今日8月6日は「原爆の日」。
広島に原爆が投下されてから79年が経ったこの日を、私は広島のお隣岡山で迎えた。
今年はパリオリンピックの開催期間中ということもあり、連日連夜のメダルラッシュに湧く日本列島ではちょっと影の薄い原爆の日でもある。

今回のオリンピックをめぐっては「スポーツウォッシング」という言葉がちょっとした話題となった。
「スポーツウォッシング」とは『特定の個人・団体・国家がスポーツを利用して、自身のイメージを向上や問題の隠ぺいを図る行為』のこと、すなわち、世界中の人がオリンピックに熱狂することで不都合な現実が覆い隠されてしまうということだろう。
きっかけはTBS「news23」に出演した哲学者の斎藤幸平氏の発言。
ウクライナ侵攻を理由にロシアやベラルーシの参加を認めない一方でガザでの戦闘を続けるイスラエルの参加を許しているIOCの姿勢をダブルスタンダードだと批判した上で、自分は「スポーツウォッシング」に加担したくないとして五輪放送を見ることをボイコットしていると述べたのだ。
斎藤氏の言いたいこともわからなくはないが、毎日オリンピック三昧の私は彼とは意見を異にする。
オリンピックを見ていると、世界には実に様々な人間がいることを知る。
自国の選手のみならず、知らない異国の選手たちも、それぞれの夢に向かって努力する姿が見るものに感動を与えるのだ。
メディアではどうしてもメダルが期待される日本人選手ばかりにスポットライトが当たってしまうが、見る側にわずかばかりの想像力さえあれば、オリンピックはかけがいのない世界平和を考える上での教材となる。
たとえば、女子走り高跳びで金メダルを獲得したウクライナのヤロスラワ・マフチフ選手。
自分の順番になるまでは寝袋で下半身を温めながらスタジアムの芝生で寝転ぶ彼女の姿はとても印象的で、その美貌も相まってネットでは「眠れる森の美女」と話題になった。
彼女の出身地はロシア軍の占領地域から程近いドニプロペトローウシクで戦争発生直後多くの避難民が押し寄せた街である。
彼女自身、難民としてドイツに避難し母国を思いながらトレーニングを続けてきたが、戦争で命を失ったウクライナ人アスリートも少なくない。
『母国ではロシアによる軍事侵攻で大変な状況が続く中、この場に立てたことに感謝したい。祖国にこの金メダルをささげる。ウクライナがあらゆるところで戦い続けていることを世界の人に知らせる機会になったと思う』
試合後そう語ったマフチフだが、スタジアムで目をつぶった彼女の脳裏にはどんな情景が映っていたのだろう?
ニュースで注目される国だけではない。
陸上女子100メートルで優勝したジュリアン・アルフレッド選手は、セントルシアの代表。
私が今年2月に訪れたカリブ海の小さな島国だが、あんな山がちな火山島に世界最速の女性がいたなんて、もうそれだけで驚きである。
男子で印象的だったのは体操種目別の床と跳馬で2つの金メダルに輝いたフィリピンのカルロス・ユーロ選手。
経済発展の割にはオリンピックでの活躍が目立たない東南アジア諸国に突如現れた新星だ。
調べてみると、彼は東京オリンピックを目指して来日し、帝京高校から帝京大学に進学、今大会でブレイクした岡慎之助選手らと共に徳洲会体操クラブにも所属する選手だった。
彼は間違いなくフィリピンの英雄となり、日本とフィリピンとの関係にもきっといい影響を与えてくれるに違いない。
素晴らしい国際貢献だと思った。
誰でもいいので気になる選手を見つけ、その国のことを調べてみる。
そんな些細なことで世界の見え方が少し変わってくるのだ。
ただ、どうしても政治の影は拭えない。
国家を代表してオリンピックに出場することが認められなかったロシア人選手の一部は「AIN(中立な立場の個人資格)選手」としてパリ五輪に参加した。
そのメダル1号となったのが、テニス女子ダブルスで銀メダルを獲得したミラ・アンドレーワ、ディアナ・シナイジェル組である。
国際人権団体は、2人はウクライナ侵攻を支持するSNS上の投稿に「いいね」を押していたとして押していたとして「中立基準を満たしていない」と批判、「AIN」の資格で参加しているロシア人選手の3分の2が基準に違反していると審査を行ったIOCを非難している。
同盟国ベラルーシの選手たちも同様の扱いで、トランポリン男子のイワン・リトビノビッチ選手は金メダルを獲得したものの、国旗の掲揚や国家の演奏は認められなかった。
その一方で、ガザでの軍事作戦を続けるイスラエルの選手たちは何の制約もなくオリンピックで活躍している。
日本でも関心が高かった柔道では銀メダル2個と銅メダル1個、さらにセーリングでの金メダルを合わせてトータル6つのメダルをすでに獲得した。
男子100キロ級で銅メダルに輝いたペテル・パルチク選手は試合後のインタビューで「五輪の価値を尊重している。最も大切なのは平和だ」と訴えたが、ネット上では彼が反戦デモの参加者を威嚇したなどの情報が拡散、彼を非難する投稿が溢れたという。
パルチク選手が旗手を務めた開会式でもイスラエル選手団に対する激しいブーイングの声が起きており、残念ながら選手たちと国家と同一視する世論の餌食となっているのだ。
個人的には、オリンピックと国際政治は分けて考えたい。
ロシア人選手の中にもウクライナとの戦争を望まない人はいるだろうし、イスラエルの選手の中にもパレスチナとの共存を願う人もいるだろう。
さらに言えば、西側諸国の選手の中にも極右的な思想を持った人もいれば、左翼的な意見に共感する人もいるに違いない。
個人の思想信条を問題にし始めるとスポーツ大会など成立しないはずなのに、どうして国家権力による犯罪の責任をアスリートに負わすのか?
私としては、ロシア選手のオリンピック参加も原則認めて欲しかったと思っている。

しかしそんな私の理想主義を嘲笑うかのように、現実は世界平和に背を向ける。
パリオリンピックが佳境を迎えた佳境を迎えた7月31日、ハマスの最高指導者であるイスマイル・ハニヤ氏がイランの首都テヘランで暗殺された。
ハニヤ氏はイランの新大統領就任式に出席するためテヘランを訪れており、ハマスだけではなく、メンツを潰されたイランも直ちにイスラエルによる犯行と断定して報復を誓った。

この事件の直前、イスラエルは隣国レバノンの首都ベイルートを空爆して敵対するイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」のフアド・シュクル司令官を殺害している。
ハマス壊滅を掲げて展開するガザでの軍事作戦に対して国際的な批判が強まる中、なぜイスラエルはあえて「平和の祭典」オリンピック期間中に2つの暗殺事件を決行したのか。
秋の大統領選挙を前にイスラエル支持の姿勢を崩すことができないアメリカを人質にとって、長年の敵であるイランを表舞台に引きずり出そうという悪意が透けて見えるようだ。
現在のネタニヤフ政権を牛耳るユダヤ原理主義勢力は危機を弄び、世界平和を危険に晒している。
聖書を根拠として隣人の人権と人命を無視し続ける彼らの傲慢さには、心底怒りが収まらない。

当面の注目は、イランがどんな報復に出るのかという点だ。
イランの最高指導者ハメネイ師は緊急招集されたイラン最高国家安全保障会議でイスラエルを直接攻撃するよう命令を下したと報じられ、アメリカのブリンケン国務長官は「早ければ24時間から48時間以内にイスラエルへの攻撃を始める可能性がある」とG7の外相たちに伝えたというニュースも世界を駆け巡った。
イランに直接戦火が飛び火すれば、世界の原油市場にも少なからぬ影響が及ぶだろう。

こうした危機の高まりの中で、「令和のブラックマンデー」が起こった。
8月5日の日経平均株価が過去最大の値下がりを記録したのだ。
1日の値下がり幅は4451円で、1987年のブラックマンデー翌日の値下がり幅3836円を上回った。
値下がり率で見ても12.4%の下落、ブラックマンデー時の14.9%に次ぐ史上2番目の暴落である。

直接の原因はアメリカの景気減速懸念。
先週ネガティブな経済指標が相次いで発表されナスダックを牽引してきたハイテク株が値下がりしたことだった。
それに加えて日銀が10年以上にわたって維持してきたゼロ金利政策を転換して利上げに踏み切ったことで、日米の金利差縮小が意識され、円ドル相場が急速に円高にふれたことも日本株売りを加速した。
史上最高値の4万2000円台を記録してきた日本株に突然起きた変調に海外投資家を中心に売りが売りを呼ぶパニック的な展開に。
政府の推奨により新NISAを始めたばかりの株取引初心者には初めて経験する大暴落となった。

しかし一夜明けると空気はガラッと変わっていた。
昨日の史上最大の下げから一転、今日は1日で3217円、史上最大の値上がりを記録した。
昨夜の段階で先物が値上がりしていたので、私にもしもまとまった元手があれば買っていたかもしれないが、これまでの失敗で株に回す十分な資金がなくなっているため、今回は静観するしかなかった。
こんな乱高下、危なくてとても信用取引などできるものではない。

今日の値上がりで市場にはひとまず安心感が広がったようだが、低金利に支えられて右肩上がりだった時代が終わりを迎えようとしているように見える。
昨日の下げは一時的な調整なのか、それともバブル崩壊時のような大きな転換点の前触れなのか?
株音痴の私には全くわからない。
しかし意図的に円安に誘導したアベノミクスの弊害が明らかになり、政府も日銀も重い腰を上げて今後利上げを進めることになるだろう。
デフレと金利がない世界に慣れきった日本人にとっては、試練の始まりである。
異常な金融政策によって覆い隠されてきた不都合な問題が、今後徐々に暴かれるのも避けられないだろう。
いずれにせよ、アメリカと中国が牽引してきた21世紀の世界経済は大き分岐点に差し掛かっている。

私はオリンピックが好きだ。
それは、愛国心の捌け口として戦争ではなくスポーツを利用しようという人間の知恵だからだ。
時として独裁者によって国威発揚の場として悪用されても、近代オリンピックがまだ「平和の祭典」と呼ばれるのは、戦争に代わりうる世界中の人が熱狂する他のイベントを人類が持っていないからである。
だから安易に「スポーツウォッシング」などと斜に構えて反オリンピックを叫んでいると、世界はどんどん悪い方向へと向かってしまう。
世界の人が同じイベントを見て、同じ感動を味わい、平和を考えるきっかけになればと願う。
他者を理解し受け入れる心がなければ平和は訪れない。
オリンピックを通して偏狭なナショナリズムではなく、寛容な愛国心を持った若者が一人でも多く生まれることを期待したい。
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