🇺🇸 アメリカ/マイアミ 2024年2月16日
初めて訪れるカリブ海の国々を巡った今回の旅もとうとうおしまいだ。
16日の朝、ガイアナの首都ジョージタウンを飛び立ちアメリカ合衆国のマイアミに向かう。
搭乗する飛行機はアメリカン航空、およそ4時間半のフライトである。

ジョージタウンを流れる川の濁った水。
カリブ海に面しているとはいえ、ここは南米大陸の北岸だ。
川と海に沿うように人の営みが確認されるものの、それ以外は手つかずの大自然、人類が吐き出す二酸化炭素を吸収してくれる貴重な熱帯の密林である。

だからガイアナの海は同じカリブ海といえどもかなり遠くまで濁っているの
何本もの大河が上流から運んだ土砂が海に流れ込むからだ。
私は、ディズニー+でダウンロードしたアニメ「ONE PIECE」のシリーズを見始めた。

ふと窓の外を見ると、いつの間にか島が見えている。
どこの島かは定かではないが、間違いなく私が訪れた島のどこかだと思う。
比較的大きくてフラットそうなので、トリニダード島の北東岸あたりだろうか。
このあたりまで来ると、カリブ海の青い海がまた見られるようになる。

それから1時間あまりが経ち、再び島が見えてきた。
比較的平べったい島なのでバルバドスかと推察しながら、ダメ元でGoogleマップを開いてみると、何と飛行機の位置が表示された。
アメリカの自治領プエルトリコの上空だった。
Googleマップは飛行機で飛んでいる時も位置を教えてくれるのか、それともアメリカン航空の機内Wi-Fiのおかげなのか、いずれにしても自分がどこを飛んでいるのかがわかるのはありがたい。

またほぼその1時間後、今度はとてつもなく美しい環礁が見えてきた。
入り江の色がもはや青ではなく翡翠のような色。
陸地の緑、砂浜の黄色、深い海の青と入り混じって、この世のものとは思えないような絶景を作り出している。
ここは一体どこ?
Googleマップを開くと「タークス・カイコス諸島」と表示された。

これぞまさにプロの写真で紹介されるようなイメージ通りのカリブ海である。
カリブ海の島々を飛んだフライトでは、窓際の席が取れなかったり時間が夜だったりして、こんな美しいカリブ海とは一度も対面できなかっただけに感動すら覚える。
流入する川もなく、水が澄み切っているため、海底の地形までが飛行機からでも見えるようだ。

ここからはもう、「ONE PIECE」を見るのをやめて、窓の外に展開する夢のようなカリブ海をずっと見ていた。
マイアミ到着の1時間前ぐらいからは、バハマの島々が点々と続く。
いろんな形の島があるが、大半は珊瑚礁でできた無人島だ。

こちらの細長い島はその名の通り「ロング島」という名前が付けられている。
南北に伸びる細長い陸地の西側にはエメラルドグリーンのラグーンが遠くまで伸びていた。
これまた実に美しい。

ロング島の北岸は途切れ途切れに伸びていて、こうした浅瀬に少しずつ珊瑚が砕けた砂が堆積して新たな砂州ができるのだろうか。
人間が関知しない大自然の芸術。
それがカリブ海なのだ。

このあたりには陸地はないが、新たな砂州が出来つつあるのだろう。
砂浜の色が海水を通り抜けてはっきり帯状に見える。

こちらは洗濯板のように波打った海底の形状が、機上からもはっきり見える。
波が作り上げた縞模様なのだろうか。
次々に現れる変化に富んだ海。
まったく飽きることがない。

海の中にくっきりと引かれた一本のライン。
右側の浅瀬から一気に深海へと海底が落ち込んでいるに違いない。
バハマはフロリダ半島の港から数多く出港するカリブ海クルーズでも一番手頃で人気の国。
私もいつか必ず訪れたい国である。

そんな千変万化の海を眺めているうちに比較的大きな陸地が見えてきた。
バハマ諸島最大の島「アンドロス島」だろうか。
東海岸には複雑に色彩を変化させる入り江が広がっている。

島の内陸部にはいくつもの丸い地形が見えた。
これは一体何なんだろう ?
まるで月の表面でも見ているような感じだ。

そして島の西側には、相当沖合までエメラルドグリーンの海が広がっていた。
カリブ海の海は噂に違わぬ世界トップクラスの美しい海だが、中でも最も美しい浅瀬がバハマ諸島、つまりフロリダ半島の東方に広がっているという事実を自分の目で確認できた。

遠浅の海の先端部には不思議な紋様が描かれている。
おそらくは複雑な潮の流れがこのような紋様を作るのだろうが、こうした空から見える面白い海の変化はクルーズ船からはどのように見えるのだろう?
機会があれば、フロリダからの短期間のクルーズに参加してみるのも悪くないかもしれない。

そうこうしているうちに飛行機は着陸態勢に入った。
もう北米大陸の南東端、フロリダ半島が見えてきた。
これまでのカリブ海諸国とは景色が一変し、海岸線に沿って高層ビルが立ち並んでいる。

高層ビル群があるダウンタウンから東に突き出すように広い砂浜が連なっている。
あのあたりが有名なマイアミビーチだろう。
私もこのエリアに宿を取ったが、めちゃくちゃホテル代が高くて、一番安いクラスの宿を選んだけれど、それでも3万円を超え、さらにリゾート代というわけのわからない費用も発生する。
まさに資本主義の中心アメリカである。

ダウンタウンの西に広がる内陸側には、人工的な池を囲むように作られた高級住宅街やゴルフ場が広がっている。
上空から見ただけでもアメリカの豊かさが窺い知れる。
温暖なフロリダは私のような定年退職者が夫婦で移り住むことで知られ、またここマイアミはラテンアメリカからの移民が多い街として「カリブの首都」などとも呼ばれる。

マイアミ国際空港に到着したのはお昼前だった。
カリブ海諸国との時差は1時間だが、私が今回の旅をスタートされた西海岸のロサンゼルスとは3時間の時差がある。
やっぱり大きな国だと実感する。

事前にESTAを取得しているので、アメリカへの入国自体はスムーズだった。
黄熱病の感染リスクがあるとされるガイアナからの入国だが、何のチェックもなくちょっと拍子抜けしてしまった。
マイアミの検疫で引っかかるリスクがあると思って、わざわざ打ちたくもない黄熱病の予防接種を受けたのだから、せっかくならば一度くらいイエローカードの提示を求められたかった。

とりたててマイアミでの行動予定は立てていなかった。
まあ、アメリカまでたどり着けば行き当たりばったりでもなんとかなるだろうと思っていたからだ。
ホテルのチェックインにはまだ時間があるため、「リトル・ハバナ」というキューバ人街に行ってみることにした。

早速リトル・ハバナの良さげなレストランを探しそこまでUberで行ってみることにする。
ところが、なかなか私のリクエストを受けてくれる運転手が現れない。
5分ほど待ってみたが全然マッチングされないので、はたと気がついた。
私がいつも依頼しているのはUber-Xという一番安いクラスで、利用者が多い場所では選んでもらえないのではないか。

そこで一つランクを上げて「Uber-Comfort」というクラスに変え再びリクエストを出してみた。
するとすぐにマッチングが成立。
わずか3ドルの違いながら、個人事業主であるUberの運転手たちは少しでも多く稼ぐために客との駆け引きをしているに違いない。

ということで、私を空港でピックアップしてくれたのは、コロンビア出身の運転手だった。
車はとても綺麗で、さすが車社会アメリカである。
マイアミ市内は結構渋滞があり、運転手はUberが指示するルートを外れて住宅街の中を走った。
地図でチェックすると、もうこのあたり一帯がリトル・ハバナと呼ばれる地域らしい。

車を降りたのは、リトル・ハバナのメインストリート「ガジェ・オチョ(Calle Ocho)」。
この通りの両側にはいかにもカリブらしい色彩あふれる店舗が並び、この場所にいるだけでウキウキした気持ちになってくる。

至るところに色鮮やかな壁画。

キューバといえば葉巻。
世界最高級と言われた葉巻のお店もいくつも見かけた。

ショーウィンドウもちょっとレトロ。
カリブで聞いたソカのような今風のリズムではなく、マンボやルンバ、サルサといった昔のリズムが聴こえてくる。
多くの観光客で賑わうリトル・ハバナだが、少し時代が止まったようなレトロな雰囲気がある。

ここはリトル・ハバナのシンボルともなっている「ドミノパーク」。
ガジェ・オチョの中心にある小さな広場だ。

ここではたくさんのおじさんやおばさんが集まって、いつもドミノやチェスに興じている。
リトル・ハバナの住民たちは、1950年代のキューバ革命を逃れ、アメリカに逃げてきた人たちをルーツとしている。

アメリカを拠点にいつか祖国での政権転覆を夢見たが果たせず、マイアミの街に第二の祖国を作り出した。
ある種時間が止まったようなノスタルジーはそんな街の成り立ちと関係しているのだろう。

そんな街で、私が選んだお店はキューバの国旗が掲げられた老舗「Cubata Tapas y Vonos」。
気持ちのいい屋外の席が空いていた。

キューバ料理は食べたことがないので、とりあえず勘で注文していく。
最初に出てきたのは「CAFE CUBATA」(3.95ドル)、約600円だ。
濃いエスプレッソにたっぷりお砂糖を入れて飲むのがキューバの定番だそうで、この店ではお酒も入っていた。
ラム酒だろうか?

続いて運ばれてきたのは黒豆のスープ「FRIJOLES NEGROS」(5.95ドル)、約900円。
これは店員さんのオススメの中にあったメニューで、見た目の通りのやさしい味がした。

そして最後は小さな素焼きの入れ物に入った「ARROS MARINERO」(6.5ドル)、およそ970円だ。
無性に米が食いたくなってこれを注文したがパエリアみたいでとても美味しかった。

何を食べてもびっくりするほど高いアメリカでは、これくらいならまずます。
どれも美味しくてなかなかいいチョイスができたと自画自賛する。

マイアミにはキューバ人だけでなく、カリブ海や中南米から様々な人が集まってくる。
英語よりもスペイン語を聞くことの方が多いくらいだ。
そして、私はUberで宿泊先のマイアミビーチに向かった。
運転手に出身地を聞いても「英語が分からない」と答えた。

ふと、前の座席の背に張られていた紙を見ると、こんなことが書かれていた。
『私はウクライナから来ました。私の国では今戦争が起きています。私の家族や友人はまだ祖国にいます。私はここで働いて彼らを助けたいので、もしよければチップをお願いします』
昔に比べ内向きになったと言われるアメリカ。
それでも祖国を離れざるを得なかった人たちにとっては今も最大の駆け込み寺なのだ。
そんなことを感じながら、ホテルに向かった。