今年になってから、植物の名前を覚えることを一つのミッションとして暮らしているのだが、妻がいいアドバイスをくれた。
ラジオを聞いていたら、養老孟司さんが植物の名前を簡単に調べられるアプリを使っていると話していたというのである。
そんなアプリがあるのかと早速、「植物 名前 アプリ」と入力して調べてみると、確かにいろんなアプリが出回っていることがわかった。

口コミなどを参考にして、その中から適当に選んだのは『Picture This』というアプリ。
「Glority Global Group Ltd.」という外国の企業が開発したアプリらしく、日本語を含む世界23か国語に対応しているらしい。
Appストアにはこんな説明が書いてあった。
PictureThis®による植物判定は毎日100万回以上にのぼります。その精度は98%と、専門家による判定にまったく劣りません。ガーデニングに関する疑問をどんどん解決して、グローバルなコミュニティに参加しましょう!
画期的な人工知能(AI)エンジンが、各スペシャリストのサポートを得ながら常に学習を続けています。あなたは指先で操作するだけ。新しい視点を手に入れて、自然や植物の魅力を再発見しましょう。
引用:App Store プレビュー
名前を知りたい植物をこのアプリを使って撮影するだけで、AIが名前を教えてくれるというのだ。
しかも料金は無料、とりあえずダウンロードして試してみることにした。

井の頭公園を散歩しながら、片っ端から植物チェックを試みる。
たとえば玉川上水沿いに咲いていた小さな草花をアプリで撮影すると・・・

わずか数秒のうちに、このように植物の名前が表示され、その植物に関する簡単な情報も見ることができる。
玉川上水沿いで見つけた小さな草は『タチツボスミレ』というスミレの仲間らしい。
家に帰って「タチツボスミレ」を調べてみると、日本を代表するスミレであり、この花は確かに「タチツボスミレ」で間違いなさそうだ。
これまで植物の名前を突き止めるためにあんなに苦労していたのに、このアプリを使えばあまりにも呆気なく謎が解けてしまう。
便利なアプリ、AIの力、恐るべしである。
簡単に謎が解けるのも面白くないなあと思いながらも、だんだん面白くなってきて、次々に草や樹木の名前を調べて公園中を歩き回る。
その結果、いろんな植物の名前が判明した。

山野草エリアに生えてきたこれは・・・『クサソテツ』。

この極小の花をつけたこの雑草は・・・『コハコベ』。

「コハコベ」の近くに咲いていたこの紫色の草花は・・・『ムラサキケマン』というらしい。
帰ってネット情報を照らし合わせてみても、だいたい答えは正確なようなのだ。

これは・・・『ベニシダ』。

こちらは・・・『フキ』。

そして、木の切り株から生えたこのきれいな葉っぱは・・・『オオキバナカタバミ』。
いずれ黄色い花が咲くらしいのだが、花が前の葉っぱだけの状態でもその名前を判定してくれる。
実に優れものアプリだ。
ただし、もちろん問題もある。
たとえば、花や葉っぱが撮れればかなりの確率で判定ができるが、高木の場合には身近にある樹皮だけを撮影しても正解率は低いということがわかった。

もう一つ、大きな問題があった。
ダウンロード自体は無料なのだが、無料版では判定できる回数が限定されていて、私のようにバシャバシャ撮影しているとすぐに有料版へと誘導されてしまうのだ。
有料版「PictureThis Premium」の使用料は年額2900円。
今年1年、植物観察を継続するつもりなので、年間3000円程度の出費なら許容できる。
最初の7日間は無料トライアル期間なので、とりあえずApple ID を使って登録してアプリを使ってみることにした。

そうして何時間もアプリを使い倒して、家に戻ったらすでにお昼を回っていた。
その頃になって急に、開発元の企業がどこの国の会社なのか気になって調べてみる。
「Glority Global Group Ltd.」という社名から欧米のどこかの会社かなと思っていたのだが、実は中国の杭州にある会社らしいことがわかったのだ。
杭州といえば、あの中国を代表する巨大IT企業「アリババ」の城下町。
私もコロナ前に、アリババ周辺のITタウンを歩き回ったことがある。
やっぱり、中国か・・・。
このアプリの使い勝手は素晴らしく、一度ハマると手放せなくなりそうだ。
どうしてこういうアプリを日本企業は生み出せないのだろう?
中国といえば最近、国民的アプリの「LINE」が保守を委託している中国企業に対し、日本人利用者の個人情報に自由にアクセスできる権限を与えていたことが判明し、大問題となっている。
我が家でも家族間のコミュニケーションはLINEに頼っていて、昨日も大阪に住む次男家族がLINEを使ってテレビ電話をかけてきた。
まだこの問題の詳細は不明で、LINEを利用している8000万人を超える日本人の情報に中国が不正にアクセスしたという証拠はない。
しかし中国政府が中国国民の個人情報に自由にアクセスできることは誰もが知っていて、そのため数人の中国人技術者が「LINE」サーバーへのアクセス権限を持っていたということだけで大騒ぎとなっているのだ。
政府内では早速「LINE」の使用を禁止する動きが表面化しており、「YahooJAPAN」と統合して誕生する日本最大のITプラットフォームは早速重大な試練に立たされることになりそうである。
問題の本質は日本人の優秀なIT技術者が決定的に不足していることだが、中国のIT監視社会に対する不信感はもはや世界中に広まっている。

そんな中国とアメリカの関係は、今後ますます険悪化する雲行きである。
アンカレッジで開かれたバイデン政権発足後初めての米中直接対話は、冒頭から報道陣の目の前で異例ともいえる激しい非難の応酬となった。
口火を切ったのはアメリカのブリンケン国務長官。
テレビカメラを前にはっきりとこう述べた。
ルールに基づく秩序に代わるものは、力が正義で勝者がすべてを手にする世界であり、これは世界をはるかに暴力的で不安定にする。
きょうは中国がわれわれの意図や取り組みを理解できるよう国内外の優先課題を議論し、中国の行動に対するわれわれの深い懸念、新疆ウイグル自治区や香港、台湾、アメリカに対するサイバー攻撃、同盟国に対する経済的威圧についても話し合いたい。これらは世界の安定を維持するルールに基づく秩序を脅かしているため、ここで取り上げる義務がある。

これに対し、中国政府で外交を統括する楊潔篪中央政治局委員は20分にわたって滔々と反論を展開した。
アメリカにはアメリカの民主主義があり、中国には中国の民主主義がある。アメリカはみずからの民主主義を押し広めるべきではない。
問題は、アメリカが武力と金融覇権を使って他国に圧力をかけ、国家安全保障という概念を乱用し、正常な貿易を妨害していることや、一部の国をあおり立て中国を攻撃していることだ。
新疆ウイグル自治区、チベット自治区、それに台湾は中国の不可分の領土であり、内政に干渉する行為には断固として反対し対応する。
アメリカの人権問題は根深い。この4年の間に浮上したものではなく、黒人への殺りくは昔からある。他国に矛先を向けるべきではない。
こうした両者の応酬は、退出しようとしたテレビカメラをわざわざ呼び戻して公開の場で1時間も続いた。
両者とも、国内向けにアピールしている部分が大きいのだろうが、トランプ時代とは違う逃げ道のない険悪な関係が懸念される。
私の興味は、この会談を「人民日報」や「新華社」がどのように伝えるかだったのだが、案の定中国メディアはアメリカ側の主張を一切報道せず、楊潔篪氏と王毅外相の発言だけを伝えていた。
バイデン政権は生真面目そうなので、トランプさん以上に先行きが心配である。

米中関係が悪化し、日本政府もアメリカに追随する中で、私たちの生活も対応を求められる。
いくら便利とはいえ果たして中国製アプリを使用していいものなのかどうか、私もちょっと迷っている。
7日間のお試し期間が終わる前に、決断することになるだろう。
しかし、この中国製アプリの課金は、アメリカのアップル社が私のクレジットカードから引き落とすのだ。
現実には、ITの世界では米中は混在しているし、国籍など気にすることなく便利なアプリは世界に広がっていく。
かつての米ソ対立のような「米中冷戦」に突入するとなると、グローバル化が進んだ世界の中に新たな壁が設けられることになるのだろうか?
もしそうなったら、世界経済への影響は計り知れないものになることだけは間違いないだろう。