2021年のテーマとして掲げた「井の頭公園の植物」観察。
今年1月から80回にわたって井の頭公園で目についた植物について書き留めてきたが今年はこれが最終回となる。
12月になると落葉樹は葉を落とし、新たに花を咲かせる植物はごくわずかだ。
すっかり寂しくなった公園を散策しながら、目についた植物のいくつかを記録しておきたい。
「ニホンズイセン(日本水仙)」

冬に咲く代表的な花といえば「スイセン」。
井の頭公園でもところどころで白と黄色の可愛らしい花を見かけるようになった。
「スイセン」にもいろいろ種類があるようで、これは日本では最もポピュラーな「ニホンズイセン」と呼ばれる品種で、一般的に「スイセン」といえばこの植物を指す。
ただし、「ニホンズイセン」という和名がついているが、原産地は中東から地中海沿岸だそうだ。

和名スイセンという名は、中国での呼び名「水仙」を音読みしたもの。中国で名付けられた漢名の「水仙」は、「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典に由来する。水辺に育ち、仙人のように寿命が長く、清らかなという意味から名付けられたとされる
出典:ウィキペディア
開花期が12月から4月と長く、これが仙人に喩えられたということだろうか。
ただ冬に咲く可憐な花で親しまれるこの「スイセン」は有毒植物である。
全草が有毒で、鱗茎に特に毒成分が多い。スイセンの致死量はマウスで10.7g/kgである。食中毒症状と接触性皮膚炎症状を起こす。中毒は初期に強い嘔吐があり摂取物の大半が吐き出されるため症状が重篤に到ることは稀であるが、鱗茎を浅葱(あさつき)と間違えて食べ死亡した例がある。葉がニラととてもよく似ており、家庭菜園でニラを栽培すると同時に、観賞用として本種を栽培した場合などに、間違えて食べ中毒症状を起こすという事件が時々報告・報道される。厚生労働省によると、2008年~2017年に起きた有毒植物による食中毒188件のうち、最多はスイセン(47件)だった。
出典:ウィキペディア
確かに、この葉っぱ、ニラに似ている。

こうした「スイセン」の毒性を昔の人は薬として利用した。
スイセンは有毒植物であるが、含まれている成分リコリンは、食中毒などのときに吐かせる吐剤でもあり、誤って飲食すれば吐き下しが起こって苦しむ。これを人工的に水素化してヒドロリコリンにすると、アメーバ赤痢の薬として役立つとされる。民間療法で、乳腺炎、乳房炎、咳が出るときの腫れに、鱗茎を掘り上げて黒褐色の外皮を除き、白い部分をすりおろしてガーゼに包んで外用薬として患部に当てておくと、消炎や鎮咳に役立つと言われている。身体にむくみがあるときも同様に、足裏の土踏まずに冷湿布すると方法が知られている。
出典:ウィキペディア

「井の頭恩賜公園花便り」に今月「スイセン」が取り上げられていて、面白いことが書いてあった。
『6枚に分かれている白い花びらは外側の3枚は顎(がく)で内側の3枚が花弁です。』
そうなのだ。
白い花びらのうち3枚が顎で3枚が花弁、どう見てもそっくりなのに不思議である。
「ニホンズイセン」 分類:ヒガンバナ科スイセン属 特徴:多年草 花が咲く時期:12月〜4月
井の頭公園の「ニホンズイセン」はここ!

「ガマ(蒲)」

井の頭池のほとりを歩いていると、白い綿毛が風に乗って飛んできた。
何の綿毛だろうとあたりを探すと、水辺に生えていた「ガマ」だった。
あのソーセージのようなガマの穂が破れて、大量の綿毛が吹き出している。

水面に落ちた種子は水底に沈み、そこで発芽するという。
泥の中で地下茎を伸ばし水辺で群生するこの「ガマ」を昔の人は多用途で利用した。
昔から、若葉を食用、花粉を傷薬、葉や茎はむしろや簾の材料として使われてきた。雌花の熟したものは綿状(毛の密生した棒様のブラシ状)になり、これを穂綿と呼ぶ。火打ち石で火を付けていた時代には、穂綿に硝石をまぜてほくちとして用いることがあった。蒲の穂を乾燥させて、蚊取り線香の代用として使われる事もある。
出典:ウィキペディア

強く握ると爆発して中の綿毛が飛び出してくるガマの穂。
「かまぼこ(蒲鉾)」や「かばやき(蒲焼)」など、身近な食べ物にもその名を残す。
「蒲の穂」はかまぼこ(蒲鉾)の語源である。昔のかまぼこは板に盛られた現在の形とは異なり、細い竹にすり身を付けて焼いた食べ物を指していた。これは現在のちくわにあたる。ちくわと蒲の穂は色と形が似ていて、矛のように見えるガマの穂先は「がまほこ」と言われている。蒲焼きも、昔はウナギを開かずに、筒切りにして棒に差して焼いていたので、その形がガマの穂に似ていたことから「蒲」の字が当てられている。
出典:ウィキペディア
こうしたミニ知識を知ると、独特のフォルムを持つこの植物がいかに人々に愛されてきたのかが理解できる気がする。
花言葉は「従順」「慌て者」。
「ガマ」 分類:ガマ科ガマ属 特徴:多年草 花が咲く時期:6〜8月
井の頭公園の「ガマ」はここ!

「ミツマタ(三椏)」

茂みの枝にイガイガした緑色の塊を見つけた。
何だろうと思い、植物識別アプリ「Picture This」で調べると「ミツマタ」と表示された。
「ミツマタ」といえば、早春に黄色い花をつける花だが、このイガイガした塊はどうやら蕾らしい。

枝先が3つに割れているから「ミツマタ」という程度の知識しかなかったが、調べてみると、この植物の皮が和紙の原料として重要な役目を担っているということを知る。
何と日本のお札に「ミツマタ」が使われているというのだ。
明治12年(1879年)、大蔵省印刷局(現・国立印刷局)抄紙部で苛性ソーダ煮熟法を活用することで、日本の紙幣に使用されるようになっている。国立印刷局に納める「局納みつまた」は、2005年の時点で島根県、岡山県、高知県、徳島県、愛媛県、山口県の6県が生産契約を結んで生産されており、納入価格は山口県を除く5県が毎年輪番で印刷局長と交渉をして決定された。しかし、生産地の過疎化や農家の高齢化、後継者不足により、2005年度以降は生産量が激減し、2016年の時点で使用量の約9割はネパールや中国から輸入されたものであった。国内では岡山県、徳島県、島根県の3県だけで生産されており、出荷もこの3県の農協に限定された。生産農家の減少などで、ミツマタの価格は2018年に30キログラムあたり9万5400円と過去最高水準まで上昇した(国立印刷局による)。2024年度の新紙幣発行を視野に、耕作放棄地など徳島県山間部でミツマタを新たに栽培する動きもある。
出典:ウィキペディア

岡山が「局納みつまた」の主要産地になっているなんて話は一度も聞いたことがなかったが、私たちが知らないところでニッチに役立っている植物なのだ。
来年、黄色い花を咲かせる頃には、違った気持ちでその花を眺められそうな気がする。
花言葉は「強靭」。
「ミツマタ」 分類:ジンチョウゲ科ミツマタ属 特徴:落葉広葉樹・低木 花が咲く時期:3〜4月
井の頭公園の「ミツマタ」はここ!

「ツバキ(椿)」

年末の井の頭公園。
すっかり寂しくなった公園の中で、この季節目につくのはやはり「ツバキ」の花である。
「ツバキ」は万葉集にも登場する日本原産の植物。
日本列島各地に自生する「ヤブツバキ」を原種としてたくさんの園芸品種が生まれている。

ヨーロッパには日本から伝わり、「冬のバラ」として大流行した。
英語では、カメリア・ジャポニカ (Camellia japonica) と学名がそのまま英語名になっている珍しい例である。17世紀にオランダ商館員のエンゲルベルト・ケンペルがその著書で初めてこの花を欧州に紹介した。後に、18世紀にイエズス会の助修士で植物学に造詣の深かったゲオルク・ヨーゼフ・カメルはフィリピンでこの花の種を入手してヨーロッパに紹介した。その後有名なカール・フォン・リンネがこのカメルにちなんで、椿の属名にカメリアという名前をつけ、ケンペルの記載に基づき「日本の」を意味するジャポニカの名前をつけた。17世紀に日本から西洋に伝来すると、冬にでも常緑で、日陰でも花を咲かせる性質が好まれ、大変な人気となり、西洋の美意識に基づいた豪華な花をつける品種が作られた。ヨーロッパ、イギリス、アメリカで愛好され、現在でも多くの品種が作出されている。
出典:ウィキペディア
「ツバキ」の種類は200種を超えるとされ、椿寺として知られる広島の観音寺では700種類のツバキが咲くというのが触れ込みだ。

2021年の年間テーマとして取り組んだ井の頭公園の植物観察の1回目は、ピンクの千重咲き「オトメツバキ」だった。
すでにちらほらと咲き始めた「オトメツバキ」を目にしては、季節がひと回りしたことを感じる年の瀬である。
花言葉は「控えめな優しさ」。
「ツバキ」 分類:ツバキ科ツバキ属 特徴:常緑広葉樹・小高木 花が咲く時期:11〜4月
井の頭公園の「ツバキ」はここ!

井の頭公園の植物2021
- 【1月】「オトメツバキ」&「トウカエデ」
- 【1月】「カツラ」&「サルノコシカケ」
- 【1月】「ケヤキ」&「クスノキ」
- 【1月】「コブシ」&「ハゼノキ」
- 【2月】「スギ」&「ヒマラヤスギ」
- 【2月】「ヒノキ」&「サワラ」
- 【2月】「コナラ」&「エノキ」
- 【2月】「フクジュソウ」&「マンサク」
- 【2月】「ムクノキ」&「トチノキ」
- 【2月】「スダジイ」&「シラカシ」
- 【2月】「イヌシデ」&「クヌギ」
- 【3月】「カワヅザクラ」&「オオカンザクラ」&「カンヒザクラ」
- 【3月】「サンシュユ」&「アセビ」
- 【3月】「トサミズキ」&「ヒサカキ」
- 【3月】「アズマイチゲ」&「ウラシマソウ」
- 【3月】「オオシマザクラ」&「コヒガン」
- 【3月】「メタセコイア」&「ラクウショウ」
- 【3月】「シダレヤナギ」&「ユキヤナギ」
- 【3月】「カタクリ」&「ヤブレガサ」
- 【3月】「ヤマブキ」&「オウゴンマサキ」
- 【3月】「ヒトリシズカ」&「マルバスミレ」
- 【3月】「イロハモミジ」& 新緑の主人公たち①
- 【3月】「オオキバナカタバミ」&「クサノオウ」& 黄色い草花たち
- 【3月】「イチリンソウ」&「ニリンソウ」& 白い草花たち
- 【3月】「イカリソウ」&「ムラサキケマン」& 青や紫の草花たち
- 【3月】「キブシ」&「シナフジ」
- 【3月】「ミズキ」&新緑の主役たち②
- 【4月】「ウワミズザクラ」& 遅咲きの八重桜たち
- 【4月】「リンゴ」&「ゴショイチゴ」
- 【4月】「ヤマブキソウ」& 山野草エリアの主役たち
- 【4月】「ハンノキ」「アキニレ」「イチョウ」& 新緑の主役たち③
- 【4月】「キンラン」&「ホウチャクソウ」&「ヤブニンジン」
- 【4月】「ハナズオウ」&「ヒトツバタゴ」
- 【4月】「ミツデカエデ」&「サワフタギ」
- 【4月】「ヤブヘビイチゴ」&「キランソウ」
- 【4月】「ヒメウツギ」&「タニウツギ」&「ナヨクサフジ」
- 【4月】「ムサシノキスゲ」&「オオツルボ」
- 【4月】「モッコウバラ」&「ナニワイバラ」
- 【4月】「ハクウンボク」&「ニセアカシア」
- 【4月】「カザグルマ」&「ハハコグサ」& 4月に咲いた草花たち
- 【5月】「カルミア」&「イボタノキ」
- 【5月】「エゴノキ」&「ガマズミ」
- 【5月】「ノイバラ」&「シラン」
- 【5月】「ヤマボウシ」&「ハコネウツギ」&「マルバウツギ」
- 【5月】「マユミ」&「ハゼノキ」
- 【5月】「カキノキ」&「イヌツゲ」
- 【5月】「テイカカズラ」&「ネズミモチ」
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- 【6月】「ネジバナ」&「ムラサキツメクサ」&「コメツブツメクサ」
- 【6月】「ユウゲショウ」&「ニワゼキショウ」&「ヒナキキョウソウ」
- 【6月】「ボタンクサギ」&「シモツケ」
- 【6月】「ノカンゾウ」&「コウホネ」
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