🇯🇵 香川県/小豆島 2021年10月14日~15日
今回の旅行は岡山に帰省する際、航空券・レンタカーとの組み合わせでホテル1泊をセットにした方が全体がお得になるということで、せっかくなら瀬戸内の島に泊まろうと考えたことから始まった。
楽天トラベルの「ANA楽パック」から予約して、選択肢として出てきた宿の中からたまたま選んだのが「小豆島国際ホテル」である。
昭和38年創業の小豆島を代表するホテルだそうだが、第一印象は沖縄などのリゾートと比べ外観の古さが目についた。
しかし実際に宿泊してみると、瀬戸内海の絶景を満喫でき、快適なホテルライフも楽しめる素敵なホテルだった。
天使の散歩道「エンジェルロード」
私たちが宿に到着したのは午後1時半、チェックインの時間にはちょっと早かった。
入り口を入ると広々としたロビー。
外観に比べて建物の内部はきれいにリフォームされている。
目の前には瀬戸内海の静かな海が広がる。
早めにチェックインができるか確かめると、部屋は用意できているという。
ありがたい。
すると一人の男性スタッフが声をかけてきた。
「お部屋に行く前にエンジェルロードに行かれますか? もうすぐ沈みますよ」
どういうことかよく理解できないまま、荷物をフロントに置いておじさんの教えてくれたルートを辿って外に出てみた。
ホテルの目の前に広がるビーチから南に、向かいの弁天島・余島まで砂の道が伸びている。
この砂の道は1日2回干潮時に姿を現し、潮が満ちると海に沈んでしまうという。
単なる自然現象ではあるが、「タイダルアイランド」と呼ばれるこうした地形は人々を魅了し、世界各地で信仰の対象となったり神話の舞台となってきた。
「エンジェルロード」と名付けられたこの砂の道が現れる時間は、潮の干満によって決まるため毎日変わる。
私たちがホテルに到着した昼過ぎの時間帯が、この日は偶然「エンジェルロード」が見られる時間だったようだ。
「あと15分ほどで沈んでしまう」
ホテルのおじさんに急かされて私たちもエンジェルロードを渡った。
海の水はとても澄んでいた。
波はほとんどなく、静かだ。
海から出てすでに時間が経ったせいだろう、砂は思いのほか濡れていなかった。
対岸の島にたどり着くと、たくさんの貝殻がぶら下がっていた。
「恋人の聖地」という文字が見える。
近年、小豆島の観光スポットとして注目されるここ「エンジェルロード」は若いカップルにとって特別の場所になっている。
「エンジェルロードの真ん中で手をつないだカップルは結ばれる」
そんな噂が口コミで広まり、それに地元の観光業者が乗っかって昔からある砂州は「恋人の聖地」となり、ホタテガイの絵馬まで販売されるようになった。
スタンダード和洋室
「エンジェルロード」の散策から戻り、そのまま部屋に入る。
部屋は30平米の和洋室だった。
「小豆島国際ホテル」の売りは全室オーシャンビュー、私たちの部屋からも瀬戸内海の多島美が目の前に広がる。
ゆったりとしたツインベッド。
もちろんWi-Fiも完備だ。
6畳の和室も付いていて、最大4人の宿泊が可能だ。
特別豪華というわけではないが、これがスタンダードのお部屋なので日本のホテルとしては十分な広さが確保されている。
部屋には小さな冷蔵庫や寝具、食器類も用意されていて、コロナ禍で部屋で過ごす時間が長くなっても特に不便は感じないだろう。
水回りは、お風呂とトイレが一体となったユニットバスなので、お風呂に関しては1階にある2つの大浴場を利用した方がいい。
小豆島国際ホテルには、「オリーブの湯」と「浜風の湯」という2つの温泉施設があり、時間によって男女交替制となっている。
「オリーブの湯」の方が圧倒的に開放的で、海に面した露天風呂もある。
小豆島の温泉というのはあまりイメージがなかったが、実は島内にいくつもの源泉があるという。
1泊2日の滞在中、私は3回も温泉に浸かった。
そして、このホテルの一番の魅力はやはり部屋から眺める絶景である。
この写真は夜明けの風景を窓から撮影したもの。
「エンジェルロード」越しに遠く四国の山々までが一望できる。
真正面には香川県の屋島。
頂上が平らなその特異な姿は、源平合戦の昔から多くの日本人にとって航海の目印となってきた。
「小豆島国際ホテル」にチェックインして、どこへも出かけず、海を眺め食事と温泉を楽しむだけでも素敵な休日が過ごせるだろう。
「恋人の聖地」ウォッチング
午後1時46分。
ホテルの部屋に入った時、窓から見える「エンジェルロード」はまだしっかりと繋がっていた。
「あと15分で沈む」と言われていたので、沈むところを撮影しようと窓辺で見守った。
しかし、「エンジェルロード」はなかなか沈まなかった。
実際に砂州が波に洗われ始めたのは1時間後、島に渡っていた男性グループが慌てて戻ってくる。
この時にはまだ、ジャンプをすれば水に入らずに戻ることができるぐらいの状況だった。
ところがその5分後、水没した部分が徐々に広がり、女性たちが靴を脱いで浅瀬を渡っている姿が見えた。
いったん潮が満ち始めると、「エンジェルロード」は見る見るうちに海の中に沈んでいくのだ。
さらに4分後の午後2時53分には、女の子をおんぶしたカップルが浅瀬を渡って戻ってくるのが見えた。
まさに「恋人の聖地」。
これが目的でわざと潮が満ちるのを待っていたのかもしれない。
中には、砂の道が沈み始めているのを承知で、島に渡ろうとするカップルもいた。
波は限りなく静かで危険はないので、濡れるのさえ厭わなければ他人が消えた島に渡る絶好のチャンスとも言える。
この砂州が「エンジェルロード(天使の散歩道)」と呼ばれるようになったのはそれほど昔のことではないようだが、その由来を調べてみると戦国時代から伝わる恋人たちの伝承がこの場所には残っているという。
大阪城築城の石を切り出すため小豆島に派遣されたキリシタン大名小西行長が、この島を日本のキリスト教の本拠地にしようと宣教師グレゴリオ・デ・セスペデスを送り込んで熱心に布教した。
しかし1587年、豊臣秀吉は突如キリスト教禁止令を発し厳しく取り締まりを始めた。
隠れキリシタンであった島の娘タエは、船で長崎に逃れる手はずを整えるためやってきたセミナリオの神学生小平太と深く愛し合うようになる。
追っ手を逃れて小平太が余島へ逃げ込みタエが後を追おうとするが、海は暗く流れも早いため渡ることができない。
そこでタエは、小平太から教わった通り5つの貝殻を十字架の形に並べ、夜空に祈る。
すると、空から天使が現れ白い砂の道を作り、若者の待つ島へ渡ることができたというのが「エンジェルロード」の物語なのだそうだ。
午後3時には、砂の道はもう半分が水中に没していた。
最後に島に渡ったカップルも無事にこちら側に戻ってきたようだ。
ここまで見届けて、私も「恋人の聖地」ウォッチングをやめることにした。
いったん外出し4時半ごろ戻ってくると、「エンジェルロード」はすっかり海中に沈んでいた。
もうさすがに、ここを渡ろうという若者もいなかった。
夕食「オリーブ会席」
瀬戸の夕暮れを楽しみ、温泉に入る。
さあ、夕食だ。
食事場所は、ビュッフェスタイルの「サンシルバー」と会席スタイルの「潮風」。
私たちは落ち着いていただける「小豆島の会席」を選んだので、午後6時に2階の「潮風」に向かう。
コロナ対策としてテーブルの間隔は広く取られ、周囲を気にすることなく妻と2人で食事に臨む。
「オリーブのお酒 飲み比べセット」というものが用意されていて、思わず注文してしまう。
オリーブ生産量日本一の香川県では、オリーブの実から採取した「さぬきオリーブ酵母」を使った日本酒が作られているそうで、そのうちの3つを飲み比べできるという趣向である。
左から、「金陵 瀬戸内オリーブ純米吟醸」、「綾菊 さぬきオリーブ純米酒」、「川鶴 純米吟醸さぬきオリーブ酵母仕込み」で、値段は950円だった。
この「オリーブ酵母」自体、2018年に発見されたばかりの新しいもので、いま香川県を挙げて「オリーブのお酒」を売り出しているということのようだ。
飲んだ印象は、正直私には普通の日本酒との違いがわからなかった。
ほとんどクセがない。
だから、普通の日本酒同様、和食との相性は悪くないと思う。
さて料理の方だが、メニューには「オリーブ会席」と書いてあった。
食前酒と小鉢に続いて中央にドーンと置かれたのは、立派なお造りだ。
「姿造り付全四種盛り合わせ」
瀬戸内の鯛やサザエなどが盛り付けられていたのだが、写真を撮るのを忘れて食べ始めてしまったので、こんな姿になってしまった。
特筆すべきは、小豆島名産のお醤油である。
「島醤油三種味比べ」と称し、3種類の全く違ったお醤油が用意され、刺身の味を引き立てる。
3種類とは左から・・・
- ヤマハ醤油(少し甘辛目で女性に人気の醤油)
- 諸味醤油(丸島醤油樽仕込醤油の諸味)
- オリーブ醤油(青紫蘇とエキストラバージンオイル入り自家製ぽん酢)
このお醤油がどれも絶品で、特にとろっとしたヤマハ醤油と旨味たっぷりの諸味醤油は最高だった。
特に島醤油でいただくコリコリとしたサザエのお刺身は、これまで食べたことのない美味である。
続いて煮物は「瀬戸内鰤の艶煮 島野菜の煮物付け合わせ」。
瀬戸内の鰤を切り身にし、荒と一緒に島醤油で荒炊き風に焚きあげたものだそうだ。
瀬戸内海に面した岡山ではハマチはよく食べるが、ハマチが成長した瀬戸内鰤を食べた記憶がない。
ブリといえば日本海という先入観を持っていたので、ちょっと新鮮だった。
台の物は、「香川県産牛の鉄板焼き 焼き野菜色々 利休タレ」。
今や日本全国どこに行っても地元のブランド牛が供されるが、こちらのステーキも諸味醤油をつけて食べると一味違う小豆島の味になる。
続く蒸し物は、「瀬戸内魚の若草蒸し」。
酢の物は「瀬戸内魚のみぞれ和え」と、近海の魚が様々な形で味わえる。
最後に御飯物として「笹巻寿司」が出される。
穴子、酢取り生姜、刻み金糸、蓮根、一寸豆が入っていて、味も食感も悪くない。
味噌汁の代わりに合わせるのは「瀬戸の山海鍋」。
鍋とは言っても、具沢山の味噌汁のような感じだ。
さらにお好みで、小豆島名物の手延べそうめんの食べ放題サービスもある。
こちらは手袋をはめて各自特設のテーブルに取りに行くスタイルだが、ポイントはそうめんが乾燥される前の「半生そうめん」だということだ。
地元でしか味わえない「半生」のそうめんを私も一杯だけいただいた。
そして〆のデザートとして、「自家製醤油プリンと果物その他」。
特選丸島醤油を隠し味にして作ったホテルオリジナルのプリンだという。
あまりお醤油を感じさせないやさしい味で、久しぶりに食べる宿の夕食に大満足であった。
朝食「和定食」
翌朝、6時前にベッドから起き出し、静かな瀬戸内海を眺める。
やっぱり海はいい。
朝風呂を浴び、7時半から朝ごはんをいただく。
朝食もビュッフェと和定食が選べるが、私たちは和定食を選んだ。
食事の場所は夕食と同じ2階の「潮風」だったが、朝の日差しがたっぷり差し込み、その部屋が海に面していたことをこの時初めて知った。
私たちが案内されたテーブルは昨夜と同じだったが、朝は海を眺められるカウンター席も魅力的だなと思う。
「和定食」はすでにテーブルに用意されていた。
なかなかのボリュームである。
イカのお刺身が付いている。
ねっとりとして美味しい。
普段食べる朝ごはんに比べて倍ぐらいの量だが、私も妻もペロリと食べてしまった。
不思議なものだ。
手袋をはめてドリンクバーに飲み物を取りに行く。
久しぶりのホテル宿泊、身も心ものんびりできて大満足である。
この後、午前10時のチェックアウトまでのんびり部屋で過ごし、最後の最後まで海辺のホテルを満喫する。
私の宿泊料金は航空券や2週間のレンタカー代と合わせて11万5200円。
普通に買うと航空券とレンタカー代だけでもっと取られるので、小豆島国際ホテルの宿泊費は事実上無料と考えてもいい。
妻は私とは別に新幹線で岡山に来たのでホテルだけ追加で予約したのだが、2食付きで1万2000円ほどだった。
オーシャンビューの30平米の部屋に泊まり、豪華な料理と温泉付きでこの値段なら文句はない。
有名観光地に比べてとてもお得ないいホテルだと感じた。
楽天トラベル評価4.56、私の評価は4.50。
「小豆島国際ホテル」 香川県小豆郡土庄町甲24-67 電話:0879-62-2111
いいところですね〜激戦の香川一区!(=^・^=)