引っ越しを前に馴染みの店を訪れようと、妻と街に出た。
選んだお店は吉祥寺に引っ越して以来、たびたびお世話になったタイ料理店「クルン・サイアム 吉祥寺店」である。

もともとはハモニカ横丁近くの路地裏の地下にあったお店だが、2023年に移転して、今はパルコの裏手、油そばの名店「ぶぶか」に隣接する小洒落た2階家に引っ越していた。
「クルン・サイアム」といえば、テレビ局に勤めていた頃にたまたま見つけた六本木店に時々通っていた。
当時は今ほどタイ料理店がポピュラーではなかったので、本場の料理が味わえる貴重なお店として私と妻の間ではお気に入りの店として認知されている。

店の前に置かれたメニューを眺める。
一番人気は「ガパオライス」、生春巻きとスープが付いて1400円だという。
タイ滞在中はあまり食べたことがなかった「ガパオライス」だが、なぜか日本ではタイ料理の定番となっている。
2番人気はタイの焼きそば「パッタイ」、3番人気は「クィッティオ・トムヤム」、トムヤム味の細麺ということらしい。
ブログを見返してみると、2017年に移転前のこの店で「クィッティオ・トムヤム」を食べた際には1000円だったと書いてあるので、この10年足らずの間にだいぶ値上がりしたことがわかる。

移転後初めて、店内に入ってみる。
1階の奥に厨房があって、その周りがハイチェアが並んだカウンター席、それ以外にテーブル席もある。
ただ少し落ち着かない雰囲気なので、厨房脇の階段を上って2階に上がることにした。

予想通り、2階は落ち着いた空間になっていて、テーブルやソファー席が並んでいた。
壁や天井は暖色系の塗料で塗られ、女性好みのポップなインテリアになっている。
以前地下にあった頃には、もう少しウッディーな感じだった気がするが、パルコ裏というロケーションに合わせて模様替えしたのだろうか。

窓際の席に腰掛けて周囲を見回すと、アジアンテイストの小物がいろいろと飾られていた。
私の限られた経験に照らせば、これらの小物、どちらかといえばタイよりもインドに近いような印象も受けるが、おそらく今時タイではこんな雑貨も売られているのだろう。

注文は、卓上に置かれたタブレットで行う。
この店のタブレットは、メニューが一気見できず扱いづらい。
ひょっとすると一覧できる機能もあるのかもしれないが、どうもまだタブレット注文には対応しきれていないのだ。

ランチセットには、生春巻きとスープが付いている。
これは地下にあった頃から変わらない。
スープはトムヤム味で、酸味が効いていてかなり辛い。

この日、私がメインに選んだのはタイの春雨サラダ「ヤムウンセンセット」(1400円)。
サラダと言っても、タイのサラダはとにかく辛い。
お好みに応じて辛さを変えることは可能なのだが、私は「普通」を選んだところ、想像以上に辛かった。
バンコク在住の頃には舌が辛さに慣れて、本場のヤムウンセンも大好物だったのだが、日本に帰ってもうかれこれ40年、私のベロもすっかり日本人に戻ってしまった。

辛いサラダを食べながら、添えられたタイのジャスミンライスで口直し。
日本のお米とは全く異なるこの香り、実に懐かしい。
そんなタイ米をレンゲで掬い、スープに浸して口に運ぶ。
ジャスミンライスの香りとトムヤム味のスープが合わさって、口の中が幸福感で満たされる。
バンコク時代に覚えた私の大好きな食べ方である。

何事も慎重な妻は、いつものように辛くない「パッタイ」(1400円)を選ぶ。
甘辛い焼きそばも嫌いではないが、タイ料理といえばどうしても辛い方が先に来てしまって、よほどのことがなければ、私がパッタイを注文することはない。

食べ進むうちに、久しぶりに汗をかいた。
近頃すっかり日本人にもお馴染みとなったタイ料理だが、本場の辛さを思い出させてくれるこの店の存在はやはり貴重だ。
タイにいた頃、辛い料理を食べた後には必ず翌日に下痢をしたことを思い出す。
吉祥寺で本格的なタイ料理が味わえる店。
やはり「クルン・サイアム」は私のお気に入りの店である。
食べログ評価3.50、私の評価は3.60。
「クルン・サイアム 吉祥寺店」
電話:0422-29-7186
営業時間:11:00 ~15:00/17:00~23:00
定休日:無休
https://www.sscy.co.jp/business_restaurant/krungsiam/