🇺🇿 ウズベキスタン/サマルカンド 2023年8月25日~28日
今回、中央アジアに来ようと思った直接のきっかけは、今年の2月、クウェートで出会った日本人女性に強く勧められたからだった。
「サマルカンドは絶対に行った方がいいですよ」
ということで、今回の旅行の最終目的地はウズベキスタンのサマルカンドと最初から決めていた。
「青の都」「イスラーム世界の宝石」「東方の真珠」などと称されるシルクロード観光の目玉の町についに私も足を踏み入れる日が来たのだ。

午前中タシケントの街を走り回り、正午前にホテルをチェックアウト、そのまま配車アプリ「Yandex Go」を利用してタシケント空港に向かう。
国内線のターミナル3は国際線よりも少し遠い感じだ。
殺風景な空港で車は離れたところに止めて建物までは悪路を歩かなければならない。
ウズベキスタンというと中央アジアの中でも観光に力を入れているイメージがあったが、どうやら買いかぶりだったようだ。

タシケントの空港で少し待って、飛行機は午後2時に離陸した。
機窓から見たウズベキスタンの大地は想像していたよりも真っ平で、枯れた草原と緑の耕作地を隔てるラインがはっきりと見えた。
わずか1時間弱のフライト。
最終目的地サマルカンド周辺は緑に覆われた肥沃な大地に見えた。

サマルカンド空港からホテルまでは配車アプリを使って12000スム、わずか150円だった。
空港から市内に向かう広い道路はとてもよく整備されていて、世界中から観光客を迎える国際都市という印象を受ける。

しかし私のホテルがある旧市街に入ると様相は一転、混沌とした庶民の営みがシルクロードに来たことを感じさせる。
私が予約したホテルは「ディヨラ・ホテル」。
往復の航空券とセットで購入して、3泊で3万円ちょっとという格安価格だ。
選んだポイントはサマルカンド観光の中心「レギスタン広場」まで歩いて行けるという立地だった。

だからホテルが古いのも織り込み済み。
ロビーに入ると、シーンとしていて、私の姿を見た若い男がおもむろに受付のカウンターに立ち、チェックインの手続きをしてくれた。
その際、パスポートを5分ほど預かると言われ、ウズベキスタンならではの手続きがあることを知った。

部屋はやはりレトロな感じ。
でもベッドも広くて問題ない。

部屋は1階にあり、カーテンを開けると通りから丸見えである。
ちょっと気になったのは独特の臭いで、おそらく臭い消しのために香水を使っているんじゃないかと思う。
私はどうも香水が苦手なのだ。

水回りもそれなりで、バスタブが付いているのは嬉しかったが、給湯タンクが小さいので、お風呂にお湯を張っていたら途中でぬるま湯になってしまうのが問題点だ。
それでも滞在中お腹を壊し、このトイレには随分お世話になった。
こういう時には日本のウォシュレットが懐かし。

このホテルを選んだもう一つの理由は中庭に小さなプールがあることだった。
溜まっていた洗濯をしてからプールに行くと誰もいない。
それもそのはずで、プールはあまり管理されておらず、水面には無数のゴミが浮いていた。
汚いなぁ。
そう思いながらも、この日は相当暑かったので体を冷やしたい衝動には勝てず、恐る恐る顔を水につけないようにプールに入る。
入ったしまえば、もうゴミもさほど気にならない。

どうせ誰も来ないのなら洗濯物を干させてもらおうと、部屋に戻って洗ったばかりのTシャツを日向に干した。
おかげであっという間にカラッと乾かすことができたのだ。

暑さがだいぶ収まってきた夕方6時ごろ、ホテルを出てレギスタン広場へと向かった。
ホテルは広場の北西に位置しているため、最短ルートを通ると広場の裏側に出る。
こちら側には古い民家が立ち並び観光客の姿もほとんどいない。

世界の観光客を魅了するレギスタン広場の第一印象は芳しくなかった。
太陽はすでに西に傾き、サマルカンドブルーと呼ばれる魅惑的な青もくすんで見えた。
子供を連れた女性が広場の仕切りを開けて中に入ろうとすると、警備員が飛んできて入っちゃダメだと追い返す。
私の姿を見ると、チケット売り場はあっちだと正面に回るように促した。
広場に入るのも有料なんだ、これがレギスタン広場の第一印象であった。

何事にも表の顔と裏の顔がある。
レギスタン広場も裏側から見ると、まるでドラマのセットの裏側を見ているようで、妙に興醒めしてしまうものである。
遠目に見るのはまだいいんだけれど、近くからタイルは見ない方がいい、そう思った。

警備員の指示に素直に従う気にもなれず、周辺をブラブラして夕食を食べてから、夕暮れのレギスタン広場に戻ってきた。
この広場に面した3つの建造物の中でも一番古い「ウルグペク・メドレセ」は完全にシルエットになっていた。
ちょうど、その瞬間だった。

レギスタン広場に一斉に照明が点灯したのである。
それはまるで夢のような瞬間だった。

この時間にこの広場に集まっていた人たちは当然ライトアップがあることを知って来ているのだろうが、私はどうもこういう有名観光地についてあらかじめ予習する気になれず、こんな美しいライトアップが行われることを知らずたまたまこの時間に立ち会ったのだ。

これは確かに美しい。
世界中からこれを見にやってくるのも当然だろう。
なんと言っても、その色がいい。
派手すぎず、地味すぎず。
そして刻々と変わっていく空の青とのコントラストも見事だ。

広場の西側に建つのが、1420年に建てられた「ウルグペク・メドレセ」。
「ウルグペク」というのは英雄ティムールの孫で天才天文学者としても知られるアミール(君主)の名前。
そして、「メドレセ」とはイスラム神学校のことである。

一方、広場の東側にあるのが「シェルドル・メドレセ」。
1636年に完成した神学校で、向かいにある「ウルグペク・メドレセ」を真似て作られたとされる。
「シェルドル」とは、ライオンが描かれたというような意味だそうで、正面アーチの左右上方に小鹿を追うライオンと人面を帯びた日輪が描かれたことがその名の由来となっている。

そして3つのうち、最後に建てられたのが正面の「ティラカリ・メドレセ」。
1660年に建てられたこの神学校は、その前からあった2つとはかなり趣が異なり、左側だけに青いドームを持っている。
このドームの下は礼拝所になっていて、金がふんだんに使われたその華麗な装飾から、「ティラカリ=金箔された」という名がつけられたという。

1つずつでも素晴らしいが、この3つの絶妙なバランス。
裏から見るのとは全然違う。
しかもこの時間、雲一つない空に吸い込まれていくようだ。

時間が経つにつれ、空の色はますます群青色に染まっていく。

これはまさに人と天が織りなす至高の芸術と言っていいだろう。

やがて空の色は青から黒へと変わった。
するとにわかに風船売りやらなんやら、どこからともなくたくさんの物売りが現れた。
中には子供たちも大勢含まれている。

午後9時、突然照明が青に変わった。
この日はたまたま金曜日。
週に一度だけ金曜の夜にプロジェクションマッピングがレギスタン広場でも行われるのだ。

当然私はそんなことは知らなかったが、他の人たちはちゃんと情報を持ってこの場所に集まってくる。
だから、物売りたちもこの時間に集まる観光客を目当てに集まってきたというわけのようだ。

しかし、このプロジェクションマッピングはいただけない。
ただ派手な照明で照らしているだけで、驚きもストーリー性も何もない。
サマルカンドを歌った演歌のような曲が大音量で流れ、さっきまでの幻想的な雰囲気はもうぶち壊しである。

こうしてちょっとげんなりするライトショーは30分も続き、9時半にようやく終わった。
とはいえ、広場の外から見る分には無料なのだから、文句を言ってはバチが当たるというものだ。

この素晴らしいライトアップを見た2日後の昨日27日、改めてレギスタン広場へ行ってみた。
入場券を買って内部を見学するためだ。

この日はあいにく雲が多く、太陽が雲に隠れてなかなか顔を出してくれない。
前日までは真っ青な青空が広がっていたことを考えると、写真撮影という点からすると後悔も残る。
とはいえ、晴天だと日中外を歩くのが嫌になってしまう。
曇り空の方が身体的には楽だと考えよう。

広場への入場口は西側にあり、入場料は50000スム、およそ600円だった。
こちらの人は平気で行列に割り込みをするので、切符を買うのもちょっと疲れる。

まずは広場西側にある「ウルグペク・メドレセ」から入ってみる。
入口の巨大なアーチをくぐると思いがけない世界が私を待っていた。

アーチを抜けると中庭になっていて、それを取り囲むように建物が建っているのだが、かつて学生たちが学んだであろう部屋の全てが土産物を売る売店になっていたのである。

中には裾のものすごい長いドレスをレンタルして写真撮影してもらっている女性もいる。
確かにそのドレスはアラビアンナイトにでも登場しそうな美しいもので、タイルの壁ととてもよく似合うのだが、周囲を好奇の目を向ける観光客がひっきりなしに通るのだから、なかなかシュールな光景ではある。

奥の広間が一部展示スペースにはなっているが、いかにもアリバイ的な印象は拭えず、その両脇はやはり土産物売り場になっていた。
世界遺産の建物をバックに自撮りをすることだけが目的ならばこれでもいいのかも知らないが、あまりにガッカリである。

続いて、真ん中の「ティラカリ・メドレセ」へ。

こちらもアーチの先に中庭があったが、先ほどの「ウルグペク・メドレセ」ほどは商売全開ではない。。
中庭の真ん中には木影のベンチでくつろげるスペースもあり、少し落ち着く。

このメドレセの特徴である青いドームの下、かつて礼拝所だった場所に踏み入った時、思わず息を飲んでしまった。
想像していたよりはるかに美しかったからだ。

天井を見上げれば、青と金であしらわれた精巧な細工が施されている。
昼間でも星が降ってくるようだ。

正面の祭壇にも精緻な細工で埋め尽くされていて、当時な文化水準の高さが見て取れる。

当然、みんなこの祭壇をバックに記念撮影しようと場所取り合戦に余念がない。
私もせっかくなので1枚自撮りをしておいた。

結論から言えば、入場料を払って広場の中に入る価値があるのは、この礼拝所だけと言っても過言ではない。
それほど他がしょうもないのだ。

最後は広場東側にある「シェルドル・メドレセ」。

名前の由来となっているライオンの絵というのがこれだ。
ライオンというよりも間違いなく虎だが、きっと昔の人が想像で描いたものに違いない。
そしてこのライオンの上に乗っかっている謎のオッサンは、太陽を意味しているというのだが、これまた意味不明である。

その内部は3つの中でも一番空疎で、煌びやかな礼拝所のようなものもなければ展示室もない。
だから訪れる客も少なくて、出店者たちも手持ち無沙汰な様子である。
その代わり、あまり混み合っていないため、衣装を着て記念撮影などするには向いているとも言える。

私が訪れた時も、2人の子供が昔のコスプレをして、写真屋の指示を受けながらチャンバラをしているところだった。
これはこれで子供たちには楽しかっただろう。

中央アジアを代表する世界遺産「レギスタン広場」。
訪れた感想は夜のライトアップは必見、でも中に入るとちょっとガッカリというものだった。
もしあの日、たまたまライトアップの瞬間に遭遇しなければ、私は何しにサマルカンドまで来たのかきっと後悔しただろう。
それほど、あのライトアップはわざわざこの国に来て見るべき価値があるということである。