2021年のテーマとして掲げた「井の頭公園の植物」観察。
今回は、冬でも緑の葉を繁らせている常緑広葉樹の高木の名前を2つ憶えた。
「スダジイ」と「シラカシ」、すなわち日本の雑木林の主力だった「シイ」と「カシ」の木である。
「スダジイ(椎)」

「ねこドーナツ」のある『ブルースカイコーヒー』の目の前に立つ常緑の高木。
この樹木にさりげなく名札がついているのを見つけた。

『スダジイ』、あまり聞き慣れない名前だと思った。
しかし、調べてみると、ドングリの代表格である「椎の実」をつける『シイノキ」といえばもちろん知っている。
実際には「シイノキ」という木は存在せず、関東地方で単に「シイノキ」という場合は『スダジイ』を指し、関西では『ツブラジイ』を指すのが一般的なのだという。

冬でもたくさんの葉を残し、こんもりとした樹形を維持している。
スダジイは幹や枝が分岐しやすく、冒頭の画像のようにブロッコリー状の樹形になる。いわゆる「鎮守の森」を形成する代表的な樹種であり、地方では寺社に、都市部では「お屋敷」や学校等に広く植えられる。スダジイが一本あるだけで大きな森があるように見え、アオダイショウなどの住処になっていることもある。
出典:『庭木図鑑 植木ペディア』
これまで意識したこともなかったが、よく見ると常緑広葉樹の高木というのは井の頭公園の中でもさほど数は多くはないように思える。

『スダジイ』は暖地性照葉樹林を代表する樹種のひとつで、高さは15〜20m、太さは直径1m以上に育つという。
「ブルースカイコーヒー」前の『スダジイ』も、大地にしっかりと根を張り、店のシンボルツリーのような存在感を放つ。
朝なのでまだ開店前だが、夏場などは店の前に並ぶお客さんたちに心地よい木陰を提供してくれるのだ。

樹皮は縦にやや深めの溝が走っている。
『スダジイ』の材は重くて硬いが、乾燥すると割れやすいので木材として利用されることは少なく、薪やしいたけを栽培するホダ木として利用されてきた。

歯の表面は艶があるが、裏側には黄色や白の毛が生えていて、葉の裏の色で見分けることができるという。
そして秋になれば、たくさんのドングリを実らせ、私たちの先祖に貴重な食糧を提供してきた『スダジイ』、その名は知らなくても常に日本人の暮らしとともにあった樹木なのである。
「スガジイ」 分類:ブナ科シイ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:5〜6月 実がなる時期:9〜11月
井の頭公園の「スダジイ」はここ!

「シラカシ(白樫)」

『スガジイ』の少し西側には、何本かの大きな常緑広葉樹が植えられている。
片っ端から探してみたが名札はない。
仕方がないので木の幹に貼られた番号を公園案内所に伝えて調べてもらった。

このもこもことした樹木の名前は、『シラカシ』。
こちらもドングリを実らすことで馴染みのある、いわゆる「カシノキ」として知られる。
ただ地方によって違いもあり、東日本で単に「カシ」の木という場合はこの『シラカシ』を指すが、関西では『アラカシ』、四国や九州では『アカガシ』を示すことが多いという。

樹皮にはあまり深い溝はなく、細かいブツブツがあるのが特徴。
「カシ」の語源には諸説あるが、材が硬い「堅し木」が転訛したとする説が有力とされる。学名Quercus myrsinaefoliaは「良質な材木」を意味し、イスノキやアカガシと並んで国内有数の硬さと重さを誇る。弾力と耐湿性もあり、建築材、船舶材、船の櫓(ろ)、農具や槍の柄、カンナの台、木刀や楽器等に利用される。
引用:『庭木図鑑 植木ペディア』

『シラカシ』の葉っぱは、別名「ホソバガシ」のとおり普通は幅が狭くて先端の尖った楕円形で、関西の「アラカシ」と比べると細くて小さいのが特徴だ。
秋になるとドングリができ、縄文時代にはこれを食用としたようだが、タンニンの濃度が高くて渋味があるためそのまま食べるには不向きだという。

シイやカシという広葉樹は、ありふれているが故にあまり大事にされず、伐採されて代わりにスギやヒノキが植林されたのだが、私はシイやカシの生い茂る照葉樹林の方が断然好きである。
そのままにしておいてくれれば、花粉症にもならずに春をもっと楽しめたのに・・・。
日本中に昔のような照葉樹林が復活することを願う。
「シラカシ」 分類:ブナ科コナラ属 特徴:常緑広葉樹・高木 花の咲く時期:4〜5月 実がなる時期:9〜10月
井の頭公園の「シラカシ」はここ!

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