介護疲れでこのところ体調を崩していた妻。
少し元気が出たようで、昨日はランチを外で食べたいと言った。
「カフェは?」と聞くと、どうもそういう気分ではないらしい。
その時ひらめいたのが、妻の大好きなベトナム麺「フォー」だった。
最近、吉祥寺に相次いでフォーが食べられる新しいお店がオープンした。
そこで妻を行ったことのない2軒のお店に案内してみる。
妻が選んだのは、本町新道沿いの雑居ビルにできたベトナム料理のお店。
「ZiO フォー ベトナム料理 吉祥寺店」
ベトナム北部出身の店長が営む本場のフォーが食べられるお店の2号店だという。
雑居ビルのちょっと寂しい階段を降りて、お店は地下にあった。
ネオンサインを使ったお店のロゴが意表をつく。
今年6月にオープンしたばかりということもあり、店内はまだきれいだ。
カウンターとテーブル席が合わせて24席。
インテリアはモダンな印象だ。
ベトナムのサンドイッチ「バインミー」や焼肉もあるが、この店の看板メニューは何と言ってもベトナムの国民麺「フォー」である。
『当店のフォーはベトナム北部出身の店長の故郷のフォーです。風味豊かなローカルの味となっています。ボリュームもお肉もしっかり入って食べ応えもある一品を揃えています。』
日本でもすっかり有名になった「フォー」だが、もともとベトナム北部で食べられていた麺だ。
お店の壁には、昔のベトナムを写した白黒写真が飾られていたが、私が初めてフォーを食べたのもまさにこういう路上の屋台であった。
あれは1986年だったろうか。
バンコク支局勤務だった私は何度かベトナムに取材に行ったが、北部にある首都ハノイに行くと必ずフォーを食べていた。
当時のベトナムはまだ貧しくて、まさに写真のような光景がまだ普通であった。
これが南部のホーチミンに行くと、フォーはなくなり「ミエンガ」という春雨スープのようなものをみんなが食べていた。
だから、フォーはこの店の店長の出身地ベトナム北部の食べ物なのだ。
私が注文したのは、A1「牛肩バラ」(1000円)。
お店の一番人気はA4の「牛肉」、店長のおすすめNO.1はA2の「レア牛肩バラ」だそうだ。
パクチーは苦手な人に配慮してレモンと一緒に別皿に添えられていた。
とても美しいフォーだと思った。
澄んだスープの真ん中に、たこウインナーのようにカットされたネギが浮かんでいる。
私はパクチーを全部投入し、レモンを搾ってから食べ始める。
このスープ、美味い。
甘みがあって実にやさしい味だ。
麺は手作りっぽくて、太さがバラバラ。
でも、これがいい。
それほど期待していなかったので、ちょっと嬉しい驚きがあり、いっぺんでこの店が気に入った。
「牛肩バラ」は薄くて硬い。
でもメニューに書いてあった通り、「しっかり噛むほど肉の旨味が出る」東南アジアの味である。
店長おすすめの「レア牛肩バラ」はどんな感じなのだろう?
はじめはスープの旨味を楽しむため、そのまま味わうが、テーブル上に並んだ調味料も気になる。
ベトナムの魚醤「ヌクマム」や「チンス」というチリソース、「サテオット」というラー油もある。
タイの麺もそうだが、卓上の調味料を組み合わせて味変したり、自分好みの味に整えるのが一般的な食べ方だ。
その中で、私が試してみたかったのがこちら。
「ザンートイオット Dam toi ot」
スライスしたニンニクと唐辛子を酢につけたものらしい。
これを少しスプーンですくってフォーに混ぜてみる。
恐る恐る食べてみると、何とこれがめちゃ美味いのだ。
ニンニクの臭みはなく、ピリッと辛味のあるお酢がスープの味を引き締める。
これ、最高じゃん。
タイの麺「クイッティアオ」に入れる唐辛子入りのお酢「プリック・ナムソム」に似ているが、ニンニクをそのまま食べる点でこの調味料の方が優っていると思った。
こうして予想以上に美味しいフォーを味わうことができた。
大満足である。
吉祥寺でもベトナム料理が食べられるお店がだいぶ増えてきたが、フォーを食べたくなったら外せない私好みのお店だった。
食べログ評価3.14、私の評価は4.00。
「ZiO フォー ベトナム料理 吉祥寺店」 電話:042-227-5797 営業時間:11:00~23:00 定休日:不定休