<吉祥寺残日録>パレスチナ危機🇵🇸 イランがイスラエルに報復攻撃を行った緊迫の日、私はただひたすらに木を燃やす #240415

中東情勢に新たな火種が加わった。

イスラエルとパレスチナの戦争勃発から半年、ハマスの後ろ盾となってきた中東の大国イランが13日、イスラエル領土への直接攻撃に踏み切ったのだ。

イスラエル軍は、イランから発進したドローンや弾道ミサイルによる攻撃は300を超える規模だったが、そのうちの99%を迎撃したと発表した。

直接の原因となったのは、今月1日、シリアの首都ダマスカスにあるイランの大使館がミサイル攻撃を受け、革命防衛隊の幹部ら7人が殺害されたことだった。

イランは直ちにイスラエルによる攻撃だと断定、必ず報復すると宣言していた。

イランとイスラエルは長年激しく対立し、イランの核開発が問題となった頃には、イスラエルがイランの各施設を爆撃するのではと国際社会が懸念したこともある。

しかし、実際にはイランはレバノンのヒズボラやガザのハマスなどの親イラン勢力を支援する形でイスラエルを間接的に攻撃することはあっても、直接イラン領土から攻撃を仕掛けたのは45年にわたる長い対立の歴史の中でも今回が初めてのことである。

とはいえ、イランがイスラエルとの全面戦争を望んでいないことは今回の攻撃の仕方からして明らかだろう。

イスラエルが世界最高水準のミサイル防衛網を持っていることを承知で、発射の直後には攻撃することを発表してイスラエル側が迎撃できるよう時間的な猶予を与えている。

しかも、今回の1回の攻撃で目的は達成されたと国内にアピールして、「作戦は終了した」とわざわざ発表したのだ。

パレスチナでの悲惨が現状に対して反イスラエル世論が盛り上がる中で、大使館を攻撃されて何も報復しなければ政権が持たない状況だったのだろう。

イスラエルの後ろ盾となっているアメリカも苦しい選択を迫られた。

バイデン大統領はイランによる報復があることを事前に警告して地中海にイージス艦を派遣するなどイランによる攻撃を防ぐための準備を進め、今回の攻撃に対しては米軍がイラクやシリア領内で多くのミサイルやドローンを迎撃したことを明らかにしている。

その一方で、ネタニヤフ首相に対してはイランに対する武力攻撃にアメリカが加わることはないとはっきりと伝え、イスラエル側に自制を促した。

イスラエルを支持する国内の支持者に配慮しつつも、ネタニヤフ政権のこれ以上の暴走は許さないという姿勢を明確に示したのだ。

ネタニヤフ首相も「理解した」と応じたとされ、対応策を協議した臨時閣議でもイランに対する即時反撃には至らなかった。

NHKの「BS世界のドキュメンタリー」で先日こんな海外ドキュメンタリーが放送された。

『ネタニヤフとアメリカ大統領 ガザ侵攻への軌跡』

アメリカで去年製作されたドキュメンタリーだ。

1993年クリントン大統領が推し進めた二国家共存を謳う「オスロ合意」は、強硬派のネタニヤフ首相の登場により挫折する。

オバマ大統領は就任直後からアラブ寄りの姿勢を明確にしてイスラエルに対して二国家共存を受け入れるよう強く迫った。

しかしパレスチナ問題の唯一の解決策として国際社会が求める二国家共存をネタニヤフ政権はことごとく骨抜きにしてパレスチナ支配地域への移住を強行してきた。

そしてトランプ大統領の登場によって、従来のアメリカのパレスチナ政策は180度転換され、パレスチナ人の存在を無視する形で、イスラエルとアラブ諸国の和平が推し進められたが、皮肉なことにそれがハマスの権力基盤を強化して今回の人質事件に結びついたのだ。

元はと言えば、イスラエル側がイラン大使館を攻撃したことから始まった今回の危機。

もしも再度イスラエルがイランを攻撃したならば、中東情勢は新たなより危険なフェーズに進むことになり、ホルムズ海峡封鎖という最悪の状況も危惧されて、原油価格が急騰するリスクが一気に高まることになる。

しかし、現在のイスラエルの内閣は、スキャンダルで窮地に追い込まれたネタニヤフ首相が初めて極右政党と手を組んだイスラエル建国以来最も強硬派の内閣とされる。

アメリカの静止も聞かず、イスラエルがイランとの危険な賭けに出る可能性はまだ残されているのだ。

俄かに高まった中東情勢の新たな危機により、株価も下落した。

週明けの日経平均は一時700円以上値を下げ、3万9000円を割り込む場面もあったが、これ以上の情勢悪化は避けられるとの思惑からやや買い戻され、懸念された大暴落とはならなかった。

おそらくマーケットへの影響を最小限に抑えるためイランは週末に攻撃をしたのだと想像する。

もしもこの攻撃がどこかのマーケットが開いている平日に行われていたらパニック売りが起きたに違いないと考えると、イランがイスラエルとの全面戦争を望んでいないことが伺える。

しかしネタニヤフ首相がイスラエル国内の強硬派を抑えられなければ、第三のオイルショックという事態もないわけではない。

とにかく、イスラエルの極右勢力というのは我々の常識では考えられない聖書ファーストの狂信者たちだから何をしでかすか予断を許さない。

世界の目が再び中東に集まったこの一両日、私はひたすらに伐採した木を燃やす作業を続けていた。

正確にいうと、昨日今日だけではなく、今月に入ってずっと私は木を燃やしている。

ブドウや桃、柿の木や庭木を剪定したものだけでなく、今年は妻と二人で長年放置されてきた藪を開墾し大量の木を伐採したからだ。

この冬購入したばかりのステンレス製の焼却炉も、連日酷使されてすっかりベテランの風情を身につけた。

この焼却炉にどんどん薪や枯れ草を放り込んで焼いていくのだが、やはり木が灰になるまでには時間がかかる。

薪を投入してはキャンプ用の椅子に座って、煙の様子を観察しながら追加投入のタイミングをはかる。

そういう作業がすっかり板についてしまった。

でもここ数日晴天に恵まれ、新緑に輝く山々を眺めながらの作業は実に気持ちが良かった。

いつも焼却作業をする時にはスマホで音楽などを流しているのだが、昨日はなぜかサザンオールスターズにハマり、繰り返し繰り返し懐かしい名曲を聞き続けた。

遠い中東で多くの人が命の危機に怯えているのに、申し訳ないほどにのどかな時間である。

しかし、そんなのどかな時間のおかげで、昨日の朝には大量にあった燃やすべき木切れの山が、今日の昼までにすっかりきれいになったのだ。

来月から本格化する草刈りの季節を前に、邪魔者は4月のうちに処理しておかなければ草刈りの効率が落ちてしまう。

その意味では、コツコツと焼却炉に薪を入れる作業も無駄ではなかったということである。

目の前にある膨大に積み上がった課題も、一つ一つ根気強く解決すれば、いつかは目標が達成できる。

私が行った単純な焼却作業と中東の複雑な問題を一緒にすることはできないけれど、結局は一つずつ粘り強く解決していく以外に平和にたどり着く道はないんじゃないだろうか。

イランvsトランプ

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