今年はパリオリンピック・イヤー。
様々な競技で代表争いが佳境を迎えている。
昨日の日曜日、私は昼からずっとテレビでスポーツ中継を見ていた。
まず最初に見始めたのは、大阪国際女子マラソン。
28日の午後0時15分にスタートしたレースは、外国人選手5人と日本人選手3人が先頭集団を作る形で日本記録を上回るハイペースで進んだ。
パリ五輪のマラソン代表は、昨年10月のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で上位2人ずつがすでに内定、残る1枠をMGCの3位と「ファイナルチャレンジ」と呼ばれる国内レースの上位者の中から選考する仕組みだ。
オリンピックに出場するためには、このマラソンで日本人トップとなり、日本陸連の設定タイムを上回ることが絶対条件となる。
20キロ地点を過ぎたところで、早々とスパートしたのが天満屋所属の前田穂南(27)。
一時は独走状態となるがエチオピアのエデサに抜かれ、2位で懸命にエデサの背中を追う展開に。
この強気のレース運びが功を奏し、前田は日本人女子で初めて2時間19分の壁を破り、2時間18分59秒の日本新記録でゴールしたのだ。
それまでの日本記録は野口みずきが2005年にマークした2時間19分12秒。
前田は、実に19年ぶりに日本記録を塗り替えたのである。
高橋尚子がオリンピックのマラソンで優勝したのは2000年のシドニー、野口みずきが2004年のアテネ五輪で金メダルを獲得した。
あれから20年、世界のマラソン界はアフリカ勢の独壇場となり日本と世界の差は広がり続けている。
そんな中で、エチオピアのエデサ選手には敗れたもののわずかに8秒差、最後まで諦めない見事な走りだった。
私がもしもニュースの編集長をしていれば、間違いなくトップニュースで扱うべきと考えたはずだが、テレビでの扱いは思いのほか大きくはなかった。
まだ名古屋での選考レースが残っているので、前田選手のオリンピック出場はまだ決定ではないが、この記録を抜く選手が出る可能性は低いと思われ、前田選手にはぜひパリでも今回同様の好レースを期待したいものである。
マラソンの途中から始まったのが、卓球の日本選手権である。
女子の決勝は、すでにオリンピック出場を決めている早田ひなと15歳の天才少女、張本美和の対戦となった。
オリンピックで3大会連続でメダルを獲得している女子の卓球だが、国内の熾烈な代表争いの末、東京オリンピック銅メダルの伊藤美誠はこの大会でベスト16で敗退、シングルスでの出場権を逃した。
代わってパリ五輪出場が決定した平野美宇も準々決勝で若手に負け、誰が優勝してもおかしくない群雄割拠の戦国時代を迎えているようだ。
早田と張本の決勝戦は、新旧エースの対戦となりその勝負が注目されたが、意外にも4−0で早田がストレート勝ち、あっけない勝負となった。
長いリーチを活かした早田の安定した実力が光り、同期生である平野・伊藤を抜き去り、日本のエースとなったことを誰の目にははっきりと示す試合である。
しかし、張本もぜひオリンピックに出してあげたい。
早田には敗れたものの、15歳にして中国のトップ選手を破った実績があり、中国チームが今最も警戒する選手でもある。
4大会連続のメダルを目指す女子団体では、早田、平野に続く3人目の選手の選考が近々行われる予定だ。
実績のある伊藤美誠か、伸び盛りの張本美和か、悩ましい選考となることは確実だが、やはり私は張本を見たい。
東京オリンピックで団体の銀メダルのほか、女子シングルスの銅メダル、混合ダブルスでの金メダルも獲得した伊藤には、あの頃の燃えるような情熱がなくなっているように見える。
圧巻だったのはその後に行われた男子の決勝。
今年の決勝は、世界ランクで日本人トップの張本智和と三連覇がかかる戸上隼輔というパリ五輪に出場する日本を代表する2人の対戦となった。
試合は、積極的に攻撃をしかける戸上の勢いに張本が終始押される展開。
いきなり6ポイントを連取した戸上はゲームカウント3−1と途中まで張本を圧倒した。
これに対して張本は、粘り強く対応し第5を僅差で競り勝ち、第6ゲームは相手に3度チャンピオンシップポンとを握られる苦しい展開を逆転して、辛うじて3−3のイーブンに戻して最終第7ゲームに持ち込んだ。
戸上の猛攻は最後まで衰えなかった。
最終ゲームも要所で戸上のスマッシュが見事に決まり、あと1ポイントで勝利というチャンピオンシップポイントを先に握ったのは戸上だった。
3連覇を目指して攻める戸上、6年ぶりの優勝に執念を燃やして凌ぐ張本。
2人の息詰まる攻防は、5度のチャンピオンシップポイントを凌いだ張本の執念が優った。
16−14で死闘を制し優勝を決めた張本は、放心したようにコートに倒れ込んだ。
史上稀に見る好ゲーム、実に凄まじい試合だった。
これをライブで見られたのは、実に幸せなことである。
スポーツは、結果がわからないから面白い、ハラハラする、何物にも変えがたく興奮する。
張本、戸上両選手には、この決勝の集中力を持って中国選手と戦ってもらいたい。
女子に比べて男子はまだまだ実力の差は大きいのかもしれないが、水谷選手が引退した日本の卓球界に新たな風を吹かせてほしいと思うばかりだ。
卓球が終わると、もう大相撲初場所の千秋楽が始まっていた。
横綱照ノ富士が久々に出場した今場所は、横綱のほかに大関の霧島と豊昇龍、関脇の琴の若の4人が終盤まで優勝争いを繰り広げる面白い展開となった。
13日目には2敗で並んでいた豊昇龍が霧島に敗れて脱落、1敗で先頭を走っていた琴の若も照ノ富士に敗れて2敗で3人が並ぶ。
14日目には横綱昇進を目指していた霧島が琴の若に敗れて一歩後退し、千秋楽、琴の若が勝った段階で霧島の優勝と横綱昇進の可能性は消えた。
千秋楽結びの一番では、照ノ富士が豪快に霧島を投げ飛ばして横綱の強さをまざまざと見せつけ、照ノ富士ー琴の若の優勝決定戦が行われることになる。
照ノ富士の復活優勝か、琴の若が初優勝して大関昇進を決めるのか。
注目の優勝決定戦は、立ち合い琴の若が一瞬もろ差しとなるものの、照ノ富士がすぐに対応して目まぐるしい勝負となった。
今場所安定した強さを見せてきた琴の若だが、照ノ富士を前にするとみるみる土俵際に押し込まれ、最後は力の差を見せつけられ土俵の下に落ちた。
さすが横綱、膝や腰の怪我を抱えながらも成長著しい琴の若を相手にしない堂々とした相撲だった。
大怪我から復活して横綱になってからも怪我に苦しめられ続ける照ノ富士。
しかし優勝スピーチではユーモアも交えて観衆の声援に手を振って答える余裕を見せた。
怪我が横綱の人間性を磨いている。
そんな風に感じた。
初優勝は逃したものの、場所後、琴の若の大関昇進が決まるらしい。
稀勢の里以来となる日本人横綱が誕生するのも遠い先のことではないかもしれない。
場所前に好調が伝えられていた私のご贔屓・高安が怪我で休場してしまったのは残念だったが、今場所も15日間大いに楽しませてもらった。
満身創痍の照ノ富士の時代は長くな続かないだろうから、その後を誰が引っ張っていくのか今後の展開が注目である。
もうすぐ2月である。
大相撲も終わり、また野球の季節がやってくる。
ドジャーズに移籍した大谷翔平は27日、全米野球記者協会ニューヨーク支部主催の夕食会に出席して流暢な英語でスピーチを行なった。
2月になると私はカリブ海への旅行に出かけ、途中ドジャーズの根拠地であるロサンゼルスにも数日滞在する予定だ。
せっかくなので時間があれば、ドジャーズスタジアムにも足を伸ばしてみたいと思っている。
まだ試合は始まらないものの、現地の雰囲気ぐらいは嗅げるかもしれない。
大谷が全国の小学校に送ったグローブが届き始め、早速校庭でキャッチボールする子どもたちの映像がテレビで流れたりしているが、今時の子供たちは本当にキャッチボールをしたことがないと見え、そのぎこちない投げ方に衝撃を感じた。
大谷がわざわざグローブを送った意味が理解できた気がする。
若い世代の人口が減る中で、オリンピックをはじめスポーツの世界で日本人選手が活躍するのは今後ますます難しくなるかもしれない。
だからこそ、今頑張っている選手たちを応援しスポーツを志す子供たちを増やしていきたいと思う。
愛国心が、戦争ではなくスポーツによって培われる時代が今後も続くことを期待しながら・・・。