ウクライナでの戦争が始まってから、もう3年半になる。
開戦直後、日本にも大勢の避難民がやってきて彼らが働くウクライナレストランがたびたびニュースで取り上げられた。
その代表的な1軒が私が暮らす武蔵野市にもあるのだが、これまで気になりながらも一度も訪れたことがなかった。
ところが都心に暮らしている三男たちがこの店の近くに引っ越してくることになり、妻と二人、現地視察に出かけることに・・・。
吉祥寺から「ムーバス」に乗って三鷹へ。
目指す店はJR三鷹駅から北へ1キロほど離れた住宅街の中にあった。
ロシアによる軍事侵攻から1年後の2023年2月にオープンしたそのカフェは、命の危険から逃れてきた人たちが営むお店らしく仮設のプレハブ住宅のようだった。
店の名前は「ウクライナカフェ KRAIANY(クラヤヌィ)」。
Google翻訳を使ってウクライナ語の「クラヤヌィ」を調べてみると、どうやら「同胞」という意味らしい。
ボルシチはわかるが、「ワレヌィキ」「デルヌィ」「ムリンツ」「リヌィヴィフレヌィキ」とメニューを記した黒板には知らない料理の名前が並ぶ。
店の外観はプレハブ住宅のようだけれど、店内に入ってみれば至って普通のお店である。
厨房には2人のウクライナ人女性。
戦争の前から日本で暮らす女性が接客をこなし、戦火を逃れて日本に来た年配の女性はもっぱら調理にあたる。
メニューを開くと写真入りで馴染みのないウクライナ料理が紹介されていた。
「ワレヌィキ」はウクライナの餃子。
ただ小麦粉で作る皮の中には果物を入れることもあるのだとか・・・。
味の方は全く予想がつかないため、とりあえず運を天に任せて注文するしかない。
私がまず選んだのはウクライナ料理の定番「ボルシチ」(1100円)。
ボルシチといえばロシア料理の印象が強いが、その発祥地はウクライナだそうだ。
予想したよりは小ぶりな器に入った赤いスープ、味はとてもあっさりしている。
ボルシチと一緒に供されるのは、スラブの国々ではお決まりの黒パン、そしてハムと玉ねぎのスライスが添えられていた。
ただこの店の黒パンは日本人の嗜好に合わせたせいか、本場のような強烈な酸味は感じない。
全体的にあっさりした癖のない味付けに抑えられているようだ。
一方、妻が選んだのはこちらの一品。
「デルヌィ キノコソース添え」(880円)
デルヌィとはジャガイモのパンケーキのことだそうで、これまたスラブ諸国では定番のキノコソースがかけられ、サワークリームが添えられていた。
初めて見る料理に興味をそそられ私も1つ食べてみたのだが、食感がモチモチしていて適度の塩味が効いていてとても美味しい。
サワークリームとの相性もバッチリで、一発でデルヌィのファンになってしまった。
そしてこの日一番驚いたのは、食後にいただいた「サジーティー」(550円)だった。
ポットに入れられ運ばれてきたその飲み物は、色はオレンジジュース、でもお茶のように温かい。
飲んでみると、見た目の通りオレンジジュースとお茶の中間のような味がした。
後で調べてみると、サジーとはユーラシア大陸に広く自生するグミ科の低木で、旧ソ連や中国では早くから食用や医薬品として栽培されていたそうだが、ソ連崩壊後サジーの苗が世界各地に流出し、スーパーフードとして近年注目が高まっているそうだ。
その果実は「植物界で最も栄養価が高い果実」とも言われ健康食品として人気だというが、効用があるのはその果実だけではないらしい。
お店のメニューにはこんな説明書きが・・・。
『サジーは果実だけでなく、葉にも栄養素が豊富。ポリフェノール類をはじめ、ミネラル類、アミノ酸、フラボノイド類、有機酸類、たんぱく質など、毎日の健康維持やボディメイクのサポートに必要な栄養素が豊富に含まれています』
健康食品には疎い私は、ウクライナカフェで初めてサジーの存在を知った。
初めて口にするサジーティーをいただきながら、壁に貼ってあるデザートが気になり注文した。
「チェリー入りプィリジキ」(400円)
食べてみるとベリージャムの詰まったジャムパンといった感じ、期待したほど美味しくはなかった。
後で調べてみると、「プィリジキ」とはロシア語でいうところの「ピロシキ」、すなわち惣菜パンのことらしい。
食事を終えて、壁際に飾られていたウクライナ色に塗られた必勝ダルマの奥に置かれていたノートに私も一筆書かせてもらった。
理不尽な軍事侵攻で3年以上苦難に喘ぐウクライナの人々に平和な日々と平穏な暮らしが戻ることを祈りながら・・・。
そして、支払いの際にささやかな寄付も。
35年前ソ連時代のウクライナを訪れたことのある一人の日本人として、身近なところにあるこの店を私も応援したいと思う。
帰宅後、友人たちにウクライナカフェで昼飲みをしようと呼びかけたところ、すぐに2人から返事があった。
来月早速、ウクライナを応援するささやかな飲み会を開催する予定である。
食べログ評価3.12、私の評価は3.50。
「ウクライナカフェ クラヤヌィ」
電話:070-1503-9082
営業時間:月火木日 10:00 - 17:30
金土 10:00 - 20:30
定休日:水曜
https://www.kraiany.org/ja/cafe-kraiany

