🇯🇵 長野県/北佐久郡軽井沢町 2024年3月1日~2日
突然思い立って妻と二人で軽井沢に行くことになった。
きっかけは「どうも元気が出ない」という妻の一言。
ちょうど朝の天気予報で、日本海側から北関東にかけて雪が降ったというニュースを聞いたばかりだったので、どこか雪が見える温泉にでも行こうかという話になった。
奥日光のあたりから始めて群馬の温泉をチェックするが、これという旅館が見つからない。
その時に閃いたのが、妻が好きな軽井沢だ。
私はどうしても行ったことのない場所に行きたがるため、妻が軽井沢というたびに首を横に振ってきたのだが、考えてみればもう何年も軽井沢に行っていないことに思い当たった。
ライブカメラで軽井沢の様子を見てみると、雪が積もっていて、しかも午後から晴れる予報になっている。
「久しぶりに軽井沢に行こうか」と提案すると妻は快諾、すぐにホテルを予約して、バタバタと荷物をまとめお昼前にはマンションを出た。

午後1時すぎの新幹線に乗る。
午前中は曇り空だった関東地方も徐々に晴れ間が広がってきた。
予報通りだ。

大宮駅を通過。
毎年恒例の「住みたい街ランキング」で今年初めて大宮が横浜に次ぐ第2位に入ったという。
かつて「住みたい街」のナンバー1に君臨していた吉祥寺は3位に後退、大宮の後塵を拝することになった。
いったい大宮の何がいいのかはわからないが、埼玉県民にはかなりインパクトのあるニュースだったらしい。

高崎駅を通過する頃には、遠くに白い山が見えてきた。
浅間山だろう。
どうやら予報通り、軽井沢あたりも晴れてきたようだ。

軽井沢駅に到着したのは午後2時過ぎだった。
前日に結構な雪が降ったようだが、暖かな陽気でどんどん溶けていて、駅前の道路は雪解け水でビジョビジョだった。

ホテルの送迎バスの時間まで40分ほどあったので、駅近の喫茶店で少し時間を潰すことに。
選んだお店は北口から徒歩2分ほどの老舗「珈琲館 旦念亭」。
創業は1978年、水出しコーヒーが人気のお店らしい。

軒先には立派な氷柱。
東京から1時間ほどで風景はガラリと変わる。

店内は高い天井と個性的な暖炉が印象的だ。
駅の近くだが、平日の午後ということでお客さんもちらほら、いい感じである。

「旦念亭ブレンド」(800円)を注文すると、何やらコーヒーと一緒に出てきた。
チョコレート味のおこしだという。
食べてみると、確かに昔食べたおこし、だが味はチョコレートだ。

暖炉に新しい薪が投入されると、炎が上がった。
やっぱり薪ストーブはいいな。
私も欲しいな、と思う。

「もしよければ」と言って、店員さんが手作りのパズルを置いていった。
いかにも単純そうで、一見簡単そうなのだが、いざやってみると実に難しい。
なんとこの店のオリジナルなんだという。

「りんご畑のこびとたち」というのがこのパズルの名前。
「日本で一番むずかしいパズル」というコピーで入り口で販売されていて、解けないのが悔しくてついつい買ってしまった。

この日急遽予約した宿は西武系の「軽井沢浅間プリンスホテル」。
軽井沢駅の南口から送迎バスで15分ほど離れた小高い丘の上に建つ。
チェックインを済ませると、昔ながらにポーターの女性が部屋まで案内してくれた。
今時こんなサービスをしてくれるとは、プリンスホテルには今も昭和の高級ホテルらしさが残っている。

部屋はゆったり目のツインで、こちらもどこかプリンスホテルらしい昭和の香りを残す。
軽井沢の駅前に建つ軽井沢プリンスに比べて、小規模で静かで落ち着くホテルである。
そして、このホテルの魅力は何と言っても、客室からの眺めだ。

ベランダに出ると、まさに絶景が広がる。
木立の向こうは同じ西武グループが手がけた軽井沢浅間ゴルフコース、さらには軽井沢72ゴルフと続き、そして正面には白い雪をいただいた浅間山の勇姿を望む。

軽井沢でも、これほど真正面に浅間山が見える場所はそうないのではないか。
長野新幹線が開業した1997年にオープンしたホテル名に「浅間」を冠したプリンスホテル。
バブル期の象徴だったプリンスホテルが、新たな時代の大人のリゾートへと生まれ変わる象徴だったのかもしれない。

このホテルのもう一つの魅力は、温泉である。
この建物が温泉棟「Breeze in Plateau」。
客室があるホテルの本館からは小さなケーブルカーのようなエレベーターに乗って上がる。

ガラス張りのエレベーターに乗ると、雪が積もったホテルの屋根越しに浅間山の姿がくっきりと見える。
温泉に向かうワクワク感が嫌が上にも湧き上がる。

温泉棟も落ち着いた雰囲気で、男女兼用のくつろぐのスペースを挟んで左右の浴室に分かれる。

こちらが露天風呂。
文字通り、目の前に浅間山を望みながら、ゆったりと湯に浸かることができる。
私はチェックイン直後に温泉に行ったからか、他に入浴客もおらず、この贅沢なお風呂を一人で独占した。

露天風呂の脇には椅子も用意されていて、昨日の午後は暖かかったので、温まった体を風で冷ましてもさほど寒さは感じなかった。
20〜30分間、露天風呂を独占した後、ようやく他のお客さんがやってきたので、私は露天風呂を出て内湯に向かう。

内湯もこれがなかなか気持ちのいいお風呂で、綺麗に磨かれたガラス越しにこれまた浅間山がよく見える。
風がない分、こちらの方が湯冷めもせず、最後にしっかり体を温めてから部屋に戻った。

部屋に戻ってひと休みすると、もう夕食の時間だ。
1階にあるレストラン「Dining Bloom」は、高い天井に散りばめられた照明が正面のガラスに反射してとても美しい空間を作っていた。

窓際の席に案内される。
メニューを見るとアラカルトでも注文できるようだが、私の誕生日前日ということで、私たちとしては珍しくコース料理を頼むことにした。

私は「ASAMA」という名のコースを選んだ。
前菜は「魚介」、焼いたみかんの上に海老や筍などがあしらわれ、昆布のジュレと一緒にいただく。

「Terroir」という名のコースを選んだ妻の前妻は「天使の海老」。
ミキュイしたエビを中心に、カリフラワーやエディブルフラワーをスパイスと共に食べる。

2品目は魚料理。
どちらも「本日のお魚料理」を選んだのだが、私の方は胡麻のソース。

妻の方はお酒を使ったバターソースということで、妻が変えて欲しいというので、私がこちらをいただいた。
まあ、コース料理というのはどうも印象に残らない料理が多く、ここまでは「ふーん」という感じでさほど私の心に残るものはなかった。

しかし、3品目の肉料理はとても私の心に残る一品だった。
私が選んだのは「信州鹿ロース肉」。
最近その数が増えすぎて害獣として厄介者扱いされている鹿肉である。

この脂の少ない鹿肉を塩やさまざまな薬味と一緒にいただくのだが、これが予想に反して滅茶苦茶美味しかったのである。
ジビエと呼ばれヨーロッパでは大変人気がある野生の肉だが、日本ではなぜかほとんど流通していない。
私も正直こんなに鹿肉がクセもなく美味しいとは知らなかった。

ちなみに妻の方は「群馬県吾妻産 超力豚」だったが、これは圧倒的に鹿肉の勝ちである。
鹿肉が全て美味しいとは思わないが、またどこかで出会ったらぜひ鹿肉を選ぶことにしよう。

最後はデザート。
私の方は苺や甘酒を使ったデザートで、妻の方はりんごやマスカルポーネを使ったデザート、どちらもかわいい一皿だった。
どちらのコースも8000円。
もっと高いコースも用意されているが、私の誕生日ならこれで十分である。

部屋に戻ると、もう外はすっかり暗くなり、私はすぐに寝てしまった。
ところが妻はどうも寝られなかったようで、お互い寝る時間がずれているので、同じ部屋に寝るのはもはや寝不足の原因になるようだ。
私たち夫婦も60歳ぐらいから寝室を別々で暮らすようになっていて、そろそろ旅先でも2部屋取ってそれぞれのペースで眠った方がお互い気を使わなくて済むのかもしれない。

朝、あたりが明るくなると、浅間山が朝焼けに赤く染まるのが見えた。
この日も快晴、実に気持ちのいい朝である。
でも窓を開けると、外気はひどく冷えていて、慌てて窓を閉める。

私がずっと窓ガラス越しに浅間山を見ていた。
最初、日本海からの風で山頂に雲が出ているのかと思ったが、時間が経つにつれ山にかかる雲が取れていき、山頂から湧き立つのは雲ではなく煙だということがわかってきた。
ネットで調べると、浅間山では活発な火山活動が続いていて、気象庁から「噴火警戒レベル2」という火口周辺の立ち入り規制が出されていることを知った。

午前7時半、昨夜と同じレストランで朝食だ。
昨夜は室内の照明がキラキラ反射していた大きなガラス窓からは青空にくっきりと浮かび上がる浅間山の雄大な景色が一望できた。

朝食はビュッフェスタイル。
品数が多いとは言えないが、どれも洗練された地元の食材や料理が並ぶ。

信州のリンゴジュースに、八ヶ岳の牛乳。
思わず手が伸びる。

なかなか健康的な朝ごはんである。
味も悪くない。

ドライイチジクやさまざまな木の実を使ったシリアル。
ヨーグルトも・・・。
やっぱり信州は乳製品が美味しそうに見えてしまう。

こんな挑発的なドーナツを見ると、食べないわけにはいかない。
自分の66歳の誕生日を祝って、ビュッフェのデザートたちでお祝いだ。

朝ごはんを終え、もう一回温泉に浸かって、予定より少し早めにホテルを出る。
寝不足の妻のリクエストもあって、早めに東京に戻ることにした。

午前10時の新幹線に間に合ったのだが、あいにく並びの席がもう残っておらず、唯一あった「グランクラス」の券を勢いで買ってしまった。
グリーン席よりも上等なグランクラス、もちろん乗るのは初めてである。

値段が一般席の2倍以上するだけあって、さすがにガラガラ。
しかし国際線のビジネスクラスを思わせる座席には高級感が漂う。
座席を目一杯倒しフットレストを上げて座るとやはりいい気持ちである。
寝不足の妻も30分ほど居眠りできたらしい。

突然思い立った旅行だったけれど、ちょっと大人の絶景宿に泊まり、ちょっと贅沢な新幹線にも乗って、なかなかいい誕生日だった。
体調の関係で長旅ができなくなってきた妻との旅は、これからもこんな感じになるのかな、などと考えながら東京までの列車旅を楽しんだ。
1泊2日の軽井沢。
これからも時々アリかもしれない。
「軽井沢浅間プリンスホテル」
住所:長野県北佐久郡軽井沢町大字発地南軽井沢
電話:0267-48-0001
https://www.princehotels.co.jp/asama/