いや〜、やっぱりテレビは玉手箱だと思った。
ラグビーワールドカップの「ニュージーランド vs アイルランド」戦を観戦した後、テレビ東京の「アド街ック天国」を見て、何気なくリモコンをいじっていると懐かしい曲が流れてきた。
小田和正さんが、アリーナを埋め尽くした観客の前で歌っている。
そのままチャンネルが止まった。
NHK-BSプレミアムで放送していた「小田和正 Tour 2018~19 ENCORE!! ENCORE!!」。
その名の通り、小田さんのコンサートツアーを録画した番組だ。
https://www4.nhk.or.jp/P6056/3/
テレビの中の小田さんは、さすがに年をとっていた。
しかし、あの美声はまったく衰えていない。
しかも、昔のように走り回るというようにはいかないが、今もアリーナを回り、階段を登り、お客さんの近くで歌うスタイルはちっとも変わらない。
そして、あれだけ動き回っても息が切れていない。
すごいプロ根性。テレビから目が離せなくなった。
私が初めて、テレビ局の事業部門に異動したのは2007年のことだった。
その時、小田さんのアリーナツアーを何度か拝見する機会があった。
仕事である。
なんというおいしい仕事だろう。
初めて見た小田さんのライブは、感動的で、ワクワクして、楽しくて、心が洗われるような素晴らしいものだった。
今から10年以上前のことだ。
小田さんもまだ還暦を迎えたばかり、60歳にしては見た目も若々しくエネルギーに満ちあふれ、アリーナの端から端まで全力疾走しながら歌った。
またライブ会場ごとに自ら出演したご当地ビデオというのを制作しコンサートの途中で上映するのだが、これがテレビ番組よりも面白いほど完成度が高く、会場が爆笑に包まれるのだ。
笑いと興奮と感動、ライブに必要なものが小田さんのコンサートにはいっぱい詰まっていた。
あれから10年以上が経ち、小田さんもそれなりに年を取られた。
私も同じく年を取り、人生を振り返る余裕も出てきたからだろう。
昔よりもずっと小田さんの歌詞が心に染み込むのを感じた。
特別なことを歌っているわけではないのだが、普通の言葉がそれぞれの人生を肯定してくれている。
「それでよかったんだ。頑張ったね」
そうやって自分が頑張ってきた人生を認めてもらえると、人はホッとして穏やかな気持ちになれる。
小田さん自身、それを感じ、その気持ちを最近の歌詞に託しているように感じる。
小田さんは去年から今年にかけて、全国で64公演、実に55万人の観衆を集めた。
その多くは私と同じ60歳を超えたような人たちだ。
私たちにとって、小田和正は青春の歌だったけれど、今となっては少しニュアンスが変わっている。
自分の人生を一緒に生きてくれ、自分のことをわかってくれている人のように感じるのだろう。
もう一度、小田さんのコンサートを生で聴きたいと思った。
次のツアーの予定は決まっていないが、次があればぜひ妻と一緒にチケットを買いたいと思う。
同時に、小田さんの昔の曲は大好きだが、年を取ってから作った曲を聞いてみたいとも思った。
明日、久しぶりにTSUTAYAに行って、CDでも借りてこよう。
こんな宝物が時々見つかるから、私はテレビから離れることができない。
テレビは時代を記録し続ける。
それはとても貴重な仕事だ。