11月に入り、寒い日が増えてきた。
そうなると恋しくなるのがラーメンだ。
ラーメン激戦区と言われる吉祥寺では、今も新たな人気店がオープンしている。

たとえば、コピスの地下に今年4月オープンしたこちらのつけ麺のお店。
荻窪で長年愛された「迂直 (ウチョク)」が店を閉め、心機一転吉祥寺に進出してきたということらしい。
よほどラーメン好きに愛された店とみえ、開店と同時に連日長蛇の列。
私が訪れたのは10月31日の金曜日だったが、やはり店の前には入店を待つ客の長い列ができていた。

少しぐらい待っても食べてみたいと思って出かけたのだが、行列は店の前から延々裏通りに出る階段にまで延びていて、短く見積もっても2時間ぐらいは待たなければならない、そんな感じだった。
その行列を見た瞬間、私の気力は失せてしまい、「迂直 」には後日またトライするとして、この日は別の店でランチを済ませつことを即決した。
さて、どこに行こう。

私の脳裏に浮かんだのは、サンロード商店街からちょっと入った路地にある老舗のラーメン店「ホープ軒本舗 吉祥寺店」だった。
黄色い看板と暖簾が目印であるこの店は、1984年からこの場所にある。
しかし、お店のルーツを辿ってみると、なんと戦前の昭和10年(1935)創業の屋台にまで遡るという。
この屋台を始めた難波二三夫氏は戦後阿佐ヶ谷に「ホームラン軒」というラーメン専門店を開業し、その場所が戦後復興計画のため立ち退きとなると再び屋台での営業を開始、その際に「ホープ軒」に名前を変えたのだそうだ。
「ホープ軒」と言えば、テレビ局に入社した駆け出しの報道カメラマンだった時代、夜勤で深夜に取材に出かけた帰りによく先輩に連れられて千駄ヶ谷にある「ホープ軒」に行ったことを思い出す。
背脂がたっぷりで、ニンニクの効いたラーメンは当時としては初めて食べる味で、まだ若かった私には忘れられない刺激的な味として記憶に刻まれている。
実はこの千駄ヶ谷の「ホープ軒」は、難波二三夫さんが自分の店とは別に営んでいた貸し屋台の中から暖簾分けしたものなのだという。

店に入ると、ラーメン屋らしくカウンター席のみの15席。
客は全員男性で、今風ではないごちゃごちゃした感じも私好みである。
Wikipediaによると、ラーメン屋にカウンターを最初に導入したのも難波二三夫さんだと書いてあった。
なかなかのアイデアマンだったらしい。
入り口の券売機で食券を買う。
メニューは「中華そば」と「チャーシュー麺」の2種類のみ、トッピングと量を選んで注文する。

私が選んだのは、普通の「中華そば」と小ライス。
合わせて970円は、今時としてはリーズナブルな方と言えるだろう。
歴史を刻んだ黄色い丼。
スープにはたっぷり背脂が浮かぶ。
お店のホームページを見ると、『東京背脂豚骨醤油の始祖』と堂々と書いてあり強いプライドを感じた。

『じっくり丹念に炊いた豚骨や野菜から抽出されるスープは、濃厚ながらも口当たりはほんのり甘く、まろやか。旨みたっぷりで自家製縮れ麺によく絡みます。脂分・塩分のバランスも、高刺激な昨今の潮流とは一線を画す、昭和の屋台営業から全く変わらないホッとする味わい。卓上の特製香辛料「唐華」や酢、コショウを加えて味の変化も愉しみながら、お好みの一杯を堪能あれ。』
これがホームページに記された「中華そば」の説明。
実際に食べてみると、見た目とは違い脂っぽさはほとんど感じず、やさしい甘みが口の中に残る。
千駄ヶ谷のホープ軒はもっと濃厚で脂っぽかった気がする。

この店のチャーシューは、脂の少ない肩ロースを使っているということで、クセがなく柔らかく、安心できる味だ。
確かにチャーシュー麺も美味しいかもしれないが、私にはこの一枚で十分である。

後は、チャーシューの陰に隠れたもやし。
このあっさりしたもやしが濃厚なスープによく合う。
実にシンプルだが、よく計算されたラーメン。
歳をとったので胃にもたれるかなと心配しながら、久しぶりに「ホープ軒」のラーメンをいただいたが、食べた後も全く胃もたれすることはなく、期待以上に美味しいラーメンに懐かしさと感動を覚えた。

新しいラーメン店が次々にオープンし、ついついそちらに目を奪われてしまいがちだが、やはり老舗の味は強い。
麺を食べ終わった後は、スープにお酢を加え、ライスと一緒にスープを堪能した。
いやあ、美味かった!
千駄ヶ谷でホープ軒の味を知ってから40年、再びファンになりそうだ。
食べログ評価3.54、私の評価は4.00。
「ホープ軒本舗 吉祥寺店」
電話:0422-20-0530(予約不可)
営業時間:11:00 - 00:00
定休日:火曜、水曜(当面の間)
https://hopeken-honpo.jp/