドガド」やインドネシア風コロッケ「プルクデル・クンタン」など、代表的なインドネシア料理がご飯のまわりに並んでいる。
一方、私が注文した「アヤムゴレン」は、まさにフランドチキンそのものだった。
ただ普通のフライドチキンと違うのは、揚げるのにヤシ油を使うこと。
様々なスパイスで鶏肉に味付けをしてしっかりと揚げるらしい。
ただ、この店のアヤムゴレンは比較的淡白な味付けのようで、どちらかというと淡白でご飯のおかずとしては物足りないものだった。
そして、お好みで小皿に入っている「サンバルトラシ」という調味料を付けて食べる。
「サンバル」というのはインドネシア料理に欠かせない調味料でチリソースの一種、そして「トラシ」は小エビを発酵させた調味料で魚醤の一種で、これを合わせた「サンバルトラシ」はエビの風味のするチリソースといった感じだ。
店員さんに「これは何につけるの?」と聞くと、「何にでもどうぞ」という答え。
肉につけても生野菜につけてもご飯につけてもいいらしい。
ただ、かなり辛くて正直エビの風味も唐辛子の辛さで消されてしまっている。
ランチには、「ソトアヤム」と呼ばれるスープも付く。
「ソト」はスープ、「アヤム」は鶏肉を意味するとのことで、春雨も入っていて店員さんは「鶏肉と春雨のスープ」と説明した。
調べてみると、インドネシアでは実にポピュラーなスープらしい。
セットのドリンクは紅茶がメインで、プラス55円で有名なトラジャコーヒーに代えることも可能だという。
私たちは追加料金なしのアイスティーを選んだが、どうやらトラジャコーヒーを選ぶお客さんが多いようだ。
食べ終わってお店を出る時、「孤独のグルメ」の松重豊さんらのサイン色紙が飾られているのを見つけた。
松重さんが美味しそうに食べるインドネシア料理に惹かれた妻だったが、「ナシチャンプル」はどうやら今ひとつだったらしい。
私の「アヤムゴレン」も期待したほどではなくて、昔歌舞伎町で食べたインドネシア料理の方が美味しかったのにとちょっと残念な感じだった。
それでも、知らない料理を食べると脳が刺激される気がして楽しい。
また時々、異国の味を求めて都心を訪れたいと思う。
食べログ評価3.51、私の評価は3.40。
ランチを終えて、目黒駅前から都バスに乗る。
この日は風がめちゃくちゃ強くてしかも冷たい風だったので、特定のバスを待つのではなく、ちょうど出発しそうな千駄ヶ谷行きのバスに乗った。
妻が以前「麻布台ヒルズに行ってみたい」と言っていたの思い出し、西麻布のバス停で降りることにした。
久しぶりに六本木界隈を歩いてたどり着いた「麻布台ヒルズ」。
去年11月のオープン当時はテレビでも散々紹介されていたが、すでに4ヶ月が経ち、混雑も一段落したようだ。
一応中に入ってみたが、こうした複合施設はだいたいどこも同じような感じで、私はもちろん妻もあまり好きな空間ではなかったようである。
メインの超高層ビルの裏側にはたくさんの高層マンションが立っていて、ずいぶん景観が変わってしまった。
「やっぱり吉祥寺の方が気楽に住めそうだね」と話しながらすぐにその場を離れて再びバスに乗る。
麻布台ヒルズのバス停からは新橋行きのバスが出る。
途中これまた森ビルによる再開発ですっかり景色が変わった虎ノ門エリアを通った。
どうも森ビルが作るビルはどれも六本木ヒルズ的な無機的な感じがして、あまり好きになれない。
内幸町の交差点でバスを降りる。
ネットで調べて老舗の喫茶店がこの交差点近くにあることを知ったからである。
やっぱり真新しい再開発地よりも、新橋のような昔ながらの街並みの方が落ち着く。
訪ねたお店は「田村町木村屋 本店」。
明治33年、1900年創業の洋菓子店だ。
あんぱんで有名な銀座木村屋から独立し、1920年から喫茶部を併設した。
令和の大通りに面する時の止まったようなショーケース。
ガラスの奥に並ぶ箱詰めされた洋菓子を眺めていると、遠い明治の香りが流れてくるようだ。
店内に入ると、ケーキが並ぶショーケースが迎えてくれる。
イチゴのショートケーキの下にあるいなり寿司のようなやつが、この店の名物「バナナケーキ」だ。
1日に400〜500個も売れる人気商品だという。
ケーキを買い求める客の間を抜けて、私たちは奥の喫茶室に進む。
20席ほどの小さな喫茶スペースだが、いかにも歴史を感じさせる上質な空間だ。
実は、このお店、去年4月にリニューアルされたばかりだという。
120年を超える歴史を重ねながら、常に時代に合わせて進化しているということだろう。
壁にかけられた額にもこの店の歴史が感じられる。
たくさんの似顔絵とサインが入ったこちらは額は、1950〜60年代にNHKラジオで放送されていた人気番組「とんち教室」の出演者たちのようだ。
玉川一郎、春風亭柳橋など私の幼い頃にかすかに聞き覚えのある名前も見える。
内幸町はNHK発祥の地であり、1938年から1973年までこの店の近くに東京放送局があった。
右上に名前のある大辻司郎さんは漫談の創始者で、1952年に伊豆大島に墜落した日航機「もく星号」の事故で亡くなった。
つまり、この額は番組が始まった当初に描かれたものだということがわかる。
そのお隣にかけられたこちらの小さな絵は、「芸術は爆発だ!」で知られる岡本太郎さんが描いたものだという。
よく見ると、確かに「TARO」のサインが見える。
トイレの脇には、こんな寄せ書きがかけてあった。
江戸川乱歩や山田風太郎の名前も見える。
戦後、江戸川乱歩が編集長を務めた雑誌『宝石』に執筆した作家たちのものだろうか。
かつて鹿鳴館もあった内幸町界隈には官庁や新聞社、プレスセンターもあり、多くの文化人がこの店を利用した。
作家・井上ひさしさんが人形劇「ひょっこりひょうたん島」のシナリオを書いていた店としても知られる。
こんな由緒ある洋菓子店で、私がいただいたのは「ケーキセット」(880円)。
ショーケースに並ぶケーキから好きなものを選び、ドリンクはコーヒーまたは紅茶、オレンジジュース、グレープジュースから選ぶ。
私はホットコーヒーと一緒に「クルミとキャラメルのタルト」を選んだ。
一方、妻が選んだのはホットコーヒーと「タルト・ポム」。
どちらのタルトも素朴ながら本物の味がした。
やっぱり長年多くの人に愛された老舗には、現在まで生き残った何かがある。
食べログ評価3.64、私の評価は3.50。
なかなか楽しい1日だった。
これからも、時間が許す限り東京をバスで回りながら、多様な飲食店を訪ねてみたいと思った。
「チャベ 目黒店」 電話:03-6432-5748 営業時間:11:30 - 14:30/17:30 - 22:00 定休日:日曜祝日 https://www.instagram.com/cabemeguro
「田村町木村屋 本店」 電話:03-3591-1701(予約不可) 営業時間:09:00 - 20:00 定休日:土曜日曜 http://www.kimuraya1900.co.jp/

